モルタル充填の歩掛と積算基準・計算方法を徹底解説

モルタル充填の歩掛と積算基準・計算方法を徹底解説

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モルタル充填の歩掛と積算基準・計算方法を徹底解説

標準歩掛をそのまま使うと、実際の工事費より数十万円単位で赤字が膨らむことがあります。


📋 この記事の3つのポイント
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歩掛の基本と計算式

「歩掛(ぶがかり)」とは1単位の作業にかかる手間を数値化したもの。人工=(人数×作業時間)÷8時間 の計算式で労務費を算出します。

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標準歩掛の落とし穴

標準歩掛は「標準的な条件」が前提。現場条件が違う場合はそのまま適用すると実態と乖離し、赤字の原因になります。

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ロス率・配合・補正まで

モルタル充填の積算では材料ロス率(+0.06〜+0.12)の計上や、施工条件による歩掛補正が収益を左右する重要ポイントです。


モルタル充填の歩掛(ぶがかり)とは何か:基本の定義と役割


モルタル充填工事の積算を行う際に、まず正確に理解しておきたいのが「歩掛(ぶがかり)」という概念です。歩掛とは、ある作業を1単位仕上げるために必要な労働量・手間を数値化したものを指します。土木・建築工事における工事費の積算では、材料費の計算は「材料単価×数量」と比較的シンプルですが、労務費の算出には作業の難易度・職人の習熟度・施工環境などが複雑に絡み合うため、歩掛という基準が必要になります。


モルタル充填工事に限らず、建設現場では「何人で何日かかるか」が費用に直結します。たとえば左官工1名が1日8時間で処理できる量を1人工と定義し、それに労務単価を掛けると労務費が算出される仕組みです。つまり歩掛が正確でなければ、積算全体がズレてしまいます。


歩掛の単位は「人工(にんく)」です。計算式は次のとおりです。


計算内容 計算式・例
人工の算出 人工 =(人数 × 必要作業時間)÷ 8時間
計算例 1人で4時間かかる作業 → (1×4)÷8 = 0.5人工
労務費の算出 労務費 = 設計作業量 × 歩掛 × 労務単価


歩掛の数値は工種や施工方法ごとに異なります。重要なのはここです。モルタル充填工事であれば、充填方法(手練り・ポンプ圧送)・施工場所(壁面か床面か)・1回あたりの数量など、条件が変わるたびに歩掛も変わります。


歩掛が積算に与えるメリットは4点あります。


- 労務費の正確な把握:作業難易度を反映した適正な費用が算出できます
- 赤字工事の防止:見積もりの誤差を最小化し、収支の安定につながります
- スケジュール管理の精度向上:工数が明確になり、工程表の作成精度が上がります
- 顧客への説明根拠:「なぜこの金額か」を数値で説明できます


歩掛が原則です。これをベースに、次の項目で積算の具体的な計算手順へ進んでいきます。


参考:歩掛の計算方法・積算への活用について詳しく解説した資料
歩掛(ぶがかり)とは?正確な積算・見積作成のための計算方法 – ANDPAD


モルタル充填の歩掛と積算計算の手順:人工・労務費・材料費の出し方

モルタル充填工事の積算は、大きく「労務費の計算」と「材料費の計算」の2つに分けて進めます。順序を間違えると計上漏れや二重計上が起きるため、手順の固定化が大切です。


① 歩掛を適切に把握する


まず国土交通省が公表する「土木工事標準歩掛」や「公共建築工事標準単価積算基準」を参照します。これらには工種ごとの標準的な歩掛数値が掲載されており、モルタル練工・充填工もその対象です。大阪市の積算資料によれば、モルタル上塗の歩掛は以下が目安として示されています。


施工種別 左官(人/㎡) 普通作業員(人/㎡) 適用
モルタル上塗(厚1㎝)壁面 0.15 0.05 壁面施工
モルタル上塗(厚1㎝)床面 0.05 0.04 床面施工


壁面と床面では、同じ厚さでも歩掛が3倍近く違うことが分かります。これは施工の難易度・体勢・材料のはりつきやすさによる差です。意外ですね。


また、Vカット止水工の充填工(1m当たり)について、施工性の良し悪しで次のような歩掛の差が生じます。


工種 施工性難(左官+普通) 施工性良(左官+普通)
充填工(乾燥状態) 0.2+0.2 0.2+0.2
はつり工(乾燥状態) 0.1+0.1 0.07+0.07


施工性が「良」か「難」かで、はつり工の歩掛が約30%変わります。施工条件の記載を読み飛ばすと、見積もりが大きくズレます。これが条件です。


② 労務単価を確認する


国土交通省は毎年3月に「公共工事設計労務単価」を改定・公表しています。47都道府県×51職種別に単価が設定されており、モルタル充填工事であれば「左官」「普通作業員」「特殊作業員」などの職種単価を参照します。令和7年3月改定の単価が現在適用されているため、必ず最新版を確認してください。古い単価を使うと、実際の支払いとの差で赤字になる可能性があります。


③ 労務費を計算する


計算式は以下のとおりです。


> 労務費 = 設計作業量 × 歩掛 × 労務単価(基本日額+割増賃金)


たとえば充填面積50㎡(壁面)で、左官歩掛0.15人/㎡・左官の日当労務単価が25,000円とすると。
50㎡ × 0.15人/㎡ × 25,000円 = 187,500円 となります。


④ 材料費を計算する


モルタルの材料費はセメント・砂・水の材料使用量に単価を掛けて算出します。一般的な充填用モルタルの配合はセメント:砂 = 1:3(容積比)ですが、積算基準では重量比で管理されます。実務では「モルタル1m³あたりのセメント量・砂量」を配合表から確認し、設計数量×(1+ロス率)で発注量を算出します。


参考:充填工の施工歩掛など大阪市積算公開資料
第3章 構築工 第1.コンクリート工及びモルタル工(大阪市水道局)


モルタル充填工事の歩掛計算で絶対に外せないロス率と配合の考え方

モルタル充填の積算で見落とされやすいのが「ロス率」です。設計図上の施工数量と、実際に現場で使用する材料量は一致しません。充填の際に材料がこぼれたり、管路の曲がりで押し出された余剰分が生じたり、練り混ぜ時に発生するロスがあるためです。


国土交通省の積算基準では、手練りコンクリート・モルタルの場合「小型構造物では標準ロス率+0.06」と定められています。つまり設計数量が1.0m³であれば、1.0×(1+0.06)=1.06m³を発注量として計算します。


ただし、胴込・裏込コンクリートなど充填密度が高い用途では「標準ロス率+0.12」とさらに高い数値が設定されています。用途を間違えると材料が足りなくなり、追加発注が必要になります。これは使えそうです。


施工種別 標準ロス率 注意事項
一般モルタル充填(小型構造物) +0.06 手練り基準
胴込・裏込コンクリート充填 +0.12〜+0.16 充填密度の要求高
吹付モルタル(法面等) リバウンド考慮が必要 粒度・施工条件で変動


配合設計の観点でも注意が必要です。水セメント比が下がればセメント量が増えて材料費が上がります。粒度の粗い骨材を使えばノズル詰まりやリバウンドが増え、吹付工事では歩掛もロス率も悪化します。


実務では「配合票と強度目標を先に確定し、単位材料量×設計数量でまず母材数量を確定、次にロス率と養生条件を反映する」という順序で積算することで精度が安定します。ロス率を後回しにすると、数百m²規模の工事では数十万円単位の誤差が生じることもあります。


また、施工方法によっても歩掛は大きく変わります。手練り施工とポンプ圧送では機械経費の計上が異なり、高所・狭所での施工はロープ高所作業の安全設備費も追加されます。法面のモルタル吹付工事であれば、ロス率に加えて「アクセス方法(足場・高所作業車・ロープ)」ごとの加算も忘れずに計上することが条件です。


参考:ロス率・配合と施工条件の整合について詳しく解説した実務コラム
法面のモルタル吹付工事の単価が厚みや施工条件で変わる理由(takebi.net)


標準歩掛をモルタル充填工事にそのまま使うと赤字になる理由

「国交省の標準歩掛を使えば安心」と考えている方は要注意です。都道府県・政令市の約半数が標準歩掛と現場実態に乖離があると認識し、独自歩掛を作成しているという実態があります(国土交通省調査、2025年)。


標準歩掛はあくまで「標準的な施工条件・健康な青年・壮年の作業員が作業した場合」を想定した参考値です。以下のような条件が違う場合は、そのまま適用すると実態とズレが生じます。


- 現場条件(高所・狭所・夜間施工・市街地):移動時間・安全設備の費用が上乗せされる
- 作業員の熟練度・年齢構成:ベテランと新人では施工スピードが大きく異なる
- 施工規模:小規模工事は段取り・後片付けの割合が大きく、歩掛が悪化する
- 季節・気候:冬期工事では秋田県などが「冬期工事の歩掛補正係数」を独自に設定するほど、寒冷地では大きな差が出る


厳しいところですね。令和7年度の国交省標準歩掛改定では「移動時間等を踏まえた歩掛改定」が行われており、路上工事や仮設工事での資材基地から現場への移動時間が正式に反映されました。これは以前の歩掛より数値が上がる工種があることを意味します。同じ工種でも旧歩掛を使い続けると、実際より低い労務費で見積もることになりかねません。


国土交通省も標準歩掛について「実際の施工における工法や施工機械を規定するものではなく、あくまでも標準的な施工を想定した予定価格を算出するためのツール」と明記しています。この前提を理解しておくことが大前提です。


現場実態に合わせて歩掛を自社で補正する場合、秋田県の積算基準のように「5社以上から歩掛の見積を徴取し平均を採用する」という手続きを経ることが公共工事では求められます。独自調整を行う際も、根拠を文書化しておくことが重要です。


参考:令和7年度 国土交通省土木工事標準歩掛改定概要


モルタル充填の歩掛計算で使える独自視点:施工パッケージ型積算との比較活用法

これはあまり知られていない話です。モルタル充填工事の歩掛積算には「歩掛積算方式」だけでなく「施工パッケージ型積算方式」という選択肢もあります。国土交通省は2013年度から施工パッケージ型積算方式を直轄土木工事に導入しており、現在も対象工種を拡大しています。


施工パッケージ型積算方式とは、労務費・材料費・機械経費などを個別に積み上げるのではなく、工種ごとの「施工パッケージ単価(市場実勢価格ベース)」を使って積算する方法です。歩掛積算では労務費・材料費・機械経費・諸雑費をそれぞれ計算しますが、施工パッケージ方式ではその積み上げが一本化されています。


比較項目 歩掛積算方式 施工パッケージ型積算方式
計算の詳細度 高い(労務・材料・機械を個別計上) 中程度(一体化した単価を使用)
市場価格への追随 各単価を最新値で更新が必要 年1回の標準単価改定で反映
補正の柔軟性 条件ごとの補正が細かく可能 補正式で対応(条件外は歩掛で対応)
公共工事での主な適用 複雑な工種・標準外工種 定型工種(コンクリート工・土工など)


実務で重要なのは「どちらの方式が適用されているか」を発注仕様書・特記仕様書で事前に確認することです。公共工事の入札に参加する際、施工パッケージ型積算方式で積算された設計金額と、歩掛積算で自社見積を出した場合とでは、積算の出発点が違うため比較が難しくなります。


また、施工パッケージ型積算基準の適用年月が古いと「資材単価・労務単価の変動が反映されていない」ことになります。令和6年度と令和7年度では労務単価が改定されており、同じ施工パッケージ単価を使い続けていると現場コストとのズレが生じます。


これらを活用する場面で知っておきたいのが、国土交通省の「施工パッケージ型積算基準」と「土木工事標準歩掛」の両資料です。この2つを並べて確認することで、積算根拠の説明力が高まり、発注者との交渉や設計変更対応もスムーズになります。


参考:施工パッケージ型積算基準の最新版(国土交通省)
土木工事標準歩掛 – 国土交通省




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