

動かない目地に2面接着で施工すると、翌年には雨漏りのクレームが来ます。
シーリング工事で判断を誤りやすいのが、目地の「動き(ムーブメント)」の有無です。ノンワーキングジョイントとは、温度・湿度の変化や地震荷重などによって生じる目地幅の伸縮がほとんどない、または非常に小さい目地のことを指します。一方のワーキングジョイントは、サイディング外壁のパネル継目やカーテンウォールの目地のように、部材が大きく伸び縮みする箇所です。
この2つを区別する最大のポイントはムーブメントの大小です。ムーブメントが大きければワーキングジョイント、小さければノンワーキングジョイントと判断します。つまり「目地が動くかどうか」が基本です。
具体的な数値で見ると、ワーキングジョイントでは目地幅の変動率が±25〜50%に及ぶこともあります。対してノンワーキングジョイントでは変動がほぼゼロか、シーリング材の弾性で十分に吸収できる微小な範囲に収まります。この差が接着方法の違い(2面接着と3面接着)に直結します。
よく現場で混同されるのが「RC造のサッシ枠回り」です。サッシ自体は熱膨張があるため動くと思われがちですが、サッシをコンクリートに固定している枠周りの目地は躯体の変動がほとんどないため、ノンワーキングジョイントとして扱います。意外ですね。
以下に主な分類をまとめます。
| 種別 | 目地の動き | シーリング接着方法 | 代表箇所 |
|---|---|---|---|
| ワーキングジョイント | 大きい(±25%以上) | 2面接着 | 木造サイディング目地、金属笠木ジョイント、ガラス周り |
| ノンワーキングジョイント | 小さい or ほぼゼロ | 3面接着 | RC造打継目地、タイル目地、コンクリートとサッシ枠取合目地 |
参考情報として、コニシ株式会社の技術資料にはワーキング・ノンワーキングジョイントの目地設計と材料選定に関する詳細なデータが掲載されています。
建築業従事者なら特に押さえておきたいのが、RC造(鉄筋コンクリート造)における3つの代表的な箇所です。これが正確に把握できていると、現場での施工指示も的確になります。
① コンクリートの打継目地(水平打継ぎ)
各階ごとにコンクリートを打ち継ぐ際に生じる水平の目地です。コンクリートは乾燥収縮するため完全に動かないわけではありませんが、サイディングパネルのような大きなムーブメントは生じません。打継面は雨水の浸入口になりやすく、防水を優先した3面接着のシーリングが有効です。目地底・両側面の3方向にプライマーをしっかり塗布したうえでシーリング材を充填します。
② ひび割れ誘発目地(コンクリート外壁)
RC造外壁にわざと設ける「弱部」の目地で、不規則なひび割れを一箇所に集中させる目的があります。「動き」を意図的に作り出すための目地ではなく、あくまで収縮クラックを誘導するものなので、ムーブメントは小さく抑えられています。ノンワーキングジョイントとして3面接着が基本です。
③ RC造外壁のアルミサッシ枠とコンクリートの取合目地
サッシをコンクリートの開口部に固定した後に生じる隙間を埋めるシーリングです。躯体であるコンクリートが大きく動くことは通常ありませんし、サッシ枠自体も固定されています。このため「ノンワーキングジョイント」に分類され、3面接着で施工します。ここが2面接着で施工されると、目地底に雨水が回り込む経路が生まれ、内部結露や雨漏りの原因になります。
3箇所とも共通して言えるのは、「動きが小さいから3面接着で防水性を高める」という考え方です。3面接着が原則です。
施工管理求人ナビの用語解説もあわせて参考にしてください。外壁側コンクリート誘発目地・打継目地・タイル収縮目地・PC工法壁式構造の目地・コンクリートとサッシの取合目地が明示されています。
「外壁タイルの目地はノンワーキングジョイントだから3面接着でよい」と一律に判断していると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。これは使えそうな知識です。
実はタイル目地は、下地の挙動によってワーキング・ノンワーキングのどちらにもなり得ます。下地がRC躯体の場合はムーブメントが小さく、ノンワーキングジョイントとして3面接着が有効です。しかし下地が木造や軽量鉄骨で動きが大きい場合は、タイル目地であってもワーキングジョイントに準じた扱いが必要です。下地次第ということですね。
このポイントは関西シーリング工事業協同組合の不具合事例でも指摘されており、「2面接着で不具合が発生した場合はシーリング材を撤去し、3面接着で施工し直す」という対策が示されています。逆もまた然りで、動く下地に3面接着を使えばシーリングが破断します。
また、タイル目地のシーリング幅・深さにも注意が必要です。目地幅が5mm未満になると、施工後に十分な弾性が得られず早期剥離の原因になります。標準的な目地幅は8〜12mm程度(はがきの短辺約10cmの1/10〜1/8程度の幅)が推奨されています。深さは幅と同等か、やや浅い程度を目安にします。
外壁タイルに使用するシーリング材は高弾性品が適しています。変成シリコン系やポリウレタン系の高弾性タイプを選ぶと、微小なムーブメントへの追随性が高まり、耐久年数も伸ばせます。
関西シーリング工事業協同組合|不具合事例とQ&A(2面接着不具合の対応策掲載)
「動かない目地だから3面接着でよい」というのは正しいのですが、逆に「動く目地に誤って3面接着を施工した」という現場でのミスが雨漏りクレームに直結するケースがあります。厳しいところですね。
動きの大きいワーキングジョイントに3面接着を行うと、躯体の伸縮の際にシーリング材が三方向から引っ張られる状態になります。2面接着なら伸縮を吸収できる場面でも、目地底にも固着されているため追従できず、築5〜7年程度でひび割れや破断が起きやすくなります。
このとき浸入した雨水が構造材や断熱材に達すると、修繕費用は大きく膨らみます。シーリングの打ち替えだけなら1mあたり900〜1,100円、バックアップ材等の追加費用は1mあたり500〜900円程度が相場ですが、戸建て住宅1棟で延べ60〜80m施工すると合計14〜24万円(足場代別)が目安になります。足場代を別途計上すると、さらに15〜30万円の追加出費になります。痛いですね。
逆にノンワーキングジョイントへの2面接着も問題です。目地底にシーリング材が接着しないため、底面から雨水が回り込む経路が生まれます。結果的に雨漏りが発生し、下地のコンクリートや躯体が長期間濡れた状態になることで、鉄筋の腐食(錆び)や中性化が進行します。RC造では特にこのリスクが高く、構造耐力に影響が出る前に対処することが重要です。
現場での防止策として、施工前に以下のチェックリストを活用するのが効果的です。
施工管理の立場からは、工事写真に「ボンドブレーカーの有無」「プライマー塗布状況」を記録しておくことが、後のクレーム対応でも証拠になります。記録に残すが条件です。
シーリング補修工事の種類と施工留意点|ノンワーキング3面接着の解説あり
ここでは、現場で即使える判断フローを紹介します。教科書的な分類だけでなく、実務上「迷いやすいグレーゾーン」の判断も含めて整理します。
STEP 1:躯体の構造種別を確認する
最初に確認すべきは「躯体が何か」です。RC造・SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)であれば、コンクリートを挟んだ目地はまずノンワーキングジョイント候補になります。木造・軽量鉄骨造であれば、熱・地震・風による動きが大きいためワーキングジョイント候補として扱います。
STEP 2:接合している材料の組み合わせを確認する
異種材料の取合は特に注意が必要です。たとえばRC造でもコンクリートとALCパネルが取り合う箇所は、ALCの熱伸縮が比較的大きいため、ワーキングジョイントとして設計されることがあります。同種材料同士(コンクリート同士)の継目は基本的にノンワーキングです。
STEP 3:設計図書や仕様書を確認する
JASS 8(建築工事標準仕様書・シーリング工事)や、使用シーリング材のメーカー仕様書に判断根拠が示されている場合があります。特に改修工事では既存目地の設計意図が図面に残っていないことも多いため、メーカー技術担当への問い合わせが有効です。
独自視点:「動かなくても油断できない目地」がある
ここは検索上位には少ない視点です。RC造の打継目地は理論上ノンワーキングですが、建物全体が大きな不同沈下(地盤の不均一な沈み)を起こしている場合、打継部に予期しないせん断力が発生し、目地幅が変動することがあります。1〜2mmの微小な動きでも、劣化したシーリング材には致命的なダメージになります。
こういったケースでは、3面接着のシーリング材に「高伸長タイプ(伸び率200〜300%以上)」を選ぶことで安全マージンを確保できます。コニシの「ボンドMSシール」などの変成シリコン系高弾性タイプは、ノンワーキングジョイントに使いながら微小ムーブメントにも対応でき、耐用年数は約20年を目安にできます。高弾性品の選択が条件です。
また、SRC造や大型PC(プレキャストコンクリート)工法では、ジョイントの設計条件が複雑になります。PC工法の壁式構造の目地はノンワーキングジョイントに分類されますが、PC板の製造精度や接合形式によっては設計段階からシーリングメーカーの技術支援を受けることが推奨されます。
| 判断ステップ | 確認内容 | ノンワーキング判定の目安 |
|---|---|---|
| 躯体種別 | RC造・SRC造か | RC・SRCであれば候補 |
| 材料の組み合わせ | 同種か異種か | コンクリート同士ならノンワーキング寄り |
| 設計図書確認 | JASS8・仕様書の指定 | 3面接着指定ならノンワーキング確定 |
| グレーゾーン対応 | 不同沈下リスク・PC工法 | 高伸長タイプの3面接着シーリングを選択 |
現場判断に迷うときは「ノンワーキングだとしても高弾性タイプを選ぶ」という選択が、品質リスクを下げるうえで現実的な対策になります。これは覚えておけばOKです。
東京防水(一級建築士 佐藤静)|ワーキングジョイント・ノンワーキングジョイントの解説と2面・3面接着の違い

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