

建築現場でジグソーを評価するとき、まず「ストローク数(1分あたりの上下回数)」と「ストローク幅(上下の移動量)」の組み合わせで、切断スピードの素性が決まります。目安として、ストローク数が高い機種ほど切断は速くなりやすい一方、材料や刃の条件が合わないと焼け・バリ・刃ブレが出やすくなるため、可変速が実用上重要です。ストローク数を調整できるジグソーは、材料に合わせて切断スピードを変えられる点が機能として説明されています。
また「オービタル機構(刃が前後にも動く)」は、木材系の切断速度を押し上げる反面、切断面が荒れたり、曲線・狙い寸法では暴れやすくなるので、仕上げが必要な部材ほど“オービタル弱め〜なし”が基本になります。実際、オービタルは段数(なし+1〜3など)を備える機種があり、切断対象に応じて切り替える前提の機構です。
パナソニックの代表的な18V充電ジグソーEZ4550は、オービタル機構が「4段(なし・1〜3)」で、ストローク数は「0〜2,500回/分」、ストローク幅は「25mm」と仕様に明記されています。数値としては、厚物の木材を「速く切る寄り」の設計で、現場の開口や欠き込みでスピードを作りやすいレンジです。
スペック表の「最大切断能力」は、現場の“切れる/切れない”の境界線ではなく、“条件が整えば到達する上限”として読むのが安全です。たとえば同じ厚みでも、材料の硬さ、固定剛性、刃の山数、切断長(連続距離)で負荷が変わり、体感は別物になります。
EZ4550の最大切断能力は、純正刃の場合として「木材65mm」「軟鋼板6mm」「ステンレス1mm未満」「アルミ10mm」と示されています。建築従事者の目線では、木材65mmは“2×材〜厚めの集成材手前”のレンジまで狙える一方、直線の精度を要求するなら、ジグソー単体で無理をせず丸ノコ・卓上へ逃がす判断も同時に必要です。
金属系はさらに「刃の消耗」と「熱」が評価の分かれ道になります。ステンレスは特に熱を持つと刃先が死にやすく、薄板でも切断距離が伸びるほど条件が厳しくなるため、可変速で回し過ぎない・切削油や冷却を挟む・刃をケチらない、といった運用込みで評価すべきです。
加えて、EZ4550は「能力(目安・フル充電で)」として、木工(オービタル3)で複合材を約30m、金工(オービタルなし)で鋼板t1.6mmを約10mなど、距離ベースの目安が公開されています。建築現場では“何カ所切ったら電池が終わるか”が段取りに直結するので、この距離表記は意外に役立ちます。
ジグソーの評価は、本体よりも「刃の選定ミス」で落ちるケースが多いです。まずシャンクは、現在の主流がTシャンクで、ワンタッチ交換の機種が多く、対応ブレードも豊富という前提があります。一方でUシャンクは旧式寄りで、ネジ止めや対応機種が限られることが多く、現場での調達性も落ちやすいので、既存の刃資産がUシャンク中心の場合は要注意です。
シャンクだけでなく「刃厚」も地味に効きます。EZ4550は取付可能刃厚が「0.8〜1.6mm」とされており、ここから外れる刃は物理的に付かない(または保持が不安定)可能性があります。建築従事者がやりがちな失敗は、材料に合わせた山数(ピッチ)ばかり見て、刃厚・背の高さ・剛性の違いを見落として直進性が出ないことです。
直線を狙うなら、同じ“木工用”でも「厚め・剛性高め・山数控えめ」の刃のほうが刃が逃げにくく、結果として“押さなくても進む”状態を作りやすいです。逆に曲線や小回りは、刃幅が細いタイプや曲線用の刃で取り回しを優先し、仕上げ代を見込む運用が安全です。
参考:ジグソーのブレードはTシャンクが主流で、Uシャンクは少数派になりつつあること、またTシャンクは取り付けが簡単で一般的とされる点は工具ガイドでも説明されています。
【ブレード規格(Tシャンク/Uシャンク)の基礎がまとまっている】
https://jp.rs-online.com/web/content/discovery/ideas-and-advice/jigsaw-tool-guide
ジグソーで「まっすぐ切れない」「断面が斜めになる」という不満は、機種評価に見えて、実際は段取りと調整の問題が混ざっています。典型例は、ベースの角度調整がズレていて“刃と材料が直角になっていない”状態で切ってしまうケースです。角度調整機構を持つジグソーは便利ですが、現場で一度でも傾斜切りをやると、戻し忘れが起きやすいので、作業前の確認をルール化すると評価が安定します。
次に多いのが「強く押し進めすぎ」です。ジグソーは押すほど速く切れる道具ではなく、押すと刃がたわみ、ラインが曲がったり断面が斜めになったりします。真っ直ぐ切りたいときほど、刃の切削に任せて、手は“ブレないように添える”くらいが結果的に速いです。
材料固定も重要で、固定が甘いと振動で材料が逃げ、墨線がズレ、刃に横荷重が入りやすくなります。特に床材・薄板・長尺材は、クランプ位置が悪いと切断部が共振して、精度も刃持ちも一気に落ちるので、固定点を増やすだけで評価が上がることが多いです。
さらに一歩踏み込むなら、直進性を稼ぐための“治具”を使う考え方があります。ベース下に治具を取り付けて刃の横ブレを抑えることで、直角の切断面を狙いやすくなる、という実例も報告されています。既製品の平行ガイドが弱い場合でも、作業内容が決まっている現場なら治具のほうが確実で、結果として「この機種は精度が出る」という評価に変わります。
【まっすぐ切れない原因(角度調整・押し込み・固定・治具)の整理が詳しい】
https://toyonoshin.com/jigsaw-straight-cut-error/
検索上位のレビューは「切れる・パワー・重さ」中心になりがちですが、建築従事者にとっては“粉じんと姿勢”が長期的な評価を決めます。切断時の切り粉が顔側に飛ぶと、保護メガネをしていても視界が汚れ、結果として姿勢が崩れて危険側に寄ります。
この観点でパナソニックEZ4550を見ると、「振動3軸合成値」が仕様として公開されている点が、意外に重要です。振動は手の疲労だけでなく、切断ラインの微ブレ→無意識の修正→刃の横荷重、という悪循環の起点になりやすく、長時間作業では“切断性能の体感”そのものを変えます。EZ4550は振動3軸合成値が「4.0m/s2」とされており、カタログ上でも振動を指標として扱っているのが特徴です。
また、現場適性は「低い位置で構えられるか」「片手保持が必要な姿勢があるか」で変わります。床に置いた材料の開口、既設の造作材の欠き込み、天井際の切り欠きなど、ジグソーは“姿勢が苦しい状態でも切る”場面が多いので、低重心・取り回し・カバー類の有無が、カット精度より先に安全性へ効きます。メーカーのユーザーレポートでも「軽量」「低重心・低振動」や、切り粉が飛び散りにくいカバー付といった方向性が示されています。
【メーカーの仕様(ストローク数・ストローク幅・オービタル・振動値・切断目安距離)が確認できる】
https://www2.panasonic.biz/jp/densetsu/powertool/recommend/ez4550/specification.html
【メーカーのユーザーレポート(低重心・低振動、カバー等の現場視点)が読める】
https://www2.panasonic.biz/jp/densetsu/powertool/recommend/ez4550/report.html