

ポリマーセメントスラリー材は、合成ゴムラテックスなどのポリマーとセメントを組み合わせた注入・充填・接着用材料で、外壁モルタル仕上げの浮き補修に広く使われています。
外壁のモルタル仕上げで浮き間隙幅が0.8mm以上の場合、アンカーピンで浮き部を固定した後、ポリマーセメントスラリー材を注入して空隙を充填し、仕上げモルタルと躯体を一体化させる工法が代表的です。
ポリマーセメントスラリー材は、ベースがセメントスラリーであるため流動性と自己充填性に優れ、微細な隙間にも入り込みやすいのが特徴です。sekoukanri-search+1
ポリマーによる改質効果で付着力や曲げ強度、防水性が向上し、単純なセメントスラリーに比べて外壁補修用として信頼性が高い点が、改修現場で選ばれやすい理由です。soc-tec+1
用途としては、外壁モルタル浮き補修のほか、ひび割れ部への注入、コンクリートやモルタルの欠損部周りの下地強化、タイル下地の補強など、注入・充填・接着を兼ねた材料として使われます。j-cma+1
特に微細なひび割れや湿潤箇所にも注入可能とされる無収縮ポリマーセメント系スラリーは、レックス工法などのコンクリート補修システムの構成材料としても採用されており、構造物の長寿命化ニーズに応えています。
参考)https://www.soc-tec.com/search/download_zip/REX_general_%20catalog171020.pdf
施工時のポイントとして、外壁浮き補修ではアンカーピンの配置と穿孔深さ、注入順序を誤るとスラリー材が偏在し、十分な充填ができないリスクがあります。
参考)リフォーム事例集(外装リフォーム) | 一般社団法人 日本左…
そのため、診断時に赤外線や打診で浮き範囲を的確に把握し、パターン化したピン配置図を作ってからポリマーセメントスラリー材の数量や配管ルートを決めると、ムラの少ない補強がしやすくなります。
日本コンクリート工学会や業界団体が示す補修標準では、セメント系注入材に関する性能項目として、流動性、ブリーディング、膨張率、圧縮・引張強度などが挙げられ、ポリマーセメントスラリー材もこうした観点で性能評価されるのが一般的です。j-cma+1
特に既存建築物の改修では、施工後の収縮ひび割れを抑えるため、無収縮性やポリマーによる付着力向上が重視され、材料選定時にカタログで確認しておくことが重要です。
外壁浮き補修(セメントスラリー工法とポリマーセメントスラリー注入)の概要解説
リフォーム事例集(外装リフォーム) | 一般社団法人 日本左…
防水分野では、ポリマーセメントスラリー材は「防水下地の補強・調整」に位置付けられるケースが多く、直接の仕上げ防水層とは別に、下地一体化や欠損充填に使われます。
一方、弾性スラリー防水材(例:バンデックスBB75Eなど)は、湿潤下地に施工でき、伸縮性と亀裂追従性・防水性・蒸気透過性を兼ね備えた塗膜防水材として屋上や水槽に適用されるため、役割が明確に異なります。
弾性スラリー防水材は「表層の連続防水層」を形成するのに対し、ポリマーセメントスラリー材はその直下にある躯体との付着を高めたり、空隙を埋めたりすることで、浮き・剥離による防水層の二次損傷を抑える役目です。nissaren+1
特に通気緩衝工法などでは、ポリマーセメント系防水材が仕上げ層として使われる一方、下地側でポリマーセメントモルタルやスラリー材を併用して、段差・欠損・浮きを補修してから通気シートや防水層を構成する事例が増えています。dainichikasei+1
防水リニューアルの現場では、既存防水層を全撤去せず、部分撤去+ポリマーセメントスラリー材で浮き部を接着補修し、段差をポリマーセメントモルタルでならしたうえで、ポリマーセメント系塗膜防水材を被せる「ハイブリッド的な使い方」も見られます。dainichikasei+2
このように、ポリマーセメントスラリー材は防水材そのものというより、「防水層を長持ちさせるための下地補修・補強材」として機能する点を押さえておくと、材料手配や見積説明がスムーズになります。dainichikasei+1
また、弾性スラリー防水材は蒸気透過性を持つため、躯体内の水分をある程度逃がしながら防水機能を果たすのに対し、ポリマーセメントスラリー材は密実化・付着力向上を目的とした材料であり、蒸気の抜け方は別途通気層やベント機構で確保する必要があります。mono.ipros+1
特に既存屋上の改修では、下地側でポリマーセメントスラリー材を使って浮き部を押さえすぎると、内部水分の逃げ場が変わるため、通気緩衝シートや脱気筒の配置を含めた「全体の湿気計画」を設計側と共有しておくと安全です。mono.ipros+1
弾性スラリー防水材「バンデックス・BB75E」などの特徴(ポリマーセメント系防水材との関係の参考)
https://mono.ipros.com/product/detail/2000519474/
ポリマーセメントスラリー材を最大限活かすには、下地処理と「どこまでをスラリー材で行い、どこからをポリマーセメントモルタルで行うか」の切り分けが重要です。
マノールのカチオンセットやカチオンパウダー、エスケー化研のミラクカチオンフィラーなど、JIS A 6916(下地調整塗材)C-1/C-2規格に適合したポリマーセメントモルタルは、下地調整用として広く用いられています。
一般に、0.8mm以上の浮き・空隙の補修など「内部の空洞を埋める」目的ではポリマーセメントスラリー材が適し、0〜5mm程度の薄塗り補修や不陸調整、ピン跡の埋め戻しにはポリマーセメントモルタルやカチオンフィラー系が使われます。sk-kaken+2
スラリー材は流動性が高く自己充填性がある反面、厚塗りや仕上げ面の整形には向きにくいため、注入後に余剰が出た部分や表面の仕上げは別途モルタル系で対応する二段構えが現実的です。sekoukanri-search+1
JIS A 6916 C-1/C-2適合のポリマーセメントモルタルは、下地調整材として付着強度や中性化抑制性能が規定されており、タイル張り替えや再塗装前の下地調整に使うことで、仕上げ材の耐久性を底上げできます。manol+1
一方、ポリマーセメントスラリー材は「注入・充填・接着用」と明記され、ラックや空隙に注入して補強する用途に特化しているため、カタログ段階で用途区分を確認しておくと、誤使用を避けられます。
参考)https://www.j-cma.jp/j-cma-pics/10002258.pdf
現場でありがちな誤りとして、浮きが大きいのにスラリー材を使わず、ポリマーセメントモルタルだけで表層を押さえてしまうケースがあり、内部の空隙が残って凍害や再浮きの原因になるリスクがあります。soc-tec+1
逆に、細かな不陸まで全てポリマーセメントスラリー材で対応しようとすると、材料コストが上がるうえに仕上げ調整の手間が増えるため、「内部はスラリー材、表層はJIS適合モルタル」という役割分担を標準化しておくと合理的です。manol+2
下地調整用ポリマーセメントモルタル(カチオンセット・カチオンフィラー等)とJIS A 6916規格の概要
http://www.manol.co.jp/categories/cat05/
スラリーの基本特性として、流動性・自己充填性・セルフレベリング性が挙げられ、ポリマーセメントスラリー材もこの性質を活かして狭隘部の充填や隙間の埋戻しに使われます。
フライアッシュなどの球形粒子を配合したスラリーはベアリング効果により流動性が高く、押し込み作業を減らしながら空隙を埋められるため、複雑な配筋部や配管まわりの補強材としても有効です。
一方で、流動性が高いほど材料分離やブリーディングのリスクもあるため、ポリマーセメントスラリー材では水量をシビアに管理し、メーカー指定の水/粉体比を守ることが前提になります。j-cma+1
現場の「流れやすい方が打ちやすい」という感覚で水を足すと、付着強度や圧縮強度が不足し、せっかくのポリマーの性能が活かされないため、練混ぜ時の水量管理を第三者検査のチェック項目に入れておく価値があります。j-cma+1
施工性の面では、ポンプ圧送性に優れたポリマーセメントモルタル・スラリー材もあり、長距離配管が必要なトンネルや下水道、橋梁裏側などの補修で採用が進んでいます。
流動性を活かしながら材料分離を抑える製品は、施工後1時間程度で実用強度に達する超速硬タイプもあり、夜間工事や列車・交通規制下の短時間施工に対応できるのが特徴です。
段取り面では、注入開始位置とエア抜き位置の設定が重要で、最下点から注入し最上点でエアと余剰スラリーを抜くルートを明確にしておくことで、空気巻き込みや未充填を抑えられます。nissaren+1
さらに、躯体が湿潤状態でも施工可能なセメント系ポリマー材料の利点を生かすため、事前散水は「濡れ過ぎず、乾燥もし過ぎない」状態を狙い、表面に水が溜まらない程度のSSD(飽和面乾状態)を意識すると付着性能が安定します。mono.ipros+1
建設業におけるスラリーの特性(流動性・自己充填性・セルフレベリング性)の解説
https://www.sekoukanri-search.com/learn/22845/
長期保全の観点では、ポリマーセメントスラリー材を「単なる埋め戻し材」と見なすのではなく、補修履歴と組み合わせて管理することで、次回診断の精度を高めることができます。
例えば、外壁浮き補修でポリマーセメントスラリー材を使用した範囲を平面図に記録し、材料ロットや配合、水量、施工時の湿度・温度をメモしておくと、再診断時に「同じ位置が再浮きしているのか」「他の要因なのか」を切り分けやすくなります。
また、ポリマーセメントスラリー材による補強範囲は、将来の赤外線調査において熱応答が変わる可能性があるため、どのエリアにどの材料を注入したかを図面上で可視化しておくことが有効です。nissaren+1
診断結果と補修履歴が連動していると、次回の改修工事では「既にスラリー補強済みのエリアは表層補修中心、新規浮きエリアはスラリー注入を含めた補強」といったメリハリのある設計ができます。nissaren+1
独自の視点として、ポリマーセメントスラリー材の採用を「構造体のリニューアル投資」と捉え、ライフサイクルコストの試算に組み込むアプローチも考えられます。dainichikasei+1
同じ外壁改修でも、表層塗替えだけのケースと、ポリマーセメントスラリー材+ポリマーセメントモルタル+高耐久塗膜防水まで行うケースでは、再改修までの周期が変わるため、長期的にはトータルコストを下げられる可能性があります。dainichikasei+1
さらに、最近は地盤改良や狭隘部のグラウト材としてもポリマーセメントスラリーが活用されており、地中構造物の沈下抑制や地下水の移動抑制にも役立つとされています。i-const+1
建築躯体だけでなく、周辺地盤や外構の挙動まで含めて「どこに何を注入しているか」を一元的に管理すれば、将来の増築・解体・地中障害調査においても、施工者や発注者双方にとって有用な情報資産となります。i-const+1
ポリマーセメント系材料を用いたレックス工法のカタログ(無収縮ポリマーセメントグラウトやスラリーの活用イメージの参考)
https://www.soc-tec.com/search/download_zip/REX_general_%20catalog171020.pdf