

ロードセルは外見が金属の塊でも、内部には1μV以下の信号を検出する精密回路が入っている。
ロードセルの中心にあるのは「ひずみゲージ」と呼ばれるセンサです。絶縁シートの上にニクロム合金などを素材とするフィラメント状の導電体が貼り付けられた、名刺の1/4ほどのサイズの非常に薄い部品です。
このひずみゲージは、引き伸ばされると電気抵抗が増え、縮むと電気抵抗が減るという性質を持っています。導電体が引き伸ばされると「長くなり、かつ細くなる」ので、2つの効果が重なって抵抗値が上昇します。この変化の割合を「ゲージファクタ(ゲージ率)」と呼び、一般的なひずみゲージでは約2.0〜2.1程度です。つまり、ひずみの約2倍の割合で抵抗値が変わるということですね。
ひずみゲージが貼り付けられる金属部品は「起歪体(きわいたい)」と呼ばれ、アルミ合金や合金鋼などで作られています。この起歪体に力を加えると微小に変形し、そこに貼られたひずみゲージも一緒に伸び縮みして抵抗値が変化します。起歪体の形状はベンディング型(片持ち梁型)、コラム型(円柱型)、S字型、ダイアフラム型などさまざまで、測定する荷重の方向や大きさによって使い分けられます。
建築業で重要なのは、これが「非接触・非破壊」で荷重を検出できる点です。可動部品がなく、ひずみゲージが起歪体に接着されているだけのシンプルな構造であるため、保守性が高く、長期にわたって安定した計測が可能になります。
ロードセルの原理と使用方法(ユニパルス社・技術資料):ひずみゲージの理論式やゲージファクタの詳細が解説されています。
ひずみゲージ1枚が検出する抵抗変化は非常に微小です。例えばゲージ抵抗350Ωのゲージで1000マイクロひずみ(ε×10⁻⁶)が発生した場合、抵抗変化はわずか約0.7Ωにすぎません。これをそのまま計測しようとすると、ノイズや温度変化に負けてしまいます。
そこで使われるのが「ホイートストンブリッジ回路」です。4枚のひずみゲージを菱形のブリッジ回路に組み込み、対角線上に励起電圧をかけると、もう一方の対角線から荷重に比例した出力電圧が取り出せます。4枚のゲージのうち、荷重がかかると抵抗が増えるゲージと減るゲージを交互に配置することで、出力感度を最大4倍に高められます。これは原理が巧妙ですね。
出力感度の単位はmV/V(ミリボルト毎ボルト)で表されます。例えば「2mV/V」と仕様に書かれているロードセルに励起電圧10Vを印加すると、定格荷重時の出力は20mVです。重量計のサイズにすると、20mVという電圧は乾電池1本(1.5V)の約1/75しかありません。それほど微弱な信号を正確に処理するため、高精度のアンプ(増幅器)が欠かせません。
また、ホイートストンブリッジには温度補償の効果もあります。ゲージが温度変化で抵抗が変化しても、4枚が同じ条件にあれば変化分が打ち消し合い、誤差が最小化される仕組みです。建築現場のような温度変化が大きい屋外環境でも精度を保てる理由がここにあります。
ロードセルの測定原理(A&D社・技術資料):ホイートストンブリッジの図解と計算式が詳しく記載されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ひずみゲージ抵抗値 | 120Ω / 350Ω / 1,000Ωなど |
| ゲージファクタ | 約2.0〜2.1 |
| 出力感度の単位 | mV/V |
| 標準的な出力感度 | 1.5〜3mV/V |
| 精度範囲 | ±0.1%〜±1%(フルスケール) |
建築現場でロードセルが最もよく使われる場面の一つが「杭の載荷試験」です。これは基礎杭が設計どおりの支持力を持つかどうかを現地で確認するための試験で、建物の安全性を直接左右する重要な工程です。
試験の手順は、杭頭部に油圧ジャッキを設置し、反力装置によって地盤へ鉛直方向の荷重を加えながら、ロードセルで荷重を計測、変位計で沈下量をミリ単位で測定するというものです。地盤工学会の規格(JGS 1521)では「ロードセルを使用する場合は精度1%の測定が可能」と明記されており、油圧ジャッキの圧力計よりも信頼性の高い測定手段として位置づけられています。荷重計の容量は試験最大荷重の1.2倍〜5倍程度が望ましいとされています。
また、平板載荷試験(地盤の支持力を確認する試験)でも同様にロードセルが使われます。直径30cmの載荷板に段階的に荷重をかけながら沈下量を測定するこの試験は、地耐力を直接確認できる国土交通省が認める基本的な地盤調査法です。
さらに、足場・仮設架台の荷重管理や、揚重作業時のクレーン吊り荷重の計測にもロードセルが活用されます。作業中の過積載を防ぎ、重大事故を未然に防ぐ用途では、S字型やリング型(リンク式)のロードセルが重宝されています。これは使えそうですね。
平板載荷試験方法(地盤工学会・JGS 1521):ロードセルの精度要件(1%)や荷重計容量の基準が記載されている公式規格です。
ロードセルは測定する荷重の方向と大きさ、設置スペースによって最適な形状が異なります。間違った種類を選ぶと精度が大幅に落ちるため、選定は慎重に行う必要があります。形状別の特徴を整理しておきましょう。
ビーム型は片持ち梁のようにたわんで荷重を計測するタイプで、高精度が特徴です。1トン程度までの荷重域に適しており、はかりや台秤の内部部品として最もよく使われています。建築現場の計量管理(コンクリートや資材の秤量)に向いています。
コラム型は円柱形のボディに圧縮荷重をかけて測定するタイプで、大容量計測に強いのが特徴です。数十トンから数百トンクラスの荷重にも対応し、杭載荷試験や大型構造物の荷重試験で広く使われています。起歪体の上下から均等に荷重をかけることが精度の鍵で、偏心荷重が発生しないよう設置面の水平・平滑化が必須条件です。
S字型は圧縮・引張の両方向に対応できるタイプで、吊り荷重の計測やワイヤーロープに組み込んでの張力計測に活用されます。クレーン作業時の荷重確認に使う際はこのタイプが適しています。
選定時にもう一つ重要なのが「定格容量と許容過負荷」のバランスです。最大計測荷重の定格容量(RC)に対し、破壊限界荷重(BL)は通常300〜500%RC、許容過負荷(SAL)は120〜150%RCに設定されています。建築現場のように衝撃荷重が発生しやすい環境では、実際の荷重の1.5〜2倍程度の定格容量を持つ製品を選ぶのが原則です。
ロードセルは正しく設置・運用しなければ、原理上は高精度であっても現場では誤差が拡大してしまいます。これが条件です。
設置面の水平・平滑化が最優先です。ロードセルは振動の少ない、凹凸のない平らな面に置く必要があります。設置面や負荷を受ける側に十分な剛性と平面精度がないと、偏心荷重がかかりやすく測定誤差の原因になります。特にコラム型では上下の接触面が均等に当たっているかどうかが重要で、わずかな傾きでも出力値に影響します。
過負荷は故障原因の第1位です。一瞬でも定格を超える衝撃が加わると、起歪体に永久変形が生じ、見た目は正常でも測定値がズレ続けます。ゼロバランス(無負荷時の出力)が通常値から10〜20%以上ズレている場合は、過負荷による損傷が疑われます。現場での落下衝撃や荷役作業中の急激な荷重変動には十分な注意が必要です。
ケーブルの断線も多発する故障原因の一つです。設置時だけでなく稼働中もケーブルが引っ張られないよう、ルーティングと固定が欠かせません。建設現場ではケーブルが他の資材や重機に踏まれたり引っかかったりするリスクが高いため、可動域が大きい箇所にはロボットケーブル(繰り返し屈曲に強い特殊ケーブル)の採用が望ましいです。
場所によって重力加速度が異なるという点も見落とされがちです。国土地理院のデータによると、稚内と鹿児島では同じ1kgの分銅を計測すると約1.2gの差が生じます。これは地域間で重力加速度(g値)が異なるためで、精密な質量計測では現地キャリブレーションが必須になります。
ロードセルを永くお使いいただくために(ユニパルス社):過負荷による劣化メカニズムと防止策について実践的に解説されています。
現場での精度管理として、取り扱いの際は以下の点を確認する習慣をつけることが重要です。
- 🔧 設置面の確認:接触面が平滑か、傾きがないかを水準器で確認する
- 📏 荷重方向の確認:設計された荷重軸方向に正しく力がかかっているかを確認する
- 🔌 ケーブルの配線状態:引っ張り・踏みつけのリスクがない経路に固定する
- 📊 ゼロバランス確認:使用前に無負荷時の出力値を確認し、仕様値と照合する
- 🌡️ 温度環境の把握:使用温度範囲(一般的に-10〜+40℃程度)を超えていないか確認する
ロードセルの精度を示す主な指標には「非直線性(入出力の線形からのズレ)」「ヒステリシス(負荷をかけるときと戻すときの差)」「クリープ(一定荷重下での時間的な出力変化)」があります。これらはいずれも定格容量に対するパーセント(%RC や %RO)で表され、高精度品では0.1%以下に抑えられています。建築や土木の計測では通常±0.5%程度の精度で実用上は問題ありませんが、杭の静的載荷試験など信頼性が問われる場面では±0.1%クラスの製品を選ぶと安心です。
ロードセルとは?原理や仕組みを解説(精神商事・計測センサ入門):非直線性・ヒステリシス・クリープなど精度指標の詳しい説明が確認できます。

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