流量計(オリフィス式)の仕組みと選定・設置の基本知識

流量計(オリフィス式)の仕組みと選定・設置の基本知識

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流量計(オリフィス式)の原理と選定・設置・保守のポイント

上流側の直管がわずか10D(配管内径の10倍)しかなければ、流量の測定値が最大で数十%もズレます。


📋 この記事の3つのポイント
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仕組み:差圧で流量を測る

オリフィス式流量計はオリフィスプレートで流れを絞り、前後の圧力差(差圧)からベルヌーイの定理を使って流量を算出します。可動部ゼロのシンプルな構造です。

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設置:直管長の確保が命

上流側に内径の5〜80倍、下流側に4〜8倍の直管長が必要。エルボやバルブの直後に設置すると測定値が大きく乱れ、設備管理上の判断ミスにつながります。

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保守:導圧管と摩耗への対処

導圧管の詰まりや、オリフィスエッジの摩耗が誤差の主な原因。定期的な清掃・点検と、流体条件にあった材質選定で長期精度を維持できます。


流量計(オリフィス式)の基本原理:差圧とベルヌーイの定理


オリフィス式流量計は、配管の途中に「オリフィスプレート」と呼ばれる穴あき円盤を挿入し、流体の流れを部分的に絞る構造をしています。流れが絞られた箇所では流速が上がり、その分だけ圧力が下がります。この現象こそがベルヌーイの定理の核心です。


ベルヌーイの定理は、「流体の持つ運動エネルギー・圧力エネルギー・位置エネルギーの総和は一定である」という流体力学基本法則です。つまり絞り前後の圧力差を測れば、そこから流速を求め、最終的に流量を計算できます。


実際の計算式は、絞り比(β)と流量係数(C)を含む以下のかたちになります。


$$Q = C \frac{A_2}{\sqrt{1 - \beta^4}} \times \sqrt{\frac{2(p_1 - p_2)}{\rho}}$$


ここで Q は流量(m³/s)、C は流量係数(0.61〜0.98程度)、β は絞り直径比(d/D)、p₁・p₂ は絞り前後の圧力、ρ は流体密度です。これが基本です。


重要なのは「差圧は流量の2乗に比例する」という関係です。流量が最大値の20%まで低下すると、差圧はフルスケールのわずか4%になります。これはつまり、低流量域では差圧がほぼ検出できなくなるという意味です。そのため、オリフィス式流量計の実質的な測定レンジは「フルスケールの20〜100%」が目安となります。


測定範囲が狭い点は、知らないと損します。設計流量の20%以下で運転することが多い設備では、実際には測定できていないのに数値が表示され続けるケースがあります。流量が定格の1/5以下になる場面では別タイプとの組み合わせや、測定レンジの再設計を検討することが条件です。


差圧式(オリフィス)流量計の原理と特徴|KEYENCE(キーエンス)


流量計(オリフィス式)の種類と差圧式流量計との比較

差圧式流量計には、大きく分けて3種類あります。オリフィス流量計・フローノズル流量計・ベンチュリ管流量計です。いずれも「絞りで差圧を生じさせて流量を測る」という原理は共通しています。


まず、オリフィス流量計は最もシンプルな構造で、製作コストが安く、取り付け・交換も容易です。建築設備や空調配管など、幅広い用途に使われています。一方、固形物や異物を含む流体にはエッジが摩耗するため不向きで、圧力損失(圧損)も他の2種と比べて大きい点が注意点です。


フローノズル流量計は、ノズル形状がなめらかなため耐久性が高く、高温・高圧のボイラ給水配管や蒸気配管に採用されます。オリフィスより圧損が小さい点が利点ですが、製作コストが高くなります。


ベンチュリ管流量計は、流路がゆるやかに絞られ再び広がる形状をしており、3種の中で最も圧損が小さいです。固形物を含む流体でも使用可能で、水処理プラントなどに向いています。ただし機器が大型で高価なため、スペースの制約がある既設配管への後付けは現実的に難しいケースもあります。


以下に3種を簡単に整理します。


種類 コスト 圧力損失 耐固形物 主な用途
オリフィス 低い 大きい 弱い 一般建築・空調配管
フローノズル 中程度 中程度 やや強い 蒸気・ボイラ給水配管
ベンチュリ管 高い 小さい 強い 水処理・大口径配管


建築設備の現場では、まずオリフィス流量計が検討対象になります。これが原則です。価格と保守のしやすさを優先するなら、多くの場面でオリフィスが第一候補となります。ただし蒸気や高温流体の場合は、フローノズルへの切り替えを視野に入れた選定が大切です。


また、オリフィスプレートの材質は一般的にSUS316(ステンレス鋼)が使われます。流体の性質が腐食性の場合や高温環境下では、材質の選定ミスがプレートの早期劣化につながり、計測誤差が拡大します。流体条件と材質の照合は、選定時に必ず確認することが条件です。


差圧式流量計の種類と選定基準について詳しく解説|昭和機器計装株式会社


流量計(オリフィス式)の設置条件:直管長と配管レイアウトの落とし穴

オリフィス式流量計で測定精度を確保するうえで、最も現場で見落とされやすいのが「直管長の確保」です。


オリフィスプレートの前後には、流れが整流された状態の配管区間が必要です。エルボ・チーズ・バルブなどの後では流体が旋回したり偏った速度分布をもったりするため、そのまま測定すると誤差が大きく出ます。


必要な直管長は以下の通りです(配管内径Dを基準とした倍数)。


上流側の障害物 必要直管長(上流) 下流側直管長
90°エルボ1個 約10〜20D 4〜8D
90°エルボ連続(同一平面) 約20〜40D 4〜8D
異なる平面のエルボ連続 約40〜80D 4〜8D
バルブ(全開)直後 約12D以上 4〜8D


たとえば、配管内径が100mm(呼び径100A相当)で異なる平面のエルボが連続する場合、上流側の直管長は最大で8mにもなります。これはA4用紙30枚以上を並べた長さに匹敵します。意外ですね。


この直管長を確保できないまま設置してしまうと、流量値に数〜数十%単位の誤差が常態化します。エネルギー管理の基準に使っているデータが実態と大きくズレるリスクがあり、省エネ評価や設備の運転管理に直接影響します。痛いですね。


スペースが制限される既設建物の配管改修では、直管長の確保が構造上どうしても難しい場面があります。そのような場合は、整流板(フロー・コンディショナー)の挿入で必要直管長を短縮する方法もあります。ただし整流板自体にも追加の圧力損失が生じるため、設備全体のポンプ動力への影響も合わせて確認が必要です。


また、設置方向についても注意が必要です。水平配管への設置が最も精度が出やすいとされていますが、垂直配管でも測定誤差の範囲内に収まるケースが多くあります。ただし垂直配管の場合、液体の流れ方向(上向き・下向き)によって気泡の挙動が変わり、導圧管の引き出し方向を変える必要があります。


配管と流量計の設置位置・直管長についての解説|KEYENCE(キーエンス)


流量計(オリフィス式)の圧力損失とエネルギーコストへの影響

オリフィス式流量計の代表的な弱点が「圧力損失が大きい」という点です。しかしその"大きさ"を具体的に意識している現場担当者は少ないかもしれません。


オリフィスプレートによって絞られた流れは、ベルヌーイの定理どおりに圧力が一部回復しますが、流れの剥離や乱流による不可逆的なエネルギー損失が必ず生じます。この損失は絞り比β(オリフィス径÷配管径)が小さいほど大きくなります。


同じ原理を使うフローノズルやベンチュリ管と比べて、オリフィス式の永久圧力損失は大きく、特に絞り比が小さい設計では、他方式の2〜3倍の損失が発生することもあります。ベルヌーイの定理で説明される圧力の一時的な低下とは別に、「元に戻らない損失」が継続して発生しているわけです。


この圧力損失は、ポンプの揚程(動力)に直接上乗せされます。たとえば、流量計1台あたりの永久圧力損失が10kPaだったとしても、年間を通じてポンプを稼働させ続ければ、その分の電力消費が積み重なります。大口径・高流量の配管系ほど、圧力損失は運用コストに響いてきます。これは使えそうです。


省エネの観点から配管系の改修を行う際は、流量計自体の圧力損失も見直し対象に含めることが重要です。特に口径が大きくなると、相対的にオリフィスよりも渦流量計や超音波流量計の方がライフサイクルコストで有利になるケースも増えてきます。


ただし、他の方式への変更には機器コストの増加や配管改造工事が伴います。「圧損削減による省エネ効果」と「変更にかかるコスト・工事費」を比較したうえで判断することが基本です。


圧力損失の最小化を目指すなら、絞り比βを0.6〜0.7程度(標準範囲は0.25〜0.75)の適切な値に設計することも有効です。βが小さすぎると圧損が増大し、βが大きすぎると差圧が小さくなって測定精度が低下するトレードオフがあります。設計段階でのバランス調整がここでは条件です。


流量計(オリフィス式)の保守・トラブルと実務的な対処法

オリフィス式流量計は「可動部がない=メンテナンスフリーに近い」と思われがちです。しかし実際には、放置しておくと測定精度が静かに悪化していく落とし穴があります。


主なトラブルと原因は、大きく2つに分かれます。1つ目は「オリフィスエッジの摩耗」、2つ目は「導圧管の詰まり・閉塞」です。


オリフィスプレートの内径先端(エッジ部)は、流体が通過するたびに少しずつ削られます。鋭いエッジが丸みを帯びると、流量係数Cが変化し、計算式から求める流量値がズレ始めます。固形物を含む流体や、高流速環境では摩耗速度が速くなります。エッジの摩耗は目視でなかなか確認しにくいため、定期的なプレートの取り出し検査が重要です。


導圧管の詰まりは、もう一つの代表的な問題です。オリフィスから差圧計・伝送器に圧力を伝えるための細い配管(導圧管)が詰まると、差圧を正確に検出できなくなります。液体中のスケール・錆・スラリー成分が堆積することで生じます。また、冬季の屋外設置や非断熱環境では、導圧管内の液体が凍結して閉塞するリスクもあります。凍結対策としてヒートトレースが有効ですが、施工コストが増すため設計時点から考慮することが大切です。


現場ですぐ実践できる保守のポイントは次の通りです。


  • 🔍 定期的にオリフィスプレートを取り外して、エッジの摩耗状態を目視確認する
  • 🔧 導圧管のドレンバルブから定期的にドレン抜きを行い、詰まりを予防する
  • 🌡️ 屋外・低温環境では導圧管に断熱材または電気ヒートトレースを施工する
  • 📊 差圧の長期トレンドを記録し、急な変動があれば詰まりや摩耗を疑う


差圧伝送器の読み値が急に0に近づいたり、逆に異常に高くなったりした場合は、流量の変化ではなく導圧管の詰まりが原因であることが多いです。つまり「流量計が壊れた」ではなく「導圧管が詰まっている」と最初に疑うのが原則です。


横河電機の技術レポートによると、差圧伝送器の導圧管詰まりは圧力の伝播時定数の変化として検出できるという研究成果もあります。最新の差圧伝送器の中には、こうした詰まりを自己診断できる機能を備えたものも登場しています。設備の重要度が高い計測点では、こうした高機能製品の採用も選択肢になります。


差圧伝送器の導圧管詰まり診断に関する技術レポート|横河電機(PDF)


差圧式流量計のトラブルと対策|KEYENCE(キーエンス)




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