サーモグラフィー無料サイトで建築現場の診断を効率化する方法

サーモグラフィー無料サイトで建築現場の診断を効率化する方法

記事内に広告を含む場合があります。

サーモグラフィー無料サイトとツール活用法

この記事で分かること
📱
無料解析ソフト

FLIR ToolsやHIKMICRO Analyzerなど、プロ仕様の無料ソフトウェアで熱画像を解析できます

🏗️
建築現場での活用

雨漏り調査、断熱性能診断、設備点検に無料ツールを効果的に使用する方法を紹介

⚠️
注意点と対策

測定精度を高めるための設定方法や、よくある失敗を避けるコツを解説

建築業従事者にとって、サーモグラフィーは雨漏り検査や断熱性能診断に欠かせないツールとなっています。高額な専用機器を購入しなくても、無料のソフトウェアやスマートフォンアプリを活用することで、効率的な現場診断が可能です。本記事では、実務で使える無料サイトとツールを徹底解説し、建築現場での活用方法を具体的にご紹介します。

 

サーモグラフィー無料解析ソフトの種類と特徴

建築現場で撮影したサーモグラフィー画像を解析するための無料ソフトウェアが複数提供されています。代表的なのがFLIR Toolsで、フリアーシステムズジャパンの公式サイトから無料でダウンロードできます。このソフトウェアは、撮影後の温度表示の再調整や数値での温度表示など、プロフェッショナルな解析作業が行えます。

 

FLIR Toolsの利用には簡単なユーザー登録が必要ですが、登録後はソフトウェアとファームウェアのダウンロードページにアクセスでき、「Reporting and Analysis Software」カテゴリーから「FLIR Tools / Tools +」を選択してダウンロードできます。PC版とスマートフォン版(Android・iOS対応)の両方が用意されており、現場での即座の確認にはスマホ版、詳細な解析にはPC版と使い分けることができます。

 

もう一つの選択肢として、HIKMICRO Analyzerがあります。こちらもユーザーが画像を表示、編集、分析できるプロフェッショナルな無料ソフトウェアです。マテリアルファイリングシステムをサポートしており、複数の現場データを効率的に管理できる点が特徴です。サーモグラフィーツールの設定、画像表示モードの設定、カラーアラームの設定など、多彩な分析操作が実行できます。

 

これらの無料ソフトウェアは、撮影した熱画像に測定ツールを追加したり、温度測定パラメータを読み取ったり、レベルスパンを変更したりする機能を備えており、有料ソフトに引けを取らない性能を持っています。また、分析結果をレポート形式でエクスポートする機能もあり、クライアントへの説明資料作成にも活用できます。

 

FLIR Tools公式ダウンロードページ
サーモグラフィーカメラで撮影したデータを解析できるフリーソフトのダウンロード方法が詳しく解説されています。

 

サーモグラフィー無料アプリのスマホ活用術

スマートフォンを赤外線サーモグラフィーカメラに変えるアプリとして、FLIR ONEが広く利用されています。iPhoneやAndroidのスマホに無料の専用アプリをインストールし、別売りの機器(FLIR ONE ProやFLIR ONE)を装着すれば、スマホで温度が見えるようになります。

 

FLIR ONE Proは、赤外線解像度を従来モデルより4倍も向上させ、VividIR™画像処理機能を搭載しているため、画像がとても鮮明です。建築現場での使用に適した耐久性も備えており、高さ1.8mからの落下に耐えられる仕様となっています。価格は専用のサーモグラフィーカメラと比較すると大幅に安価で、初期投資を抑えたい建築業従事者に最適です。

 

アプリの機能として、画像ファイルとフォルダのコピー、移動、削除、名前変更が可能で、赤外線カメラから画像をインポートしたり、画像に測定ツールを追加・移動・サイズ変更したりできます。さらに、カメラからのストリーミング中にリモートでスナップショットを撮影する機能や、画像のGPS位置を地図に表示する機能もあり、複数の現場を管理する際に便利です。

 

注意点として、FLIR ONEは廉価な2眼型のサーモカメラ(サーモセンサーと通常のカメラ)のため、近い距離のものを測定すると実写真とサーモグラフィが左右に位置がズレる場合があります。ただし、このズレはアプリ内の設定項目で補正可能になっており、画面下のスライダーを調整することで実写真とサーモグラフィの位置を一致させることができます。

 

撮影したサーモグラフィは、無料スマホアプリの「FLIR Tools」から編集することで、温度測定点の追加や平均・最小・最大値の範囲測定などが追加可能です。現場で撮影してその場で簡易チェックし、詳細な解析はオフィスに戻ってからPC版で行うという使い方が効率的です。

 

サーモグラフィーによる建築現場の雨漏り調査

建築現場における雨漏り調査では、赤外線サーモグラフィーが非常に有効な手段となります。建物を壊さずに雨漏りの原因箇所を特定できるという点が最大のメリットです。建物の中・外を赤外線カメラで撮影して、その熱画像を解析することで、雨水による温度低下を検出できます。

 

赤外線サーモグラフィーによる雨漏り調査では、建物構造、外部・内部の温度環境、材料特性などを総合的に判断して、建物表面を撮影した熱画像の温度差の原因が雨水によるものか判断します。サーモグラフィでは壁裏などの雨漏りを直接検知することはできませんが、雨漏りによって冷やされた部分の熱が内壁側まで伝わってきている場合、その部分の温度が低くなるため、間接的に雨漏りを発見することができます。

 

調査を行う際には、天候、日射量、撮影面の方位、時間帯などが熱画像に影響を与えるため、適切なタイミングでの撮影が重要です。一般的に、晴天の日中に建物が日射で加熱された後、夕方から夜間にかけて撮影すると、雨水による冷却効果がより明確に現れます。

 

石膏ボードの裏側から水が浸入している場合、気化熱により文字や模様のような形で温度低下が現れ、石膏ボードの表側からでも識別できます。このように、目に見えない水分の存在をサーモグラフィーで可視化することで、従来の目視調査や散水試験では特定が困難だった雨漏り箇所を効率的に見つけ出すことができます。

 

無料の解析ソフトを使用することで、撮影後に温度スケールを調整したり、特定のエリアの温度分布を詳細に分析したりすることが可能です。これにより、雨漏りの範囲や程度を正確に把握し、適切な補修計画を立てることができます。

 

赤外線サーモグラフィーによる雨漏り調査の詳細
破壊の必要がなく、高い精度で雨漏りの原因箇所を突き止められる調査方法について解説されています。

 

サーモグラフィーによる断熱性能診断の実践方法

建築現場において、断熱性能の診断はエネルギー効率の向上と居住快適性の確保に直結する重要な作業です。サーモグラフィーを活用することで、断熱材が入っていない部分や施工不良箇所を一目で確認できます。断熱材が入っていない部分は外気の温度が伝わりやすくなるため、他の部分と比べて温度が低く(冬季)または高く(夏季)なります。

 

建物の内側と外側の温度差が6℃もあれば、断熱不良箇所をすぐに見つけることができます。暖房を利かせている室内を外側から撮影すると、断熱が不十分な箇所は赤く表示され、熱が逃げている様子が視覚的に分かります。逆に、室内側から撮影すると、断熱欠損部分は青く(冷たく)表示されます。

 

完成見学会などでは、来場者にサーモグラフィーカメラを渡して、自身で見て確かめてもらうことで、建物の断熱性能を実感してもらうことができます。計算結果や数値の羅列よりも、サーモグラフィーによる色づけは建物の断熱性が正常かどうかを一目瞭然で示してくれるため、視覚的なインパクトで判断してもらいやすくなります。

 

リフォーム・リノベーションの現場でも、サーモグラフィーカメラが威力を発揮します。改修前の状態をサーモグラフィーカメラで撮影すれば、熱環境上の弱点がすぐに把握でき、効果的な改修計画を立てるのに役立ちます。断熱改修後に再度撮影することで、改修効果を定量的に示すこともできます。

 

高断熱住宅に合った設定として、測定する温度スケールを固定しておくことが重要です。オートのまま使うと、測定スケールが変わり、ごくわずかな温度差でも画像に反映されて温度ムラがあるように見えてしまいます。夏なら10℃~40℃、冬なら5℃~35℃と、住宅の性能を最も良く表せる設定にしておくことで、正確な診断が可能になります。

 

実務者が教える!サーモグラフィカメラ活用術
高断熱住宅の普及に取り組む設計者による、サーモグラフィカメラの実践的な活用方法が紹介されています。

 

建築現場でのサーモグラフィー設備点検術

建築現場において、電気設備や配管設備の点検にもサーモグラフィーが活用できます。異常の多くが発熱として表れるため、定期的に赤外線サーモグラフィを使用して点検すると、安全かつ短時間で異常箇所の早期発見が可能になります。

 

電気設備の点検では、ブレーカーや配線の接続部分に過度な発熱がないかをチェックします。負荷がかかっているほとんどの電気機器は高温になるため、ホットスポットに気付いただけでは問題が発覚しない可能性があります。検証している機器が正しく機能している時の温度を把握しておくことで、異常な発熱を正確に判断できます。

 

床暖房の配管漏れの確認にも、サーモグラフィーは非常に有効です。床暖房に配管を使っている場合、サーモグラフィを使うことで配管の漏れや不良を簡単に確認することができます。正常な配管は均一な温度分布を示しますが、漏れがある箇所では温度が異常に高くなったり低くなったりするため、すぐに発見できます。

 

外壁の剥離診断では、日射によって加熱された建物の外壁を撮影します。剥離部分は空気層により表面からの熱伝導率が低いため、健全部よりも温度が高くなります。この温度差を検出することで、目視では確認できない外壁の内部剥離を発見できます。足場等を必要とする高所の建物でも、ズームレンズを使用することで地上から広範囲の測定が可能です。

 

無料の解析ソフトを活用することで、撮影した画像に測定ポイントを追加し、各部位の温度を記録できます。これにより、定期点検のデータを蓄積し、経年変化を追跡することが可能になります。予防保全の観点からも、サーモグラフィーによる定期的な設備点検は非常に有効です。

 

サーモグラフィー測定時の注意点と精度向上のコツ

サーモグラフィーを建築現場で効果的に活用するためには、いくつかの重要な注意点があります。まず、放射率の設定が正確な温度測定に大きく影響します。すべての物質は、その温度に応じて赤外線を放射しますが、物質によって放射率が異なります。測定前に設定を確認し、測定対象に適した放射率係数の設定を行うことが重要です。

 

特に注意が必要なのは、研磨された金属などの光沢のある物体です。これらは放射率が低いため、サーマルイメージャーでは正確に測定できません。ただし、多くの場合、比較的簡単かつ安価な手段(マスキングテープを貼るなど)を使用してターゲットの放射率を高めることが可能です。

 

ガラスやアクリル越しの測定も不可能です。これらの材質は赤外線を通さないか、大きく反射してしまうため、正確な温度測定ができません。建物の内部を診断する際には、窓を開けて直接撮影する必要があります。

 

反射の影響も考慮する必要があります。サーモグラフィーは物体表面から放射される赤外線を検出しますが、周囲の高温物体からの赤外線が反射して、誤った温度を示すことがあります。測定環境を確認し、強い熱源が近くにないかチェックすることが重要です。

 

画像の解釈ミスを避けるために、すべてのコールドスポットやホットスポットが問題であるわけではないことを理解しておく必要があります。現場で迅速な意思決定をせず、何か分からない点がある場合は、画像をオフィスに持ち帰り、大画面に表示させて確認してから最終的な決断を下すことをおすすめします。

 

無料の解析ソフトFLIR ToolsやHIKMICRO Analyzerを使用することで、撮影後に温度スケールやカラーパレットを調整し、より分かりやすい画像を作成できます。複数の角度から撮影したデータを比較分析することで、外的要因による温度差を排除し、より正確な診断が可能になります。

 

📊 サーモグラフィー測定の精度に影響する主な要因

  • 放射率:材質によって0.1~0.95まで大きく変動し、設定ミスは測定誤差の最大要因となります
  • 測定距離:カメラから対象物までの距離が遠いほど、空間分解能が低下し温度測定精度が落ちます
  • 環境温度:周囲の温度や湿度が測定結果に影響するため、極端な環境下での測定は避けるべきです
  • 反射:光沢面や金属表面では周囲の熱源が反射し、正確な表面温度が測定できない場合があります
  • 撮影タイミング:日射の影響を受ける外壁診断では、日没後1~2時間が最適な撮影時間帯です

建築現場でサーモグラフィーを使いこなすには、機器の特性を理解し、適切な設定と撮影方法を身につけることが不可欠です。無料のツールやソフトウェアを活用しながら経験を積み、赤外線画像の解釈スキルを向上させることで、より効果的な建物診断が実現できます。

 

赤外線サーモグラフィーの特徴・注意点・応用分野
測定時の注意点について、内部温度測定の限界や放射率の影響など詳細に解説されています。