

三面接着で施工すると、シーリング材が3〜5年で破断し再工事費が数十万円に膨らむことがある。
シーリング工事において、「三面接着」と「二面接着」の違いを正確に把握することは、施工品質を左右する最重要事項のひとつです。
通常、目地にシーリング材を充填する際は、相対する左右の2面(壁面側面)のみに接着させます。これを「二面接着」と呼びます。二面接着の状態では、シーリング材が目地幅の変化に合わせて自由に伸び縮みできます。ゴムひもの両端を持ってゆっくり引っ張るようなイメージです。
一方、「三面接着」は目地の底面(奥の面)にもシーリング材が密着してしまった状態を指します。左右と底の計3面に接着しているため、一見すると密着度が高く丈夫そうに見えます。これが落とし穴です。
建物は気温差・地震・風荷重などによって常に微妙な伸縮・変形を繰り返しています。この動きに対してシーリング材が追従するためには、「逃げ場」が必要です。二面接着ならばシーリング材が自由に変形できますが、三面すべてに固定されていると、ひとつの動きが3方向の拘束力と戦うことになります。結果として中央部に応力が集中し、破断や剥離が起きやすくなるのです。
| 比較項目 | 二面接着 | 三面接着 |
|---|---|---|
| 接着面 | 左右の2面のみ | 左右+目地底の3面 |
| 伸縮への追従性 | ◎ 高い | ✕ 低い |
| 破断リスク | ◎ 低い | ✕ 高い |
| 適用目地 | ワーキングジョイント | ノンワーキングジョイント |
| 代表的な施工箇所 | サイディング目地・サッシ回り | RC打継ぎ目地・誘発目地 |
シーリング材の「伸縮性」こそが命綱です。その伸縮性を活かせるかどうかが、二面か三面かの違いに直結しています。
三面接着が発生する原因は、大きく分けて「材料の省略」「作業手順の誤り」「知識不足」の3つに分類できます。いずれもベテラン・新人問わず起こりうる点に注意が必要です。
最も多い原因のひとつが、バックアップ材の未使用です。バックアップ材とは、発泡ポリエチレン製の棒状資材で、目地の底に事前に詰め込んでおくことでシーリング材が底面まで達するのを物理的に防ぎます。国交省の建築工事共通仕様書でも「接着剤付きは目地幅より1mm小さく、なしは2mm大きく」という規定があります。これが省略されると、充填されたシーリング材は底面に触れてしまい、三面接着が完成してしまいます。
次に多いのが、ボンドブレーカーの貼り忘れです。目地の深さが浅く、バックアップ材が入れられない箇所では、代わりにボンドブレーカー(シーリング材が接着しない特殊テープ)を目地底に貼ることで底面との接着を防ぎます。地味な工程ゆえに省かれがちですが、これを怠ると三面接着が発生します。
特に増し打ち工法は注意が必要です。既存シーリング材を撤去しない分、底面の古い材料がそのまま残ります。その上から新材を充填すると、新しいシーリング材が古い底面材に密着し、意図せず三面接着状態が生まれます。増し打ち自体はコスト面で有効な工法ですが、既存材の状態確認と底面処理が不可欠です。
「バックアップ材とボンドブレーカーの2つさえ適切に使えば防げる」が原則です。
参考:バックアップ材の素材条件や施工手順の詳細(施工管理求人サーチ掲載)
バックアップ材とは?豆知識8つとバックアップ材の施工手順を解説|施工管理求人サーチ
三面接着の最大の問題は、ワーキングジョイントにおいて「動きに追従できない」ことに尽きます。ここではそのメカニズムを具体的に見ていきます。
外壁サイディングの目地幅は一般的に10〜15mm程度で設計されています。ハガキの短辺が約100mmですから、目地幅はその約1/7〜1/10という微小な空間です。その空間の中でシーリング材は、夏冬の温度差(場合によっては50℃以上)による外壁材の膨張・収縮や、地震による層間変形に追従しなければなりません。
二面接着であれば、シーリング材は左右に引っ張られても、底面は「自由端」のため変形できます。これはちょうど輪ゴムの一部を指2本でつまんで引っ張るようなイメージです。指が離れているほうの端は自由に動けます。
ところが三面接着では、底面が固定されているため変形の「逃げ場」がありません。輪ゴムを3点で固定した状態で引っ張るイメージに近く、ある一点に応力が集中して切れてしまいます。これが「破断」です。破断とはシーリング材が目地の中央部で縦に裂けることを言い、一度破断すると雨水浸入の直接経路となります。
耐用年数が半分以下に縮まるということですね。2階建て一般住宅の外壁シーリング打ち替えの費用は、コーキング代・撤去代・足場代を合計すると33〜45万円程度が相場とされています(参考:外壁コーキング補修費用相場データ)。これを10年ごとではなく5年ごとに繰り返すことになれば、建物の一生で数百万円単位の差が生じます。痛いですね。
また、破断から始まる雨水の浸入は、断熱材の劣化や柱・土台の腐食まで進展することがあります。シーリングの問題だけで終わらず、構造体の修繕工事が必要になるケースも現場では少なくありません。
参考:三面接着による破断・剥離のリスクと施工不良の原因(外壁塗装専門ラディエント)
シーリング工事で避けるべき「三面接着」とは?~前編|ラディエント現場ブログ
ここまで三面接着の危険性を述べてきましたが、実は三面接着が「正解」になる場面も存在します。これが施工現場での判断を難しくする要因のひとつです。
ポイントはワーキングジョイントとノンワーキングジョイントの区別にあります。
ワーキングジョイントは、建物の動きや温度変化によって目地幅が変動する箇所です。窯業系サイディングの縦目地・横目地、金属サイディング、ALC外壁の目地などが代表例で、これらには必ず二面接着が求められます。
一方、ノンワーキングジョイントは動きがほぼ生じない箇所を指します。具体的には下記のような部位が該当します。
これらのノンワーキングジョイントでは、三面接着によって底面も含めた密着度を高めることが適切とされています。動きが小さい箇所なら、底面に拘束されてもシーリング材が破断するリスクは低く、むしろ防水性を重視した施工が有効です。
つまり「三面接着はNG」というルールは、ワーキングジョイントに対して言える話であり、全ての目地に一律に当てはまるものではありません。これが条件です。
現場で問題になりやすいのは、ワーキングジョイントかノンワーキングジョイントかの判断が曖昧なまま施工してしまうケースです。判断に迷った際は、設計図書の仕様書や、JIS A5758(建築用シーリング材)の規定を確認することが基本です。
参考:ワーキングジョイントとノンワーキングジョイントの違い、バックアップ材・ボンドブレーカーの使い分け詳細
ワーキングジョイントとは?ノンワーキングジョイントとの違いを解説|施工管理求人サーチ
三面接着を防ぐための実務対応として、バックアップ材とボンドブレーカーの使い分けを正確に理解しておくことが不可欠です。どちらも「目地底へのシーリング材の接着を防ぐ」目的で使いますが、使用場面が異なります。
バックアップ材は、目地の深さが十分にある場合に使用します。発泡ポリエチレン製の棒状の資材で、目地底に詰め込むことで充填深さを調整し、底面への接着を物理的に遮断します。丸型と角型があり、サイズは幅3mmから数十mmまでと幅広く展開されています。国交省仕様書では接着剤付きのものは目地幅より1mm小さく、なしは2mm大きいものを選ぶと規定されています。シーリング材とは接着しない素材(合成繊維や合成ゴム)であることが必須条件です。
ボンドブレーカーは、目地が浅くてバックアップ材が入れられない場合の代替手段です。シーリング材と接着しない特殊なテープを目地底に貼ることで、底面との接着を阻害します。地味ですが、施工上は極めて重要です。
| 資材名 | 使用場面 | 目的 | 形状 |
|---|---|---|---|
| バックアップ材 | 目地が深い場合 | 充填深さ調整+底面接着防止 | 棒状(丸型・角型) |
| ボンドブレーカー | 目地が浅い場合 | 底面接着防止のみ | テープ状 |
ハットジョイナー(目地深さ調整金具)にあらかじめボンドブレーカーが貼付されているタイプも市販されており、新築施工では標準的に採用されています。これなら問題ありません。ただし、改修・打ち替え工事ではこの恩恵がないため、施工者自身がボンドブレーカーを確実に施工する意識が求められます。
実際のシーリング施工の手順としては、①施工箇所の清掃→②バックアップ材またはボンドブレーカーの設置→③マスキングテープで養生→④プライマー塗布(当日中にシーリング施工)→⑤ガンによる充填(底部から空気を入れずに)→⑥ヘラ仕上げ→⑦マスキングテープ撤去→⑧乾燥(2〜3時間)という流れが標準です。
これは使えそうです。特にプライマー塗布後は「当日中に施工する」という時間管理も品質に直結する重要なポイントで、雨や埃が付着した場合は再塗布が必要です。
近年では、従来品の約3倍にあたる30年耐用を謳う高耐久シーリング材も市場に登場しています。10年ごとの打ち替えサイクルを大幅に延ばせる可能性があり、施工管理の観点からも検討する価値があります。足場代が1回あたり15〜20万円かかることを考えると、長寿命材の採用によってライフサイクルコストを大きく削減できる場面もあります。
参考:シーリング工事における2面接着・3面接着の使い分けと施工注意点
外壁を長持ちさせるシーリング工事の2面接着と3面接着|村井塗装コラム