

接着面が多い三面接着のほうが、実は木造住宅では早期に割れてクレームが来やすい。
シーリング工事において、「二面接着」と「三面接着」は施工品質を左右する最重要キーワードです。どちらも名前の通り、コーキング(シーリング)材が接着している面の数を指しており、この違いひとつで建物の耐久性が大きく変わります。
二面接着とは、シーリング材が目地の左右に面した外壁材の断面(2面)にのみ接着している状態です。目地底(下地部分)にはシーリング材が接着しないよう、バックアップ材またはボンドブレーカーを入れて意図的に絶縁します。左右2方向からのみ力を受けるため、外壁が動いたときにシーリング材が自由に伸縮できます。
三面接着は、左右の外壁材の断面に加えて、目地底(ハットジョイナーや下地材)の3面にシーリング材が密着している状態です。これはバックアップ材やボンドブレーカーを入れずにそのままコーキングを充填した場合に起こります。接着面が1面多い分だけ防水性は高まりますが、外壁の動きへの追従性が大きく損なわれます。
つまり「接着面の数が多いほど強い」とは一概に言えないということですね。
外壁の目地には大きく2つの種類があります。「ワーキングジョイント」は構造上の動きが大きい目地で、木造住宅のサイディングボード縦目地・ALC外壁の目地などが代表例です。「ノンワーキングジョイント」は動きが小さい目地で、RC造(鉄筋コンクリート造)のコンクリート打ち継ぎ目地・ひび割れ誘発目地・窓サッシ周りなどが該当します。
| 目地の種類 | 特徴 | 適切な施工法 | 代表例 |
|------------|------|------------|--------|
| ワーキングジョイント | 動きが大きい | 二面接着 | 木造サイディング縦目地、ALC目地 |
| ノンワーキングジョイント | 動きが小さい | 三面接着 | RC造コンクリート目地、窓サッシ周り |
以下のリンクでは、シーリング工事における二面接着・三面接着の適用場所と、ワーキングジョイント・ノンワーキングジョイントの具体的な考え方が解説されています。
シーリング材メーカーによる目地種類と施工方法の技術資料(コニシ株式会社)
https://www.bond.co.jp/bond/catalog/pdf/download/1000250
二面接着を確実に行うためには、バックアップ材またはボンドブレーカーのどちらかを正しく使う必要があります。この2つは同じ目的(三面接着の防止)を持ちながらも、使用する場面が明確に異なります。それが条件です。
バックアップ材は目地の深さが十分にある場合に使用する成形材料で、高発泡ポリエチレン製のロッド状(丸棒状)が一般的です。目地の深さを調整しながら底部を埋め、その上からシーリングを充填することで目地底との接着を防ぎます。大きさは「接着剤なしのものは目地幅より2mm程度大きいもの」を選ぶのが国土交通省の建築工事共通仕様書での規定です。
ボンドブレーカーは目地が浅くてバックアップ材が入らない場合に使うテープ状の材料です。目地底にそのまま貼り付けることで、シーリング材と下地の接着を遮断します。一般的にはポリエチレン製またはポリプロピレン製のテープが使われ、幅はおおよそ目地幅に合わせたものを選びます。
ただし、注意点があります。ハットジョイナーが設置されているからといって、三面接着を自動的に防止できるわけではありません。ハットジョイナーにはボンドブレーカーが貼られているタイプと貼られていないタイプがあります。ボンドブレーカーなしのハットジョイナーにシーリング材を充填すると、ハットジョイナー自体にシーリングが接着してしまい、結果的に三面接着になるのです。
施工前に必ずハットジョイナーのボンドブレーカーの有無を確認する、これが基本です。
ボンドブレーカーが貼られていない場合は、施工前に市販のボンドブレーカーテープを貼り付けてからシーリングを充填してください。手間はかかりますが、1棟分のボンドブレーカー貼り付けを省いたせいで数年後に割れやクレームが生じれば、バックアップ材の材料費(1m当たり500〜900円程度)をはるかに上回る補修費用が発生します。
| 材料 | 形状 | 使用条件 | 素材 |
|---|---|---|---|
| バックアップ材 | ロッド状(丸棒) | 目地が深い場合 | 高発泡ポリエチレン等 |
| ボンドブレーカー | テープ状 | 目地が浅い場合 | ポリエチレン・ポリプロピレン |
木造住宅のサイディング目地で三面接着が起きると何が起こるのか、具体的に見ていきましょう。
木造住宅は季節の温度・湿度変化や地震の揺れによって、外壁材が日常的に膨張・収縮を繰り返しています。一般的な木造2階建て住宅では、温度差によって外壁のサイディングボード1枚(約3m)あたり1〜2mm程度の伸縮が生じると言われています。これがはがき1枚ほどの厚み(約0.1〜0.2mm)相当の動きで、積み重なると無視できません。
二面接着の場合、シーリング材は左右2面からのみ引っ張られる状態です。シーリング材が伸縮できる余地があるため、外壁の動きに追従できます。これがワーキングジョイントに二面接着を採用する理由です。
三面接着になると、左右の引っ張りに加えて目地底からも拘束を受けます。3方向から引っ張られたシーリング材は十分に変形できず、破断(割れ)が生じやすくなります。「体で例えると、両手だけ引っ張られるより、両手プラス背中を押さえられたほうが辛い」イメージです。意外ですね。
三面接着のシーリングが破断すると、内部に水が入り込む経路ができます。外壁内部の透湿防水シートが健全であれば即座に雨漏りには至りませんが、放置すれば構造材の腐食・カビの発生につながります。
打ち替え工事の費用は1mあたり900〜1,500円が相場ですが、三面接着が原因でシーリングが早期破断した結果、外壁内部に水が入り込んで下地材まで腐食した場合の補修費は桁が違います。サイディングの部分張り替えは1枚あたり1.5〜5万円、1面全体の張り替えなら100〜150万円規模になることもあります。
結論は「初回施工の手間を惜しまない」が正解です。
以下のリンクでは、シーリング不具合の原因と三面接着による破断の具体的な事例が詳しく解説されています。
シーリング不具合の原因②三面接着が原因の破断(割れ)について(外部専門家ブログ)
https://ameblo.jp/adachisatoshi001/entry-12795890328.html
二面接着と三面接着を使い分ける基準は、ひとことで言えば「目地が動くかどうか」です。
二面接着を適用すべき場所:
- 木造戸建て住宅のサイディングボード縦目地(ワーキングジョイント)
- ALC外壁パネルの目地
- 金属笠木(パラペット笠木)の取り合い部分
- 乾式カーテンウォールの目地
三面接着を適用すべき場所:
- RC造・SRC造のコンクリート打ち継ぎ目地(ノンワーキングジョイント)
- コンクリートのひび割れ誘発目地
- 窓サッシ周り(木造含む)
- キッチン・浴室など室内の水回り目地
ここで現場でよくある誤解を一つ取り上げます。「窓サッシ周りは木造住宅にあっても三面接着でよい」という点です。窓サッシは躯体に固定されており、サッシそのものの動きはごくわずかのため、ノンワーキングジョイントとして扱われます。三面接着が原則です。
また、マンション・ビルなど RC造や SRC 造の建物についても、三面接着で問題ありません。鉄筋コンクリート造は木造と比べて構造的な動きが非常に小さく、ひび割れ誘発目地や打ち継ぎ目地はノンワーキングジョイントとして設計されているためです。
施工前に「この目地はワーキング? ノンワーキング?」と一度立ち止まって確認する習慣が、クレームを防ぐ一番のコツと言えるでしょう。
DIY補修でシーリングを打ち直す場合は特に注意が必要です。ホームセンターで販売されているコーキング材を使って目地を埋めると、バックアップ材を入れないため自動的に三面接着になります。一般の方が感覚的に「しっかり埋めよう」と施工した結果、三面接着になってしまうというケースが非常に多いです。これは使えそうな知識ですね。
窯業系サイディングの標準施工(日本窯業外装材協会)では、シーリング材の三面接着防止とボンドブレーカー・バックアップ材の正しい施工について詳しく規定されています。
窯業系サイディング標準施工のシーリング工事ガイドライン(日本窯業外装材協会公式サイト)
https://www.siding.jp/guideline/sealing/
既存の建物で三面接着のシーリングが施工されていた場合、コーキングの打ち替えタイミングで二面接着に修正することが可能です。一般的にシーリング材の耐用年数は10年前後とされているため、外壁塗装と同じタイミングで打ち替えを検討するのが費用効率の面でも合理的です。
修正施工の基本的な流れ:
1. 既存シーリング材の撤去(カッターで切り込みを入れてめくり取る)
2. 目地底のバックアップ材・ボンドブレーカーの有無を確認
3. バックアップ材が入っていない場合はバックアップ材またはボンドブレーカーを設置
4. プライマー(下塗り材)の塗布
5. シーリング材の充填
6. ヘラで仕上げ、乾燥(2〜3時間程度)
費用の目安:
- コーキング打ち替え:1mあたり900〜1,500円
- バックアップ材追加が必要な場合:1mあたり500〜900円の追加
- 一般的な30坪戸建ての総目地長は100〜180m前後
30坪の戸建てで100m分の打ち替えをする場合、バックアップ材込みで概算すると1m当たり合計1,400〜2,400円、つまり14〜24万円規模の工事費用になります。これは東京ドームの面積(約4.7万㎡)で言えば、建物1棟の外壁補修が何と東京ドームの約0.001%分の面積に相当する細かい目地のメンテナンスに、それほどの費用がかかるということです。だからこそ、初回施工で二面接着を正確に行うことのコストパフォーマンスがいかに高いかがわかります。
業者選びの独自チェックポイント:
一般的なブログ記事ではあまり指摘されていない視点として、見積書の内容確認があります。「シーリング工事一式」という大雑把な見積もりを提示してくる業者には要注意です。適切な業者であれば、施工箇所ごとに二面接着か三面接着かを明記し、バックアップ材またはボンドブレーカーの使用数量も見積書に記載するのが普通です。
また、近年では耐用年数が約20〜30年とされる「高耐久シーリング材」も市販されています。通常のシーリング材(耐用年数約10年)と比較してコストは高めですが、足場を組む大規模工事の頻度を減らせるため、長期的に見てトータルコストを抑えられる選択肢です。10年ごとに足場代(15〜20万円前後)を含む工事費用が発生することを考えると、検討する価値があります。
シーリング材の選定で迷った場合は、日本シーリング材工業会が公開している「住宅外壁改修のためのシーリング材ガイド」が信頼できる参考資料になります。
住宅外壁改修のためのシーリング材ガイド(日本シーリング材工業会)
https://www.sealant.gr.jp/wp-content/uploads/b6162eeffd79a34435548e2192927597.pdf

業務用 ガンタイプ2液エポキシ接着剤 マゼラン390 450ml(土木・建築用/水中硬化可能) MAZERUN390 (TR)