接着性試験(シーリング材)の方法と合否判定の基準

接着性試験(シーリング材)の方法と合否判定の基準

記事内に広告を含む場合があります。

接着性試験(シーリング材)の方法・判定基準と現場での注意点

試験成績書があれば接着性試験は省略できると思っていると、現場固有の被着体条件で剥離クレームが発生し再施工費用が丸ごとあなたの負担になります。


この記事でわかること:接着性試験(シーリング材)の基礎と実務
🔬
試験の種類と使い分け

「簡易接着性試験」と「引張接着性試験」の具体的な手順・合否判定の基準を解説します。

⚠️
省略できる条件と省略できない条件

試験成績書による省略が認められる場合と、現場で必ず試験が必要になる場面の違いを整理します。

🏗️
現場でよくある失敗と対策

プライマー不適合・温度管理ミス・3面接着の誤用など、実際のトラブル事例から学ぶポイントをまとめます。


接着性試験(シーリング材)が必要な理由とJIS規格の位置づけ


シーリング材の接着性試験は、建物の防水・気密性能を長期にわたって確保するために欠かせない工程です。外壁の目地やサッシ回りに充填されたシーリング材が被着体(コンクリート・サイディング・ALC・金属・ガラスなど)からはく離すれば、雨水が躯体内部に侵入し、柱や土台の腐食・カビ発生・内装損傷といった深刻なダメージへとつながります。


シーリング材に関する国内の基本規格は JIS A 5758「建築用シーリング材」 で、材料性能の最低基準を定めています。一方、試験方法そのものについては JIS A 1439「建築用シーリング材の試験方法」 が適用されます。公共建築工事では国土交通省の「公共建築工事標準仕様書」(旧平成31年版、現令和4年版)の9.7節(シーリング工事)に接着性試験の実施が明記されており、外部に面するシーリング材については施工前の実施が原則です。


つまり接着性試験は原則必須です。


工事現場ではシーリング材の「カタログスペック」だけで判断しがちですが、実際の接着性は被着体の表面状態・含水率・温度・プライマーの適合性など、現場固有の条件に大きく左右されます。そのため「製品として品質が担保されていること」と「この現場のこの被着体に確実に接着すること」は別の問題です。これが根本です。


接着性試験を実施することで、使用予定のシーリング材とプライマーの組み合わせが、実際の施工部位で正しく機能するかどうかを事前に確認できます。不合格が出た段階でプライマーの変更や下地処理の見直しができれば、施工後の剥離・漏水クレームを未然に防ぐことができます。


日本シーリング材工業会(JSIA)は、シーリング材の選定から施工管理に至る技術情報を幅広く公開しており、プライマー選定や不具合事例についても詳細な資料が参照できます。


日本シーリング材工業会(JSIA)公式サイト:シーリング材の規格・技術情報・不具合事例を掲載


接着性試験(シーリング材)の種類:簡易接着性試験と引張接着性試験の違い

接着性試験には大きく2種類あります。公共建築工事標準仕様書では「特記がなければ簡易接着性試験とする」と規定されており、現場の標準はまず簡易接着性試験です。それぞれの手順と判定基準を正しく理解しておくことが重要です。


① 簡易接着性試験(現場標準)


公共建築工事標準仕様書に定める手順は次のとおりです。


- 被着体は実際の部材または化粧見本を使用する
- セロハンテープを貼り、その隣にプライマーを塗布する
- 角型バックアップ材を取り付け、セロハンテープ面とプライマー塗布面の両方にシーリング材を充填する
- シーリング材が弾性を発現するまで養生(硬化)させる
- 硬化後、シーリング材を180°回転させ、手で引き剥がす
- 「凝集破壊(CF)」または「薄層凝集破壊(tCF)」で合格


ここがポイントです。「界面破壊(AF)」——つまりシーリング材と被着体の接着面がきれいにはがれた場合は不合格です。凝集破壊とはシーリング材の内部で破壊が起きる状態で、「被着体へのくっつき方が、シーリング材自体の強度より強い」ことを意味します。薄層凝集破壊は被着面にシーリング材の薄い層を残しながら破壊が起きる状態で、これも合格です。


② 引張接着性試験(JIS A 1439準拠)


特記による場合、またはより精密な数値データが必要な場合に採用されます。JIS A 1439に基づき、実際の施工部材と同様に製作した試験体を使い、引張試験機で測定します。破壊状態に加え、引張強さ(N/mm²)や伸び率(%)などの定量的なデータが得られます。シーリング材が200%以上の伸び率を達成し、かつ凝集破壊であれば合格です。


簡易試験は手軽さが利点ですね。一方、引張接着性試験は試験機器と試験体の事前製作が必要なため、時間とコストがかかります。改修工事などで既存被着体の表面状態が複雑な場合や、設計上の要求が厳しい部位に採用されることが多い試験です。


なお、関西シーリング工事業協同組合は不具合事例(ワーキングジョイントの3面接着によるはく離・目地幅不足・プライマー起因のはく離など)を詳細に掲載しており、接着性試験と合わせて参照する価値があります。


関西シーリング工事業協同組合「不具合事例とQ&A」:はく離・波打ち・漏水など現場事例を写真付きで解説


接着性試験(シーリング材)の省略条件と「省略できない」現場の見極め方

「試験成績書があれば試験を省略できる」——この理解は半分正解で半分間違いです。


公共建築工事標準仕様書には次の一文があります。「同じ材料の組合せで実施した試験成績書がある場合は、監督職員の承諾を受けて、試験を省略することができる」。ALCパネル協会や各サッシ協会の仕様書にも同様の規定があります。


省略が認められるのは「同じ材料の組合せ」が前提です。具体的には以下がすべて一致している必要があります。


- シーリング材の製品名・ロット
- プライマーの製品名
- 被着体の材種・仕上げ状態(塗装の有無・塗料の種類まで含む)


問題は「現場の被着体が試験成績書と完全に一致しているか」を確認せずに省略してしまうケースです。たとえば、試験成績書が「素地のサイディング」に対して取得されていても、現場の被着体が「1液形常温硬化形塗料で塗装済みのサイディング」であった場合は条件が異なります。関西シーリング工事業協同組合の不具合事例でも、「塗装材の塗膜強度が小さく、シーリング材中の可塑剤移行で付着強度が低下し、界面ではく離した」という事例が報告されています。


これは見落としがちです。


また、改修工事では既存シーリング材の打替えや増し打ちが発生します。この場合、残存する旧シーリング材の表面への接着性も確認が必要です。建築研究所発行の改修耐久性評価資料でも、既存材への打継ぎ試験(ひも状引張試験)の重要性が示されています。打継ぎ相性の悪い組み合わせでは、新規シーリング材が旧シーリング材の表面から数年以内に剥離するリスクがあります。


省略するなら条件確認が必須です。


国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)」:接着性試験の省略条件・試験手順の公式規定を確認できるPDF


接着性試験(シーリング材)を失敗させる「プライマーと被着体の相性」問題

接着性試験で不合格になる原因の中で、最も頻発するのがプライマーと被着体の不適合です。コニシ株式会社(ボンド)の技術資料によれば、「シーリング材が被着体からはく離する原因として最も多いのはプライマーの塗り忘れ(部分的な塗り忘れ)」と明記されています。しかし、塗り忘れと同様に深刻なのが「間違ったプライマーを使用してしまうケース」です。


プライマーは万能ではありません。被着体ごとに適合するプライマーが定められており、1種類で全被着体をカバーできる製品はほぼ存在しません。代表的な注意点を整理すると次のようになります。


| 被着体 | 注意事項 |
|--------|----------|
| 🔴 窯業系サイディング(塗装仕上げあり) | 塗料の種類によってプライマーが異なる。特に1液形常温硬化形塗料上は接着不良を起こしやすい |
| 🟠 ALCパネル | 多孔質で吸水性が高く、プライマーの吸い込みムラが発生しやすい。均一塗布が必須 |
| 🟡 アルミ・金属サッシ | 酸化被膜の除去と専用プライマーが必要。プライマーなしでは著しく接着力が低下 |
| 🟢 コンクリート・モルタル | レイタンス(表面の脆弱層)の除去が不十分だと試験で界面破壊が出る |
| 🔵 ガラス | ガラス専用プライマーが必要。シリコーン系ならガラスに直接接着する製品も存在するが要確認 |


被着体と塗装状態のセットで確認することが条件です。


また、プライマーを塗布してから充填までの「可使時間」を超過した場合も接着力が大きく低下します。公共建築工事標準仕様書では「プライマー塗布後、ごみ・ほこり等が付着した場合または当日充填ができない場合は、再清掃しプライマーを再塗布すること」と規定されています。翌日に気を取り直して充填しようとして再塗布を省略すると、接着性試験を行えば確実に不合格になる状態で施工を進めてしまいます。


プライマー再塗布のルールは必須です。


接着性試験(シーリング材)に影響する温度・湿度管理と養生期間の盲点

接着性試験の結果は、施工環境の温度・湿度・養生期間にも大きく影響されます。ここを見落として現場判断で施工を進めると、試験で合格が出ても後日クレームにつながることがあります。


施工禁止温度と停止基準


公共建築工事標準仕様書には明確な基準があります。「プライマーの塗布および充填時に被着体が5℃以下または50℃以上になるおそれのある場合は、作業を中止する」。シャープ化学工業の技術情報によれば、「シーリング材の反応性は温度が10℃以下になると約1/2となり、5℃以下のような環境下では硬化が著しく遅れる、あるいは硬化不良が生じる」とされています。


つまり寒冷期の朝一番の施工は要注意です。


養生期間の季節差


接着性試験のために養生する期間も季節によって変わります。建築施工の実務資料(日本建設業連合会関西支部「改修工事の落とし穴」)では、「養生期間の目安は夏場で1週間、冬場で2週間以上」とされています。夏場の感覚で冬場に養生を切り上げると、シーリング材がまだ完全に弾性を発現しておらず、接着性試験の結果が本来の接着性を反映しないことがあります。


冬場は2週間が基本です。


降雨・結露時の禁止


「降雨・多湿などにより結露のおそれがある場合は作業を中止する」(標準仕様書9.7.4)。被着体に水分が残った状態でプライマーを塗布すると、プライマーの浸透・定着が不均一になり、接着性試験で局所的な界面破壊が出ます。見た目には問題なくても、接着界面の一部が水分で遮断されている状態は接着破壊の起点になります。


午前中に雨が止んでも、被着体が完全に乾燥するまで待つことが原則です。これは地味ですが重要な管理ポイントです。


【独自視点】接着性試験(シーリング材)の「目地種別」×「接着面数」の組み合わせ判断:3面接着と2面接着の誤用が試験合格後でも漏水を招く理由

接着性試験で合格を得たとしても、目地の種別に応じた「接着面数(2面接着 or 3面接着)」の選択を誤ると、施工後に剥離・漏水が発生します。これは接着性試験の合否だけでは検出できない問題です。見落とされがちな独自視点です。


ワーキングジョイント(動きのある目地)には2面接着が必須


金属パネル目地・カーテンウォール目地・サイディング縦目地など、建物の熱膨張・収縮・風圧による変形で繰り返し動く目地を「ワーキングジョイント」と呼びます。このタイプの目地では、シーリング材が動きに追従できるように2面接着が必須です。目地の両側面だけにシーリング材を接着させ、目地底部とは非接着(バックアップ材またはボンドブレーカーを使用)とします。


なぜか。3面接着にした場合、シーリング材が目地底にも固定されるため、目地が動いたときに追従できず、材料の一点に応力が集中して1年未満ではく離・切断が発生します。関西シーリング工事業協同組合の事例では、「ボンドブレーカーの代わりにマスキングテープを使用したため、マスキングテープにシーリング材が接着して3面接着状態となり、短期間ではく離が発生した」という失敗例が報告されています。


マスキングテープをボンドブレーカー代わりに使うのはダメです。


ノンワーキングジョイント(動きの小さい目地)には3面接着が有効


逆に、鉄筋コンクリートの打継ぎ目地・ひび割れ誘発目地・建具枠回りなど、動きが小さい目地では3面接着が有効です。目地底まで接着させることで、目地近傍にひび割れが生じた際にも雨水の侵入経路を塞ぐことができます。


接着性試験は「接着できるか」を確認する試験であり、「2面接着・3面接着のどちらが正しいか」という設計的判断は別の問題です。試験合格=施工OK ではなく、目地種別に応じた設計判断と組み合わせて初めて機能します。目地種別ごとの設計確認が条件です。


この組み合わせ判断を的確に行うためには、JIS A 5758の耐久性区分(7010・7020・8020・9030・10030・9030Gの6区分)と目地の用途を照合する作業も合わせて行うと、材料選定ミスをさらに防げます。


日本シーリング材工業会「住宅外壁改修のためのシーリング材ガイド」:耐久性区分の解説・プライマーの重要性・目地種別の考え方を詳解したPDFガイド




セメダイン 多用途シーリング材 変成 シリコーンシール 333ml ホワイト