
消防法第17条により、学校・病院・工場・事業場・興行場・百貨店・旅館・飲食店・地下街・複合施設などの防火対象物には、消防用設備等の設置と適切な維持管理が義務付けられています。消防用設備等は「消防の用に供する設備」「消防用水」「消火活動上必要な施設」の3つに大別され、火災から人命と財産を守るための重要な役割を担っています。
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建築事業者として理解すべき点は、消防用設備が「火を知らせること・消すこと・避難すること」という3つの目的を持っていることです。設備の設置基準は建物の用途や規模によって異なり、消防法では常に最新法令への適合が求められています。一戸建て住宅や長屋以外の建物には設置・維持・点検が義務付けられており、違反した場合は法的な罰則を受ける可能性があります。
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消火設備は火災発生時の消火活動に用いられる設備の総称で、建物の用途・規模に応じて設置し定期的に点検することが義務付けられています。消防法施行令により定められた消火設備には以下の10種類が存在します。
参考)消防設備とは
屋内消火栓設備は火災の消火に非常に効果的で、自動火災報知設備の発信機を押すとポンプが動き、ホースから勢いよく放水できます。スプリンクラー設備は天井に設置されたヘッドが火災の熱に反応し、自動的に散水して消火する設備で、熱を感知したヘッドのみが作動する仕組みです。消火後は水損防止のため散水を停止する必要があり、制御弁を閉鎖してポンプを停止させます。
参考)https://www.city.komaki.aichi.jp/material/files/group/64/jieishoubou.pdf
警報設備は火災発生時に熱や煙を感知し、建物内の人に発生の旨を知らせて避難へ誘導する設備の総称です。消防法により定められた警報設備には以下の6種類があります。
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自動火災報知設備は早期に火災を発見し、建物内の関係者に警報を発する最も重要な警報設備の一つです。住宅用火災警報器は各市町村により設置基準が規定されており、一般住宅にも設置が義務付けられています。非常警報設備は消防法により1年に1回の総合点検が義務付けられており、正常に機能するか確認する必要があります。
参考)消防設備点検費用の相場はいくら?建物別の費用体系や安く抑える…
警報設備の特徴として、火災の早期発見と迅速な避難誘導を可能にする点が挙げられます。消防機関へ通報する火災報知設備は、火災発生を自動的に消防署に通報する機能を持ち、初期対応の遅れを防ぐ効果があります。
避難設備は火災時に安全に屋外へ避難できるよう支援する設備で、消防法により建物の用途や規模に応じて設置が義務付けられています。避難設備には以下の種類が含まれます。
参考)第12章 火災の時に役立つ建物の設備
誘導灯は火災時に安全に屋外に避難できるよう緑色の明かりで避難口や避難方向を示す設備です。避難器具は建物の階数や収容人員に応じて適切な種類を選定する必要があり、設置場所は消防法施行令で詳細に規定されています。
避難はしごは窓や開口部に設置され、火災時に下階へ降りるための器具です。救助袋や緩降機は高層階からの避難に用いられ、使用方法の訓練が重要となります。飲食店の場合、延べ床面積150㎡以上で消火器の設置が義務付けられており、火を使用する設備がある場合は規模に関係なく必要です。避難器具も基準に従って設置しなければなりません。
消防用設備等には、消火設備・警報設備・避難設備のほかに「消防用水」と「消火活動上必要な施設」が含まれます。これらは消防隊による消火活動を支援する重要な設備です。
消防用水には防火水槽などが該当し、消火栓からの給水が困難な場所や大規模火災時の水源として機能します。消火活動上必要な施設には以下の5種類があります。
排煙設備は火災時の煙を排出し、避難経路の視界を確保する役割を持ちます。連結送水管は高層建築物で消防隊が上階へ送水するための配管設備で、地上階の送水口から各階の放水口へ水を供給します。非常コンセント設備は消防隊が使用する電動工具などの電源として設置され、消火活動を効率化します。
建築事業者として知っておくべき点は、これらの設備が消防隊による本格的な消火活動に不可欠であることです。特に地下街や高層建築物では、これらの設備の設置が厳格に求められています。
消防法第17条の3の3により、防火対象物の関係者(所有者・管理者・占有者)は消防用設備等を定期的に点検し、その結果を消防長または消防署長に報告する義務があります。点検には機器点検と総合点検の2種類があり、それぞれ実施頻度が定められています。
参考)消防用設備等の点検・報告は義務です。
点検の種類 | 実施頻度 | 内容 |
---|---|---|
機器点検 | 6ヶ月に1回 | 設備の外観や簡易な機能確認を行い、不具合や異常がないかを目視や手動操作で確認 |
総合点検 | 1年に1回 | 消火器具、火災報知器、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備などが正常に作動するか総合的に確認 |
点検結果の報告期間は防火対象物の種類により異なり、特定防火対象物(飲食店や物品販売店舗など不特定多数が出入りする施設)は1年に1回、非特定防火対象物(マンションなど)は3年に1回の報告が必要です。延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物については、消防設備士または消防設備点検資格者による点検が義務付けられています。
参考)消防用設備等の点検・報告について
点検を怠ると消防法違反となり罰則が科される可能性があるため、建築事業者は施主に対して点検義務を明確に説明する必要があります。点検結果報告書には総括表・点検者一覧表・点検票を添付し、建物を管轄する消防署へ提出します。
参考)マンションの消防点検は義務? 対象となる建物や点検の種類、期…
総務省消防庁の「消防用設備等の点検基準、点検要領、点検票」ページ
消防用設備等の点検に関する基準や様式が掲載されており、点検項目や点検方法の詳細を確認できます。建築事業者が施主に説明する際の参考資料として有用です。
初田製作所「消防法などの用語を1からわかりやすく解説」
消防法や建築基準法で使われる専門用語を分かりやすく解説しており、防火対象物の分類や消防用設備の種類について理解を深めることができます。
それでは、収集した情報をもとに記事を作成します。