

建設業界や化学工業において、コンクリート混和剤(凝結促進剤等)や花火の原料、あるいは熱媒体として使用されることがある「硝酸リチウム(Lithium Nitrate)」。その取り扱いには、法規制に基づいた厳格な管理が求められます。特に建設現場の管理者や倉庫管理担当者にとって、安全データシート(SDS)の理解は必須です。
本記事では、硝酸リチウムの危険性、法的規制、そして現場で起こりうるトラブルを回避するための具体的な保管・廃棄方法について、SDSの情報をベースに深掘りして解説します。単なる書類上の確認にとどまらず、実務レベルで「何をしなければならないか」を明確にします。
硝酸リチウムは、日本の消防法において「危険物」として明確に定義されています。SDSを確認すると、最も重要な法的分類として以下の情報が記載されています。
ここで特に注意すべきなのが「指定数量」です。硝酸リチウムの指定数量は「50kg」と非常に少なく設定されています。建設現場や倉庫で在庫を持つ場合、わずか2袋(25kg袋×2)で指定数量に達してしまう可能性があります。指定数量以上の量を保管・取り扱う場合は、法令に基づき、市町村長等の許可を受けた「危険物貯蔵所」での保管が義務付けられます。
また、指定数量の5分の1以上指定数量未満(10kg以上50kg未満)の場合でも、「少量危険物」として所轄の消防署への届出や、条例に基づく保管基準の遵守が必要です。これを知らずに一般倉庫に大量に保管していると、消防法違反となり、重大なペナルティや業務停止命令を受けるリスクがあります。
硝酸リチウム自体は不燃性ですが、酸素を放出することで他の物質の燃焼を激しく促進させる「支燃性」を持っています。これが第1類酸化性固体の特徴であり、火災時の消火活動を困難にする要因となります。
職場のあんぜんサイト:化学物質:硝酸リチウム(厚生労働省による詳細なGHS分類と危険性情報)
硝酸リチウムの保管において最も重要なのは、「何と一緒に置いてはいけないか」という混触危険物質の管理です。SDSの「安定性及び反応性」の項目には、以下のような警告が含まれています。
| 保管上のリスク要因 | 具体的な危険性 | 対策 |
|---|---|---|
| 可燃物・還元性物質 | 混合により発火、爆発する危険性がある。木くず、紙、油などが該当。 | 可燃物とは完全に隔離し、不燃性の床・棚で保管する。 |
| 有機化合物 | 強い酸化作用により、有機物を分解・発火させる。 | 溶剤や樹脂類と同じエリアに置かない。 |
| 湿気・水気 | 潮解性(空気中の水分を吸って溶ける性質)があり、品質劣化や容器腐食の原因となる。 | 密閉容器に入れ、乾燥した冷暗所に保管する。吸湿しても危険性は増さないが管理上不適切。 |
| 高温・熱源 | 加熱により分解し、有毒な窒素酸化物(NOx)を発生させる。 | 直射日光を避け、熱源から遠ざける。 |
現場での保管時には、以下のチェックリストを活用してください。
総務省消防庁:危険物の指定数量と保管基準に関する解説(指定数量の倍数計算等の実務情報)
万が一、作業中に硝酸リチウムが漏洩したり、作業員が曝露したりした場合の応急措置もSDSには詳しく記載されています。硝酸リチウムは「重篤な眼刺激」等の有害性が指摘されています。
人体への主な影響:
推奨される保護具:
建設現場等で粉体を取り扱う際は、以下の保護具の着用を徹底してください。
緊急時の応急処置(First Aid):
使用期限切れや余剰分の硝酸リチウムを廃棄する場合、絶対に一般ゴミとして捨ててはいけません。「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」に基づき、特別管理産業廃棄物(あるいは産業廃棄物)として適切に処理する必要があります。
廃棄時の具体的なステップ:
環境への影響として、硝酸リチウムは水生生物への有害性が懸念されるほか、地下水汚染の原因物質(硝酸態窒素)でもあります。土壌への漏洩は絶対に防がなければなりません。
建設業界、特にコンクリート補修の分野で働く方にとって、最も重要なのが「硝酸リチウム(LiNO3)」と「亜硝酸リチウム(LiNO2)」の違いです。この2つは名前が似ていますが、用途やSDS上の取り扱いが異なります。
亜硝酸リチウム(Lithium Nitrite)の主な用途:
こちらは主に「ASR(アルカリシリカ反応)抑制対策」や「鉄筋腐食抑制」のための補修材として広く普及しています。コンクリート内部に圧入工法等で注入されるのは、一般的に亜硝酸リチウムです。
硝酸リチウム(Lithium Nitrate)の主な用途:
一方、今回のテーマである硝酸リチウムは、コンクリートの「凝結促進剤」としての添加や、特殊なモルタルの成分として使われることが多い物質です。
現場でのリスク:
もし現場で「リチウム持ってきて」という指示が出た場合、どちらを指しているのかをSDSや製品ラベルで必ず確認してください。混同して使用すると、期待する硬化特性が得られないばかりか、化学反応の制御ができず、コンクリートの品質不良(強度不足や異常凝結)を引き起こす可能性があります。
また、消防法上の取り扱いも確認が必要です。硝酸リチウムは指定数量50kg(第1類 第1種酸化性固体)ですが、亜硝酸リチウムも第1類酸化性固体に該当する場合が多く、指定数量も同じ50kgであるケースが多いです(製品濃度や形状による)。しかし、毒性データや反応性は異なるため、必ずそれぞれのSDSを参照し、専用の保管スペースを設けて管理することがベストプラクティスです。
一般社団法人コンクリートメンテナンス協会:亜硝酸リチウムを用いたコンクリート補修技術(類似物質の参考情報として)

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