

実は、1級建築施工管理技士の資格を持っていても、専任技術者として認められないケースがあります。
タイル・れんが・ブロック工事業とは、建設業法上の28業種のうちの1つです。具体的には、れんが・コンクリートブロックなどにより工作物を築造したり、または工作物にタイルを張り付ける工事を指します。
代表的な工事として挙げられるのは、次の4種類です。
ここで注意が必要なのは「張り石工事」との区別です。石材を使用した工事は「石工事業」に分類されるため、タイル・れんが・ブロック工事業の許可では対応できません。つまり、工事内容と許可業種の対応関係が基本です。
また、タイル張り工事でも、防水目的のものは「防水工事業」として扱われる場合があります。工事の目的や施工方法によって業種区分が変わることがあるため、工事内容を正確に把握してから許可申請を進めることが重要です。
建設業法第3条では、1件の請負代金が500万円以上(税込)の専門工事を請け負う場合には、建設業許可が必要と定められています。500万円という金額は、材料費・労務費をすべて含んだ総額で判断されます。これは覚えておきたい数字ですね。
建設業許可を取得するには、営業所ごとに「専任技術者」を配置する義務があります。専任技術者になるための要件は、①国家資格の保有、②実務経験、の2つのルートがあります。
国家資格による専任技術者の要件(一般建設業)は以下の通りです。
ここで意外に見落とされがちなのが、「2級建築施工管理技士」の「種別」の問題です。2級建築施工管理技士には「建築」「躯体」「仕上げ」の3種別があり、タイル・れんが・ブロック工事業の専任技術者として認められるのは「仕上げ」種別のみです。「建築」や「躯体」では認められません。これは重要な条件です。
特定建設業(下請けへの発注総額が4,500万円以上の工事を含む場合)では、専任技術者の要件がさらに厳しくなります。特定建設業の専任技術者になれるのは、1級建築施工管理技士または1級建築士のみとなります。2級資格やタイル張り技能士などでは特定建設業の専任技術者にはなれない点に注意が必要です。
実務経験による場合は、学歴によって異なります。指定学科(建築学・都市工学など)を卒業した場合は高卒で5年、大卒で3年の実務経験が必要です。学歴・学科を問わない場合は10年の実務経験が必要です。実務経験の証明は工事の請負契約書や注文書・請書、請求書と入金確認書類などで行います。年間12件程度の工事実績が目安とされていますが、書類が残っていない場合は証明が困難になります。書類の管理は早めに始めるのが得策です。
国土交通省:建設業許可の取得について(専任技術者の要件詳細)
専任技術者と並んで重要なのが「経営業務管理責任者(経管)」の要件です。経管とは、建設業の経営について一定の経験を持つ者を指します。
経管として認められるには、次のいずれかの条件を満たす必要があります。
令和2年(2020年)の法改正により、経管要件は大幅に緩和されました。それ以前は「取締役または個人事業主として5年以上」という厳しい要件でしたが、改正後は組織として経営体制を整えることで対応できるようになっています。これは使えそうです。
財産的基礎については、一般建設業の場合は「自己資本500万円以上」または「500万円以上の資金調達能力」があれば要件を満たします。特定建設業の場合は「資本金2,000万円以上」「自己資本4,000万円以上」など複数の財産要件をすべて満たす必要があります。
申請手数料は、知事許可(1業種)が9万円、大臣許可(1業種)が15万円です。更新は5年ごとに必要で、更新手数料は新規と同額です。合計では初年度だけで9万円以上の費用が確実に発生します。
社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険)への加入も許可要件の一つです。令和2年の法改正により、社会保険未加入の業者は建設業許可を取得・維持できなくなりました。既存の許可業者も未加入が発覚した場合は、許可の取り消しにつながる可能性があります。
東京都都市整備局:建設業許可申請(新規申請の要件と必要書類一覧)
実務経験で専任技術者の要件を満たそうとする場合、最も多いトラブルが「証明書類の不足」です。これは深刻な問題ですね。
実務経験の証明に使える書類は主に次の通りです。
注意点として、請求書だけでは証明書類として認められないケースがほとんどです。必ず対応する入金記録(通帳の写しなど)とのセットで提出する必要があります。請求書単体では不十分が原則です。
また、自社での実務経験を証明する場合と、他社での実務経験を証明する場合では必要書類が異なります。他社での経験を使う場合は、その会社の証明(印鑑付きの実務経験証明書)が必要です。しかし前職の会社が倒産していたり、関係が悪化していたりすると証明書をもらえないケースもあります。前職の書類は早めに手元に集めておくことが、後々の大きなリスク回避につながります。
「複数の会社での経験を合算できるか?」という質問も多く寄せられます。結論は、合算できます。ただし、重複期間は1社分しかカウントされません。例えば、A社とB社で同時期に働いていた場合、その期間は1社分の経験としか認められないため、実質的な経験年数が減る可能性があります。
もう一つの落とし穴が「業種の一致」です。タイル・れんが・ブロック工事業の専任技術者になるためには、実務経験もタイル・れんが・ブロック工事の経験である必要があります。他業種の工事(例:内装仕上げ工事や左官工事)の経験は原則として算入できません。業種の対応関係に注意が必要です。
建設業許可を取得したら終わり、と思っている業者は少なくありません。しかし実際には、許可取得後にも多くの継続的な義務が発生します。これを知らずに放置すると、許可の取り消しや営業停止処分につながることがあります。
主な継続義務は次の通りです。
決算変更届(決算報告)を毎年提出していない場合、許可の更新申請自体が受理されません。過去5年分すべての決算変更届が提出されていることが更新の前提条件です。未提出期間がある場合は遡って全年度分の提出が必要になります。提出漏れは早期発見が大切です。
また、専任技術者が退職や死亡などの事情で不在になった場合、新たな専任技術者を2週間以内に配置できなければ、その業種の許可が取り消しになる可能性があります。後継者の育成と資格取得支援を組織的に行っておくことが、事業継続上のリスク管理として非常に重要です。
意外に見落とされがちな義務が「施工体制台帳の整備」です。公共工事や下請け発注総額が4,000万円以上(建築一式は6,000万円以上)の工事では、施工体制台帳の作成と保存が義務付けられています。台帳を作成しなかった場合は、監督処分の対象となります。
許可番号の管理という点では、許可取得後に「建設業許可票」(いわゆる「金看板」)を事務所と工事現場の見やすい場所に掲示する義務があります。掲示板のサイズは縦35cm以上・横40cm以上と法令で定められており、これを掲示しない場合は10万円以下の過料が科せられる可能性があります。サイズの規定まで確認しておくのが確実です。
国土交通省:建設業許可申請・届出等(決算変更届や変更届出の手続きの流れ)
建設業許可の申請は、自社で行う(セルフ申請)か、行政書士に依頼するかの2択になります。それぞれの費用と特徴を整理しておきましょう。
セルフ申請の場合、国への申請手数料(知事許可:9万円)以外の費用はほぼかかりません。しかし、書類収集・作成・申請窓口への持参と補正対応を含めると、経営者や担当者が20〜40時間程度を費やすケースが多いとされています。自社人件費に換算すると、決して「無料」ではありません。
行政書士に依頼した場合の報酬は、業者によって異なりますが新規申請で10万〜15万円程度が相場です。申請手数料9万円と合わせると、初回は合計19万〜24万円程度の費用がかかります。書類収集のサポートや申請後の補正対応も含まれていることが多く、申請の確実性は高くなります。
どちらを選ぶかは「時間と費用のどちらを優先するか」によって変わります。書類管理が得意で時間的余裕がある場合はセルフ申請でも対応可能です。初めての申請・複数業種同時申請・急ぎの申請は専門家依頼が現実的です。
経営事項審査(経審)との関係も重要です。公共工事を受注したい場合は建設業許可の取得に加え、経営事項審査(経審)の受審と入札参加資格申請が必要になります。経審は毎年の受審が必要で、審査基準日から1年7ヶ月以内の結果のみが有効とされています。公共工事を狙う場合は、許可取得と同時に経審のスケジュールも確認しておくと効率的です。これが原則です。
| 項目 | セルフ申請 | 行政書士依頼 |
|---|---|---|
| 費用(目安) | 申請手数料のみ(知事許可:9万円) | 申請手数料+報酬10〜15万円(合計19〜24万円) |
| 所要時間 | 20〜40時間程度 | 数時間(書類提供のみ) |
| 確実性 | 補正リスクあり | 補正対応込みで高い |
| 向いているケース | 時間的余裕がある・書類管理が得意 | 初回・急ぎ・複数業種同時申請 |
タイル・れんが・ブロック工事業の許可取得は、準備すべき要件が多岐にわたります。専任技術者・経管・財産要件・社会保険加入・書類管理、これらをすべて一度に確認するのはかなりの作業量です。まずは都道府県の建設業課への相談窓口(無料)を活用して、自社の現状が要件を満たしているかどうかを確認するのが最初の一歩として最も効率的です。