

クリーンルームで塗膜剥離剤を扱う前提として、メーカーが提供するSDS(安全データシート)の入手と内容確認は必須です。 具体的には、GHS分類、急性毒性区分、皮膚腐食性、眼に対する重篤な損傷性、吸入ばく露の危険性、引火性などを確認し、クリーンルーム内で使用可能なレベルかどうかを評価します。
厚生労働省は剥離剤による中毒事故が多発しているとして、ラベル・SDSの確認と、それに基づいた換気・保護具・作業方法の見直しを求めています。 ベンジルアルコール系など有機溶剤則対象物質を含む塗膜剥離剤であっても、適切な局所排気装置、呼吸用保護具、耐薬品手袋、保護眼鏡を使用すれば安全に運用可能とされており、クリーンルームでもリスクアセスメントに基づき管理することが重要です。aguajapan+1
参考リンク(法令・SDS活用の詳細解説として有用)
厚生労働省:剥離剤を使用した塗料の剥離作業における労働災害防止について
工場床塗装の剥がし方の技術資料では、剥離剤と機械研磨の使い分けを明確にしており、下地を傷めずに既存塗膜を除去したい場合は塗膜剥離剤が有利とされています。 クリーンルーム床のように、粉塵発生や振動を嫌う環境では、床剥がし機やサンダーを最小限に抑え、化学的な塗膜剥離剤で塗膜を柔らかくしてからスクレーパーで回収する方式が有効です。
選定の際は、床材(エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、導電性塗床など)との適合性に加え、VOC排出量、塩化メチレンやNMPなど高リスク溶剤の有無を確認し、非ハロゲン系・低臭・低揮発タイプを優先します。 また、アスベストやPCB、鉛、クロムなど有害物質含有の可能性がある旧塗膜では、剥離に伴い有害粉塵や汚染廃液が発生するため、産業廃棄物としての区分と処理フローを事前に整理しておく必要があります。ncc-nice+1
参考リンク(塗膜剥離剤の仕様・選定観点の参考)
アクア株式会社:塗膜剥離剤 AGUA リムロンME500
橋梁補修分野で開発されたIH式塗膜剥離工法(エレクトロリムーバー)は、塗膜を削り取らないため粉塵や騒音が少ないことが特長とされています。 この工法では、誘導加熱で塗膜と下地の界面を加熱し、塗膜が浮いた状態を作り出してから剥離するため、グラインダーやショットブラストに比べて飛散粉塵が大幅に減少します。
クリーンルームでは、同様のコンセプトで「削らずに浮かせて剥がす」工法を選択することが重要で、低発泡の塗膜剥離剤とスクレーパーを併用する方法もその一つです。 NCCが提供するMEC-REL PEELING SYSTEMは、有害な塩化メチレンやNMP、さらには有機溶剤自体を一切含まないシステムとして紹介されており、作業者と環境への負荷を抑えつつ塗膜を除去できる点で、クリーンルーム用途と親和性があります。takebi+2
参考リンク(粉塵の少ない剥離工法の解説)
NCC株式会社:安全な塗膜剥離『MEC-REL PEELING SYSTEM』
電子部品や精密機器の洗浄ではIPA(イソプロピルアルコール)が広く用いられてきましたが、引火性や有機溶剤則への適用、保管規制などの観点から、クリーンルームではIPA代替洗浄剤が検討されています。 IPA代替品として紹介される洗浄剤の中には、IPAと同等以上の洗浄力(KB値)を維持しつつ、粘度を低くして細部への浸透性を高め、沸点を下げて乾燥性を向上させた製品もあり、塗膜剥離後の最終洗浄に適用することで乾燥時間の短縮が期待できます。
模型分野の技術解説では、IPAが塗膜を「溶かす」のではなく「崩して落とす」プロセスで作用し、シンナーでは反応しない塗膜にも効果を発揮することが指摘されています。 この性質は、クリーンルーム床に残った微細な塗膜残渣の除去にも応用可能で、母材への攻撃性が低いIPA代替洗浄剤を選べば、導電性塗床や帯電防止性能への影響を抑えながらクリーニングできる余地があります。hayakou+2
参考リンク(IPA代替洗浄剤の技術資料)
IPAの代替に有機則非該当洗浄剤「エアロリンス」
一般的な床改修では「塗膜が完全に取れていれば良い」と考えがちですが、クリーンルームでは剥離剤そのものの残渣が微量でも残ると、後工程の接着不良や、半導体・医薬品の微量汚染につながるリスクがあります。 特にベンジルアルコール系やグリコールエーテル系の剥離剤は、表面には見えない薄い有機膜を残すことがあり、再塗装前に十分な水洗いと脱脂工程を組み込むことが推奨されています。
また、クリーンルームの改修工事では、床だけでなく壁・天井への二次汚染も問題になります。塗膜剥離中に飛散した微粒子やミストが高所の設備や配管に付着し、工事完了後に落下してパーティクルカウントを悪化させるケースがあるため、施工エリアの仮囲い、陰圧化、HEPA付き集塵機の常時稼働などをチェックリストに盛り込む必要があります。ncc-nice+2
例えば、クリーンルーム用の独自チェックリストには次のような観点を入れておくと有効です。jsite.mhlw+2
このような視点を取り入れることで、単なる床の塗り替え工事から一歩進んだ「クリーンルーム運用を止めないための塗膜剥離計画」として、施工品質と環境管理レベルを同時に高めることができます。ncc-nice+2