
ヨンブ ボルトとは、インチねじ規格のW1/2(ウィット1/2インチ)を指す建築業界での呼称です。この呼び方は、1/2を分母8に変換すると4/8(8分の4)となることから「4分(ヨンブ)」と呼ばれています。ねじの外径は約12.7mm(1/2×25.4mm)で、1インチあたりのねじ山は12山、ねじピッチは約2.11mmとなっています。
参考)W3/8(サンブ)、W1/2(ヨンブ) - セントラルファス…
建築現場では寸切りボルトやアンカーボルトの大半がウィット規格を使用しており、ヨンブ ボルトは3分(W3/8)と並んで最も使用頻度の高いサイズです。ウィット規格のねじ山角度は55度で、ユニファイ規格(UNC、UNF)の60度とは異なるため、混同しないよう注意が必要です。
参考)https://www.rakuten.ne.jp/gold/nejiya/chiebukuro/info_inchikikaku.html
インチねじには「ユニファイねじ規格」と「ウィットねじ規格」が存在し、W1/2のウィット規格では12山ですが、ユニファイの1/2インチ(UNC)では13山となり互換性がありません。現場でナットやボルトを選定する際は、必ずウィット規格(W表記)であることを確認する必要があります。
参考)TERASU辞書
ヨンブ ボルトの強度は、使用する材質と強度区分によって大きく異なります。一般的な建築用ボルトの強度区分には4.8、8.8、10.9、12.9などがあり、数値が大きいほど高強度となります。強度区分4.8の場合、呼び引張強さは400N/mm²(約40.8kgf/mm²)、保証荷重応力は310N/mm²(約31.6kgf/mm²)です。
参考)ボルトの強度、機械的性質と保証荷重
M12サイズ(ヨンブに近いサイズ)を例にすると、強度区分4.8では保証荷重が約2.7トンf、8.8では約5.0トンf、10.9では約7.1トンfとなります。設計時には使用条件に応じて安全率を考慮する必要があり、最低でも5倍の安全率が推奨されています。
参考)https://www.naniwaneji.co.jp/downloads/products/product_doc_005.pdf
せん断強度は通常、引張強さの60%~80%程度となるため、ボルトを横方向の力に対して使用する場合は特に注意が必要です。天井吊りボルトとして使用する場合、吊下荷重の規定値を確認し、想定される荷重に対して十分な余裕を持ったサイズと強度区分を選定することが重要です。
参考)https://www.netdenzai.com/?mode=grpamp;gid=1139250amp;sort=pamp;page=3
天井吊りボルトとしてヨンブ ボルトを使用する場合、寸切りボルト(全ねじボルト)形状が一般的に採用されています。寸切りボルトは頭部のない棒状のねじで、長さ調節が容易なため、二重天井の施工や設備配管の吊り下げに広く使用されています。
参考)https://www.monotaro.com/s/q-%E5%AF%B8%E5%88%87%E3%82%8A%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%88%20%E5%90%8A%E3%82%8A%E9%87%91%E5%85%B7/
施工時には専用の吊り金具やハンガー金具を使用し、W3/8・W1/2両方に対応した製品が多数流通しています。吊りボルトの中間部へ直接取り付けできるタイプの金具を使用すると、ナット回しの手間が省け、施工後のナット入れ忘れや追加工事でのハンガー増設が容易になります。
参考)https://www.monotaro.com/s/q-%E5%AF%B8%E5%88%87%E3%82%8A%20%E5%90%8A%E3%82%8A%E9%87%91%E5%85%B7/
天井スラブから吊り下げる際は、アンカーボルトの埋め込み深さと締め付けトルクが重要です。適切な下穴径でドリル加工を行い、切り粉をブロワーやブラシで確実に除去してからアンカーをセットします。締め付けが緩すぎると荷重時に抜ける危険があり、逆に締めすぎるとねじ山が破損する恐れがあるため、トルクレンチの使用が推奨されます。
参考)アンカーボルトの種類とは?施工時の注意点
配管やダクトの固定においても、ヨンブ ボルトは重要な役割を果たしています。パイプを壁や床、構造体にしっかり固定する際、Uボルトと呼ばれるU字型のボルトが使用されることが多く、W1/2サイズが標準的に採用されています。
参考)ボルトナットの役割と種類等を解説します
Uボルトは、パイプの上からかぶせるように通し、両端にナットを取り付けて締め付けることで固定します。施工時の注意点として、Uボルトの深さが不十分な場合、ナットがボルト先端を超えて広がると、ボルトとナットに余分な圧力が加わり、パイプの力で引き抜かれる危険があります。
参考)ニュース - Uボルトを取り付ける際に注意すべきことは何です…
吊りボルトや丸鋼に電線管を支持する専用金具では、W3/8・W1/2両対応の製品が一般的で、吊りボルトや丸鋼、一般形鋼に電線管を交差支持できる構造となっています。取付穴の径は適切なサイズにする必要があり、穴が大きすぎるとボルトがぐらつき、逆にきつすぎると雄ねじが破損する恐れがあります。
電線管支持では、パイラッククリップやSCクリッポンと併用してW1/2吊りボルトへ電線管を支持する方法が標準的で、電気亜鉛めっき処理された金具が多く使用されています。結束バンド一体型の製品を使用すれば、VVFケーブルやCD管・PF管の支持も即座に行えます。
参考)https://www.monotaro.com/g/04061378/
ヨンブ ボルトの施工で最も多いトラブルは、ねじ山のつぶれや破損です。原因としては、過大なトルクでの締め付け、めねじとおねじのピッチ不一致、異物のかみこみ、材質の強度不足などが挙げられます。特にM10ボルトとW3/8は外径が近く(M10は10mm、W3/8は9.53mm)、ねじピッチも近似しているため(M10は1.5mm、W3/8は1.59mm)、誤って組み合わせると無理に締め込んでしまい、ねじ山を破損させる危険があります。
参考)ねじ・ボルトのトラブルの原因と対策 5選 【なめ・破損】 href="https://mecha-basic.com/nezihason/" target="_blank">https://mecha-basic.com/nezihason/amp;…
寸切りボルトを現場でカットする際の注意点として、グラインダーなどで切断すると切断面のねじ山がつぶれやすく、そのままナットをはめ込むとねじが引っかかって入りづらくなります。対策として、先にナットを通してから切断するか、「全ねじカッター」と呼ばれる専用工具を使用することが推奨されます。また、鉄製寸切りボルトを切断すると切断面が露出して錆びやすくなるため、防錆処理が必要です。
参考)https://www.urk.co.jp/contents/elements/element22.html
長期間の使用によるトラブルとして、ねじの錆びつきや金属疲労による破断があります。屋外や高湿度環境では、ステンレスボルト(SUS304など)や防錆処理ねじ(ユニクロ・三価クロメートなど)の使用が有効です。ただしステンレスボルト同士は焼き付き(かじり)が発生しやすいため、モリブデングリスや専用のかじり防止剤を併用することが重要です。
振動が多い環境では、スプリングワッシャーやロックナットでの緩み止め対策を検討し、高強度ボルト(8.8や10.9等級)を選定することで、金属疲労による破断リスクを低減できます。締結トルクは必ず指定値を守り、トルクレンチの使用で適正な締め付けを確保することが、長期的な安全性につながります。
セントラルファスナー:W3/8・W1/2の詳細規格
インチねじの基本規格とウィット規格の詳しい解説が掲載されています。
宇都宮螺子:寸切りボルトの用途と使用方法
寸切りボルトの切断方法や取り扱い時の注意点について詳細な情報があります。
十一屋:ボルトの強度と保証荷重の計算
強度区分別の保証荷重データと安全率の考え方が表形式でまとまっています。