DMLS(直接金属レーザー焼結)で建築金属部品を革新する方法

DMLS(直接金属レーザー焼結)で建築金属部品を革新する方法

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DMLS(直接金属レーザー焼結)で建築の金属部品製造を変える

カスタム金属部品を外注しても、鋳造の金型代だけで数十万円が消えて発注コストを8割も削れる可能性があります。


この記事の3ポイント要約
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DMLSとは何か

金属粉末にイッテルビウムレーザーを照射して直接焼き固める積層造形技術。CADデータさえあれば金型不要で複雑な金属部品を最短7日以内に製造できる。

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建築業での活用ポイント

特殊形状の接合金物・仮設金具・デザイン部材など少量多品種の金属部品で真価を発揮。大林組は金属3Dプリンター活用で建築材料コストを最大80%削減できると発表している。

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注意すべきデメリット

装置本体は数千万円〜数億円規模と高額。大量生産には不向きで、造形サイズも最大400mm角程度に制限されるため、用途を絞った活用戦略が必要。


DMLS(直接金属レーザー焼結)の基本的な仕組みと工程

DMLS(Direct Metal Laser Sintering)とは、金属粉末の薄い層を敷き詰め、そこへ高出力のイッテルビウムレーザーを照射して粒子同士を焼き固めていく積層造形技術です。つまり「金属を上から削り出す」のではなく「下から積み上げる」ことで部品を作ります。


工程はCADデータの作成から始まります。3Dモデルを用意したら、スライスソフトウェアで層ごとのデータに変換します。続いてDMLS機内のビルドプラットフォームに金属粉末を敷き、レーザーがその断面パターンをなぞって粉末を溶融・焼結します。1層が終わるとプラットフォームが約20〜50ミクロン(髪の毛の直径の約半分〜同等)だけ下がり、次の粉末層が塗布されます。このサイクルを何十〜何百回と繰り返して立体部品が完成する仕組みです。


造形後は後処理が必要です。残留応力を除去するための熱処理、サポート構造の除去、そして必要に応じた研磨・機械加工などを施します。これが基本です。


EOS社は30年以上にわたりDMLS技術を提供しており、この方式は「LPBF(レーザー粉末床溶融結合法)」とも呼ばれます。標準的な寸法精度は±0.1mmで、重要な形状では後処理加工を加えることで±0.01mmまで追い込むことも可能です。建築の接合金物や特殊金具を作るには十分な精度と言えるでしょう。


SLS(樹脂の選択的レーザー焼結)と混同されることがありますが、DMLSは金属粉末専用に設計されており、レーザーの出力も材料も別物です。SLSとDMLSは別技術だけ覚えておけばOKです。




DMSLに使われるレーザーの種類や仕組みの詳細については、EOSの公式ページも参考になります。


EOS公式:DMLS金属3Dプリンティング技術の詳細解説(世界最大手の積層造形メーカーによる技術説明)


DMLS(直接金属レーザー焼結)で使える金属材料の種類と選び方

DMLSで扱える材料の幅広さは、他の製造方法と比べて際立った強みのひとつです。建築業で実用的な材料を整理すると、以下のようになります。


材料 特徴 建築での用途例
ステンレス鋼(316L, 17-4PH) 耐食性・強度が高い 外装金物、接合部品
アルミニウム(AlSi10Mg) 軽量・熱伝導性が良い 仮設ブラケット、軽量部材
チタン(Ti-6Al-4V) 高強度・軽量・耐食性に優れる 特殊構造補強材、研究用試作
工具鋼(H13, D2) 硬度・耐摩耗性が高い 型枠用治具、耐摩耗部品
インコネル718 高温・腐食環境に強い 産業設備向け耐熱部品




建築現場でよく求められる耐食性と強度のバランスを考えると、ステンレス316Lが最初の選択肢になります。コストを意識する場合はアルミ合金が現実的です。チタンは1個あたり12,000〜120,000円程度の造形実績もあり、コスト面では高価ながら、軽量かつ強度が求められる研究用・特注部材での採用が増えています。


材料を選ぶ際は「機械的強度」「耐食性」「熱特性」「粉末の入手性」の4点を最低限確認することが条件です。特に屋外に使う部品はステンレスまたはチタン系が基本です。


なお、未溶融の金属粉末は最大95%が回収・再利用できます。これは材料ロスが大きい切削加工と比べると大きな経済的メリットで、高価な合金を使う場面ほどその恩恵が際立ちます。これは使えそうです。




各金属材料の特性と選定ポイントについて詳しく知りたい方は、下記の専門解説も参考にしてください。


KDMfab:DMLSで使える金属材料と選定の考え方(材料ごとの機械特性・使用用途を詳細比較)


DMLS(直接金属レーザー焼結)が建築業の金属部品製造にもたらすメリット

建築業でDMLSが特に力を発揮するのは「特殊形状の金属部材を少量だけ必要とする場面」です。これが原則です。


たとえば、従来の鋳造で特殊形状の接合金物を1〜10個単位で作ろうとすると、金型製作費だけで数十万〜数百万円かかり、納期も数週間を要します。DMLSならCADデータさえ用意すれば金型が不要で、最短7日以内に機能する部品が手元に届きます。大林組が2025年5月に発表した事例では、金属3Dプリンター活用により、鋳造での製造と比べてコストと納期を大幅に削減できることが確認されており、「最大80%のコスト削減の可能性」が報告されています。


🏗️ DMLSが建築業に与える主なメリット。


  • 金型不要で初期費用ゼロ:少量生産でも割高にならない。試作〜本番まで同じデータで対応可能。
  • 複雑形状の一体成形:従来の溶接・組み立てが必要だった複数部品を1部品に統合できる。4〜10点アセンブリを1個に集約した事例もある。
  • 軽量化設計が可能:ラティス(格子)構造を内部に設けることで、強度を維持しながら質量を最大40%削減できる。
  • 材料ロスが少ない:必要な分だけ材料を使うため、切削加工に比べて廃材が大幅に減少。高価な合金ほどコスト差が大きい。
  • デジタルデータで品質管理:各造形のパラメータ・粉末ロット・品質ログがデータとして残るため、トレーサビリティが確保しやすい。


実際、建設業界では就労人口の減少を背景に施工の自動化ニーズが急増しています。特殊形状の金属部材を素早く、低コストで調達できる環境は、今後の競争力に直結します。


大林組のプレスリリースには具体的な製造事例や展望が記載されています。


大林組プレスリリース(2025年5月):金属3Dプリンターを活用した大型モックアップ製造の発表資料。建築部材への応用実績と今後の展望が掲載されている。


DMLS(直接金属レーザー焼結)のデメリットと建築業で失敗しない注意点

DMLSには明確な弱点もあります。正直に把握しておかないと、現場で期待外れの結果になりかねません。厳しいところですね。


最大の課題はコストの構造です。装置本体の価格は一般的に数千万円〜数億円規模で、金属3Dプリンター市場の調査では500万〜3億円という価格帯が示されています。このため、建築会社が自社導入するには相当な投資判断が必要で、まずは外部の受託造形サービスを活用するのが現実的な入り口です。


造形サイズの制限も重要な注意点です。工業用DMLSマシンのビルドボリュームはおよそ400×400×400mm程度が上限で、それより大きい部品は分割して後から溶接する必要があります。葉書(148×100mm)が複数枚並ぶ程度の箱に収まらない部品は要注意です。


⚠️ DMLSを使う前に確認すべきデメリット。


  • 大量生産には割高:年間生産量が2,000〜10,000個を超えると、従来の鋳造や機械加工のほうが部品単価は安くなる。
  • 表面粗さが残る:出荷時のRa値(表面粗さ)は8〜15μmで、シール面や摺動面には機械加工による後処理が必要。
  • サポート構造の除去が必要:オーバーハング形状を印刷する際に設けた支持構造は、造形後にワイヤーカットや機械加工で除去しなければならない。
  • 金属粉末の取り扱いに安全対策が必要:微細な金属粉末は吸入リスクと引火リスクがあるため、不活性ガス環境や防爆仕様の設備が求められる。
  • Z軸方向の強度低下:後処理(HIP:熱間静水圧処理)を施さないと、積層方向の強度がXY面より低くなる場合がある。


DMLSに向いているかどうかは、「年間生産量2,000個未満」「複雑な内部構造または特殊形状がある」「公差は主に±0.1mmで足りる」という3条件が目安です。すべて当てはまらない場合は、CNC加工や鋳造との組み合わせ(ハイブリッドアプローチ)を検討するほうがコスト効率が上がります。


DMLS部品の精度・後処理・欠点について詳しくまとめた情報はこちらも参考になります。


Elite Mold Tech:DMLSの利点と欠点の詳細比較(CNC加工・鋳造・SLMとの比較表を含む専門解説)


DMLS(直接金属レーザー焼結)と類似技術の違い:建築業者が知っておくべき比較

DMLSと混同されやすい技術がいくつかあります。「金属を積層する」という点では同じでも、プロセスや適用範囲が異なるため、発注や導入判断で迷わないように整理しておきましょう。


技術名 焼結/溶融方式 主な特徴 建築用途での適性
DMLS レーザー(部分焼結) 幅広い金属合金に対応。精度±0.1mm ◎ 複雑形状・少量
SLM(選択的レーザー溶融) レーザー(完全溶融) 高密度・均質。単一合金向き ○ 高強度部品向け
EBM(電子ビーム溶融) 電子ビーム(真空中) チタンに最適。表面粗さが大きい △ 特殊用途向け
WAAMアーク溶接積層) アーク溶接応用 大型部材に対応。速度とコストに優れる ◎ 大型建築部材
バインダージェット バインダー噴射+焼結 高速・大量生産向き。気孔率が残る △ 精度要件が低い大量品




特に建築業で注目されるのは、DMLSと大林組が採用したWAAM技術の使い分けです。大型の炭素鋼部材(たとえば梁のブラケットや屋外構造体など)はWAAMが適し、精密な小型金物や複雑形状の接合部品はDMLSが向いています。


SLMとDMLSは「どちらもレーザーと金属粉末」という共通点から同一視されがちですが、SLMが粉末を完全溶融するのに対し、DMLSは融点ギリギリで焼結するため、多様な合金に対応できる点が違います。DMLSのほうが材料の自由度が高いということですね。


比較技術を体系的に理解したい場合は、下記の専門解説が役立ちます。


JLC3DP:SLMとDMLSの詳細比較記事(プロセス・密度・コスト・適用材料の違いを技術者目線で解説)


建築業者がDMLSを最大限に活用するための独自視点:「部品の廃番問題」を解決する使い方

ここからは、建築業のプロがあまり語らない独自の視点です。意外ですね。


建築現場で最も頭を悩ませる問題のひとつが「既存建物の改修・補修時に必要な金属部品が廃番になっている」ケースです。製造メーカーが倒産した、モデルチェンジで金型が廃棄された、そもそも特注品で図面しか残っていない——こうした状況で従来はゼロから金型を起こすか、設計を大幅に変更するしかありませんでした。


DMLSはこの「廃番部品問題」の強力な解決手段になります。現物の部品を3Dスキャナーで計測し(スキャン精度は0.05mm程度のものが市販されています)、そのデータをCADに取り込んでDMLS造形に回すことで、廃番部品を1〜数個単位で再現できます。痛いですね、と感じてきた補修コストが大幅に圧縮できるわけです。


💡 廃番部品のDMLS復元フロー。


  • ① 現物部品または図面を入手する
  • ② 3Dスキャナー(例:Artec 3D社の「Artec Eva」など)でスキャンし、STLデータに変換
  • ③ CADソフト(Fusion360等)でデータを調整・修正
  • ④ DMLS受託造形サービスに発注(材料・個数・公差を指定)
  • ⑤ 最短7〜10日で部品が届く


実際、受託造形サービスでは1個単位から発注でき、64チタン合金で30mm角程度の部品なら120,000円前後、小さな部品なら16,000円/個程度からの実績があります。金型費用ゼロでこの価格は、廃番部品の対応としては非常にリーズナブルです。


DMLSを含む金属3Dプリンターの受託造形サービスを検討する際は、「ISO9001認証の有無」「材料証明書の発行可否」「後処理対応の範囲」を確認するのが一番の近道です。


受託造形を活用した短納期・低コスト製造の具体的な事例は下記で確認できます。


3Dayプリンター:金属3Dプリンターの製作事例集(チタン・ステンレス等の造形実績と価格・納期の実例を掲載)