

建築の現場でIPA系洗浄溶剤が選ばれやすいのは、「揮発が速く、拭き取り後に残りにくい」性質が作業性に直結するためです。
ただし、IPAは万能の脱脂剤ではありません。油分の種類(切削油のような重い油、シリコーン系、ワックス系)によって落ち方が変わり、アルコール系は「油分溶解力は控えめ」という整理が必要です。
現場の失敗パターンは、表面が一見きれいに見えるのに、シーリング・両面テープ・塗装が“あとから浮く/はがれる”ケースです。これは汚れが残っていたというより、汚れが「薄く広がった」状態(拭き伸ばし)になっていることが多いので、拭き取り工程を2段に分ける発想が重要になります(1回目で汚れを回収、2回目で仕上げ拭き)。
もう一つは「布(ウエス)」です。IPAを含ませた布が再汚染源になり、脂分・可塑剤・微細粉じんを戻してしまいます。ウエスは“もったいない”より“工程の再現性”を優先し、汚れが見えなくても交換基準を決めたほうが、最終的に手戻りが減ります。
なお、IPAの純度が下がると水分が増えるため、対象物によっては影響が出る可能性があるという指摘もあります。とくに「水分に弱い」対象では、拭き取り後の乾燥や影響を想定して選定します。
IPAは消防法で第4類アルコール類に該当し、指定数量は400Lです。
指定数量以上を貯蔵・取り扱う場合は消防法の規制を受け、指定数量未満でも火災予防条例で規制され得るため、現場の保管計画は「量」と「置き方」をセットで管理します。
さらに、IPAは引火点が低い(引火しやすい)前提で、火気管理と密閉保管を徹底する必要があります。
SDSでも、火災時の危険性(極めて燃えやすい、加熱で容器が爆発するおそれ)や、消火方法(棒状注水は避ける等)が示されており、現場のKY・手順書はSDSの内容に寄せるのが安全です。
保管で“意外に”見落とされるのが、使い切りの小缶・スプレー・ウエス缶が点在して、総量が読めなくなることです。消防法の視点では「現場にある総量」が効いてくるため、資材置場・作業階・車両に分散した容器も棚卸し対象に含め、日次で入出庫を見える化したほうが安全側になります。
また、密閉容器で保管し、直射日光を避けるなどの基本を徹底するだけで、蒸気の滞留・臭気クレーム・引火リスクをまとめて下げられます。
参考)3Dプリンター導入企業必見!IPA洗浄と有機則の関係を徹底解…
IPA(イソプロピルアルコール)は第2種有機溶剤に位置付けられ、規則に沿った管理(換気設備、作業環境測定、健康診断など)が論点になります。
現場でまず効くのは、局所排気や全体換気を止めない運用、火気厳禁、そして有機溶剤用防毒マスク等のPPEの整備です。
SDSにも火気注意や防毒マスク着用などの注意が記載されているため、製品ごとにSDSを揃え、現場掲示と教育にそのまま落とし込むのが確実です。
“ありがちな誤解”は、「拭くだけだから少量で大丈夫」という判断です。拭き取りでも揮発は発生し、閉め切った室内・PS内・天井裏のような空間では濃度が上がりやすいので、換気設計と作業時間の管理が重要になります。
参考)現場で使われるシンナーとは?用途・危険性・正しい使い方を徹底…
もう一つは、作業者の慣れによる保護具の省略です。IPAは眠気・めまい等のリスクが示されることがあり、短時間でも体調・作業精度に響くため、保護具を「任意」にしない運用が望ましいです。
参考)https://www.sankyo-chem.com/wp/wp-content/uploads/ipa.pdf
なお、製品や条件によっては「許容消費量」を下回る場合に一部除外の考え方が出てくることもありますが、現場は変動要因が多いので、まずは“規制対象の前提で安全側に寄せる”ほうが事故を避けやすいです。
参考)
有機溶剤の安全衛生(SDSで危険有害性を確認し、掲示や保管など必要な対策を講じる)という基本の考え方は、洗浄剤メーカー側の解説でも強調されています。
参考)洗浄剤の法令遵守と安全対応 - ZESTRON
参考リンク(SDS等で危険有害性や対策の要点を確認する箇所の根拠)。
安全衛生(SDS/GHS)の公式情報(IPAの危険有害性、火災時の措置、保護具の考え方)
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/67-63-0.html
IPAは“脱脂できる”一方で、材料によってはダメージが出ます。PMMA(アクリル樹脂)は、エタノールやIPAなどのアルコール類に弱いという指摘があり、透明部材やカバー類で白化・クラックが出るリスクを前提にする必要があります。
また、アルコール製品がアクリル樹脂やラッカー塗装等に影響することがあるため、目立たない場所での事前テストが推奨されています。
建築では、点検口、照明カバー、サイン、養生材、シーリング周りなど「透明樹脂」「塗膜」「可塑剤を含む部材」が混在しやすく、同じ拭き取りでも結果が変わります。
ここでのコツは、IPAそのものの是非ではなく、「触っていい面」と「触らない面」を先に決めることです。たとえば“塗装直前の金属部材の脱脂”には向いても、“アクリル板の清掃”には別の手段が要る、という切り分けです。
参考)PMMA(アクリル樹脂)の特性と設計・射出成形でのポイント
また、表面が曇ったり白化したりする現象は、材料の残留応力や外力と薬品の相互作用で起きることがあり、施工時点では軽微でも、後日の温度変化や荷重で進行してクレーム化することがあります。
参考)アクリル樹脂の欠点を徹底解説で対策まで!比較で最適素材が選べ…
このため、清掃手順書には「対象素材別のNG例」を入れ、現場で判断が割れないようにしておくと、教育コストが下がります。
検索上位の解説は「危険性」や「法令」中心になりがちですが、現場で事故・指摘につながりやすいのは“廃棄物の形”です。IPAは液体としてだけでなく、含浸したウエス、洗浄後の廃液、汚れを溶かし込んだ拭き取り材として残り、ここが管理の盲点になります。
運用チェックリストとして、IPAの密閉保管、火気管理、換気、保護具、廃液の適切処理を挙げる資料もあり、廃棄まで含めて現場ルールを作る必要があります。
つまり「買う→使う→捨てる」ではなく、「買う→小分け→持ち歩く→途中で置く→回収→廃棄」という動線全体で設計しないと、いつの間にか“現場の総量”が膨らみます。
実務で効く設計は次の通りです。
また、工業用IPAはSDSに従って正しく使うことで安全に使えるが、用途外使用は事故の素になる、というメーカーの注意喚起もあります。
参考)消毒用IPA(イソプロピルアルコール)と工業用IPA(イソプ…
建築現場では“清掃”“脱脂”“除菌”が同じ言葉で混ざりやすいため、用途外使用(特に人が触れる場所や生活空間への安易な適用)を避ける線引きを、手順書に明文化しておくとトラブルが減ります。

IPA 500ml スプレータイプ イソプロピルアルコール 純度99.9%以上 ビー・エヌ 脱脂 ラベル剥がし ガラス掃除 (500mlスプレー)