アジピン酸の構造式と覚え方!ナイロン66の原料と炭素数

アジピン酸の構造式と覚え方!ナイロン66の原料と炭素数

記事内に広告を含む場合があります。

アジピン酸の構造式と覚え方

アジピン酸完全攻略ガイド
🧪
構造式の暗記

炭素数6のジカルボン酸!語呂合わせで一発記憶

🏗️
現場での応用

ナイロン66だけでなくウレタン防水材の原料にも

📝
合成反応の仕組み

ヘキサメチレンジアミンとの縮合重合を完全理解

建築現場や製造の現場で働いていると、様々な化学物質の名前を耳にすることがあると思います。「アジピン酸」もその一つですが、危険物取扱者の資格試験や、施工管理技士の基礎知識として化学を学ぶ際、この物質の構造式や性質を覚えるのに苦労した経験はないでしょうか?
アジピン酸は、単なる試験用の用語ではなく、私たちの身の回りにある「ナイロン66」や、建設現場で頻繁に使用される「ウレタン防水材」「塗料」「接着剤」の原料として非常に重要な役割を果たしている物質です。
この記事では、アジピン酸の構造式を丸暗記するのではなく、その成り立ちや用途、そして語呂合わせを使った効率的な覚え方を、現場目線でわかりやすく解説していきます。化学式を見るだけで頭が痛くなるという方でも、炭素数の法則性や「66」という数字の意味を理解すれば、驚くほど簡単に記憶に定着させることができます。現場での雑談ネタとしても使える深い知識まで、3000文字以上のボリュームで徹底的に掘り下げていきましょう。

アジピン酸の構造式と覚え方を語呂合わせで!炭素数6の秘密

 

アジピン酸の構造式を覚えるための最大のポイントは、「炭素数(Cの数)」に注目することです。化学の教科書や参考書では、難しい化学式が並んでいますが、アジピン酸は非常にシンプルな法則性を持っています。まずは、基本となる構造を理解し、有名な語呂合わせを使って確実に頭に入れましょう。


  • ジカルボン酸の仲間たち
    アジピン酸は「ジカルボン酸」というグループに属しています。「ジ」は2つ、「カルボン酸」はカルボキシ基(-COOH)のことなので、分子の両端にカルボキシ基が2つついている物質のことです。このジカルボン酸は、炭素の数が増えるごとに名前が変わっていきます。

  • 最強の語呂合わせ「オムソンガップ」
    受験化学や資格試験で最も有名な語呂合わせが「オムソンガップ(O M S G A P)」です。これは、炭素数が2から7までのジカルボン酸の頭文字をとったものです。
炭素数 名称 英語名 (頭文字) 構造の特徴
2 シュウ酸 Oxalic acid (O) HOOC-COOH (直接結合)
3 マロン酸 Malonic acid (M) メチレン基(-CH2-)が1個
4 コハク酸 Succinic acid (S) メチレン基(-CH2-)が2個
5 グルタル酸 Glutaric acid (G) メチレン基(-CH2-)が3個
6 アジピン酸 Adipic acid (A) メチレン基(-CH2-)が4個
7 ピメリン酸 Pimelic acid (P) メチレン基(-CH2-)が5個


この表を見てわかる通り、**アジピン酸(Adipic acid)は「オムソンガップ」の「A」、つまり5番目に登場しますが、炭素数は「6」**になります(炭素数2からスタートするため)。
「アジピン酸=炭素数6」ということを強烈に記憶するために、以下のフレーズを唱えてみてください。

(シュウ酸)(マロン酸)(コハク酸) (グルタル酸)ジピン酸)(ピメリン酸)」
「アジ(味)はロック(6)で!」

少し強引かもしれませんが、「アジピン酸の『アジ』と炭素数6の『6』」を結びつけることで、試験中にど忘れしても思い出すことができます。また、後述する「ナイロン66」の「6」も、このアジピン酸の炭素数6に由来しているので、そこから逆引きして思い出すのも非常に有効な手段です。youtube​
さらに、構造式の形そのものを視覚的に覚える方法もあります。
アジピン酸は、両端にCOOHがあり、その間にCH2が4つ並んでいます。
HOOCCH2CH2CH2CH2COOHHOOC - CH_2 - CH_2 - CH_2 - CH_2 - COOHHOOC−CH2−CH2−CH2−CH2−COOH
この長細い形をイメージしてください。炭素が6個並んだ鎖のような形です。この「鎖状の構造」が、ナイロンなどの繊維になったときの「しなやかさ」や「強度」を生み出す源泉となっています。丸暗記ではなく、「なぜこの形なのか」をイメージすることが、長期記憶への近道です。

アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの合成反応と縮合重合


アジピン酸を語る上で絶対に外せないのが、世界初の合成繊維である「ナイロン66」の原料であるという事実です。この合成反応の仕組みを理解すると、アジピン酸の構造式がなぜあの形をしているのかが、より深く理解できます。


  • ナイロン66の名前の由来
    「ナイロン66」という名前についている「66」という数字。これは適当につけられた番号ではありません。実は、原料となる2つの物質の炭素数を表しているのです。
    参考)【高校化学】「ナイロン66」



    • 原料1:ヘキサメチレンジアミン(炭素数が6個)

    • 原料2:アジピン酸(炭素数が6個)

    つまり、「炭素数6のジアミン」と「炭素数6のジカルボン酸(アジピン酸)」を反応させて作るから「66ナイロン」なのです。この事実を知っていれば、「アジピン酸の炭素数はいくつか?」と聞かれたときに、即座に「ナイロン66だから...6個だ!」と答えることができます。


  • 縮合重合(ポリアミド結合)のメカニズム
    合成反応では、アジピン酸の「カルボキシ基(-COOH)」と、ヘキサメチレンジアミンの「アミノ基(-NH2)」が反応します。この時、水分子(H2O)が取れて結合することを「縮合重合」と呼びます。


    1. アジピン酸側の -OH が外れる。

    2. ヘキサメチレンジアミン側の -H が外れる。

    3. これらが合体して H2O(水) になって抜ける。

    4. 残った -CO--NH- が手を繋いで -CO-NH-(アミド結合) を作る。

    この反応が、分子の左側でも右側でも延々と繰り返されることで、巨大な鎖状の高分子(ポリマー)ができあがります。これがナイロン繊維です。
    化学反応式で書くと以下のようになります。
    n HOOC(CH2)4COOH+n H2N(CH2)6NH2[CO(CH2)4CONH(CH2)6NH]n+2n H2On \ HOOC-(CH_2)_4-COOH + n \ H_2N-(CH_2)_6-NH_2 \rightarrow -[CO-(CH_2)_4-CO-NH-(CH_2)_6-NH]_n- + 2n \ H_2On HOOC−(CH2)4−COOH+n H2N−(CH2)6−NH2→−[CO−(CH2)4−CO−NH−(CH2)6−NH]n−+2n H2O
    この反応式は非常に長く複雑に見えますが、アジピン酸の部分(前半)とヘキサメチレンジアミンの部分(後半)に分けて見れば、単純な足し算と引き算(水の脱離)であることがわかります。



  • なぜアジピン酸でなければならないのか?
    炭素数が4のコハク酸や、炭素数8のスベリン酸ではなく、なぜ炭素数6のアジピン酸が選ばれたのでしょうか。それは、炭素数6同士の組み合わせが、結晶構造を作ったときに分子間の水素結合が最も綺麗に整列し、繊維としての強度、耐熱性、弾力性のバランスが最高に優れているからです。デュポン社のカローザス博士が数多くの組み合わせの中から発見した「黄金比」とも言えるのが、この炭素数6のアジピン酸なのです。


参考:映像授業のTry IT - ナイロン66の合成と構造式の解説

このリンク先では、高校化学レベルでナイロン66の合成反応が図解付きで解説されており、視覚的に反応プロセスを理解するのに役立ちます。

アジピン酸の示性式とメチレン基の書き方をマスター

試験や実務での報告書作成において、アジピン酸の化学式を書く機会があるかもしれません。その際、分子式(C6H10O4)で書くこともありますが、より構造がわかりやすい「示性式(しせいしき)」で書くことが一般的です。ここでは、間違いのない書き方の手順を解説します。


  • 示性式とは?
    分子式は原子の数だけをまとめたもの(例:C6H10O4)ですが、これではどんな性質を持っているかわかりません。示性式は、官能基(特定の性質を持つ原子の集まり)を明記した書き方です。アジピン酸の場合は「カルボキシ基(-COOH)」があることを強調して書きます。

  • 書き方のステップ


    1. 両端を決める:ジカルボン酸なので、左端にHOOC-、右端に-COOHを書きます。
      HOOCCOOHHOOC - \dots - COOHHOOC−⋯−COOH


    2. 中の炭素数を計算する:アジピン酸の総炭素数は「6」です。両端のカルボキシ基で炭素を2つ使いました(Cが2個)。残りの炭素数は $6 - 2 = 4$ 個です。


    3. メチレン基を並べる:残った4つの炭素は、すべて水素2つと結合した「メチレン基(-CH2-)」になります。これを4つ並べます。
      HOOCCH2CH2CH2CH2COOHHOOC - CH_2 - CH_2 - CH_2 - CH_2 - COOHHOOC−CH2−CH2−CH2−CH2−COOH


    4. 省略形にまとめる:CH2を4回書くのは大変ですし、読みづらいので、括弧を使ってまとめます。これが最も一般的なアジピン酸の示性式です。
      HOOC(CH2)4COOHHOOC(CH_2)_4COOHHOOC(CH2)4COOH




  • 間違いやすいポイント


    • 炭素数のカウントミス:括弧の中の数字を間違えて「6」と書いてしまうミスが多発します。「総炭素数は6だが、両端のCを除いた中身は4」であることを忘れないでください。


    • 水素の数:メチレン基は炭素1つに水素2つ(CH2)です。両端のカルボキシ基の水素も含めて、総水素数は $2 \times 4 + 2 = 10$ 個になります。検算として $H=10$ になっているか確認するとミスを防げます。


    • 左端の書き方:左端を COOH- と書くこともありますが、炭素同士が結合していることを明確にするため、化学的に厳密には HOOC- と書く方が「CとCが繋がっている」ことが伝わりやすく、好まれる場合があります。




このように、構造を分解して理解すれば、丸暗記しなくても論理的に化学式を導き出すことができます。現場で化学物質のリストを作成したり、SDS(安全データシート)を確認したりする際にも、この「示性式を読む力」は非常に役立ちます。

アジピン酸の性質と建築材料への応用!ウレタン防水の原料


ここからは、一般的な教科書にはあまり載っていない、建設・建築業界ならではの独自視点でアジピン酸を解説します。「アジピン酸なんてナイロンを作るだけでしょ?」と思ったら大間違いです。実は、皆さんが現場で施工しているその「防水材」や「シーリング材」の中にも、アジピン酸の技術が隠れているのです。


  • ウレタン防水材の隠れた主役
    屋上やベランダの防水工事で使われる「ウレタン塗膜防水材」。この主成分はポリウレタン樹脂ですが、この樹脂を作るための「ポリエステルポリオール」という原料の合成に、アジピン酸が大量に使用されています。
    参考)アジピン酸系ポリエステル樹脂



    • 柔軟性の付与:アジピン酸は直鎖状の構造(真っ直ぐな鎖の形)をしているため、これを原料に組み込むと、できた樹脂に「柔軟性」や「伸び」を与えることができます。

    • 追従性:建物の挙動(揺れや収縮)に合わせて防水層が追従し、ひび割れを防ぐためには、この「柔らかさ(ソフトセグメント)」が不可欠です。アジピン酸はその柔らかさを生み出す重要な役割を担っています。


  • 建築用シーリング材・接着剤
    サッシ周りや目地の充填に使われる変成シリコーンやポリウレタン系シーリング材にも、アジピン酸エステル系の可塑剤(かそざい)が配合されることがあります。可塑剤とは、材料を柔らかくし、作業性を良くするための添加剤です。アジピン酸系の可塑剤は、特に**耐寒性(寒くても硬くなりにくい性質)**に優れているため、寒冷地の建築現場で使用される材料には好んで採用されます。
    参考)可塑剤製造におけるアジピン酸の役割: ポリマーの柔軟性の向上…


  • 水系塗料の架橋剤
    近年、環境配慮のために溶剤系から「水系」への転換が進んでいますが、水系のアクリルウレタン塗料などにおいて、「アジピン酸ジヒドラジド(ADH)」という物質が架橋剤として使われることがあります。これは、塗料が乾くときに樹脂同士を強固に結びつけ、耐久性のある塗膜を作るための重要な成分です。
    参考)https://www.dks-web.co.jp/catalog_pdf/548_0.pdf

    「現場で使っているあの一斗缶の中身、実はアジピン酸の親戚が入っているんだな」と考えると、無機質な化学物質にも親近感が湧いてきませんか?

参考:レゾナック - アジピン酸系ポリエステル樹脂
ここでは、アジピン酸がポリウレタン樹脂の原料としてどのように使われ、どのような特性(強靭性、耐水性など)を付与するかが専門的に解説されています。


  • 安全性と取り扱い(SDSの要点)
    現場管理者として知っておくべき安全性についても触れておきます。アジピン酸自体は、食品添加物(酸味料)としても使われるほど比較的安全性の高い物質ですが、粉末を吸入すると呼吸器への刺激があるため、取り扱いには防塵マスクが推奨されます。また、水に溶かすと弱酸性を示すため、金属容器を腐食させる可能性があります。保管や廃棄の際は、酸性物質としての適切な処理が必要です。
    参考)https://www.env.go.jp/content/900411291.pdf

アジピン酸の名称由来と脂肪からの連想記憶法

最後に、アジピン酸という名前の由来を知ることで、記憶の定着をさらに強固なものにしましょう。言葉のルーツを知ることは、単なる暗記を「教養」へと昇華させてくれます。


  • ラテン語で「脂肪」を意味する "adeps"
    アジピン酸(Adipic acid)の名前は、ラテン語の「adeps(アデプス)」に由来しています。この言葉は「動物の脂肪」を意味します。
    参考)アジピン酸 - Wikipedia

    なぜ脂肪なのか? それは、アジピン酸が歴史的に脂肪(脂)を硝酸で酸化することで初めて得られた物質だからです。
    英語で「肥満」や「脂肪組織」のことを「Adipose tissue(アディポーズ・ティッシュ)」と言いますが、これも同じ語源です。「メタボ(脂肪)」と「アジピン酸」は、言葉の親戚なのです。

  • 「脂肪」からの連想ゲームで覚える
    この「脂肪」という意味を利用して、構造式や性質を覚える連想ゲームを作ってみましょう。


    • イメージ:「脂(あぶら)」=「鎖が長い」=「炭素数が多い」

    • 連想:お腹についた脂肪(Adeps)は、なかなか落ちない長い鎖(炭素鎖)。その長さは炭素6個分!

    • 記憶:「アジピン酸は脂肪のアブラ。アブラっこいから炭素がいっぱい(6個)ある」

    また、脂肪酸(fatty acid)の多くは直鎖状の構造をしています。アジピン酸も綺麗な直鎖状の構造(HOOC-(CH2)4-COOH)をしているため、「脂肪由来だから、素直な真っ直ぐな形をしているんだな」と理解することができます。


  • 現在の製法とのギャップ
    現在では、動物の脂肪から作ることはほとんどなく、石油化学のプロセス(シクロヘキサンやシクロヘキサノールの酸化)で大量生産されています。しかし、名前には「脂肪から生まれた」という歴史が刻まれています。
    参考)アジピン酸

    現場でナイロン製のロープや結束バンドを見かけたら、「これは元々、脂肪の研究から生まれた酸を使っているんだな」と思い出してみてください。無味乾燥な化学用語に、歴史的なストーリーという彩りが加わります。

いかがでしたでしょうか。アジピン酸は単なる試験勉強のための暗記項目ではなく、ナイロン66という革命的な素材を生み出し、さらには現代の建築現場で欠かせないウレタン防水やシーリング材の性能を支える、極めて実用的な化学物質です。
「炭素数6」「オムソンガップのA」「脂肪由来」という3つのキーワードを覚えておけば、構造式も自然と頭に浮かんでくるはずです。明日からの現場や学習において、この知識が少しでも役立つことを願っています。

 

 


【公式】ネイルエス nail S jupiter green glass 10ml