旭化成建材株式会社境工場が担うヘーベル生産の全貌

旭化成建材株式会社境工場が担うヘーベル生産の全貌

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旭化成建材株式会社境工場が担うヘーベル生産の全貌

ゼロアスベストのはずのALCを解体すると、石綿ばく露リスクがあなたに降りかかります。


この記事のポイント
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境工場の歴史と役割

1972年に境パイル工場として操業開始。翌1973年にヘーベル生産に転換し、現在は東日本の一大ALC生産拠点として稼働している。

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ヘーベルの製造工程と軽量性

ALCは通常コンクリートの約1/4の重量しかなく、180℃・10気圧のオートクレーブ養生によって高強度と耐久性を実現している独自素材。

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石綿問題と建築業者への影響

2025年7月、1971〜1996年製の耐火接着剤に石綿(重量比3%)が含有と判明。解体・改修現場での適切な対応が法的にも義務付けられた。


旭化成建材株式会社境工場の概要とヘーベル生産の起源

茨城県猿島郡境町大字染谷106番地。旭化成建材株式会社境工場が置かれるこの住所は、東日本の建築業界にとって、ALC製品の供給源として長年にわたり重要な意味を持ってきた場所です。


境工場の歩みは1972年(昭和47年)にまでさかのぼります。当初は「境パイル工場」として、AHS(旭化成ハイストレングス)パイルの生産からスタートしました。翌1973年(昭和48年)には境ヘーベル工場が完成し、軽量気泡コンクリート(ALC)製品「ヘーベル」の本格的な生産拠点へと転換を果たしました。これは境工場の実質的な転機です。


現在の境工場では、主力製品であるALC「ヘーベル」および「ヘーベルライト」を製造しており、鉄骨造・鉄筋コンクリート造・木造など幅広い建築用途に対応した製品が全国の建築現場へ届けられています。同じ境町には、高性能断熱材ネオマフォーム」を製造するネオマフォーム工場(茨城県猿島郡境町西泉田1443-3)も隣接しており、建材の複合的な生産拠点としての性格を強めています。


境工場の所在地は東武日光線・南栗橋駅が最寄り駅となっており、首都圏からのアクセスも確保されています。建築業者や施工管理担当者がサプライヤー工場としての情報を把握しておくうえで、立地的な条件は重要な基礎情報です。


旭化成建材は、東京都千代田区神田神保町に本社を置く旭化成グループの中核建材会社です。ALC事業・基礎事業・構造資材事業・断熱事業の4事業を柱としており、境工場はそのなかでもALC事業の東日本拠点として長年にわたり安定供給を担ってきました。


旭化成建材株式会社 企業情報ページ(工場一覧・所在地の公式情報)


境工場で製造されるALCヘーベルの製造工程と品質管理

建築業に携わる多くの方が「ヘーベル=軽い外壁材」と認識していますが、その軽量性がどのプロセスで生まれるのかを正確に把握している人は少ないかもしれません。製造工程を知っておくことは、製品の特性を活かした適切な施工判断にもつながります。


まず原料から見ていきましょう。ヘーベルの主な原材料は珪石・アルミニウム粉末・石灰・セメントです。特筆すべきは珪石で、旭化成が世界各地の山を探索して発掘した独自ブレンドの素材が使われています。選び抜かれた原料から始まる、という点が品質の出発点です。


次に補強材の組み込みです。パネル内部には、防錆処理を施した鉄筋マットやスチール製金網(メタルラス)が配筋されます。この補強材は、外壁・間仕切壁・床・屋根といった使用部位ごとに配筋パターンが異なり、用途に応じた強度確保が図られています。


材料注入・成型工程では、スラリー状にした原料を補強材入りの型枠へ流し込みます。アルミニウム粉末が化学反応によって水素ガスを発生させ、スラリーは約2倍に膨張します。同時に石灰質成分の水和反応によって凝固し、切断可能な半硬化状態になった時点で脱型・パネルカットが行われます。


製造工程の最大の特徴がオートクレーブ養生です。180℃・10気圧という高温高圧蒸気の釜の中で、約10時間かけてパネルを養生します。この工程で「トバモライト結晶」という鉱物結晶が発生し、ALCパネルに高い強度と長期耐久性が付与されます。つまりオートクレーブが品質の核心です。


完成品は打音検査などの品質検査を経てから出荷されます。デザインパネルについては、表面にさまざまな意匠加工が施されるほか、グッドデザイン賞受賞製品も生まれています。


旭化成建材 HEBELの製造工程(オートクレーブ養生など製造詳細)


境工場生産のヘーベルが建築業にもたらす軽量性と耐震効果

「コンクリートなのに水に浮く」という事実を聞いたことがある建築業従事者は多いでしょうが、これはALCの特性を一言で表す最もインパクトのある表現です。これは驚きではないでしょうか。


ALCパネルは通常のコンクリートと比較して、重量が約4分の1しかありません。たとえば100kgのコンクリート外壁が、同じ厚みのALCなら約25kgで済む計算です。これは建物全体の荷重を大幅に削減することを意味します。


建物が軽くなると、地震時の慣性力も小さくなります。地震力は「質量×加速度」に比例するため、外壁を軽量化するだけで耐震性能の向上につながります。特に超高層ビルから木造住宅まで幅広い用途でALCが採用されてきた背景には、この軽量化による耐震効果が大きく関係しています。


施工する側にとっても、パネルの軽量性は現場作業の効率改善に直結します。重量物の取り扱いが減ることで、労働負荷の軽減や取り付け作業のスピードアップにもつながるからです。これは使えそうな知識です。


加えてALCは内部に無数の独立気泡を持つため、断熱性・遮音性・耐火性という複合機能を単体で実現しています。1時間・2時間などの耐火認定を取得しており、防火地域や準防火地域の建築物外壁としても採用実績が豊富です。軽量・耐震・耐火・断熱の4つが1枚のパネルに集約されているのが、ヘーベルの競争優位性の核心と言えます。


施工の際は、独自の「ロッキング構法」により、地震などで建物が変形してもパネルが追従し、破損しにくい設計になっています。パネルが固定ではなくロッキングで動く、という逆転の発想が採用されています。


旭化成建材 HEBELの特長(軽量性・耐震性・耐火性の技術的根拠)


境工場が供給する断熱材ネオマフォームと建築省エネへの貢献

境工場のすぐ近くに位置するネオマフォーム工場(同じ境町内)は、ALC事業と並ぶ重要な生産拠点です。境地区は「ALC+断熱材」という2つの主力製品を同一エリアで生産するという、旭化成建材の製品戦略を体現した場所になっています。


ネオマフォームは、フェノールフォーム系の高性能断熱材です。最大の特徴は熱伝導率λ=0.020W/(m・K)という数値で、これは発泡系断熱材のなかでもトップクラスの断熱性能を誇ります。数値が小さいほど断熱性能が高いことを表すのが熱伝導率です。


具体的にどれほど高性能かというと、グラスウール16kgの断熱性能(熱伝導率λ=0.045W/(m・K)程度)と比較すると、同じ断熱効果を得るのに必要な厚みがネオマフォームなら約半分以下で済みます。スペースが限られる壁内断熱・外張り断熱においても、薄い施工厚で高い省エネ効果を発揮できます。


2000年の発売以来、ネオマフォームは「省エネ大賞」「オゾン層保護・地球温暖化防止大賞」「全国発明賞」など多数の賞を受賞しています。木造住宅の外張り断熱工法においてはトップシェアを確立しており、建築業従事者にとってなじみ深い材料のひとつです。


2014年にはネオマフォーム工場の増設ラインが完成し、生産能力がさらに強化されました。住宅省エネルギー基準の強化が続く現在の建築市場において、高性能断熱材の安定供給拠点として境地区の重要性は増す一方です。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や省エネ基準適合住宅を手掛ける建築業者にとっては、このネオマフォームの性能と安定供給体制は見逃せないポイントです。


旭化成建材 ネオマフォーム製品情報(熱伝導率・断熱性能の詳細)


境工場ALC製品に関わる耐火接着剤の石綿問題と建築業者への対応指針

「ALCはゼロアスベスト建材」——これは建築業界で長く信じられてきた常識です。しかし2025年7月11日、旭化成建材が公式に発表した内容はその認識を揺るがすものでした。


旭化成建材は、1971年〜1996年および1984年〜1996年に製造・販売していた外壁用耐火接着剤(「ヘーベルボンド」および「ライトボンド」)の一部に、石綿が含まれていることを公表しました。含有量は接着剤重量の3%に達しており、これは石綿規制基準(重量比0.1%超)を大きく上回る数値です。


重要なのは「ALCパネル本体には石綿は含まれていない」という点です。問題となっているのはパネル本体ではなく、防火地域・準防火地域において、パネルとパネルの接合部に使用された耐火接着剤です。この接着剤はパネル面に塗布・挿入されているため、施工後は見えない状態になっています。これが最大の落とし穴です。


建築業従事者として特に注意が必要なのは、解体・改修工事の場面です。ALC製品は石綿非含有と判断して作業を進めていた現場でも、1971〜1996年の施工であれば、耐火接着剤に石綿が含まれている可能性があります。厚生労働省も同年7月に関係団体への通知(基安化発0711第1号)を発出し、当該作業を行う労働者への注意喚起と適切な対応を求めています。


























確認項目 内容
対象製品 ヘーベルボンド・ライトボンド(耐火接着剤)
問題期間 1971年〜1996年(耐火接着剤として使用された建物)
石綿含有量 接着剤重量の約3%(規制基準0.1%超)
対象エリア 防火地域・準防火地域の建築物
リスク場面 解体・改修作業時のばく露リスク


解体・改修作業を担う建築業者は、施工年・防火地域指定・メーカー・接着剤使用有無の4点を事前に確認する必要があります。疑いのある場合は石綿分析調査を行い、関係法令に従った適切な作業・処分が求められます。石綿障害予防規則および大気汚染防止法の遵守は法的義務です。


厚生労働省 基安化発0711第1号(旭化成建材耐火接着剤の石綿含有に関する注意喚起通知・2025年7月)


旭化成建材 過去の弊社製品耐火認定における副構成材料の石綿含有について(公式発表・2025年7月)


These are enough information gathered.