

圧締工程を正しく管理しないと、医療施設でも構造クレームにつながります。
「圧締」とは、接着剤を塗布した木材どうしを重ね合わせ、均等な圧力をかけて接着剤が完全に硬化するまで保持する操作のことです。集成材(構造用・造作用)をはじめ、CLT(直交集成板)、合板、幅はぎ材など、現代の建築に欠かせない多様な木質材料の製造において、この圧締工程が品質の根幹を担っています。
コニシ株式会社の接着用語集でも「接着剤を塗布し、はり合わせたものに均等な圧力を加えて圧着する操作」と定義されており、圧力・温度・時間の3要素を精密に管理することが求められます。圧力が不均一だと接着層に隙間が生じ、温度が不十分だと硬化が進まず、時間が足りなければ強度が確保できません。結論は「3要素の同時管理」が原則です。
特に建設現場で見落とされやすいのが「堆積時間」です。接着剤を塗布してから圧締を開始するまでの時間を指しますが、文部科学省の学校施設施工仕様書では「接着剤塗布後30分以内に圧締め作業を完了する」と明記されています。この時間を超えると接着剤が過乾燥となり、接着不良が生じるリスクが一気に高まります。これは建設業者にとって要注意のポイントです。
圧締の意味を「ただ押さえておくこと」だと軽く捉えている現場もあります。ところが実際には、圧力の均一性・接着剤の種類と養生温度・施工環境の温湿度などが複雑に絡み合い、一つのズレが集成材全体の品質を左右します。つまり、圧締は職人技の世界ではなく、管理される工程です。
日本木材情報センター:集成材の製造工程(圧締養生の詳細解説ページ)
医療施設に使われる構造用集成材は、日本農林規格(JAS)によって厳格な品質基準が設けられています。具体的には含水率(平均15%以下)、曲げヤング係数・曲げ強さの等級(例:E105-F300)、そして接着性能を確認する「煮沸剥離試験」などがあります。このうち接着性能は、まさに圧締工程の良否が直接反映される項目です。
煮沸剥離試験では、製品を熱湯に浸し、その後乾燥させて接着層の剥離長さを計測します。基準を超えた剥離が確認されれば、その集成材はJAS不適合品となります。JAS認定工場でない集成材を医療施設の構造材として使用することは、建築確認申請上の問題にもなりえます。JAS規格への適合は条件です。
圧締条件のズレがJAS違反につながる具体的なメカニズムは以下の通りです。
特に冬季は注意が必要です。夏場と冬場では硬化時間が大きく変わり、冬場の養生時間は夏場の倍以上かかる場合もあります(夏:24時間、冬:48時間が目安とされる接着剤もある)。
建築業者として医療施設の施工に関わる場合、集成材の調達先がJAS認定工場であることを確認することが最初のステップです。その上で、搬入後の保管環境(温湿度)・圧締記録の確認・接着剤の種類と施工環境の適合性を現場レベルでチェックする体制を整えることが、品質上のリスクを大幅に下げます。
農林水産省:構造用集成材の日本農林規格(JAS規格の正式条文PDF)
かつて「病院は鉄筋コンクリートが当たり前」というのが業界の常識でした。しかし現在、全国で医療施設の木造化・木質化が急速に進んでいます。その背景には、複数の要因が絡み合っています。
まず法規制の変化があります。2025年の建築基準法改正により、中層木造建築物の耐火性能基準が合理化され、5〜9階建ての木造建築を建てやすくなりました。また、耐火集成材(「燃エンウッド」など国土交通大臣認定品)の普及により、延床面積3,000㎡を超える大規模医療施設でも木を現しで使える耐火建築物が実現できるようになっています。これは建設業者にとっていいことですね。
次に、医療・福祉の観点からのエビデンスが蓄積されています。木材が患者に与える心理的効果として、以下のような研究結果が報告されています。
東京大学と三井不動産グループが2023年から実施している実証研究でも「木の空間は身体に良い」ことを科学的に証明する取り組みが進んでいます(快眠・認知症予防の観点)。
実際の事例として、住友林業が施工した「千里リハビリテーション病院アネックス棟」では、欧州アカマツの集成材による柱・梁架構が採用されました。新柏クリニック(竹中工務店設計)は、耐火集成材「燃エンウッド」を使用した医療施設としては国内屈指の大型耐火木造建築物として知られています。医療施設建築のニーズはすでに現実のものとなっています。
国土交通省関連:木を活かした医療施設パンフレット(具体事例集)
建設業者が医療施設の木造建築案件に携わる際、圧締に関連した品質管理で押さえるべき実践的な手順があります。段階に分けて整理すると、次のようになります。
① 材料調達段階
構造用集成材はJAS認定工場から調達することが大前提です。JAS認定工場の集成材には、樹種・強度等級(E値・F値)・含水率・接着剤の種類などが明記されたラベルが貼付されています。ラベルの確認は必須です。これを怠ると、設計仕様との不一致が後から判明し、最悪の場合は部材の取り替えが必要になります。
また、調達後の保管環境も重要です。集成材のJAS規格では含水率が平均15%以下と定められていますが、現場での過乾燥や多湿環境への長期暴露は含水率を変化させ、反りや割れの原因になります。保管場所の温湿度管理は見落とされがちな盲点です。
② 施工段階(接着・圧締作業)
現場で幅はぎや継手・仕口の接着を行う場合は、以下の点を厳守する必要があります。
③ 品質確認・記録段階
構造用集成材の品質確認は、竣工後には内部を確認できないケースがほとんどです。つまり、施工中の記録こそが唯一の証明になります。プレス圧・養生時間・気温・使用した接着剤のロット番号などを施工記録として残しておくことが、後々のクレーム対応時にも有効です。記録の習慣が身を守ります。
医療施設は竣工後の稼働期間が数十年にわたります。そのため、施工段階での圧締品質管理が、建物の長期的な構造安全性を担保する最初の砦となります。手を抜けない工程です。
国土交通省:施工管理・工事監理に関する留意事項集(木材の施工管理に関する項目を含む)
圧締工程の常識は、ここ数年で大きく変わっています。建設業者がこのトレンドを把握しておくと、取引先(集成材メーカー・設計事務所)との会話で一目置かれるだけでなく、工期短縮や品質向上に直結するチャンスを見つけやすくなります。
高周波プレスによる圧締革命
従来のコールドプレス方式では、集成材の圧締に8〜24時間以上を要していました。しかし、高周波誘電加熱式接着機(高周波プレス)を導入した工場では、この工程をわずか数分〜十数分に短縮できます。接着剤のみを内部から選択的に加熱・硬化させるため、木材自体への熱影響が少なく、反りや内部応力の発生も最小限に抑えられます。
実際に高周波プレスを導入した集成材メーカーA社の事例(公開情報を基に構成)では、生産能力が従来比約3倍に増加し、JAS規格の品質基準を余裕をもってクリアできるようになったと報告されています。これは使えそうです。
CLTと耐火集成材の進化
CLT(直交集成板)は、ひき板を繊維方向が直交するように積層接着した厚型パネルで、建築の構造材としてだけでなく、土木用材・家具にも使われています。医療施設への採用実績も増えており、「医療法人令和会 森歯科」へのCLT活用事例も報告されています(CLT建築実証事業報告書、2024年)。
耐火集成材では、大林組が開発した「オメガウッド(耐火)」が最大3時間耐火の認定を取得しており、木造での大スパン架構を実現しながら耐火性能をクリアできる時代になっています。このような技術の進化を押さえておくと、医療施設案件の提案力が格段に上がります。
CLT建築実証事業の動向(2024年)
2024年3月に公開されたCLT建築実証事業報告書によると、CLT建築物の竣工件数は累計で着実に増加しており、医療・福祉施設においてもCLTの採用が増えています。スギ材・カラマツ材などの国産材を使ったCLTを集成材と組み合わせることで、地域産材の活用という付加価値も生まれます。
この情報を建設業者として意識しておくことが、医療施設案件の受注拡大につながる可能性があります。意外ですね。地元の木材を使った病院建設が、SDGs対応・地域貢献として医療法人から評価されるケースが増えているためです。
一般社団法人 日本CLT協会:CLTとは(CLTの定義・製造工程・活用事例を網羅した公式解説)
まとめ:圧締と医療施設建築の知識が建設業者の価値を高める
| 項目 | 建設業者が押さえるべきポイント |
|---|---|
| 圧締の基本 | 圧力・温度・時間の3要素の同時管理が品質の基本 |
| JAS規格 | 構造用集成材はJAS認定工場からの調達が大前提 |
| 堆積時間 | 接着剤塗布後30分以内に圧締完了が必須ルール |
| 冬季管理 | 低温時は養生時間を延長し接着不良を防ぐ |
| 医療施設の木造化 | 耐火集成材・CLTで大規模医療施設も木造化が可能に |
| 最新技術 | 高周波プレスで圧締時間が数分〜十数分に短縮可能 |
圧締は「木材をただ押し固める作業」ではありません。建築品質の根幹を支える管理工程です。医療施設建築という高い品質基準が求められるフィールドだからこそ、圧締に精通した建設業者の存在が際立ちます。JAS規格・耐火集成材・CLTの最新トレンドを押さえながら、現場での圧締品質管理を徹底することが、今後の受注拡大と信頼獲得への最短ルートといえるでしょう。

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