木質材料の種類と特徴を徹底解説|建築用途別の選び方

木質材料の種類と特徴を徹底解説|建築用途別の選び方

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木質材料の種類

木質材料の主要な分類
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無垢材

一本の丸太から切り出した天然木材で、接着剤を使用しない自然素材

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集成材

複数の板材を接着剤で貼り合わせた木材で、均一な強度と寸法安定性が特徴

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合板・木質ボード

薄板や木片を多層に重ねて成形した材料で、用途に応じた多様な種類が存在

木質材料は不動産業界において建築物の構造や内装に欠かせない素材です。大きく分類すると無垢材、集成材、合板、そして木質ボード類に分けられ、それぞれが異なる特性と用途を持っています。無垢材は一本の木から採取したつなぎ目のない材で、柱や梁に使用されることが多く、シックハウス症候群の要因となる接着剤を使用していないため自然の温もりが感じられます。しかし、狂い(割れや反り)が出る可能性があり、高価になる傾向があります。
参考)https://okitamanoki.jp/pdf/1.pdf

集成材は断面寸法の小さい木材(板材)を乾燥させて接着剤で張り合わせた木材で、無垢材より安価です。接着剤を使用していますが、乾燥した無垢材と同程度の強度をもち、狂い(割れや反り)が出にくいメリットがあります。集成材には住宅の柱や梁などに使う「構造用集成材」と、カウンターや階段などの内装に使う「造作用集成材」の2種類があります。不動産プロジェクトにおいては、コストパフォーマンスと品質の安定性から、多くの建築物で採用されています。
参考)https://www.cleverlyhome.com/kurashi/point/1961

合板は丸太を丸剥きした単板(ベニヤ)を、繊維方向が互いに直交するように3枚、4枚、5枚と奇数枚積層接着した材料です。収縮・膨張が少ない長所がありますが、木口への釘が効きにくいことや、質感に欠けることが短所とされています。一方、木質ボード類にはパーティクルボード、MDF(中質繊維板)、OSBなどがあり、木材を削ったり破砕した小片を板状に成形接着した材料です。これらは工場廃材や建築解体材を原料として利用でき、木材資源を有効活用できる環境配慮型の材料として注目されています。
参考)https://renovenoshigoto.com/article/17621/

木質材料における無垢材の特徴

 

無垢材は単一の樹木から切り出したそのままの木材で、接着剤で加工されていない天然素材です。天然木ならではの風合いと温かみがあり、木目の表情や色味の微妙な違い、香り、柔らかな肌触りなどが大きな魅力です。伐採後から長い年月をかけて少しずつ強度が増していく性質があり、特に檜は寿命が長い建材として知られています。世界最古の木造建築とも言われている法隆寺の柱が腐らないのは、雨などの水がかかっても下に流れていき、水はけと風通しのよい構造になっているからです。
参考)https://prop-furniture.com/2025/01/13/post-1296/

無垢材の中でも、木の幹を輪切りにすると中心に近い赤みをおびた部分「心材」と、外周部の白っぽい部分「辺材」があり、性質が異なります。心材は木自体を支える役目を担い、腐朽菌や虫の嫌がる物質を多く含み、水の通り道である穴もふさがっているため、辺材よりも腐朽やシロアリ被害に強く、耐久性が高いという特長があります。一方で、反り・変形が出やすく、一本の木から採れる材が限られるという欠点もあります。
参考)https://www.cleverlyhome.com/kurashi/point/2670

不動産プロジェクトでは、デザイン性や高級感が求められるダイニングテーブルの天板や、和室の内装材、床のフローリングや天井材など目に見える部分に使われることが多いです。建築用木材として使用される代表的な樹種には、杉(スギ)、檜(ヒノキ)、松(マツ)、栗(クリ)、ブナなどがあり、それぞれ特性が異なります。杉は軽量で加工しやすく耐久性も高いため柱・梁・内装材に、檜は耐水性・耐久性に優れ香りもよいため土台・柱・高級内装材に使用されます。
参考)https://iezukuri-business.homes.jp/column/purchase-00003

木質材料における集成材の特徴

集成材は木材をスライスし、木目が揃うように重ねて接着剤で固め加工した木材です。木材ごとの強度・性能のバラツキが少なく、一本の丸太を有効活用できるという良さがあります。節が多い部分や反りやすい部分を取り除いてから作られるため、見た目が安定し、品質が均一であることが大きな特徴です。加工性に優れていることや、割れ・反り・変形などが起きにくいことから、無垢材では難しい複雑な加工ができるうえに、耐久性にも優れています。
参考)https://twigsanddwarf.com/solid-laminated-ply/

集成材は合板とは異なる材料です。集成材は板材として加工した木材を縦横に繋いだものであり、合板とはベニヤともいわれる板を繊維方向が直交するように重ねて接着した材料です。集成材には構造用集成材と造作用集成材の2種類があり、構造用は柱や梁などの構造材として、造作用は無垢材の良さを生かしつつ強度に優れているため、階段、壁面、カウンターなど木材の美しさを生かした内装に使用されます。
参考)https://www.naturie.jp/column/house/myhome/solid-wood-laminated-lumber-difference-strength.html

不動産建築において集成材は、建築時の取り扱いが簡単で、コストパフォーマンスが良いことから広く採用されています。同等の品質のものが確保しやすく、大規模な建築プロジェクトでも安定供給が可能です。一方で、無垢材特有の一枚板の風合いがないという側面もあり、プロジェクトの目的や予算、デザイン要求に応じて、無垢材との使い分けを検討する必要があります。集成材の技術進歩により、現在では10階建てを超える高層建築物にも木材を構造部材等に使用できるようになっています。
参考)https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chumon/c_knowhow/laminated_wood/

木質材料における合板の特徴

合板は薄い板状の木材を、繊維方向を交互に重ねて複数枚接着剤で圧着した木材です。繊維方向が互いに直交するように、3枚、4枚、5枚と奇数枚積層接着することで、収縮・膨張が少ないという長所があります。この構造により、寸法安定性に優れ、温度や湿度の変化に強い特性を持ちます。一方で、木口への釘が効きにくいことや、質感に欠けることが短所とされています。
参考)https://www.mdpi.com/2076-3417/11/8/3479/pdf

合板の代表的な種類としてラワン合板があり、主張の強い木目がなく、面積の広い部分に使用しても木目はうるさくならない特徴があります。リノベーションプロジェクトでは本棚や建具、洗面カウンターにラワン合板を使用するケースが多く見られます。合板は基本的に水廻りが苦手ですが、特殊加工合板の中には水廻りに強い合板も開発されています。
参考)https://pays-shop.com/products/list?category_id=16

不動産建築における合板の用途は多岐にわたり、床下地材、壁下地材、屋根下地材など構造的な部分から、家具の芯材、建具材まで幅広く使用されています。合板は薄くスライスした木材を重ねるため、1本の木から多くの量を製造でき、木材資源を有効に活用できる材料です。含水率が均一で、節などの木材の欠点を除去できるため、品質が安定しており、大規模プロジェクトでも安定供給が可能です。建築コストの削減と品質の安定を両立できる材料として、多くの不動産プロジェクトで採用されています。
参考)https://www.etree.jp/content/9127/

木質材料における木質ボードの特徴

木質ボードは木材を細かくしたものに接着剤を加え、圧縮成形した板状の製品の総称です。個体差のある木材を一旦分解して再構成することで、均質な性能を持つ材料として生まれ変わります。木質ボードには、MDF(中質繊維板)、パーティクルボード、OSBなどがあり、木材の破片の大きさによって見た目や強度が異なります。これらは工場廃材、建築解体材等を原料として利用でき、どのような形状の材も原料として利用できるため、木材資源を有効活用している環境配慮型の材料として注目されています。
参考)https://www.pus.co.jp/material-mdf/

MDFは木の繊維を熱圧成型したもので、「中くらいの密度の繊維板」という意味を持ち、主に家具の素材として使用されます。均質で加工性がよく、建材、家具などに幅広く使われています。パーティクルボードは木材を削ったり破砕した小片を板状に成形接着した材料で、断熱や遮音性に優れていますが、湿気に弱いという短所があります。用途としては建築の下地材、家具心板などに使われています。
参考)https://roots-factory.com/blog/furniture/32257.html

OSBはOriented Strand Boardの略で、木材を薄いチップにした後に乾燥させ、一方向に向きを揃えて接着剤とともに積層し、高温でプレスして成形した板です。木片はある程度向きが揃えられていますが、層によって向きが交差するように作られているため、強度があります。もともとは下地材として作られた板ですが、素材のおもしろさから内装の仕上げ材として使用されることもあります。木質ボード類は加工がしやすく割れや反りに強い反面、水や湿気に弱く、劣化しやすく膨張率が高いので一般的な木材よりも強度が低いという特性を持ちます。
参考)https://diy-aikiku.blog.jp/archives/9081364.html

木質材料における先端技術材料の特徴

木質材料の先端技術として、CLT(直交集成板)とLVL(単板積層材)が注目されています。CLTはCross Laminated Timberの略で、ひき板(ラミナ)の繊維方向を直交させて積層接着した大きな板で、構造躯体に用いることで大規模な木造建築を可能にします。オーストリア発信で1990年代からその利用が進み、ヨーロッパ各国、アメリカ・カナダ・オーストラリアでも利用が進んでいます。日本では2013年にJAS(日本農林規格)での規格が定められ、2016年に建築基準法告示が公布・施行され、CLTの一般的な利用が広まりつつあります。
参考)http://miyagi-clt.com/summary/

CLTのもつ高強度な特性とコンクリートより軽く、施工も簡易なことから「木造建物への利用」に拍車がかかっています。また、木材のもつ断熱性能や吸湿性能が活かされ、癒しの効果、そして森林資源の有効活用(CO2の排出抑制)等の促進も出来るため、住宅(戸建て・集合住宅)、ホテルなどの利用も進んでいます。CLTは適切な水対策を行うことで、腐朽やカビのリスクを最小限に抑えられ、火災時には表面が炭化することで内部への燃焼を抑える特性を持ちます。
参考)https://woodcore.jp/topics/1093/

LVL(Laminated Veneer Lumber)は、複数の薄い木材単板を接着して重ねることで作られる建材です。強度が均一で安定しており、防腐・防虫処理がしやすく耐久性に優れています。寸法安定性と寸法精度が高く、乾燥された材を使用するため水分量が少なく、節なども除去されているため精度の高い製品が得られます。自然の木材は乾燥や密度のばらつきがあるため強度が不均一ですが、LVLは単板を接着して製造するため、均一な強度を持つ長尺材が作れます。LVLは強度が高く、建物の土台や梁、柱にも利用可能で、1本の木から多くの量を製造し、木材資源を有効に活用できます。
参考)https://www.japan-build.jp/hub/ja-jp/column/kz/13.html

木質材料の建築用途別の選定基準

木質材料の選定において、不動産プロジェクトでは用途、予算、デザイン要求、耐久性、メンテナンス性などを総合的に判断する必要があります。建築物の構造部分に用いられるものを「構造材」、内装等に用いられるものを「内装材」「仕上げ材」などと呼びます。構造材としては、柱や梁などに強度と耐久性が求められるため、無垢材の心材、集成材、LVLなどが適しています。特に大規模建築では、品質が均一で長尺材が得られる集成材やLVLが多く採用されています。
参考)https://www.mizuho-re.co.jp/knowledge/dictionary/wordlist/print/?n=4111

内装材や仕上げ材としては、デザイン性や質感が重視されるため、無垢材が好まれる傾向があります。床のフローリング、天井材、壁面などには、木目の美しさや香りを活かした無垢材や造作用集成材が使用されます。一方、下地材や家具の芯材など見えない部分には、コストパフォーマンスに優れた合板や木質ボードが適しています。水廻りには特殊加工された耐水性の高い合板を選択することが重要です。
参考)https://cltcellunit.com/column/%E9%9B%86%E6%88%90%E6%9D%90%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F-%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%82%84%E7%89%B9%E5%BE%B4%E3%80%81%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88/

木材の耐久性を担保するためには、材料そのものを耐久性の高いものにすることと、材料の耐久性能を低下させる原因となる水分・湿分を長期間継続的に作用させないシステムを作り込むことが基本原則です。大規模木造の耐久性向上には、構造的に重要な部材、劣化しやすい部材、点検・メンテナンスに困難な部材の3つの要素に分けて対策を講じる必要があります。木製外壁は紫外線や雨風にさらされることで劣化しやすいため、塗装や防腐剤の処理などを行い、約3~7年ごとのメンテナンスが推奨されます。木材利用は建物の環境性能の1つとしてライフサイクルコスト低減に向けた運用段階での取り組みとして評価されるようになっており、適切な維持保全の取り組みが不動産評価の加点要素となっています。
参考)https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00461/012400062/?P=2

木材の種類と特徴について詳細な解説が記載されています(置賜森林組合)
木材利用の動向と非住宅・中高層建築物での木材利用拡大の取組について(林野庁)
木造建築物の耐久性に係る評価のためのガイドライン解説(国土交通省)