第一種中高層住居専用地域の高さ制限と斜線規制の全知識

第一種中高層住居専用地域の高さ制限と斜線規制の全知識

記事内に広告を含む場合があります。

第一種中高層住居専用地域の高さ制限と斜線規制を正しく理解する

日影規制が適用されると、北側斜線制限は不要になります。


この記事の3つのポイント
📐
絶対高さ制限はゼロ、でも規制は多い

第一種中高層住居専用地域には10m・12mといった絶対高さ制限がない。しかし道路斜線・隣地斜線・北側斜線・日影規制・高度地区など複数の制限が重なって実質的な高さを決定する。

☀️
日影規制と北側斜線は「どちらか一方」が原則

建築基準法上の日影規制が適用される敷地では、北側斜線制限は除外される。ただし地区計画独自の日影規制が入ると、北側斜線と地区計画日影規制の両方がかかるレアケースも存在する。

📋
容積率・建ぺい率の数値は敷地ごとに確認必須

容積率は100〜500%、建ぺい率は30〜60%の幅がある。同じ用途地域内でも自治体・都市計画の指定値が異なるため、設計着手前に必ず個別の確認が必要になる。


第一種中高層住居専用地域の絶対高さ制限と「実質的な高さ上限」の違い

第一種中高層住居専用地域には、いわゆる「絶対高さ制限」が存在しません。これは第一種・第二種低層住居専用地域と大きく異なる点で、低層地域では建物の高さが一律10mまたは12mに抑えられていますが、中高層住居専用地域にはその上限値がないのです。


つまり理論上は高層マンションも建設できます。


ただし、「絶対高さ制限なし=どこまでも高く建てられる」という理解は危険です。実際には容積率・建ぺい率という面積系の制限に加えて、道路斜線・隣地斜線・北側斜線・日影規制という高さ系の規制が複合的にかかってきます。これらが実質的な建物の高さを決定します。


制限の種類 第一種中高層住居専用地域での適用 主な数値
絶対高さ制限 ❌ なし
容積率 ✅ あり 100・150・200・300・400・500%
建ぺい率 ✅ あり 30・40・50・60%
道路斜線制限 ✅ あり 適用距離20〜35m、勾配1.25または1.5
隣地斜線制限 ✅ あり 立ち上がり20mまたは31m、勾配1.25または2.5
北側斜線制限 ✅ 原則あり(日影規制適用時は除外) 立ち上がり10m、勾配1.25
日影規制 ✅ あり(高さ10m超の建築物が対象) 測定高さ4mまたは6.5m


容積率が最大500%に達する敷地であれば、延べ床面積の総量は確保できます。しかし容積率だけで建物の高さが自動的に決まるわけではなく、斜線制限がより厳しい制約として機能するケースが現場では多くあります。たとえば敷地面積200㎡の土地で容積率300%の場合、理論上の延べ床面積は600㎡ですが、道路幅員や北側斜線・日影規制によって実際の最高高さは大幅に切り下げられることがあります。これが「実質的な高さ上限」です。


結論として、絶対高さ制限がないことで混乱が生まれやすいということですね。数値の確認は敷地ごとに個別で行うことが原則です。


参考:日本の建築規制の基礎を解説した国土交通省の資料です。日影規制の仕組みや適用区域について公式情報を確認できます。


建築基準法(集団規定)概要 ー 国土交通省PDF


第一種中高層住居専用地域の日影規制の仕組みと測定基準の読み方

日影規制は、建物の高さを制限することで冬至の日に周囲の土地が一定時間以上の日陰にならないようにする規制です。第一種中高層住居専用地域では、高さ10mを超える建築物が対象となります。


どういうことでしょうか?


高さ10m以下の建物ならば、日影規制は一切かかりません。逆に言えば、10mをわずかでも超えた瞬間から日影規制が発動します。たとえば3階建て住宅の軒高が10.1mになった場合、日影規制の対象となります。設計の最終段階で高さ調整が必要になることもあるため、早い段階から10mラインを意識した計画が求められます。


日影規制の判定では、測定面の高さと日影時間の2軸が重要です。


種別 測定水平面の高さ 敷地境界から5〜10m以内の日影時間 敷地境界から10m超の日影時間
(一) 4mまたは6.5m 3時間 2時間
(二) 4時間 2.5時間
(三) 5時間 3時間


「種別(一)〜(三)」のどれが適用されるかは、各地方公共団体の条例によって指定されています。同じ「第一種中高層住居専用地域」でも、東京都と大阪府では種別が異なる場合があるため、設計前に必ず所管の行政窓口か条例を確認することが必要です。


測定面の高さが「4mまたは6.5m」という2択になっているのも見落とせない点です。4mはおよそ2階建て住宅の1階天井高に相当し、6.5mは2階建て住宅の軒高に近い高さです(一般的な2階建ての軒高は6〜7m程度)。どちらの高さで測るかによって建物の許容形状が変わります。これも地方公共団体の条例で定められています。


日影規制の基準日は冬至の日です。1年のうちで最も太陽高度が低く、日照時間が短い日を基準にすることで、最も厳しい条件での日陰の広がりを規制します。冬至の真太陽時で午前8時から午後4時までの8時間が判定対象の時間帯です。


日影図の作成が実務上の要となります。確認申請の際に日影図・等時間日影図を添付する必要があり、対象建築物の形状・高さ・配置をもとにCADソフトや専用ソフトで日影計算を行います。計算結果が種別の基準値を超えると確認申請が下りないため、設計段階での早期チェックが欠かせません。


参考:日影規制の内容と用途地域別の制限値を詳しく確認できます。


日影による中高層の建築物の高さの制限 ー 東建コーポレーション


第一種中高層住居専用地域の北側斜線制限が「消える」条件と注意点

北側斜線制限は、北側の敷地の日照を確保するために設けられた制限です。第一種中高層住居専用地域では、敷地の真北方向に向かって「立ち上がり10m+勾配1.25」の斜線が引かれ、建物はその斜線の内側に収まらなければなりません。


ここで多くの建築実務者が見落としがちな重要な点があります。


建築基準法上の日影規制が適用される敷地では、北側斜線制限は適用除外になります(建築基準法第56条の2)。つまり、日影規制と北側斜線制限はどちらか一方だけがかかるという構造です。大多数の第一種中高層住居専用地域では日影規制が設定されているため、実務上は「北側斜線なし」のケースが多くなります。


これは使えそうです。


しかし油断は禁物です。次の3条件が重なる敷地では、北側斜線と日影規制の両方がかかる可能性があります。


  • 建築基準法上の日影規制の対象区域から除外されている(条例による除外など)
  • 地区計画で独自の日影規制が設けられている
  • 高度地区による斜線制限も重なっている


東京都では「東京都日影による中高層建築物の高さの制限に関する条例」のもと、街並み誘導型の地区計画が定められた場合に建築基準法上の日影規制が一律で適用除外となる仕組みがあります。その代わりに地区計画内で独自の日影規制が課されるケースがあり、こうした敷地では地区計画書を精読しなければ「北側斜線が生きているかどうか」の判断を誤ります。


確認する手順は1つです。設計前に地区計画書と条例の両方を必ず確認する、この1ステップを徹底することで見落としを防げます。


また、真北方向が道路境界線に面している敷地では、天空率による北側斜線の緩和が使えないという点も注意が必要です。天空率は北側斜線に対して使える緩和手法ですが、真北が道路境界線となっている場合は適用外です。設計の自由度を確保したいケースでは、事前に天空率の適用可否を確認しておくことで、後戻りを防げます。


参考:北側斜線と日影規制の関係を行政実務の経験から詳細に解説しています。


第一種中高層住居専用地域は北側斜線はある? ー 建築基準法ガイド


第一種中高層住居専用地域の道路斜線・隣地斜線制限の実務的な読み方

高さを検討する際に日影規制や北側斜線だけを見て、道路斜線・隣地斜線を後回しにしてしまうケースが現場でも起こります。特に隣地斜線制限は「中高層以上の建物」が絡む場面では見逃せない制限です。


道路斜線制限から確認します。


道路斜線制限は、道路の採光や通風を確保するために道路に面した建物の高さを制限するものです。第一種中高層住居専用地域での数値は次のとおりです。


  • ✅ 適用距離:20m・25m・30m・35m(都市計画による指定)
  • ✅ 勾配:1.25または1.5


勾配1.25とは、道路の反対側境界線から真北に1m進むごとに1.25m分の高さが許容されるという意味です。たとえば道路幅員が6mの場合、道路の反対側境界線から建物の壁面まで6m離れていることになり、その位置で許容高さは「6×1.25=7.5m」となります。それより奥行きが深くなるほど許容高さが上がっていくイメージです。


隣地斜線制限の立ち上がりは「20mまたは31m」と設定されています。低層系の用途地域では隣地斜線制限自体が適用されませんが、第一種中高層住居専用地域では適用があります。立ち上がり20mとは「隣地境界線上の20mの地点から斜線を引き始める」という意味で、20m以下の高さの建物には実質的に隣地斜線は関係しません。


隣地斜線が実際に問題になるのは、マンションや共同住宅など高さが20mを超えるような建物を計画する場合です。勾配は1.25または2.5の2種類があり、どちらが適用されるかは都市計画で定まります。


道路斜線と隣地斜線は「どちらか一方ではなく両方を同時に確認する」が基本です。特に道路に接する面と隣地に接する面の双方で斜線をかけ、厳しいほうを設計の外形として採用します。これが斜線検討の原則です。


  • 🔸 道路幅員が狭い(4m前後)場合 → 道路斜線が建物高さを強く制約する
  • 🔸 隣地との間隔が小さい場合 → 隣地斜線の影響が大きくなる
  • 🔸 容積率が高い敷地(300%以上)→ 斜線制限が容積率より先に効いてくることが多い


斜線が制限要因になるということですね。容積率だけを見て設計を進めると後で修正が必要になりやすいため、早期段階での斜線チェックが必要です。


第一種中高層住居専用地域の高さ制限で見落とされる「高度地区」の影響

ここが多くの建築実務者が一番見落としやすいポイントです。


高度地区とは、都市計画法に基づいて市区町村が独自に定める「建築物の高さの上限または下限」の制限です。都市計画区域内であれば全国どこの自治体でも指定できます。第一種中高層住居専用地域に重ねて高度地区が指定されている場合、高度地区の制限が建築基準法の斜線制限より厳しい制約として上乗せされます。


高度地区には大きく2種類あります。


  • 🔷 最高高度地区:建物の高さの上限を設定するもの(例:第1種高度地区=10m以下など)
  • 🔷 最低高度地区:建物の高さの下限を設定するもの(例:一定の高さ以上の建物でなければならない)


東京都では高度地区が広範囲に指定されており、第一種高度地区(斜線型)・第二種高度地区(斜線型)・絶対高さ指定型の高度地区など複数の種類が存在します。たとえば東京都内の第一種中高層住居専用地域の多くに「第3種高度地区」が重複して指定されており、この場合は高度地区の斜線(立ち上がり5m・勾配0.6など)が適用されます。建築基準法上の北側斜線(立ち上がり10m)よりも厳しい制限になることがあります。


厳しいところですね。


重要なのは、高度地区の斜線には天空率緩和が使えないという点です。天空率は建築基準法第56条の斜線制限に対しては緩和の手段として使えますが、高度地区の制限は都市計画法に基づく制限であるため、天空率の適用対象外となります。これを見落として天空率での解決を想定した設計を進めると、確認申請段階で計画の大幅な修正を迫られることになります。


高度地区の確認方法は1つです。設計着手前に、設計対象地の都市計画情報(高度地区指定の有無と種別)を自治体の都市計画図または都市計画情報サービスで確認することです。東京都であれば「東京都都市計画情報等インターネット提供サービス」で簡単に確認できます。


参考:北側斜線・高度斜線と天空率の関係を詳しく解説しています。実務で誤解しやすいポイントが整理されています。


天空率は北側斜線や高度斜線で使えない?行政視点で誤解しやすいポイント ー 建築基準法ガイド


第一種中高層住居専用地域の高さ制限を正しく押さえるための実務チェックリスト

ここまでの内容をふまえて、設計着手前に確認すべき事項を整理します。これらを抜け漏れなくチェックすることで、確認申請の差し戻しや設計変更の手戻りを防ぐことができます。


確認項目 確認内容 確認先
用途地域 第一種中高層住居専用地域かどうか 都市計画図、役所窓口
容積率・建ぺい率 指定の数値(100〜500% / 30〜60%) 都市計画図、役所窓口
日影規制の有無 対象区域かどうか、種別(一)〜(三)と測定高さ 自治体条例、建築行政窓口
北側斜線の適用可否 日影規制が適用されているか → 適用されていれば北側斜線は除外 建築基準法第56条の2、条例
地区計画 地区計画の指定有無、日影規制の記載有無 地区計画書(役所窓口または自治体HP)
高度地区 指定の有無と種別(最高高度地区 / 斜線型) 都市計画図
道路幅員・方位 接道する道路の幅員・真北方向の確認 現地測量または公図
天空率の適用可否 真北が道路境界線かどうか(道路境界の場合は天空率不可) 敷地形状・方位確認


これらを1枚のチェックリストとしてプロジェクト立ち上げ時に使うことで、情報収集の漏れを防げます。自社でオリジナルのチェックシートを整備している事務所も多く、標準書式として社内共有しておくと新入社員や協力業者との情報共有にも役立ちます。


特に地区計画と高度地区の確認は後回しにされがちです。


第一種中高層住居専用地域における高さ制限は、「絶対高さ制限なし」という一点だけが独り歩きして、「自由に高く建てられる」という誤解が生まれやすい地域です。しかし実際には日影規制・北側斜線・道路斜線・隣地斜線・高度地区が複合的に作用し、それぞれの数値や適用条件が敷地ごとに異なります。


制限を正確に理解することがすべての出発点です。確認申請の差し戻しや施主への設計変更説明は時間とコストの両面で大きな損失につながります。設計の初期段階で正確な法規情報を取得し、チェックリストに基づいて体系的に確認する習慣をつけることが、建築実務者にとって最も効率的なリスク管理となります。


参考:北側斜線制限の計算方法と天空率の関係を実務向けに解説しています。


北側斜線制限とは?計算式や日影規制との関係性について解説 ー 建築基準法.com