
DV継手は「Drain・Vent(排水・通気)」の略称で、建築設備の排水管路において重要な役割を担っています。JIS K6739排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手として規格化されており、φ30からφ150までの寸法が標準化されています。
主要規格と適用範囲
DV継手の構造的特徴として、内圧がかからない排水用途を想定しているため、TS受口と比較して受口深さが短く、テーパも緩やかに設計されています。この設計により、施工性が向上し、配管作業の効率化が図れます。
基本寸法の構成要素
各継手の寸法は以下の記号で表記されます。
90°エルボ(DL)は排水配管の方向転換に使用される基本的な継手です。各呼び径における具体的な寸法を以下に示します。
90°エルボ(DL)の標準寸法
呼び径 | 品番 | L寸法 | Z寸法 |
---|---|---|---|
40mm | UDL40 | 27mm | 49mm |
50mm | UDL50 | 33mm | 58mm |
65mm | UDL65 | 42mm | 77mm |
75mm | UDL75 | 48mm | 88mm |
100mm | UDL1H | 62mm | 112mm |
125mm | UDL1Q | 75mm | 140mm |
150mm | UDL1F | 88mm | 168mm |
45°エルボ(45L)は緩やかな方向転換が必要な場合に選択されます。水流の抵抗を抑制し、スムーズな排水を実現できるため、高層建築物の排水立管において特に有効です。
45°エルボの特徴と用途
90°大曲りエルボ(LL)は、標準エルボよりも曲率半径が大きく設計されており、排水の流れがより滑らかになります。特に大口径配管や流量の多い箇所で威力を発揮します。
Y継手は排水管路の分岐部分に使用される重要な継手です。90°Y(DT)と45°Y(Y)の2種類が主流で、それぞれ異なる用途に対応しています。
90°Y継手(DT)の寸法データ
径違いタイプの90°Y継手の代表的な寸法。
呼び径組合せ | Z1 | Z2 | Z3 | L1 | L2 | L3 |
---|---|---|---|---|---|---|
75×50 | 35mm | 48mm | 74mm | 75mm | 73mm | 34mm |
100×50 | 35mm | 62mm | 84mm | 85mm | 87mm | 34mm |
100×75 | 49mm | 62mm | 98mm | 99mm | 102mm | 48mm |
150×100 | 63mm | 88mm | 142mm | 143mm | 138mm | 62mm |
45°Y継手の設計上の利点
45°Y継手は排水の合流角度が緩やかなため、以下のメリットがあります。
分岐設計における重要なポイント
排水管路の分岐設計では、流入角度と流量バランスが重要です。45°Y継手を使用することで、主管への排水流入がスムーズになり、排水システム全体の性能向上が期待できます。
特に、複数階からの排水が合流する縦管では、各階の排水タイミングが重なった際の背圧発生を抑制する効果があります。これは高層建築物において特に重要な設計要素となります。
90°大曲りエルボ(LL)および90°大曲りY(LT)は、標準継手よりも曲率半径を大きく設定した特殊継手です。これらの継手は流体力学的な観点から優れた性能を発揮します。
90°大曲りエルボ(LL)の寸法特性
呼び径 | 品番 | L寸法 | Z寸法 | 曲率半径 |
---|---|---|---|---|
50mm | ULL50 | 66mm | 91mm | 1.5D |
65mm | ULL65 | 90mm | 125mm | 1.5D |
75mm | ULL75 | 100mm | 140mm | 1.5D |
100mm | ULL1H | 128mm | 178mm | 1.5D |
125mm | ULL1Q | 140mm | 205mm | 1.5D |
150mm | ULL1F | 170mm | 250mm | 1.5D |
大曲り継手の流体力学的優位性
大曲り継手の採用により、以下の流体特性が改善されます。
90°大曲りY継手(LT)の特殊用途
90°大曲りY継手は、大流量の排水処理や特殊な配管レイアウトに対応します。特に以下の用途で威力を発揮。
径違い大曲りY継手の寸法設計
径違いタイプでは、主管と分岐管の口径差を考慮した最適な形状設計が施されています。例えば、150×100mm仕様では、主管150mmから分岐管100mmへの流路変化を滑らかに処理し、流量配分の最適化を実現しています。
DV継手の適切な選定は、排水システムの性能と耐久性に直結する重要な要素です35。実際の施工現場では、理論値だけでなく実用的な観点からの検討が必要になります。
継手選定の基本チェックポイント
特殊環境での継手選定
高温排水を扱う厨房設備では、HT-DV継手(耐熱仕様)の採用が推奨されます。これらの継手は通常のDV継手よりも耐熱性能が向上しており、60℃~95℃の高温排水に対応可能です。
施工時の寸法管理
DV継手の施工では、以下の寸法管理が重要。
配管勾配との関係性
排水管の勾配設定とDV継手の選定は密接に関連します。1/50~1/100の勾配設定において、継手部分での流速変化を最小限に抑制するため、適切な継手形状の選択が必要です。
品質管理と検査項目
施工後の品質確認では、以下の項目を重点的にチェック。
実際の施工現場では、これらの要素を総合的に判断し、最適なDV継手の組み合わせを決定することが、長期的な排水システムの安定運用につながります。継手選定は単なる部品選択ではなく、システム全体の性能を左右する重要な設計要素として位置づけられています。