
エバーゾールSは、橋梁床版防水工事において重要な役割を果たすアスファルト系のプライマーです。ゴム入りの溶剤型プライマーとして、コンクリート床版や鋼床版の防水処理に広く使用されています。
この製品の主な役割は、下地となるコンクリートや鋼材との接着を強化し、内部からの湿気を防止することにあります。特に橋梁の床版防水は、道路インフラの長寿命化に直結する重要な工程です。エバーゾールSを適切に使用することで、後に施工される塗膜防水層の密着性が向上し、防水システム全体の耐久性が確保されます。
エバーゾールSの主な特徴として、以下の点が挙げられます。
これらの特性により、橋梁床版という過酷な環境下でも安定した防水性能を発揮します。特に交通荷重や温度変化による床版の変形に対しても、適切な弾性を持った防水層の基礎として機能します。
コンクリート床版へのエバーゾールSを用いた塗膜系防水の施工は、以下の手順で行われます。正確な施工が防水性能を左右するため、各工程を丁寧に実施することが重要です。
1. 床版面の準備と点検
施工前に床版面の状態を入念に点検します。コンクリート床版の場合。
2. エバーゾールSの塗布
プライマーとしてエバーゾールSを均一に塗布します。
3. 塗膜防水材の施工
エバーゾールS乾燥後、塗膜防水材(フジロードコートなど)を施工します。
4. 珪砂の散布
塗膜防水材の仕上げと同時に珪砂(4~6号)を均一に散布します。
5. 舗装工程
防水層施工後は、直ちに舗装が可能です。
施工時の注意点として、強風時には防水材が飛散する恐れがあるため作業を中止すべきです。また、施工後は防水層に損傷を与えないよう注意し、油脂類や火気を近づけないようにします。
鋼床版への塗膜系防水施工は、コンクリート床版とは異なる特性を考慮する必要があります。エバーゾールSを鋼床版に適用する場合の特徴と施工方法について解説します。
鋼床版用エバーゾールSの特性
鋼床版用のエバーゾールSは、コンクリート床版用と比較して以下の特徴があります。
鋼床版への施工手順
鋼床版特有の注意点
鋼床版は温度変化による膨張収縮が大きいため、防水層にも高い追従性が求められます。また、振動や変形に対する抵抗性も重要です。エバーゾールSと組み合わせる防水材には、これらの特性に対応できる製品を選定する必要があります。
鋼床版継手部は特に水の侵入リスクが高いため、「昭石ノージョイント工法」などの特殊工法を併用することで、より確実な防水性能を確保できます。この工法では、エバーゾールSの塗布後、特殊なシート材や充填材を用いて継手部を処理します。
エバーゾールSを用いた塗膜系防水工事の品質を確保するためには、適切な品質管理と性能評価が不可欠です。日本道路協会の「道路橋床版防水便覧」に基づく基準と、現場での品質管理方法について解説します。
性能評価基準
エバーゾールSの主な性能評価基準は以下の通りです。
項目 | 標準値(コンクリート床版用) | 標準値(鋼床版用) |
---|---|---|
指触乾燥時間(23℃) | 60分以内 | 60分以内 |
不揮発分 | 20%以上 | 50%以上 |
作業性 | 塗り作業に支障のないこと | 塗り作業に支障のないこと |
耐水性 | 5日間で異常のないこと | 5日間で異常のないこと |
現場での品質管理ポイント
不具合事例と対策
エバーゾールS施工時に発生しやすい不具合と対策を把握しておくことも重要です。
これらの品質管理を徹底することで、エバーゾールSを用いた塗膜系防水の性能を最大限に引き出すことができます。
橋梁床版防水には様々な工法が存在します。ここでは、エバーゾールSを用いた塗膜系防水と他の防水工法を比較し、それぞれの特徴や適用場面について分析します。
主な床版防水工法の比較
防水工法 | 主な特徴 | 適用場面 | 耐久性 | コスト |
---|---|---|---|---|
エバーゾールS+塗膜系防水 | 施工性に優れ、均一な防水層形成が可能 | 一般的な橋梁床版 | 中~高 | 中 |
シート系防水(流し貼り型) | 均一な厚さ確保が容易、高い防水性 | 大規模橋梁、重交通 | 高 | 高 |
シート系防水(粘着型) | 施工が比較的簡易、火気不要 | 小規模橋梁、軽交通 | 中 | 中~低 |
グースアスファルト系 | 非常に高い防水性、舗装と一体化 | 長大橋、重要橋梁 | 非常に高 | 非常に高 |
エバーゾールS+塗膜系防水の優位点
適用場面の選定
エバーゾールSを用いた塗膜系防水は、以下のような場面で特に効果を発揮します。
一方、以下のような場合は他工法の検討も必要です。
エバーゾールSを用いた塗膜系防水は、多くの一般的な橋梁床版防水工事において、コストパフォーマンスに優れた選択肢となります。現場条件や要求性能を総合的に判断し、最適な工法を選定することが重要です。
エバーゾールSを用いた塗膜系防水の長期耐久性を確保するためには、適切な施工だけでなく、その後の維持管理も重要です。ここでは、長期耐久性の要因と効果的な維持管理方法について解説します。
長期耐久性に影響する要因
エバーゾールSを含む塗膜系防水の耐久性には、以下の要因が大きく影響します。
効果的な維持管理方法
長期耐久性向上のための新技術
近年、エバーゾールSと組み合わせて使用できる新しい技術も開発されています。