エバーゾールS 塗膜系防水 コンクリート床版 施工方法と特徴

エバーゾールS 塗膜系防水 コンクリート床版 施工方法と特徴

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エバーゾールS 塗膜系防水 施工方法

エバーゾールSによる塗膜系防水の基本情報
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主な用途

橋梁床版の防水工事、コンクリート床版や鋼床版の防水プライマーとして使用

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製品特性

アスファルト系(ゴム入り)溶剤型のプライマー、下地との接着を助け、コンクリート内部の湿気を防止

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性能指標

指触乾燥時間(23℃):60分以内、不揮発分:20%以上、優れた耐水性

エバーゾールS 塗膜系防水の基本的な特徴と役割

エバーゾールSは、橋梁床版防水工事において重要な役割を果たすアスファルト系のプライマーです。ゴム入りの溶剤型プライマーとして、コンクリート床版や鋼床版の防水処理に広く使用されています。

 

この製品の主な役割は、下地となるコンクリートや鋼材との接着を強化し、内部からの湿気を防止することにあります。特に橋梁の床版防水は、道路インフラの長寿命化に直結する重要な工程です。エバーゾールSを適切に使用することで、後に施工される塗膜防水層の密着性が向上し、防水システム全体の耐久性が確保されます。

 

エバーゾールSの主な特徴として、以下の点が挙げられます。

  • 指触乾燥時間が23℃環境下で60分以内と比較的速乾性がある
  • 不揮発分が20%以上あり、十分な被膜を形成する
  • 優れた耐水性(5日間の水浸試験で異常なし)
  • 塗り作業性に優れており、現場での施工がスムーズ

これらの特性により、橋梁床版という過酷な環境下でも安定した防水性能を発揮します。特に交通荷重や温度変化による床版の変形に対しても、適切な弾性を持った防水層の基礎として機能します。

 

エバーゾールS 塗膜系防水のコンクリート床版への施工手順

コンクリート床版へのエバーゾールSを用いた塗膜系防水の施工は、以下の手順で行われます。正確な施工が防水性能を左右するため、各工程を丁寧に実施することが重要です。

 

1. 床版面の準備と点検
施工前に床版面の状態を入念に点検します。コンクリート床版の場合。

  • 床版仕上げは原則としてコテ仕上げとする
  • レベル鉄筋が床版より突起している場合はディスクサンダー等で削る
  • コンクリート打設後、十分に乾燥させる(乾燥不足は防水層の接着力低下の原因となる)

2. エバーゾールSの塗布
プライマーとしてエバーゾールSを均一に塗布します。

  • むらなく均一に塗布する
  • 塗布後は指触等で乾燥を確認する
  • 標準使用量は0.3ℓ/㎡(コンクリート床版の場合)

3. 塗膜防水材の施工
エバーゾールS乾燥後、塗膜防水材(フジロードコートなど)を施工します。

  • 防水材の溶融は所定溶融温度を守り、局部加熱や長時間加熱を避ける
  • 均一な厚さで塗布する(標準1.2kg/㎡)
  • 排水ます周辺や端部は特に入念に施工する

4. 珪砂の散布
塗膜防水材の仕上げと同時に珪砂(4~6号)を均一に散布します。

  • 散布量は標準で0.5kg/㎡
  • 舗装との接着性向上のために重要な工程

5. 舗装工程
防水層施工後は、直ちに舗装が可能です。

  • タックコートは基本的に使用しない
  • 基層混合物、表層混合物の順に舗設する

施工時の注意点として、強風時には防水材が飛散する恐れがあるため作業を中止すべきです。また、施工後は防水層に損傷を与えないよう注意し、油脂類や火気を近づけないようにします。

 

エバーゾールS 塗膜系防水の鋼床版への適用と特殊技術

鋼床版への塗膜系防水施工は、コンクリート床版とは異なる特性を考慮する必要があります。エバーゾールSを鋼床版に適用する場合の特徴と施工方法について解説します。

 

鋼床版用エバーゾールSの特性
鋼床版用のエバーゾールSは、コンクリート床版用と比較して以下の特徴があります。

  • 標準使用量:0.4ℓ/㎡(コンクリート床版用は0.3ℓ/㎡)
  • 鋼材との接着性に特化した配合
  • 不揮発分が50%以上(コンクリート床版用は20%以上)

鋼床版への施工手順

  1. 下地処理:鋼床版表面のサビ、油分、塵埃を完全に除去し、必要に応じてブラスト処理を行います。

     

  2. エバーゾールSの塗布
    • むらなく均一に塗布
    • 乾燥を確認(指触乾燥)
    • 端部や継手部は特に入念に塗布
  3. 塗膜防水材の施工
    • フジロードコートなどの加熱型塗膜防水材を使用
    • 鋼床版継手部の納まりは別途検討が必要
  4. 珪砂散布と舗装
    • 珪砂散布後、基層・表層混合物を施工
    • 鋼床版の熱膨張を考慮した施工が必要

鋼床版特有の注意点
鋼床版は温度変化による膨張収縮が大きいため、防水層にも高い追従性が求められます。また、振動や変形に対する抵抗性も重要です。エバーゾールSと組み合わせる防水材には、これらの特性に対応できる製品を選定する必要があります。

 

鋼床版継手部は特に水の侵入リスクが高いため、「昭石ノージョイント工法」などの特殊工法を併用することで、より確実な防水性能を確保できます。この工法では、エバーゾールSの塗布後、特殊なシート材や充填材を用いて継手部を処理します。

 

エバーゾールS 塗膜系防水の品質管理と性能評価基準

エバーゾールSを用いた塗膜系防水工事の品質を確保するためには、適切な品質管理と性能評価が不可欠です。日本道路協会の「道路橋床版防水便覧」に基づく基準と、現場での品質管理方法について解説します。

 

性能評価基準
エバーゾールSの主な性能評価基準は以下の通りです。

項目 標準値(コンクリート床版用) 標準値(鋼床版用)
指触乾燥時間(23℃) 60分以内 60分以内
不揮発分 20%以上 50%以上
作業性 塗り作業に支障のないこと 塗り作業に支障のないこと
耐水性 5日間で異常のないこと 5日間で異常のないこと

現場での品質管理ポイント

  1. 材料の保管管理
    • 直射日光を避け、冷暗所で保管
    • 開封後は速やかに使用
    • 製造日から適切な期間内での使用
  2. 施工環境の管理
    • 気温5℃以下での施工は避ける
    • 湿度85%以上の環境での施工は避ける
    • 強風時は施工を中止する
  3. 施工品質の確認
    • プライマー塗布量の確認(0.3~0.4ℓ/㎡)
    • 乾燥状態の確認(指触乾燥)
    • 塗膜の均一性確認
  4. 出来形検査
    • 防水層の厚さ測定
    • 接着状態の確認
    • 端部処理の確認

不具合事例と対策
エバーゾールS施工時に発生しやすい不具合と対策を把握しておくことも重要です。

  • 乾燥不良:気温や湿度の影響で乾燥が遅れる場合は、乾燥時間を延長する
  • 塗膜のむら:適切な塗布器具の選定と技術向上で対応
  • 接着不良:下地の清掃・乾燥を徹底し、適切な塗布量を確保する

これらの品質管理を徹底することで、エバーゾールSを用いた塗膜系防水の性能を最大限に引き出すことができます。

 

エバーゾールS 塗膜系防水と他工法の比較分析

橋梁床版防水には様々な工法が存在します。ここでは、エバーゾールSを用いた塗膜系防水と他の防水工法を比較し、それぞれの特徴や適用場面について分析します。

 

主な床版防水工法の比較

防水工法 主な特徴 適用場面 耐久性 コスト
エバーゾールS+塗膜系防水 施工性に優れ、均一な防水層形成が可能 一般的な橋梁床版 中~高
シート系防水(流し貼り型) 均一な厚さ確保が容易、高い防水性 大規模橋梁、重交通
シート系防水(粘着型) 施工が比較的簡易、火気不要 小規模橋梁、軽交通 中~低
グースアスファルト系 非常に高い防水性、舗装と一体化 長大橋、重要橋梁 非常に高 非常に高

エバーゾールS+塗膜系防水の優位点

  1. 施工性
    • 液状材料のため複雑な形状にも対応可能
    • 機械化施工が可能で広範囲を効率的に施工できる
    • 天候による制約がシート系に比べて少ない
  2. コスト効率
    • 材料費がシート系に比べて安価
    • 施工速度が速く、工期短縮が可能
    • メンテナンス性に優れている
  3. 性能バランス
    • 防水性、耐久性、施工性のバランスが良い
    • 様々な下地条件に対応可能
    • 後施工の舗装との接着性が良好

適用場面の選定
エバーゾールSを用いた塗膜系防水は、以下のような場面で特に効果を発揮します。

  • 中小規模の橋梁床版防水
  • 施工期間が限られている現場
  • コスト制約がある改修工事
  • 複雑な形状や細部が多い構造物

一方、以下のような場合は他工法の検討も必要です。

  • 非常に重交通が予想される橋梁(グースアスファルト系検討)
  • 極めて長期の耐久性が求められる重要構造物(シート系検討)
  • 特殊な環境条件下での施工(専用工法検討)

エバーゾールSを用いた塗膜系防水は、多くの一般的な橋梁床版防水工事において、コストパフォーマンスに優れた選択肢となります。現場条件や要求性能を総合的に判断し、最適な工法を選定することが重要です。

 

エバーゾールS 塗膜系防水の長期耐久性と維持管理の実践的アプローチ

エバーゾールSを用いた塗膜系防水の長期耐久性を確保するためには、適切な施工だけでなく、その後の維持管理も重要です。ここでは、長期耐久性の要因と効果的な維持管理方法について解説します。

 

長期耐久性に影響する要因
エバーゾールSを含む塗膜系防水の耐久性には、以下の要因が大きく影響します。

  1. 施工品質
    • プライマー(エバーゾールS)の均一な塗布
    • 適切な乾燥時間の確保
    • 塗膜防水材の均一な厚さ
  2. 環境条件
    • 交通量と荷重条件
    • 温度変化の大きさと頻度
    • 凍結防止剤の使用状況
    • 紫外線暴露の程度
  3. 構造的要因
    • 床版のたわみ量
    • 床版のひび割れ状況
    • 排水システムの機能性

効果的な維持管理方法

  1. 定期点検の実施
    • 目視点検:舗装表面のひび割れ、水染み、膨れなどの確認
    • 打音検査:舗装と床版の剥離状況の確認
    • 赤外線調査:防水層下の水分滞留の確認
  2. 早期補修の実施
    • 局部的な損傷は早期に部分補修
    • 排水不良箇所の改善
    • 端部処理の再施工
  3. 予防的維持管理
    • 定期的なシール材の打ち替え
    • 排水設備の清掃と機能確認
    • 舗装表面のクラック処理

長期耐久性向上のための新技術
近年、エバーゾールSと組み合わせて使用できる新しい技術も開発されています。

  • リフレクションクラック抑制シート:床版のひび割れが防水層に影響するのを防ぐ
  • ペーブドレーン:舗装内部の滞水を排出し防水層への負担を軽減
  • 高弾性塗膜材:従来よりも追従性の高