

合成ゴム製フレキシブルジョイントは、給湯ラインには原則使えません。
建築設備の配管工事でフレキシブルジョイントを扱う際、「ベローズ形」と「合成ゴム製」という2種類の名称を目にする機会は多いはずです。ところが、この2つの違いを体系的に理解せず、「どちらでも同じだろう」と判断してしまうと、後々の漏水トラブルや早期劣化につながるケースがあります。
ベローズ形フレキシブルジョイントは、ステンレス鋼などの金属素材を薄板蛇腹状(ベローズ状)に成形したものです。蛇腹構造が伸縮・偏角・横変位を吸収し、耐熱性・耐圧性に優れています。一方、合成ゴム製フレキシブルジョイントは、EPDM(エチレンプロピレンゴム)やHNBR(水素化ニトリルゴム)などの合成ゴムを補強材と組み合わせた構造で、弾性が高く振動吸収に特に優れています。
つまり、ベローズ形は「剛寄りの変位吸収」、合成ゴム製は「柔寄りの振動吸収」が得意領域です。
| 項目 | ベローズ形(金属製) | 合成ゴム製 |
|---|---|---|
| 主な材質 | ステンレス鋼など | EPDM・HNBR・フッ素ゴムなど |
| 振動吸収性 | やや劣る | ◎ 優れている |
| 耐熱性 | ◎ 高温対応可 | 材質による(給湯ラインは要確認) |
| 耐圧性 | ◎ 高い | 最高使用圧力以内で使用 |
| 偏心・偏角の吸収 | △ 制限あり | ◎ 柔軟に対応 |
| 主な使用場所 | ステンレス製タンク廻りなど | ポンプ廻り・空調・冷温水配管など |
国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」では、ステンレス鋼板製タンクの配管接続にはベローズ形フレキシブルジョイントを、FRP製タンクには合成ゴム製フレキシブルジョイントを取り付けると規定しています。タンク種別によって使用する形式が明確に決まっているということですね。
選定ミスは「なんとなく似ているから」という思い込みから起こりやすいです。それぞれの構造的な特徴を理解した上で、流体・温度・設置環境の3点を必ず確認するのが基本です。
参考:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」フレキシブルジョイントの種別規定について
国土交通省 公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)(PDF)
「合成ゴム製フレキシブルジョイント」とひとくくりに言っても、使われるゴムの材質は複数あります。これは多くの建築業従事者が見落としがちなポイントです。材質を誤ると、想定よりも早く劣化が進み、配管漏水や設備停止といった問題に直結します。
建築設備の継手に使われる代表的な合成ゴムの種類は以下のとおりです。
注目すべきはEPDMと塩素の関係です。水道水には殺菌のために遊離残留塩素が微量含まれています。標準的なEPDMはこの塩素によって劣化が進み、黒粉が発生するという問題が建築設備業界で長年研究されてきました。そのため現在は「耐塩素EPDM」が主流となっています。
これは注意が必要ですね。
日本水道協会規格(JWWA B 120)では耐塩素性能試験の基準が定められており、継手メーカーもこの基準に対応した材質を採用しています。製品選定時は「耐塩素対応品かどうか」を仕様書で確認することが重要です。
空調の冷温水ラインにはEPDM、給水・給湯系には耐塩素対応のHNBRかブチルゴム、薬品を扱う系統には用途ごとに専門メーカーへの確認を行う、という3段階の考え方が判断の基準になります。
参考:継手に使用される合成ゴムの種類と特徴に関する技術解説
オーエヌ工業 技術情報「シール材としての合成ゴムの種類と注意点」
フレキシブルジョイントは「つないで終わり」の部材ではありません。施工時に見落としがちなポイントが複数あり、それが原因で早期劣化や漏水につながる事例は現場で少なくありません。
まず大前提として、フレキシブルジョイントは軸直角方向(横方向)の変位を吸収するための継手です。軸方向(長手方向)の伸縮を吸収する目的には使えません。軸方向の伸縮には伸縮継手(ベローズ形伸縮管継手など)を別途使用する必要があります。これが原則です。
施工時に特に注意すべき点は次のとおりです。
また、合成ゴム製の場合は取付方向も重要です。堺市の機械設備仕様書など一部の自治体仕様では「取付方向は原則として垂直とする」と規定されているケースがあります。水平取付が禁止されているわけではありませんが、配管の水重量がジョイントに直接かかる横向き設置は好ましくありません。
施工精度が継手の寿命を決める、といっても過言ではありません。
参考:フレキシブルジョイント・防振継手の選定と施工に関する解説
三光バルブ 配管ジャーナル「ゴム製フレキシブル継手の選定について」
「見た目は問題ないから大丈夫」という判断で点検を省略しているケースは、建築設備の現場で非常に多く見られます。しかし合成ゴム製フレキシブルジョイントは、外観に大きな変化が出る前から内部で劣化が進行している場合があります。
ゴム製フレキシブル継手の耐用年数は、一概に何年とは言えません。ただし、メーカー各社や業界標準では一般空調・衛生配管ラインで概ね10年程度を交換の目安としているケースが多く見られます。これはあくまで目安であり、以下の条件が重なると寿命は大幅に短くなります。
劣化の早期発見には定期的な目視点検が不可欠です。確認すべきポイントは次の4点です。
表面のひび割れはゴムの内部酸化・熱劣化のサインです。変色は使用流体との化学的反応が始まっているサインとして見ることができます。早期発見が肝心です。
なお、EPDMの塩素劣化による黒粉発生は、配管内部では進んでいても外観には出にくい点が厄介です。給水ラインでは水質検査の結果と合わせてゴムの状態を定期確認することを推奨します。
国土交通省の「建築保全業務共通仕様書」でも、フレキシブルジョイントを含む設備機器の定期点検は義務的業務として位置づけられています。施設管理に携わる場合は、点検計画の中に継手の状態確認を組み込むことが重要です。
参考:国土交通省「建築保全業務共通仕様書 令和5年版」設備点検に関する規定
国土交通省 建築保全業務共通仕様書 令和5年版(PDF)
ここでは、検索上位の記事ではあまり取り上げられていない、現場寄りの視点を紹介します。それは「給湯ラインへの合成ゴム製フレキシブルジョイントの流用問題」です。
建築設備の現場では、資材の流用や省コスト化を目的に、「空調用に手元にある合成ゴム製フレキシブルジョイントを給湯配管にも使おう」という判断が起こることがあります。しかしこれは、非常に大きなリスクを伴います。
標準的なEPDM製フレキシブルジョイントの最高使用温度はおおむね90℃前後に設定されています。給湯配管の設定温度は通常60〜65℃程度ですが、一時的な温度変動・サージ圧・連続稼働の複合影響で、ゴムの劣化速度は通常の数倍に達することがあります。
さらに問題なのは、給湯ラインの遊離残留塩素濃度が、水道水よりも高くなりやすいという点です。加熱・冷却を繰り返すことで塩素濃度が局所的に上昇し、耐塩素性能が不十分な材質を使用しているとゴムの分解が急速に進行します。これは意外ですね。
この問題を防ぐ実務的な対策は3点あります。
また、もう一点見落とされがちな問題として「フレキシブルジョイントを振れ止め支持なしで施工してしまう」ケースがあります。継手が変位を吸収するために柔軟に動ける一方で、配管重量や水の重量が全て継手に集中する設計は設計上の誤りです。フレキシブルジョイントの近傍には必ず適切な配管サポートを設置し、継手に過剰な負荷がかからない構造にすることが求められます。
正しい運用がコスト削減にもつながります。
10年交換サイクルをきちんと守ることで、漏水トラブルによる緊急工事費用(数十万円規模になる場合もある)を未然に防ぐことができます。計画的な設備管理の観点からも、交換時期の見直しは現場全体で共有しておくべき情報です。
参考:ゴム製フレキシブル継手の選定・使用条件に関する情報
ゼンシン株式会社 Q&A「フレキシブルジョイント・伸縮継手に関するよくある質問」