防振継手ベローズと合成ゴムの違いと正しい選び方

防振継手ベローズと合成ゴムの違いと正しい選び方

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防振継手ベローズ・合成ゴムの種類と選定・施工ポイント

合成ゴム製の防振継手を給湯ラインに使うと、数年以内に水漏れ事故になることがあります。


この記事でわかること
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ベローズ形と合成ゴム形の違い

国土交通省「公共建築工事標準仕様書」が定める2種類の防振継手の特性と使い分けの基本を整理します。

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流体・温度別の正しい選定基準

給水・給湯・薬液・空調ラインなど、用途ごとにゴム材質やベローズ材料を間違えると劣化・漏水リスクが跳ね上がります。

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施工・劣化点検のポイント

取付時の片締め・偏心NG例から、耐用年数10年を超えたゴムフレキの劣化チェック方法まで解説します。


防振継手とは何か:ベローズ形と合成ゴム形の基本構造


防振継手は、ポンプや送風機などの回転機器が発生させる振動を配管に伝えないために設置する継手です。機器と配管の間に弾性体を介在させることで、振動エネルギーを吸収・遮断します。建築設備工事においては、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修の「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」(標仕)が選定・施工の基準となります。


標仕では防振継手を大きく ベローズ形(2.2.8.1) と 合成ゴム製(2.2.8.2) の2種類に分類しています。


| 分類 | 主な材料 | 特長 |
|------|----------|------|
| ベローズ形 | SUS304・SUS316・SUS316L | 耐熱性・耐圧性・耐食性に優れる |
| 合成ゴム製 | EPDM・CR・NBR など | 振動吸収性・可とう性に優れる |


ベローズ形は蛇腹(じゃばら)状に成形したステンレス製チューブを核に持ちます。接液部が金属のため、高温流体や腐食性流体でも使用できるのが強みです。標仕では「溶接を用いずにベローズとフランジを組み込んだもの」であることが明記されており、非溶接一体成形が要求されます。これは溶接部の欠陥による漏水リスクを排除するための規定です。


合成ゴム製は補強材を挿入した合成ゴムを本体とし、鋼製または鋳鉄製フランジを組み合わせた構造です。ゴムの弾性そのものが振動を吸収するため、低周波振動の吸収効率に優れています。標仕では山形状(1山・2山など)の形状規定はありませんが、ブライン用にはエチレンプロピレンゴム(EPDM)を使用することが明確に規定されています。


なお、合成ゴム製の中にも「3山ベローズ形ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂製」が位置づけられています。つまり「ベローズ形ゴム製」という分類も存在し、PTFE製ベローズ継手はゴム系材料を接液部に用いながら蛇腹構造をもつという、両者の特性を組み合わせた製品です。これは意外と混同しやすいポイントです。


参考リンク(標仕 機械設備工事編の防振継手・フレキシブルジョイント規定が掲載されています)。
国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」(2025年2月更新版)


防振継手の合成ゴム材質の選び方:EPDM・CR・NBR・PTFEの違い

合成ゴム製防振継手を選ぶうえで最も重要なのが「ゴム材質の選定」です。ゴムフレキはゴム材質によって接触できる流体が完全に異なります。間違えると短期間で劣化し、最悪の場合は水漏れ事故に直結します。


現場でよく使われるゴム材質を整理すると、以下のとおりです。


- EPDM(エチレンプロピレンゴム):給水配管に使用可。耐オゾン・耐候性に優れ、標仕でもブライン用はEPDM指定。油脂類には使用不可。


- CR(クロロプレンゴム):空調・冷温水の循環ラインが主な用途。EPDM と比べて耐油性がやや高い。


- NBR(ニトリルゴム):耐油性が高く、油圧・潤滑油ラインに使用。熱水や薬液には不向き。


- PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)内装タイプ:給湯・薬液・プール循環水・純水・食品ラインに使用。フッ素樹脂を接液部に内装し、外側を合成ゴムで被覆する構造。


特に注意が必要なのが給湯ライン(60〜80℃)への対応です。通常のEPDM製ゴムフレキは給水には使えますが、給湯ラインには使用できません。TOZEN社の「ファコレックス」などのメーカー資料では、ゴム製フレキシブル継手の基準耐用年数を10年と定めたうえで、「給湯ラインを除く一般空調衛生配管ライン」と明記しています。給湯専用には必ずPTFE内装タイプを選ぶ必要があります。


つまり「ゴムフレキ=給水OK」とは限りません。


薬液ラインやプール循環ラインについても同様です。「建設MiL」の解説によれば、「3山ベローズ形PTFE樹脂製」は、PTFE樹脂の特性から給湯ライン・プールの薬液注入ライン・薬品ラインに使用されることが明確に記されています。ゴムが薬品に侵される前に、まず「流体に何が流れるか」を確認するのが原則です。


参考リンク(ゴムフレキ TOZEN製品の材質・用途一覧が詳しく掲載されています)。
アスカ株式会社「ゴムフレキ(TOZEN・ゼンシン)材質・用途ガイド」


ベローズ形防振継手の施工で絶対に外せない3つの注意点

ベローズ形(金属製・PTFE製いずれも)および合成ゴム製フレキを施工する際には、製品の性能を正しく発揮させるために守るべき手順があります。現場での「ちょっとした省略」が製品の早期破損や漏水事故につながるため、確認しておきましょう。


① フランジの片締めは厳禁


フレキのシール面は一般管継手に比べてシール面幅が小さく仕上がっています。対角線を交互に締め付けるタイヤ交換と同じ要領で均一に締め付けることが必須です。テクノフレックスの施工注意事項には「過大なトルクでの締め付けはパッキンを切断させる場合がある」と明記されており、締め付けトルクの推奨値(例:20〜80A口径では60N・m)を超えないよう管理します。これは知らないと損する情報です。


② 専用パッキン(ガスケット)以外の使用NG


ベローズ形フレキには専用パッキンが付属しています。他のパッキンを流用すると漏れが生じる可能性があります。特にPTFE製ベローズの場合、ガスケット不要に思われがちですが、使用する場合はPTFE等の内面パッキンを必ず選択することが製品仕様書に記されています。


③ コントロールユニットの取付が必要な場面を見逃さない


ゴムフレキは内圧がかかると、軸方向に推力(スラスト力)が発生します。推力防止(伸止め)や過大変位防止が必要な箇所にはコントロールユニット(タイロッドボルト付き)を装着しなければなりません。アトムズ社のカタログには「推力によるスラスト荷重に対する防護用配管固定が不可能な箇所、または曲管部などで使用する場合にはコントロールユニットを使用すること」と明記されています。コントロールユニットは必須です。


施工後も無用な外力・外傷を避けること、油脂・有機溶剤が付着したらただちに拭き取ること、火気を近づけないことも基本ルールです。これらの管理を怠ると、ゴム本体の亀裂・膨潤・破損が早まります。


参考リンク(アトムズ社 可とう伸縮継手・防振継手 施工注意事項と仕様が網羅されています)。
アトムズ株式会社「可とう伸縮継手・防振継手 総合カタログ」(施工・注意事項・仕様一覧)


防振継手の合成ゴムが劣化するサインと耐用年数の考え方

合成ゴム製防振継手の劣化は、見た目では分かりにくい場合があります。しかし適切なタイミングで交換しないと、ある日突然の漏水・振動伝達といったトラブルに直結します。


ゼンシン株式会社は「ゴム製フレキシブル継手の製品取替の一般的な目安は10年程度」と回答しています。また、TOZEN社「ファコレックス耐用年数」の資料では基準耐用年数を10年とし、以下の係数によって個別の耐用年数が変動するとしています。


| 要因 | 耐用年数への影響 |
|------|-----------------|
| 使用温度が高い(給湯ライン等) | 耐用年数が大幅に短縮 |
| 屋外設置(紫外線・雨ざらし) | EPDM屋外は3年程度まで低下することも |
| 流速が3m/s超 | 振動疲労が加速 |
| 薬品・油脂への不適切な接触 | 急速劣化 |


劣化の主なサインとしては、①ゴム表面のひび割れ・亀裂、②ゴムの膨潤(ふくらみ)や変形、③黒粉の発生や液体の滲み出し、④フランジ部分の腐食、⑤異常な振動・騒音の増大などが挙げられます。目視でひび割れが確認できた段階では、すでに内部劣化が進行している可能性が高いです。


定期点検は年1回以上が理想です。特に給湯ライン近傍・屋外露出部・ポンプ直近の製品は重点的に確認します。熱による劣化は表面の黒粉析出として現れる場合があり、TOZENの試験データでは通常EPDM品は塩素水(残留塩素10ppm・40℃・168時間浸漬後)に黒粉の発生が確認されています。これは早期交換の判断材料になります。


点検・交換のコストを最小化するためには、設置台帳に取付年月・口径・ゴム材質・設置環境を記録しておくことが有効です。10年を超えた製品がどこにあるかを一元管理することで、緊急漏水対応の工数とコストを大幅に削減できます。


合成ゴム製防振継手のベローズ形との性能比較:振動吸収率・許容変位量の実際

ここでは、建築設備の現場でしばしば見落とされがちな「性能数値の比較」を整理します。カタログを読み解く力が、継手選定の精度を直接左右します。


テクノフレックスの「ビッグジョイント(B710型)」を例にとると、ベローズ形防振継手の繰返し変位試験(Y=±1.0mm・100万回)で異常なしという耐久性が実証されています。許容変位量は口径50Aで軸方向±9.0mm・軸直角方向±5.0mmです。


一方、合成ゴム製(球形フレキ・2山フレキ等)では、ゴムの弾性変形による振動吸収が主体のため、低周波・大振幅の振動に対してより追従しやすい特性があります。ゴムのばね定数はステンレスベローズより低く、アトムズ社カタログでは許容偏心量として口径100Aで100mmという大きな変位量が確認できます。これはA4用紙の短辺(210mm)の約半分に相当する変位量で、地盤不等沈下対応や構造物縁切り用途では非常に有利です。


標仕では「防振効果(補強材を挿入した合成ゴム製の防振継手と同等)」という表現が使われており、ベローズ形ステンレス継手はあくまで「合成ゴム製と同等の防振性能を担保すること」を要求しています。つまり基準はあくまで合成ゴム製が基準点です。


この比較から得られる実務的な結論は以下の通りです。


- 振動吸収の柔らかさ・大変位対応 → 合成ゴム製が有利
- 高温・耐薬品・高圧・狭スペース設置 → ベローズ形(SUS316L)が有利
- 給湯ライン・薬液ライン → PTFE内装タイプまたはステンレスベローズ一択


結論は「用途と流体で選ぶ」が基本です。


どちらが優れているという議論ではなく、流体の種類・温度・設置環境・変位量の要求値を整理したうえで選定することが、建築設備従事者に求められる正確な判断です。現場で「とりあえずゴムフレキ」というような慣例的な選定は、材料不適合による早期劣化のリスクを含んでいます。設計段階から標仕・仕様書・製品カタログの3点を照合する習慣をつけると、後工程のトラブルを大幅に減らすことができます。


参考リンク(テクノフレックス社 フレキシブルメタルホース ベローズ形防振継手の性能・仕様が詳細に記載されています)。
テクノフレックス株式会社「F115 ベローズ形防振継手(国土交通省仕様)」製品ページ




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