
ヘルール規格は、配管を衛生的に接続するためのサニタリー継手の国際的な標準規格です。建築業の設備工事において、特に食品工場や医薬品製造施設の配管工事で頻繁に使用されます。主な規格としては、IDF/ISO規格(国際規格)、JIS G3447規格(日本工業規格)、ガス管規格(配管用ステンレス鋼管)が存在し、それぞれ異なる寸法体系を持ちます。
参考)ヘルールとはなんですか?サイズはどのようなものがあるのですか…
IDF(国際酪農規格)とISO(国際標準化機構)規格は、元々酪農業界で使用されていた規格で、現在では食品・医療・医薬品工業全般で広く採用されています。呼び径は1S、1.5S、2S、2.5S、3S、4Sなどの「S呼称」で表記され、外径は1Sと1.5Sが共通の50.5mm、2Sが64mm、3Sが91mmといった具合に設定されています。一方、ガス管規格はJIS規格に基づく配管用ステンレス鋼管の寸法で、10A、15A、20Aなどの「A呼称」で表記され、メーカーによって寸法が異なる場合があるため注意が必要です。
参考)へルール規格
溶接式ヘルールの標準寸法を確認すると、各サイズには外径(A)、PCD(ピッチ円直径)、内径(C・D)、フェルール高さ(E)、肉厚(F)が規定されています。例えば1Sの場合、A=50.5mm、PCD=43.5mm、C=23mm、D=25.4mm、E=21mm、F=2.85mmとなり、2Sではそれぞれ64mm、56.5mm、47.8mm、50.8mm、21mm、2.85mmとなります。5S以上の大口径になると肉厚Fが5.6mmに増加し、構造的な強度が高まります。
参考)https://haikann.blogspot.com/2019/03/sanitary-fw.html
ヘルール外径の規格間比較では、JIS規格とISO規格で同じ50.5mmのクランプサイズを使用していても、ガスケット形状や密着具合に違いがあることが重要なポイントです。例えば1Sと1.5SはどちらもA=50.5mmですが、内径Dが1Sは25.4mm、1.5Sは38.1mmと異なり、ガスケットの形状も変わります。実務では異なる規格やメーカーの製品を混在させると液漏れなどのトラブルが発生する可能性が高いため、既存設備のヘルール規格とメーカーを把握した上で、同じものを選定することが鉄則です。
参考)ヘルール
呼径サイズ | 外径A (mm) | PCD (mm) | 内径D (mm) | 肉厚F (mm) |
---|---|---|---|---|
1S | 50.5 | 43.5 | 25.4 | 2.85 |
1.5S | 50.5 | 43.5 | 38.1 | 2.85 |
2S | 64 | 56.5 | 50.8 | 2.85 |
3S | 91 | 83.5 | 76.3 | 2.85 |
4S | 119 | 110 | 101.6 | 2.85 |
5S | 155 | 146 | 139.8 | 5.6 |
ヘルール継手に使用される主な材質はSUS304とSUS316Lのステンレス鋼です。SUS304は汎用性が高く経済的な選択肢ですが、SUS316Lは耐食性と耐薬品性に優れており、医薬品工業や化学薬品を扱う配管で推奨されます。特に医薬品用途では、電解研磨後に表面が梨地にならない「クリーンヘルール」も製造されており、より高度な衛生管理が可能です。
参考)https://www.kyowa-stainless.co.jp/wp-content/uploads/2021/02/fitting.pdf
JIS G3447規格は「ステンレス鋼サニタリー管」として、酪農、食品工業、医療・医薬品工業などで使用される配管について具体的に規定しています。この規格に基づいて製造されたヘルールは、内部が平坦で洗浄性に優れており、衛生的な配管システムを構築できます。建築設備の設計段階で適切な材質を選定することで、長期的なメンテナンスコストの削減と衛生基準の維持が実現します。
参考)JISG3447:2020 ステンレス鋼サニタリー管
JIS G3447:2020規格の詳細情報(ステンレス鋼サニタリー管の公式規格を確認できます)
国際的な建築プロジェクトや輸入設備との接続では、3A規格(米国乳業規格)、DIN規格(ドイツ工業規格)、SMS規格(スウェーデン規格)など海外のヘルール規格に遭遇することがあります。3A規格は米国で標準的に使用され、サイズ表記が1/4インチ、3/8インチ、1/2インチといったインチ単位となり、外径も25.0mmや50.4mmとミリ規格とは異なります。
参考)ヘルール継手とは?工具不要かつ衛生的な配管用継手|MONOV…
異なる規格同士を接続する必要がある場合には、専用の変換アダプターを使用することで互換性を確保できます。例えば、3A規格とIDF/ISO規格の変換、DIN規格とJIS規格の変換などが可能で、特注製作にも対応している専門メーカーが存在します。建築設備の改修工事や既存ラインへの新規設備追加の際は、現場で規格の不一致が発覚しないよう、事前に既存設備の規格を詳細に調査し、必要に応じて変換継手を準備することが重要です。
参考)ヘルール継手とは(フェルール継手とは)
ヘルール接続の基本構造は、ヘルールの接続面にある溝にガスケット(パッキン)を挟み込み、クランプバンドで締め付けて固定する方式です。ガスケットにはA型(L字断面)とB型(平面断面)があり、ヘルールの溝形状に合わせて選定します。材質はシリコンゴム、NBR、EPDM、フッ素ゴムなど流体の種類や温度条件によって使い分けが必要で、食品衛生法に適合した素材を選択することが求められます。
参考)SUS管ストア / サニタリー配管に最適!電解研磨ヘルールの…
溶接式ヘルールとエキスパンド式ヘルールの2種類があり、溶接式はタンクや配管に溶接して固定するタイプで恒久的な設置に適し、エキスパンド式は既設配管への後付けが可能な拡張式で施工の柔軟性が高いという特徴があります。メンテナンス時にはガスケットの劣化やクランプの緩みを定期的に点検し、ガスケットは消耗品として定期交換することで液漏れや接続不良を未然に防げます。CIP(Cleaning In Place)システムを採用すれば、配管を分解せずに自動洗浄が可能で、特に電解研磨されたヘルールは内部の清掃性が優れています。
参考)エキスパンド式ヘルール 【Type CLF-E】
電解研磨ヘルールの洗浄性とメンテナンス方法(CIPシステムとの相性や定期点検の詳細が確認できます)