
ヘルール継手は、サニタリー配管において重要な役割を果たす接続部品です14。主要な規格として、ISO(国際標準化機構)、DIN(ドイツ工業規格)、JIS(日本工業規格)、3A(米国サニタリー規格)の4つが存在し、それぞれ異なる寸法体系を持っています。
ISO規格ヘルール寸法表
ISO規格では、1S〜6.5Sの呼び径で分類され、以下の標準寸法が適用されます。
DIN規格ヘルール寸法表
DIN規格(DIN11850)では、DN10〜DN150の呼び径を使用し、独自の寸法体系を採用しています。
この規格は、ヨーロッパの食品産業で広く採用されており、特に高圧配管での使用に適しています。
JIS規格対応ヘルール寸法
JIS G3447(ステンレス鋼サニタリー管)とJIS G3459(配管用ステンレス鋼鋼管)の2種類に対応したヘルールが市販されています。ガス管サイズ対応のものは、パイプの厚さが大きいため、より高い圧力に対応可能です。
溶接式ヘルールの材質選定は、使用環境と流体の性質によって決定されます。最も一般的な材質はステンレス304と316Lですが、それぞれ異なる特性を持っています。
ステンレス304の特徴
ステンレス316Lの特徴
継手の肉厚も重要な選定要因です。通常の溶接式ヘルールよりも肉厚なタンク用ヘルールも取り扱われており、より高い圧力や温度条件での使用が可能です。
溶接時の注意点
溶接式ヘルールのE寸法(溶接部長さ)は規格により異なり、1S〜3Sでは21mm、4S以上では27.5〜30mmが標準です。この寸法は溶接作業性と強度確保の両面から設計されています。
異なる規格間の寸法比較と互換性について、実際の現場での選定に役立つ情報を整理します。
規格間の外径比較表
呼び径 | ISO | DIN | JIS(G3447) | JIS(G3459) |
---|---|---|---|---|
小径 | 25.4mm(1S) | 22mm(DN20) | 25.4mm | 27.2mm(20A) |
中径 | 50.8mm(2S) | 52mm(DN50) | 50.8mm | 60.5mm(50A) |
大径 | 101.6mm(4S) | 104mm(DN100) | 101.6mm | 114.3mm(100A) |
互換性と変換アダプター
規格間の変換には専用のアダプターが必要です。特に3A規格とISO規格の変換は、食品・医薬品業界で頻繁に必要となります。
クランプの共通使用
興味深いことに、異なる規格のヘルールでも、クランプは共通でISO規格のものを使用する場合が多くなっています。これにより、在庫管理の効率化と施工の簡素化が図られています。
ただし、200Aなどの大口径や8A、10A、15Aの小口径では専用クランプが必要となるため、事前の確認が重要です。
サニタリー配管におけるヘルール継手の施工では、通常の配管工事とは異なる特別な配慮が必要です。
パイプとの接続精度
ヘルール継手とパイプの接続では、内径の整合性が最も重要です。例えば、50A配管(外径60.5mm、内径54.5mm)に2.5S ヘルール(内径59.5mm)を使用する場合、わずかな寸法差が流体の乱流や滞留を引き起こす可能性があります。
溶接施工時の品質管理
現場での選定ミス防止策
建設現場では、複数の規格が混在することがあります。施工ミスを防ぐため、以下の確認手順を推奨します。
流量計算への影響
ヘルール継手の選定は流量計算にも影響します。例えば、流量10m³/hで2Sパイプを使用した場合の流速は1.55m/secとなりますが、継手部での急縮小・急拡大により圧力損失が発生する可能性があります。
ヘルール継手の品質管理は、食品安全性と設備の信頼性に直結する重要な要素です。建設業界では見落とされがちですが、サニタリー配管特有の厳格な基準が存在します。
材料証明書の重要性
サニタリー用途では、材料証明書(Mill Test Certificate)の提出が必須です。証明書には以下の項目が記載されています。
表面仕上げの品質基準
ヘルール継手の内面仕上げは、流体の種類により異なる基準が適用されます。
寸法公差の管理
製造公差は各規格で定められており、特に内径の公差管理が重要です。1S〜2Sでは±0.1mm、3S以上では±0.2mmが一般的な許容範囲となっています。
現場検査のポイント
施工後の検査では、以下の項目を重点的に確認します。
長期使用時の劣化診断
ヘルール継手は定期的な点検が必要です。特に、ガスケット部の劣化、クランプの締付けトルク低下、溶接部の腐食進行などを定期的に監視し、予防保全によりシステム全体の信頼性を維持することが重要です。
品質管理の徹底により、食品安全性の確保と設備の長寿命化が実現され、結果的に建設コストの削減にも寄与します。
大阪サニタリー株式会社の技術資料では、各種ヘルール継手の詳細な仕様と選定基準が記載されています。
https://www.osaka-sanitary.co.jp/product/clf_w.html
流体工業株式会社では、ステンレス鋼サニタリー管とヘルール継手の寸法対照表が公開されています。