
インシュレーションボード断熱材は、廃木材などの木質繊維を粉砕して板状に成型した木質繊維系断熱材です。密度0.35g/cm³未満のものがインシュレーションボードと定義され、ファイバーボードやウッドファイバーとも呼ばれています。
主な種類は以下の3つに分類されます。
製造工程では、建築解体材95%と製材端材5%を原料として、国内初の連続湿式抄造法により製造されています。木材チップを繊維化してから板状に成形することで、繊維組織内に多くの空気層が形成され、これが優れた断熱効果を生み出します。
主なメリット
断熱性能面では、熱伝導率0.040-0.058W/(m・K)と、グラスウールやロックウールと同程度の性能を持ちます。特筆すべきは吸放湿性に優れており、結露を防ぐ効果が期待できる点です。
施工面でのメリットも豊富です。
主なデメリット
一方で、以下のデメリットも認識しておく必要があります。
インシュレーションボードの熱伝導率は製品タイプにより異なります。
タイプ | 熱伝導率 W/(m・K) | 主な用途 |
---|---|---|
軽量タイプ | 0.050 | 畳床材 |
汎用タイプ | 0.051 | 建築用養生材・緩衝材 |
下地タイプ | 0.054 | 床・屋根・壁下地材 |
他の断熱材との性能比較では、セルロースファイバーと同等の0.040という数値も報告されています。しかし、グラスウール(0.034-0.036)やロックウール(0.038-0.045)と比較すると、特別に優秀というわけではありません。
熱抵抗値で見ると、50mm厚で1.00程度となり、住宅の断熱基準を満たすには相当の厚みが必要になることが分かります。このため、メイン断熱材としてよりも、補助的な断熱材や下地材としての使用が現実的です。
最新の高性能タイプでは、従来品より熱伝導率が低い製品も登場しており、今後の性能向上が期待されています。
施工方法は主に充填工法が採用されています。軽量で加工しやすいため、現場での作業効率は高く評価されています。具体的な施工手順は以下の通りです。
施工手順
施工上の注意点
価格面では「高価」な断熱材に分類されており、一般的なグラスウールと比較して2-3倍のコストがかかる場合があります。このため、大手ハウスメーカーでメイン断熱材として標準採用している例はほとんどありません。
コスト対効果を考慮すると、全面的な採用よりも特定部位での使用が推奨されます。
日本繊維板工業会の品質基準に関する詳細情報
https://jfpma.jp/product/ib.html
建築業界では脱炭素化とサステナブル建築への関心が高まっており、インシュレーションボードの環境配慮型素材としての価値が再評価されています。
環境面での優位性
インシュレーションボードは解体現場から出る建築廃木材を95%使用し、従来は産業廃棄物として処理されていた材料を有効活用しています。グリーン購入法特定調達品目にも該当し、エコマーク商品として認定されている製品もあります。
新技術の導入
大建工業の高萩工場では月100万枚の生産体制を構築し、サステナブル材としての安定供給体制が整備されています。また、ホルムアルデヒド告示対象外製品として、室内空気質の改善にも貢献しています。
今後の展開予想
建築基準法の改正や省エネ基準の強化により、環境配慮型材料への需要は増加する見込みです。特に以下の分野での活用拡大が期待されます。
ただし、シロアリ対策技術の向上や、さらなるコストダウンが普及拡大の鍵となるでしょう。現在の評価では10点満点中4点程度ですが、技術革新により今後の評価向上が期待されています。
大建工業の製品情報と技術資料
https://www.daiken.jp/industrialmaterials/insulationboard.html