常時閉鎖型防火戸デメリットメリット解説施工業者向け

常時閉鎖型防火戸デメリットメリット解説施工業者向け

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常時閉鎖型防火戸メリットデメリット

常時閉鎖型防火戸の基本特徴
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コスト面でのメリット

安価で設置が容易、メンテナンス費用も抑制可能

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運用上のデメリット

通行時の不便さと違法開放のリスク

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施工時の注意点

法規制遵守と適切な設置場所の選定が重要

常時閉鎖型防火戸メリット解説

常時閉鎖型防火戸の最大のメリットは、設置コストの安さにあります。煙感知器連動タイプと比較すると「非常に安価で設置できる」ため、予算に制約のある案件でも導入しやすい防火設備です。

 

施工業者にとって重要なポイントは以下の通りです。

  • シンプルな構造による施工の容易さ
  • 複雑な電気配線が不要
  • ドアクローザーによる単純な自動閉鎖機構
  • 設置工期の短縮が可能
  • メンテナンス性の高さ
  • 可動部分が少ないため故障リスクが低い
  • 定期点検項目が限定的
  • 部品交換の頻度が少ない

防火性能面では、常に閉鎖状態を保持するため「火災初期における煙の流入を防ぐ効果が高い」とされています。特に避難階段や特別避難階段では、この常時閉鎖式の採用が推奨されており、安全性の観点からも優れた選択肢となります。

 

また、法規制への適合性も重要なメリットです。建築基準法に基づく防火区画の要件を満たすための基本的な仕様として、面積3平方メートル以内で「直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖するもの」という明確な基準があります。この基準への適合は比較的容易で、設計段階での検討事項も少なくて済みます。

 

常時閉鎖型防火戸デメリット詳細

一方で、常時閉鎖型防火戸には運用上の重大なデメリットが存在します。最も深刻な問題は日常使用における不便さです。

 

具体的なデメリットは以下の通りです。

  • 通行時の支障
  • 荷物を持っての通行が困難
  • 車椅子利用者の通行に支障
  • 頻繁な開閉による利用者のストレス増加
  • 違法開放のリスク
  • ドアストッパーで固定される事例が多発
  • 段ボール箱などの物品による開放固定
  • 法律違反による責任問題の発生

検査時に指摘される事例として「防火扉の前に段ボール箱などの物品が放置されていて、検査時に扉が閉鎖できない」ケースが頻発しています。これは防火戸としての機能を完全に無効化してしまう重大な問題です。

 

さらに、利用者の安全意識の低下も深刻な課題です。日常的に不便を感じることで、利用者が無断で開放固定してしまうケースが後を絶ちません。これにより「常閉防火戸としての意味をなさない」状況が生じ、火災時の安全性が著しく低下します。

 

近年では、これらの問題を受けて「煙感知器連動タイプを用いるか、あまり人の出入りがない部分にしか常閉防火戸を設置しなくなりました」という傾向が見られます。

 

常時閉鎖型防火戸設置時注意点

施工業者が常時閉鎖型防火戸を設置する際に注意すべき重要なポイントがあります。まず、設置場所の慎重な選定が必要です。

 

設置場所に関する具体的な注意点。

  • 人通りの少ない場所の選定
  • 階段室などの竪穴区画の出入口
  • 倉庫や機械室などの管理区画
  • 緊急時のみ使用する避難経路
  • 建築基準法への適合確認
  • 面積3平方メートル以内の制限遵守
  • 扉の重量15kg以下の確認
  • 閉鎖速度の基準値確認

施工時の技術的な注意点として、ドアクローザーの適切な調整が重要です。閉鎖速度が速すぎると利用者の安全に問題が生じ、遅すぎると防火性能に影響します。建築基準法では「扉の閉鎖速度は一定以下である事」が規定されており、この基準値を確実に守る必要があります。

 

また、維持管理上の配慮も施工段階から考慮すべき要素です。防火扉の動く範囲を表示や色分けで明示し、物品を置かないよう注意喚起する仕組みを設計段階から組み込むことで、将来的な問題を予防できます。

 

定期検査体制の変更にも注意が必要です。令和7年7月1日以降、常時閉鎖式防火扉の点検は「防火設備定期検査」に統合されることが決定しており、施工後の維持管理体制についても顧客に適切な情報提供を行う必要があります。

 

常時閉鎖型防火戸法規制対応方法

常時閉鎖型防火戸の設置において、法規制への適切な対応は施工業者の重要な責務です。特に重要なのは建築基準法と消防法の両方への適合です。

 

主要な法規制の要件は以下の通りです。

  • 建築基準法による構造要件
  • 告示2563号に基づく常時閉鎖状態の保持
  • 直接手で開くことができる構造
  • 自動的に閉鎖する機構の確保
  • エレベーター扉の場合は20秒以内の閉鎖
  • 防火区画別の要件
  • 面積区画:特定防火設備(一号扉)
  • 竪穴区画:遮煙性能付き防火設備(二号扉)
  • 複合区画:高い方の性能を優先適用

違法状態を防ぐための対策として、設置時に顧客への十分な説明が必要です。「基本的な考え方としては、防火扉が閉まるのを妨げる行為は違反となってしまいます」という原則を明確に伝え、ドアストッパーやロープでの固定が法律違反であることを強調する必要があります。
合法的な開放方法として、自動閉鎖装置の併用という選択肢があります。電磁レリーズ「マグネット・ドアホルダー」などの装置を併用することで「防火戸を合法的に開けっ放しにでき、万が一火災が発生したら自動で閉めてくれます」。この方法により、利便性と法規制遵守の両立が可能になります。

 

防火設備の定期報告検査への対応も重要な要素です。令和7年7月1日以降の制度変更により、点検体制が「より専門的かつ一元化された形で実施」されるようになるため、施工後の維持管理についても適切なアドバイスを提供する必要があります。

 

常時閉鎖型防火戸運用改善独自視点

施工業者の立場から見た常時閉鎖型防火戸の運用改善には、従来とは異なる独自のアプローチが効果的です。特に段階的な運用改善プログラムの提案は、顧客満足度向上と長期的な関係構築に有効です。

 

運用改善の独自アプローチ。

  • 利用者教育プログラムの提案
  • 設置後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の定期フォロー
  • 防火戸の重要性を伝える啓発資料の提供
  • 管理者向けの簡易点検マニュアル作成
  • 段階的アップグレード提案
  • 初期導入:コスト重視の常時閉鎖型
  • 問題発生時:自動閉鎖装置の追加提案
  • 将来的:随時閉鎖型への完全移行

IoT技術との組み合わせによる新しい管理手法も注目すべき分野です。扉の開閉状況をモニタリングし、異常な開放状態を検知するシステムの導入により、違法開放の早期発見と是正が可能になります。
特に有効なのは予防保全の仕組み化です。定期点検だけでなく、日常的な簡易チェックリストの提供により、管理者が自主的に防火戸の状態を確認できる体制を構築します。これにより、問題の早期発見と迅速な対応が可能になり、結果として施工業者への信頼度向上と継続的な関係維持に繋がります。

 

また、地域特性を考慮した提案も重要です。高齢者施設では操作の簡便性を重視し、学校施設では安全教育との連携を図るなど、建物の用途や利用者特性に応じたカスタマイズ提案により、単なる法規制対応を超えた付加価値を提供できます。

 

これらの独自視点による運用改善提案は、競合他社との差別化要因となり、施工業者としての専門性と顧客志向をアピールする有効な手段となります。