
常時閉鎖型防火戸の最大のメリットは、設置コストの安さにあります。煙感知器連動タイプと比較すると「非常に安価で設置できる」ため、予算に制約のある案件でも導入しやすい防火設備です。
施工業者にとって重要なポイントは以下の通りです。
防火性能面では、常に閉鎖状態を保持するため「火災初期における煙の流入を防ぐ効果が高い」とされています。特に避難階段や特別避難階段では、この常時閉鎖式の採用が推奨されており、安全性の観点からも優れた選択肢となります。
また、法規制への適合性も重要なメリットです。建築基準法に基づく防火区画の要件を満たすための基本的な仕様として、面積3平方メートル以内で「直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖するもの」という明確な基準があります。この基準への適合は比較的容易で、設計段階での検討事項も少なくて済みます。
一方で、常時閉鎖型防火戸には運用上の重大なデメリットが存在します。最も深刻な問題は日常使用における不便さです。
具体的なデメリットは以下の通りです。
検査時に指摘される事例として「防火扉の前に段ボール箱などの物品が放置されていて、検査時に扉が閉鎖できない」ケースが頻発しています。これは防火戸としての機能を完全に無効化してしまう重大な問題です。
さらに、利用者の安全意識の低下も深刻な課題です。日常的に不便を感じることで、利用者が無断で開放固定してしまうケースが後を絶ちません。これにより「常閉防火戸としての意味をなさない」状況が生じ、火災時の安全性が著しく低下します。
近年では、これらの問題を受けて「煙感知器連動タイプを用いるか、あまり人の出入りがない部分にしか常閉防火戸を設置しなくなりました」という傾向が見られます。
施工業者が常時閉鎖型防火戸を設置する際に注意すべき重要なポイントがあります。まず、設置場所の慎重な選定が必要です。
設置場所に関する具体的な注意点。
施工時の技術的な注意点として、ドアクローザーの適切な調整が重要です。閉鎖速度が速すぎると利用者の安全に問題が生じ、遅すぎると防火性能に影響します。建築基準法では「扉の閉鎖速度は一定以下である事」が規定されており、この基準値を確実に守る必要があります。
また、維持管理上の配慮も施工段階から考慮すべき要素です。防火扉の動く範囲を表示や色分けで明示し、物品を置かないよう注意喚起する仕組みを設計段階から組み込むことで、将来的な問題を予防できます。
定期検査体制の変更にも注意が必要です。令和7年7月1日以降、常時閉鎖式防火扉の点検は「防火設備定期検査」に統合されることが決定しており、施工後の維持管理体制についても顧客に適切な情報提供を行う必要があります。
常時閉鎖型防火戸の設置において、法規制への適切な対応は施工業者の重要な責務です。特に重要なのは建築基準法と消防法の両方への適合です。
主要な法規制の要件は以下の通りです。
違法状態を防ぐための対策として、設置時に顧客への十分な説明が必要です。「基本的な考え方としては、防火扉が閉まるのを妨げる行為は違反となってしまいます」という原則を明確に伝え、ドアストッパーやロープでの固定が法律違反であることを強調する必要があります。
合法的な開放方法として、自動閉鎖装置の併用という選択肢があります。電磁レリーズ「マグネット・ドアホルダー」などの装置を併用することで「防火戸を合法的に開けっ放しにでき、万が一火災が発生したら自動で閉めてくれます」。この方法により、利便性と法規制遵守の両立が可能になります。
防火設備の定期報告検査への対応も重要な要素です。令和7年7月1日以降の制度変更により、点検体制が「より専門的かつ一元化された形で実施」されるようになるため、施工後の維持管理についても適切なアドバイスを提供する必要があります。
施工業者の立場から見た常時閉鎖型防火戸の運用改善には、従来とは異なる独自のアプローチが効果的です。特に段階的な運用改善プログラムの提案は、顧客満足度向上と長期的な関係構築に有効です。
運用改善の独自アプローチ。
IoT技術との組み合わせによる新しい管理手法も注目すべき分野です。扉の開閉状況をモニタリングし、異常な開放状態を検知するシステムの導入により、違法開放の早期発見と是正が可能になります。
特に有効なのは予防保全の仕組み化です。定期点検だけでなく、日常的な簡易チェックリストの提供により、管理者が自主的に防火戸の状態を確認できる体制を構築します。これにより、問題の早期発見と迅速な対応が可能になり、結果として施工業者への信頼度向上と継続的な関係維持に繋がります。
また、地域特性を考慮した提案も重要です。高齢者施設では操作の簡便性を重視し、学校施設では安全教育との連携を図るなど、建物の用途や利用者特性に応じたカスタマイズ提案により、単なる法規制対応を超えた付加価値を提供できます。
これらの独自視点による運用改善提案は、競合他社との差別化要因となり、施工業者としての専門性と顧客志向をアピールする有効な手段となります。