
超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)の価格は、原料となるポリエチレン樹脂の市場価格や製造コストに影響されます。板材の価格帯は、1mm厚の980×1000mmサイズで約15,700円(税込17,284円)、10mm厚の500×1000mmサイズで約22,300円(税込)となっており、厚さと面積に応じて価格が変動します。
参考)超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)ポリエチレン板(ニュ…
丸棒についても同様で、直径10mm×長さ1000mmで約2,600円(税込2,918円)から入手可能です。ミスミなどの産業用部品通販では、規格品であれば当日出荷対応も可能で、価格は1,859円からとなっています。
参考)https://jp.misumi-ec.com/vona2/s_cate/%E8%B6%85%E9%AB%98%E5%88%86%E5%AD%90%E9%87%8F%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%81%E3%83%AC%E3%83%B3/
近年は省エネ・メンテナンスコスト削減ニーズの高まりにより、各業界での採用が急増しており、自動化・搬送分野や建設・重機分野での成長が顕著です。市場では欧州や北米を中心にリサイクルグレードや帯電防止グレード、抗菌グレードなど機能付加型UHMW-PEの需要も拡大しています。
参考)超高分子量ポリエチレンとは?用途別に見るその魅力 - MCナ…
一方で、超高分子量ポリエチレンは鋼鉄、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの代替材料と比較してコストが高いという課題があり、これが市場成長の抑制要因となる可能性も指摘されています。
参考)https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E8%B6%85%E9%AB%98%E5%88%86%E5%AD%90%E9%87%8F%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%81%E3%83%AC%E3%83%B3%EF%BC%88uhmwpe%EF%BC%89%E5%B8%82%E5%A0%B4-102953
超高分子量ポリエチレンの最も顕著な特性は、プラスチック材料の中で最高クラスの耐摩耗性です。分子量が300万~600万以上と極めて高く、長い分子鎖が密に絡み合うことで、通常のポリエチレンと比べて圧倒的な耐久性を実現しています。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/35725/
耐摩耗性の指標となる砂摩耗試験では、一般的なポリエチレンやエンジニアリング・プラスチックスと比較して著しく優れた結果を示します。金属面との摺動はもちろん、砂や粉体など通常の耐摩耗材料が不得意な分野で真価を発揮する特性があります。
参考)https://www.kana.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2012/10/2f0c8e7ba32e921591a523a8ddb68e93.pdf
建築分野では、この耐摩耗性を活かして免震建物用の摩擦皿ばねダンパーに採用されており、免震層の軸力や高さが変動しても安定した減衰性能を発揮します。超高分子量ポリエチレンを用いた滑り基礎構造は、地震時の応答低減効果が実証されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/385a95b1f73b2b9be71f3e8ea2a925d6a1938b8a
摺動性においても優れた特性を持ち、動摩擦係数は無潤滑・油潤滑のいずれにおいてもナイロンやポリアセタールより低く、ふっ素樹脂とほぼ同等の性能を有しています。この低摩擦特性により、潤滑油を使用できない環境でも長期間にわたって安定した動作が可能です。
参考)超高分子量ポリエチレン完全ガイド:特性から加工方法、用途まで…
超高分子量ポリエチレンの主な加工方法は切削加工で、マシニング加工と旋盤加工が中心となります。板・丸棒の形状に成形された材料を工作機械で削り出すことで、精密部品を製作します。
参考)超高分子量ポリエチレン(UHMW) 加工と特徴
切削加工では、高い耐摩耗性と低摩擦係数という特性から、他のプラスチック材料とは異なる特別なテクニックが必要です。切削工具にはシャープで耐久性のあるものを選び、切削速度と進行速度を適切に設定することで仕上げ面の品質を向上させます。
熱による変形を防ぐため、冷却を適切に行うことが重要で、油性または水溶性の冷却剤の使用が効果的です。素材が比較的柔らかく、セッティングが難しいとされる旋盤加工では、材料の固定方法に工夫が必要です。
参考)UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)の切削加工なら荒川技…
射出成形や押出成形も可能ですが、高い粘度と融点近くでの挙動のため成形が難しく、特別な設備が必要となります。高圧高温に耐える成形機と均一な温度制御が可能な設備が求められ、最適な成形条件の設定とプロセス管理が品質安定化の鍵となります。
加工後の品質確保には、寸法検査や強度試験を実施し、光学測定機器や接触式測定ツールを用いた正確な検査が不可欠です。ロットごとの品質管理記録を保持し、製造工程における統一した品質管理を徹底することで、長期的な信頼性を確保できます。
超高分子量ポリエチレンの選定では、用途に応じた適切なグレード選びが極めて重要です。市場では色調が異なるグレードや黒の導電グレードが提供されており、それぞれ異なる機能を持っています。
色付きグレード(白・青・緑など)は製品の識別やカテゴリー分けに役立ち、特に食品業界では色分けにより衛生管理を促進するために活用されています。一方、黒の導電グレードは静電気の影響を受けやすい精密機器や液体流路での使用において、静電気の蓄積を防ぐ素材として信頼されています。
主要な製品ブランドとして、作新工業の「ニューライト」は独自の重合技術により高い耐摩耗性・耐衝撃性・滑り性を誇ります。三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズの「タイバー」(旧名ソリジュール)も優れた特性で知られ、特に摺動部品やライニング材などに採用されています。
参考)超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE) シート/板/丸棒【…
選定時には以下の項目を総合的に判断する必要があります。
帯電防止、高潤滑性、難燃性など、用途に合わせたさまざまな特性を持つグレードが存在するため、メーカーと綿密に相談し最適なグレードを選定することが重要です。
超高分子量ポリエチレンは初期費用が汎用プラスチックに比べて高価ですが、耐久性とメンテナンス頻度低下によるランニングコストの削減効果が大きなメリットとなります。製品ライフサイクル全体で見ると、長寿命化により修理や交換の回数が低減され、トータルコストでの節約につながります。
建築分野での具体的なコスト削減事例として、自動化搬送設備での摩耗部材の長寿命化による稼働効率向上が挙げられます。故障のリスクが低減されることで設備停止や生産ロスの機会も減り、より安定した運用が可能となります。
EPDM押出時に同時成形できる加工法を採用することで、コーティング等の工程コストを削減できるケースもあります。他の工法と同等以上の高摺動・静音性・耐久性を実現しながら、製造プロセスの効率化を図ることが可能です。
参考)用途┃UHMW-PE(超高分子量ポリエチレン)の加工性を革新…
長期使用におけるメリットは、耐摩耗性と衝撃吸収能力により製品や設備の寿命を延ばすだけでなく、オペレーションの安定性を維持することにあります。耐化学薬品性によって厳しい環境においても劣化しにくく、計画外のダウンタイムやメンテナンス工数を減少させることができます。
建設現場では、防振パッドや滑り材として使用することで、重機や土木作業における部品交換頻度を大幅に削減できます。非腐食性のため、濡れた環境やさびの発生する可能性のある場所でも使用が可能で、洗浄作業が頻繁に行われる機械でも重宝されます。
超高分子量ポリエチレンの特性を最大限活かした材料選定と適切な設計により、イニシャルコストの高さを上回る長期的な経済効果を得ることができます。工場の自動化・脱金属化の流れを背景に、今後も持続的な需要増加が予想されており、早期導入によるコスト優位性の確保が重要となります。
参考となる技術情報は、三井化学の超高分子量ポリエチレン特設サイトで詳しく紹介されています。
超高分子量ポリエチレンの特性と用途 - 三井化学
建築事業者向けの具体的な加工事例については、MISUMIのmeviyサイトが参考になります。
超高分子量ポリエチレンの特徴と加工事例 - MISUMI meviy
免震建物への応用技術については、大林組の技術データベースに詳細情報が掲載されています。