規格配管の呼び径とサイズ選定の基礎知識

規格配管の呼び径とサイズ選定の基礎知識

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規格配管の基礎知識

配管規格の重要ポイント
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呼び径の種類

A呼称(ミリ系)・B呼称(インチ系)・俗称の3パターンを理解

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規格の違い

JIS規格と ANSI規格で外径寸法が異なることに注意

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材質選定

用途に応じたSGP管や継手・バルブの適切な選択方法

規格配管のA呼称とB呼称の違い

配管の呼び径は、実際の配管外径を分かりやすく表現するために定められた規格値です。金属加工現場では、この呼び径を正確に理解することが作業効率と品質に直結します。

 

A呼称の特徴

  • ミリメートル系の寸法表記
  • 呼び方:「10A(じゅうえー)」「20A(にじゅうえー)」
  • JIS規格に基づく国内プラントで主に使用
  • 配管設計がメートル系で統一されている場合に採用

B呼称の特徴

  • インチ系の寸法表記
  • 呼び方:「3/8(はちぶんのさんインチ)」「1(いちインチ)」
  • ASME/ANSI規格に基づく海外プラントや化学プラントで使用
  • 1インチ=25.4ミリの換算でA呼称との対応関係が決まる

俗称(通称)の実用性
現場では、B呼称の分母を8に固定した俗称が頻繁に使われます。例えば、B呼称「1/8」は「一分(いちぶ)」、「1/4」は「二分(にぶ)」と呼ばれ、作業者間のコミュニケーションを円滑にしています。

 

重要なのは、これら3つの表記方法は名称が異なるだけで、実際の配管外径は同一である点です。80Aも3インチも3インチ(俗称)も、すべて外径89.1mmの同じ配管を指します。

 

規格配管のJIS規格とANSI規格の特徴

配管規格の選択は、プロジェクトの性質や使用環境によって決定されますが、JIS規格とANSI規格では微妙に外径寸法が異なるため注意が必要です。

 

JIS規格の特徴

  • 日本産業規格(Japanese Industrial Standards)
  • 国内で生産される配管のほとんどがこの規格
  • ミリメートル単位での精密な寸法設定
  • 品質管理が徹底されており、安定した供給体制

ANSI規格との比較例
以下の表は、同一呼び径におけるJIS規格とANSI規格の外径差を示しています。

呼び径 JIS規格(mm) ANSI規格(mm) ANSI規格(inch)
6A(1/8) 10.5 10.3 0.405
15A(1/2) 21.7 21.3 0.840
25A(1) 34.0 33.4 1.315
50A(2) 60.5 60.3 2.375

この寸法差は、継手やフランジ接続時に重要な影響を与えるため、規格統一を徹底する必要があります。

 

規格選択の判断基準

  • 国内プラント:JIS規格を基本とする
  • 海外プラント・輸出設備:ANSI規格を検討
  • 既設設備への追加工事:既存規格に合わせる
  • 化学プラント:国際標準に準拠したANSI規格が多い

規格配管のSGP管サイズと重量計算

SGP管(Steel Gas Pipe)は、JIS G 3452に基づく配管用炭素鋼鋼管で、金属加工現場で最も汎用的に使用される配管材料の一つです。

 

SGP管の基本仕様
SGP管は「Steel Gas Pipe」の略称で、以下の特徴を持ちます。

  • 優れた耐腐食性
  • ガス管、水道管、空調用として幅広い用途
  • 施工のしやすさと高い耐久性
  • JIS規格による品質保証

代表的なSGP管サイズ一覧

A呼称 B呼称 俗称 外径(mm) 内径(mm) 厚さ(mm) 単位質量(kg/m)
15A 1/2 4分 21.7 16.1 2.8 1.31
20A 3/4 6分 27.2 21.6 2.8 1.68
25A 1 インチ 34.0 27.6 3.2 2.43
50A 2 2インチ 60.5 52.9 3.8 5.31
80A 3 3インチ 89.1 80.7 4.2 8.79
100A 4 4インチ 114.3 105.3 4.5 12.2

重量計算の実践的応用
SGP管の重量計算式は以下の通りです。
単位質量(kg/m)× 長さ(m)= 重量(kg)
実例:SGP 25A × 6000mm の場合
2.43kg/m × 6.0m = 14.58kg
この計算は、運搬計画や構造計算において必須の知識です。特に大型プラントでは、配管重量が構造物の設計荷重に直接影響するため、正確な算出が求められます。

 

サイズ選定の判断要素

  • 流量要件:必要流量に対して適切な内径の確保
  • 圧力損失:配管径が小さいほど圧力損失が増大
  • 設置スペース:配管径と保温材厚さを含めた空間確保
  • 経済性:材料費と施工費のバランス
  • 将来拡張性:増設時の流量増加への対応

規格配管の継手とバルブ選定ポイント

配管システムは、パイプ単体では機能せず、継手とバルブの適切な組み合わせによって完成します。これらの構成要素の選定は、システム全体の性能と信頼性を左右する重要な要素です。

 

配管継手の種類と用途
配管継手は、パイプ同士を接続して配管経路を自在に構成するための部品です。

  • エルボ(曲がり継手):90度、45度の方向転換
  • チーズ(分岐継手):配管の分岐接続
  • レジューサ(径違い継手):異なる径の配管接続
  • キャップ(栓):配管末端の閉塞
  • カップリング:同径配管の直線接続

バルブ選定の基本原則
バルブは流体制御の中核となる機器で、用途に応じた適切な選定が必要です。
グローブバルブ

  • 特徴:締切り性能が高く、流量調節に適している
  • 用途:流量制御が必要な箇所
  • 注意点:圧力損失が大きいため、主配管には不向き

ボールバルブ

  • 特徴:圧力損失が小さく、開閉操作が簡単
  • 用途:主配管の開閉弁として最適
  • 注意点:細かな流量調節には不向き

ゲートバルブ

  • 特徴:全開時の圧力損失が最小
  • 用途:大口径配管の開閉用
  • 注意点:中間開度での使用は避ける

継手・バルブ選定時の注意事項

  • 配管材質との適合性確認
  • 使用圧力・温度条件への対応
  • メンテナンス性の考慮
  • 規格統一による互換性確保
  • 将来の部品調達性

規格配管の材質選定と現場での注意点

配管材質の選定は、使用環境や流体特性を総合的に判断して決定する必要があります。間違った材質選定は、腐食や破損による重大な事故につながる可能性があります。

 

用途別材質選定指針
ガス配管工事

  • 推奨材質:ポリエチレン管、プラスチック被覆鋼管
  • 選定理由:安全性を最優先、腐食・漏れ防止
  • 注意点:ガス事業法に基づく認定材料の使用

衛生配管工事

  • 推奨材質:合成樹脂ライニング鋼管、ステンレス鋼管
  • 選定理由:温冷水への対応、衛生性確保
  • 注意点:飲料水基準への適合確認

空調配管工事

  • 推奨材質:SGP管、銅管
  • 選定理由:温度変化への対応、施工性
  • 注意点:断熱材との組み合わせ検討

プラント配管工事

  • 推奨材質:ステンレス鋼管、特殊合金管
  • 選定理由:化学物質への耐性、高温高圧対応
  • 注意点:流体成分による腐食性評価

現場施工時の重要ポイント
寸法確認の徹底

  • 実測による寸法確認の重要性
  • 図面寸法と実寸法の差異への対応
  • 熱膨張による寸法変化の考慮

接続部の品質管理

試運転前の検査項目

  • 耐圧試験による接続部確認
  • 気密試験による漏れ検査
  • 流量測定による性能確認

長期運用を見据えた配慮
配管システムは10年以上の長期使用が前提となるため、以下の点に配慮した設計・施工が重要です。

  • 定期点検が可能な配管ルート計画
  • 部品交換を考慮したアクセス空間確保
  • 規格品使用による将来の部品調達性
  • 運転記録による劣化状況の把握

規格配管の適切な選定と施工は、金属加工現場の安全性と生産性に直結する重要な技術です。基礎知識を確実に習得し、現場での実践を通じて技能向上を図ることが、プロフェッショナルとしての成長につながります。