クロム酸塩色の違いと亜鉛めっき処理の耐食性や特徴

クロム酸塩色の違いと亜鉛めっき処理の耐食性や特徴

記事内に広告を含む場合があります。
クロム酸塩色の基礎知識
🌈
色の違い=性能の違い

色は単なるデザインではなく、皮膜の厚さと耐食性能を直接表す重要な指標です。

🛡️
六価から三価への転換

環境規制により、自己修復作用のある六価から、安全な三価への切り替えが進んでいます。

⚠️
白錆は危険信号

表面が白く粉を吹き始めたら、亜鉛めっきの防食機能が低下しているサインです。

クロム酸塩の色

クロム酸塩色の種類と亜鉛めっきの耐食性の関係

 

建築現場や金具の選定において、亜鉛めっきの「色」は単なる見た目の違いではなく、その製品が持つ**耐食性(錆びにくさ)**を決定づける極めて重要なスペック情報です。一般的に「ユニクロ」や「クロメート」と呼ばれるこれらの処理は、正しくは「クロム酸塩処理(化成処理)」と呼ばれ、亜鉛めっきの表面に薄い皮膜を作ることで、錆びやすい亜鉛を守る役割を果たしています。
参考)https://business.atengineer.com/meisei/crom4.htm

この皮膜の色は、処理液の成分や浸漬時間、そして皮膜の厚さによって変化し、基本的には皮膜が厚くなるほど色が濃くなり、耐食性も向上するという法則があります。現場でよく見かける代表的な色と、その耐食性の序列を正しく理解しておくことは、適切な資材管理を行う上で必須の知識と言えるでしょう。


  • 光沢クロメート(ユニクロ)
    青白い銀色や透明な外観が特徴です。一般的に「ユニクロ」と呼ばれますが、耐食性は最も低く、主に屋内の装飾用途や軽微な環境で使用されます。皮膜が非常に薄いため、湿気の多い場所では比較的早期に白錆が発生するリスクがあります。
    参考)http://tri-osaka.jp/c/content/files/archives/Chromate.pdf


  • 有色クロメート(虹色・黄色)
    黄金色や虹色(干渉色)に見えるタイプで、一般的に「クロメート」といえばこれを指します。ユニクロよりも皮膜が厚く、耐食性が高いため、建材や自動車部品など幅広い分野で採用されています。屋外で使用されるボルトやナットの多くがこの色をしているのは、コストと性能のバランスが良いためです。
    参考)【CASE 4】 クロメート処理製品の色ムラ|原因究明事例|…


  • 黒色クロメート
    重厚な黒色をしており、装飾性と耐食性の両方を兼ね備えています。有色クロメートと同等かそれ以上の耐食性を持つことが多いですが、傷が目立ちやすいというデリケートな側面もあります。意匠性が求められる露出部の金具などに使われます。​

  • 緑色クロメート(オリーブ)
    くすんだ深緑色(オリーブドラブ)をしており、これらの中で最も高い耐食性を誇ります。皮膜が非常に厚く硬いため傷にも強いですが、見た目が実用本位で装飾性に欠けるため、目に触れにくい土台部分や過酷な環境下での使用がメインとなります。​

このように、色は「性能のランク」を表しています。もし設計図書で「高耐食」が指定されている箇所に、青白い「ユニクロ」のボルトが使われていたら、それは施工ミスの可能性が高いと即座に判断できるのです。
J-STAGE: 亜鉛めっきクロメート処理の基礎と応用(クロメート処理の化学的メカニズムについて詳細に解説されています)

クロム酸塩色の六価と三価の違いと見分け方

近年、建設業界でも環境対応への意識が高まり、従来の「六価クロム」から「三価クロム」への切り替えが急速に進んでいます。かつて主流だった六価クロムは、極めて高い耐食性と、皮膜に傷がついても溶け出したクロム成分が再び皮膜を形成する**「自己修復作用」**を持っていました。しかし、人体や環境への有害性が問題視され、RoHS指令などの国際的な規制により使用が制限されるようになりました。
参考)【いまさら聞けない】3価クロムと6価クロムの違い

現場で問題になるのが、この「六価」と「三価」の色の違いと見分け方です。以前は、「黄色=六価」「銀色=三価」という大まかな区別が可能でしたが、技術の進歩によりその境界線は曖昧になっています。


  • 昔の常識(外観による判別)
    かつては、有色クロメート特有の「濃い黄色」や「赤み掛かった虹色」は六価クロム特有のものでした。一方、初期の三価クロメートは技術的に厚い皮膜を作るのが難しく、薄い青白色(ユニクロに近い色)が主流でした。
    参考)三価クロメートとは?種類や特徴、六価クロメートとの違い|金属…


  • 現在の常識(色だけでは判断不可)
    現在の三価クロメート処理技術は飛躍的に向上しています。特殊な染料や添加剤を加えることで、六価クロムと見分けがつかない「虹色(三価イエロー)」を作り出すことが可能になりました。また、逆に六価クロムでありながら漂白処理をして銀色に見せているケースもあります。つまり、**「色だけで六価か三価かを完全に判別することは不可能」**なのです。
    参考)三価クロムめっきの色をご紹介!六価クロム、クロメート処理との…

では、現場ではどうすればよいのでしょうか。確実な方法は、製品に添付されている**「ミルシート鋼材検査証明書)」や「SDS(安全データシート)」**を確認することです。「Cr6+フリー」「三価クロメート対応」といった記載がなければ、見た目がきれいな銀色でも六価クロムが含まれている可能性があります。
特に公共工事や環境配慮型建築(LEED認証など)を目指す現場では、六価クロムの使用が厳禁とされるケースが増えています。「色が似ているから大丈夫」という安易な判断は、後の検査で不適合となり、全交換という莫大な損失を招くリスクがあるため、必ず書類での裏付けを行う習慣が必要です。
三価クロメートの基礎知識と六価との色調比較(最新の三価クロメート技術による色のバリエーションが写真付きで解説されています)

クロム酸塩色の光沢と虹色が示す皮膜の厚さと仕組み

なぜクロム酸塩処理された亜鉛めっきは、あのような独特の「虹色」や「光沢」を放つのでしょうか。実は、あの色は塗料のように顔料を塗っているわけではありません(※一部の着色処理を除く)。あの色は、シャボン玉や水面に浮いた油が虹色に見えるのと同じ、**「光の干渉(Interference)」**という物理現象によって生み出されています。
参考)https://orist.jp/technicalsheet/99007.PDF

このメカニズムを理解することは、めっきの品質管理において非常に「使える」知識となります。


  1. 薄膜干渉の原理
    クロム酸塩皮膜は、亜鉛めっきの表面に形成された非常に薄い透明または半透明のゲル状の膜です。光がこの膜に入射すると、膜の「表面で反射する光」と、膜の中を通って「底面(亜鉛との境界)で反射する光」の2つに分かれます。この2つの光が重なり合うとき、波長(色)のズレによって特定の色が強め合ったり、弱め合ったりします。これが干渉色です。

  2. 色と膜厚の相関関係
    干渉色は、膜の厚さによって変化します。一般的に、皮膜が薄い順に色は以下のように変化していきます。


    • 極薄(~0.02μm):透明・青白い(光沢クロメート/ユニクロ)

    • 中厚(0.1~0.5μm):黄色・黄金色・赤紫色(有色クロメート)

    • 厚膜(0.5μm~):干渉色が鈍くなり、濃い緑色や褐色(オリーブ・黒色)​


  3. 「虹色」はムラの証拠?
    有色クロメートが「虹色」に見えるということは、実は**「微細なレベルで皮膜の厚さが均一ではない」**ことを示しています。部品の形状や液垂れによって膜厚がわずかに変動するため、場所によって見える色が異なり、結果として虹色に見えるのです。逆に言えば、虹色に見えるということは、ある程度の膜厚(中厚以上)が確保されている証拠でもあり、これが「虹色=耐食性が高い」というイメージに繋がっています。​

現場で資材を受け入れた際、同じロットの製品なのに極端に色が薄かったり、逆に黒ずんでいたりする場合は、処理液の管理不良や浸漬時間のばらつきによる「膜厚不足」の可能性があります。特に、本来「虹色」であるはずのものが全体的に「青白い」場合は、皮膜が薄すぎて所定の耐食性能が出ていない危険性があるため、受入検査での重要なチェックポイントとなります。
クロメート皮膜の特徴と膜厚・干渉色の関係(技術資料PDF:皮膜厚さと色の物理的な関係が図解されています)

クロム酸塩色のオリーブ色が最強の防錆力を持つ化学的理由

数あるクロム酸塩の色の中で、なぜ「オリーブ色(緑色)」が最強の耐食性を誇るのでしょうか。見た目は地味で、時には「汚れている」とさえ誤解されがちなこの色には、他の色にはない化学的な強度が隠されています。この事実はあまり知られていませんが、土木・建築の基礎部分を支える上では知っておくべき「意外な真実」です。
オリーブクロメートの強さの秘密は、その**「皮膜の組成」と「有機酸の働き」**にあります。


  • 圧倒的な膜厚とCr6+含有量
    オリーブクロメートは、有色(虹色)クロメートと比較してもさらに厚い皮膜を持っています。皮膜が厚ければ、単純に腐食因子(水分や酸素、塩分)が下地の亜鉛に到達するまでの時間が稼げます。さらに、従来の六価クロムタイプの場合、皮膜中に含まれる六価クロムの量が非常に多く、これが傷ついた部分を修復する能力(自己修復性)を極限まで高めていました。​

  • 有機酸による強固な結合
    オリーブ色の処理液には、ギ酸や酢酸などの有機酸や、リン酸塩が添加されていることが一般的です。これらが化学反応に関与することで、皮膜中に**「クロム酸クロム」などの難溶性(水に溶けにくい)化合物を大量に生成します。この化合物自体が暗緑色を呈しているため、皮膜全体がオリーブ色に見えるのです。つまり、オリーブ色は着色されたものではなく、「錆に強い成分そのものの色」**なのです。

  • 硬くて緻密な構造
    通常の有色クロメート皮膜はゲル状で比較的柔らかいのですが、オリーブクロメート皮膜は乾燥させると非常に硬く緻密になります。これにより、施工中の工具による擦れや、砂利などとの接触による物理的なダメージに対しても強い耐性を発揮します。

しかし、三価クロム化への移行に伴い、この「オリーブ色」の立ち位置も変化しています。三価クロム処理でオリーブ色を出すためには、黒色化剤や緑色染料を混ぜて「色を似せている」場合があり、必ずしも「オリーブ色=最強」の図式が成り立たない製品も出てきています。
それでも、伝統的なスペック指定で「JIS H 8610 2種(緑色)」などの記載がある場合は、この最強クラスの耐食性が求められていることを意味します。現場判断で「色が似ているから」と安価な黒色や有色に変更することは、構造物の寿命を縮める重大なコンプライアンス違反になりかねません。

クロム酸塩色の白錆発生サインとメンテナンス時期

最後に、施工後のメンテナンスや点検で最も重要となる「変色」と「寿命」のサインについて解説します。クロム酸塩処理された亜鉛めっきは、永遠に錆びないわけではありません。その終わりは、色によって明確なサインとして現れます。
最も注意すべき現象が**「白錆(しろさび)」**です。
通常、鉄が錆びると「赤錆」が発生しますが、亜鉛めっきが施された製品は、まず表面の亜鉛が犠牲となって錆びることで鉄を守ります。この亜鉛の錆が「酸化亜鉛」や「水酸化亜鉛」であり、白いチョークの粉のような見た目をしています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/69/6/69_240/_pdf/-char/ja


  • 光沢(ユニクロ)の寿命サイン
    塩水噴霧試験(SST)において、ユニクロはわずか8~24時間程度で白錆が発生することがあります。現場でも、雨ざらしにすると数週間~数ヶ月で表面の光沢が失われ、白っぽく曇り始めます。これが白錆の初期段階です。この時点で直ちに強度が落ちるわけではありませんが、美観は損なわれます。

  • 有色・黒色・オリーブの寿命サイン
    これらは耐食性が高いため、白錆発生までにはSSTで72~96時間以上、実環境では数年~十数年かかります。しかし、経年劣化により、まず特有の「虹色」や「黒色」が紫外線や雨水によって退色し、薄くなっていきます。色が抜けて白っぽくなってきたら、クロム酸塩皮膜が消失し、下地の亜鉛が露出し始めた合図です。

  • 赤錆が出たら手遅れ
    白錆を放置し、亜鉛層まですべて消費されると、いよいよ素地の鉄が腐食し「赤錆」が発生します。この段階になると、部材の体積減少(肉痩せ)が始まり、強度が低下します。

現場での管理ポイント
建築従事者が特に注意すべきは、「加工部」の変色です。寸切りボルトの切断面や、ナットを締め付けた際の座面付近は、クロム酸塩皮膜が物理的に破壊されています。六価クロムであれば自己修復作用である程度持ちこたえますが、現在の主流である三価クロム製品の場合、傷口からの白錆発生が早まる傾向にあります。
施工完了検査や定期点検の際、ボルトの頭や切断面が局所的に白くなっている(白錆)のを発見した場合は、速やかにジンクリッチペイント(高濃度亜鉛末塗料)などでタッチアップ補修を行う必要があります。
参考)https://www.nissin-industry.jp/column/1675841049-928508

「まだ赤い錆じゃないから大丈夫」と放置せず、「色が白く濁り始めたら防錆力が落ちている」と認識し、早期に対処することが、建物の長寿命化に貢献するプロの仕事と言えるでしょう。
めっきの腐食メカニズムと補修(白錆から赤錆への進行プロセスと、適切な補修材の選び方が解説されています)

 

 


CargoLoc 32444 工業用バンジーコード 二クロム酸塩スチールフック付き 48インチ ブラック