

中板の材質を間違えると、盤内の機器が1年以内に錆でショートするリスクがあります。
制御盤の中板とは、盤の筐体内部に設置され、ブレーカーやPLC・端子台・DINレールといった各種電気機器を取り付けるための板状の部材です。一般的には「器具取付板」とも呼ばれ、制御盤の心臓部を支える土台として機能しています。
制御盤の中には多種多様な電気機器が収められています。それらをバラバラに固定するのではなく、中板という一枚の板に集約して取り付けることで、配線ルートの整理や保守点検の効率化が実現します。つまり中板が基本です。
中板は通常、制御盤の筐体本体とは別体になっています。これにより、現場での据付前に中板だけを作業台に取り出して機器の取り付けや配線の事前準備ができるというメリットがあります。盤を現場に設置したまま全作業を行う必要がないため、作業効率が大きく向上します。これは使えそうです。
中板の構造としては、表面に10mm単位の目盛りが刻まれているタイプが多く、器具の配置決めに役立ちます。また、最近はDINレールにはめ込むタイプの機器が主流になってきており、以前のように中板に直接ネジ止めする機器は減少傾向にあります。とはいえ、配線ダクトやDINレール自体は中板にタップ加工してボルトで固定するため、中板の精度が全体の品質に直結します。
| 部材名 | 役割 | 取付方法 |
|---|---|---|
| 中板(器具取付板) | 機器・DINレールの取付台 | 筐体内側にボルト固定 |
| DINレール | リレー・ブレーカーなどをはめ込む | 中板にタップ加工後ボルト固定 |
| 配線ダクト | 電線をまとめて整列させる | 中板にタップ加工後ボルト固定 |
| 端子台 | 外部配線との中継接続 | DINレールまたは中板に直付け |
制御盤の規格として、日本工作機械工業会の安全設計基準では「制御機器を配置する際は中板正面への取り付けを基本とする」と明記されています。やむを得ず側面や扉裏に設置する場合は、顧客の承認が必要です。中板正面取付が原則です。
参考:制御機器の取付位置に関する基準が記載された安全設計ガイドライン(日本工作機械工業会)
第6章 電気と制御システムの安全設計 - 日本工作機械工業会(PDF)
中板に使われる板金の材質は、制御盤の寿命や信頼性を左右する重要な要素です。コストだけで安易に選ぶと、使用環境によっては短期間で錆が発生し、機器の不具合や感電リスクにつながります。材質の選択は条件です。
主に使われる材質は以下の3系統です。
制御盤では主に熱間圧延鋼板(SPHC)を原板にした電気亜鉛メッキ鋼板(SEHC)が、筐体の外側・中板・扉などに幅広く使用されています。道路脇の屋外設置盤では冬季の凍結防止剤(塩化ナトリウム)による腐食を防ぐため、溶融亜鉛メッキを施したものが採用されることが多いです。
板厚については、国内の制御盤の標準的な仕様は1.6mmまたは2.3mmが一般的です。重量のある機器を複数取り付ける中板には2.3mmを選ぶケースが多く、軽量な機器のみの場合は1.6mmで十分なことも多いです。一方、ヨーロッパの標準仕様は板厚1.5mmまたは2.0mmが主流であり、海外向け制御盤の設計では仕様の違いを事前に確認する必要があります。
また、アルミ板(A5052P)は表示パネルやコンソール部分に使われることがあります。軽量で錆びにくい点が優れていますが、アルミと銅など異種金属を接触させると「ガルバニック腐食」が発生するリスクがあるため、使用する金属の組み合わせには細心の注意が必要です。意外ですね。
参考:制御盤の板金素材(SECC・SPCC・SUS304など)の特徴と制作工程について詳しく解説されています。
実際の現場では、制御盤の中板には穴あけやタップ加工があらかじめされていない状態で納品されることが多いです。これは器具の最終配置が「配線のやりやすさ」や「美観のバランス」などの現場判断に委ねられているためです。
器具取付の基本的な作業順序は次の通りです。
配置決めの際にとくに注意が必要なのは、機器間の「熱害・ノイズ・距離感」です。PLC・インバーター・パワーサプライ・トランスなどは、隣接機器との間に20〜30mmの距離が必要です。一方で、リレーやブレーカーは距離ゼロで並べても支障ありません。距離ゼロなら問題ありません。
また、器具と配線ダクトの間隔はおおよそ20mm以上を確保するのが目安です。距離が近すぎると電線が折れ曲がり、端子への接続がしにくくなるうえ、線番(マークチューブ)が見えなくなって後々のメンテナンスで苦労します。
穴あけ・タップ加工の際に見落としがちな注意点があります。それは「キリ粉の管理」です。電気ドリルで穴あけ作業をすると金属粉(キリ粉)が広範囲に飛散します。このキリ粉が機器内部に混入すると、ショートや誤動作の原因になりますが、混入した後では除去がほぼ不可能です。加工前に必ず機器を遠ざけ、加工後はエアーブローではなく掃除機で吸引して清掃するのが鉄則です。
参考:制御盤中板への器具取付・罫書き・穴あけの具体的な手順が実体験をもとに詳しく解説されています。
【器具の取付けは罫書きと穴あけ加工をする】制御盤組立の方法 - 機械組立の部屋
中板のアース(接地)接続は、感電防止と機器保護の両面で欠かせない施工ポイントです。多くの現場で「筐体だけアースしておけばよい」と誤解されがちですが、実際には筐体・扉・中板のすべてに個別に接地が必要です。アース接続は必須です。
制御盤の筐体はボルトで組み合わさっていますが、塗装面が介在していたり接触面が酸化していたりすると、電気的な導通が不十分になることがあります。つまり、筐体がアース接続されていても中板の接地抵抗が高くなる場合があります。どういうことでしょうか?
これを解消するために、中板と筐体本体の間にアース線(緑色の接地専用線) を別途接続することが求められます。この処置により、中板に取り付けられたすべての機器のアースが確実に大地に逃げる経路が確保されます。
ノイズ対策の観点では、動力線(主回路配線)と制御線(信号配線)を同一の配線ダクトにまとめないことが基本原則です。インバーターなどの高周波スイッチング機器は、動作時に強い電磁ノイズを発生させます。このノイズが制御線に乗り込むと、PLCの誤動作やセンサー信号の不安定化を引き起こします。
また、インバーターの接地配線は制御盤内の専用アースバーに直接接続するのが推奨されています。各機器のアース線を一点に集中させる「スター接地(一点接地)」方式は、アースを介したノイズの回り込みを防ぐうえで非常に効果的です。インバーターは専用アースバーに接続が条件です。
参考:制御盤製作におけるノイズを考慮したアース・接地の考え方について実践的に解説されています。
制御盤の中板設計で意外と軽視されるのが「将来の拡張スペース」の確保です。当初の仕様通りに機器を詰め込んで設計すると、後から機器を追加したい際に中板のスペースが全くなく、盤の更新や外付け追加盤の費用が数十万円規模になるケースがあります。痛いですね。
建築業の現場では、設備の増設や制御系統の変更が工事完了後に発生することは珍しくありません。特に工場の生産ラインや空調制御盤では、運用開始後に「あの機器も制御に組み込みたい」という要望が出ることが多く、設計時点での余裕設計が後の追加コストを大きく左右します。
具体的には、中板の実装スペースに対して20〜30%程度の空きエリアを意図的に確保しておくことが推奨されます。これはA4用紙1枚(210mm×297mm)ほどのスペースに相当し、リレーや端子台を数個追加する余地として機能します。
また、DINレールも実際の使用分より1〜2本多く取り付けておくと、後から機器を追加する際に配線ルートの再設計が不要になります。DINレールは1本あたり数百円程度の部材ですが、これが後々の現地改造工事の時間とコストを大幅に削減する投資になります。これは使えそうです。
さらに、最近では3D CADを用いた「3D制御盤」という設計手法も注目されています。従来の中板を使った2次元レイアウトに対し、筐体内の縦・横・奥行きの3次元空間をフルに使って機器を配置する方式です。中板を使わないため体積あたりの実装密度が高まり、同じ盤サイズでより多くの機器を収容できます。ただし、専用の3D CADツールと部品3Dデータが必要で、設計フローの整備が前提条件となります。
配線ダクトのサイズ選定も将来の拡張を意識する必要があります。ダクト内の電線が断面積の50〜60%を超えると、蓋が閉まらなくなったり放熱が悪化したりするリスクがあります。現状の配線本数に対して余裕のあるサイズを選ぶことが重要です。
参考:3D CADを活用した制御盤設計(中板レイアウト・穴あけ位置・配線ルート設計の自動化)について詳しく紹介されています。
設計から製造までつながる制御盤3D設計の実例 - EPLAN Japan Blog