

中板をt1.6で選ぶと、接触器のM6ネジが正しく締まらず現場で取り付け不可になることがあります。
制御盤の「中板(なかいた)」とは、筐体(箱本体)の内部に設けられた取り付け用の板のことです。ブレーカー、PLC(プログラマブルコントローラ)、端子台、インバーター、リレーなど、さまざまな電気機器を中板にネジ止めして固定し、そこから配線を行います。建築電気工事の現場でも動力制御盤や自動制御盤を扱う場面は多く、中板の仕組みを理解しておくことは実務上の大きな武器になります。
中板は、制御盤の筐体とは別に取り外し可能な構造になっているケースがほとんどです。これがメンテナンス性を高める重要なポイントで、中板ごと盤から引き出して作業台の上で配線・取り付け作業ができます。実際、制御盤の組立工程では「中板を盤から取り出して作業する」のが基本です。狭い盤の中に顔を突っ込んで作業する必要がないため、作業効率と精度が格段に上がります。
中板は電気機器の「住所」を決める存在です。機器の配置がきちんと整理されていれば、後のメンテナンス時に担当者が変わっても迷わず対応できます。逆に、中板への機器配置が雑だと、配線が錯綜して「どの線がどこにつながっているか分からない」という深刻なトラブルを招きます。
| 中板の主な役割 | 内容 |
|---|---|
| 機器の固定 | ブレーカー・PLC・端子台・インバーターなどをネジで取り付ける |
| 配線の整理 | DINレールや配線ダクトを中板上に配置し、電線を整然とルーティングする |
| メンテナンス性確保 | 中板ごと引き出して作業できるため、盤外での組立・配線・点検が可能 |
| アース(接地)の確保 | FG端子(フレームグランド)を中板に接地することでノイズ対策にもなる |
最近ではDINレールに機器をはめ込む方式が主流になっています。これはレールを中板にネジ止めし、そこにブレーカーや端子台をワンタッチで装着できる仕組みです。ネジ穴の位置を1つずつ測って加工するより大幅に作業時間が短縮でき、現場での機器追加や変更にも柔軟に対応できます。つまり、DINレールの活用が中板設計の効率化に直結するということです。
【器具の取付けは罫書きと穴あけ加工をする】制御盤組立の方法(機械組立の部屋)
中板への機器取り付けの具体的な手順・配置の考え方・注意点が実務目線で解説されています。
中板に使用される材質は主にSPCC(冷間圧延鋼板)、SECC(電気亜鉛メッキ鋼板)、そして環境条件によってはSUS304(ステンレス)が選ばれます。材質を間違えると、短期間で錆が発生して機器の固定が緩んだり、絶縁不良につながったりするリスクがあります。コストだけで選んではいけません。
SPCCはもっとも安価で加工性が高く、表面が滑らかなため塗装しやすいという特徴があります。しかし、そのままでは非常に錆びやすいため、必ず塗装や表面処理が必要です。屋内の乾燥した環境で使用される標準的な制御盤の中板に使われることが多い材質です。
SECCはSPCCに電気亜鉛メッキを施したもので、「ボンデ鋼板」とも呼ばれます。防錆性がSPCCより高く、塗装前の下地処理なしでも一定の耐食性を発揮します。屋外設置盤や湿気の多い現場で使う制御盤の中板には、SECCが選ばれることが多いです。ただし、切断面にはメッキがかかっていないため、切りっぱなしで使うと切断面から錆が発生する点に注意が必要です。
実際の現場では、コスト優先でSPCCを選んで塗装が不十分なまま使い、数年後に錆が浮いて来るケースが報告されています。制御盤の寿命はおよそ20年とされていますが、材質ミスによる腐食が原因で10年以下で更新を余儀なくされたケースもあります。材質の選択は長期コストに直結します。
盤・板金の種類・素材と制御盤板金の製作工程(三笠精機)
SPCC・SECC・SUSなど各板金素材の特徴と制御盤製作の全工程が詳しく解説されています。
中板の板厚選定は「取り付けるネジのサイズ」に合わせて決めるのが基本原則です。厚ければいいわけでも、薄ければコストが下がるわけでもありません。板厚とネジサイズが合っていないと、タップ(ネジ山)が不十分になって機器が固定できなくなります。
目安は「ネジのピッチ×3山分の板厚を確保する」ことです。具体的な数字を挙げると次の通りです。
ここで注意したいのが、国内で最も一般的なt2.3の中板にM6ネジを使おうとするケースです。接触器(電磁開閉器)はM6ネジで取り付ける仕様の製品が多く、t2.3では山数が足りません。この場合はt3.2の取り付けブラケットを別途製作してM5ネジで中板に固定し、そのブラケットに接触器をM6で取り付ける方法が現場では広く使われています。ブラケットを介在させることで振動の緩和効果も得られます。これは一石二鳥の手法ですね。
板厚が厚すぎると加工が難しくなり、製作コストも上がります。一方、薄すぎると機器の固定強度が不足し、振動の多い環境では機器が緩んで接触不良や故障を引き起こします。t1.6mmとt2.3mmの2種類が国内制御盤のデファクトスタンダードであり、使い分けの基準を押さえておくことが重要です。
屋内設置盤の取り付け板は「厚さ1.6mm以上の鋼板」、屋外設置盤では「2.3mm以上」を求める仕様書が多く、横浜市や大阪市など公共建築工事の電気設備工事盤基準にもこの数値が明示されています。公共工事では規定値が条件です。
中板の板厚選定のポイント(生産システム設計.com)
板厚とネジサイズの対応関係、ブラケットを用いた解決策が図解入りで解説されています。
制御盤の組立において、中板への機器取り付けは「配線作業」より重要な工程と言っても過言ではありません。配線を終えた後に取り付け位置の間違いが発覚しても、やり直しは極めて困難です。最初の配置決定で品質の8割が決まると考えて差し支えありません。
機器取り付けの基本的な流れは次の通りです。
現場での取り付け時に特に気をつけたいのが「キリ粉(ドリル加工で出た金属の削りかす)の混入」です。穴あけ加工中に発生するキリ粉は思いのほか飛散し、近くに置いたPLCやリレーの内部に入り込むことがあります。一度混入したキリ粉は除去できません。加工時は機器を必ず別の場所に保管し、加工後は掃除機で吸引清掃することが鉄則です。エアブローでの清掃はキリ粉を内部に吹き込む恐れがあるので厳禁です。
もう一つよくあるミスが「器具と配線ダクトの距離が近すぎる」問題です。距離が足りないと電線が急角度で折れ曲がってダクトに入り込み、絶縁被覆が傷つくリスクが生じます。また、線番(マークチューブ)が見えなくなり、後の配線確認作業が困難になります。器具と配線ダクトの間は最低でも20mm以上の距離を確保するのが実務上の目安です。距離確保が原則です。
配電盤・制御盤組立て作業編(厚生労働省・ものづくりマイスター)
国が認定した技能指導者向けマニュアルで、制御盤組立の標準的な手順と技能基準が写真付きで紹介されています。
ここまで「中板に機器を取り付ける」ことを前提に解説してきましたが、近年では中板を使わない設計手法として「3D制御盤」が注目を集めています。従来の制御盤が「中板という一枚の平面に機器を並べる2D的な発想」であるのに対し、3D制御盤は「筐体内の縦・横・奥行きの三次元空間を使って機器を配置する」という考え方です。
3D制御盤の最大のメリットは省スペース化です。リタール株式会社の事例では、同じ内容の機器を3D配置することで制御盤のサイズを従来比で大幅に削減できることが実証されています。建築現場や工場において制御盤の設置スペースが確保しにくい状況が増えている現在、この技術は現実的な解決策になりつつあります。これは使えそうです。
ただし、3D制御盤には専用の3D CADソフトとそれを扱えるエンジニアが必要です。現時点では専門性が高く、すべての制御盤製作会社が対応できるわけではありません。また、奥行き方向に機器を重ねて配置するため、配線の取り回しが複雑になり、後のメンテナンス時に配線をたどりにくくなるデメリットも指摘されています。
| 比較項目 | 従来の中板方式 | 3D制御盤 |
|---|---|---|
| 機器配置 | 中板(平面)に2D配置 | 筐体内3次元配置 |
| 省スペース性 | 標準的 | 大幅に小型化可能 |
| 設計難易度 | 比較的シンプル | 3D CADが必要で高難度 |
| メンテナンス性 | 中板を引き出せば作業しやすい | 配線が複雑になりやすい |
| コスト | 比較的安価 | 設計費用が高くなりやすい |
| 普及度 | 国内主流 | 拡大傾向だが専門性が高い |
建築電気工事の現場で制御盤を発注・検収する立場からすれば、3D制御盤の概念を知っておくと、設計段階での盤サイズの打ち合わせや、省スペース化の提案・判断に活かせます。中板方式か3D方式かの選択は、設置環境と予算の両面から判断する必要があります。メンテナンス性を重視するなら従来の中板方式が無難、スペースが最重要課題なら3D方式の検討価値があります。
圧倒的な小型化を実現する制御盤の新提案〜3D制御盤〜(リタール BLOG)
3D制御盤の具体的な構造、従来方式との比較、省スペース化の実例が画像付きで紹介されています。