
メートルねじは建築業界で最も広く使用されているねじ規格です。JIS B 0205に規定されており、各部の寸法をmm基準として決めた、ねじ山の角度が60°の三角ねじとして定義されています。
メートルねじの基本寸法は以下の要素で構成されています。
建築現場でよく使用されるM5からM30のメートルねじでは、とがり山の高さHは「H = 0.866025404 × P」の計算式で求められます。この数値は設計時の強度計算や適合性確認に重要な役割を果たします。
並目ねじと細目ねじの2種類があり、建築用途では一般的に並目ねじが標準として使用されています。細目ねじは特殊な用途や高精度が要求される場合に限定して使用されることが多いです。
建築現場で頻繁に使用されるメートルねじの呼び径とピッチの組み合わせを以下に示します。
第1選択(優先的に使用)
第2選択(必要時に使用)
建築工事では、構造計算や施工性を考慮して第1選択のサイズを優先的に使用することが推奨されています。特に呼び径35mmのものと呼び径14mmでピッチ1.25mmのものは特定の用途のみで使用されるため、一般的な建築工事では避けるべきです。
ピッチ選択時の注意点として、ピッチに対して呼び径が大きくなるほど公差に従うことが困難になるため、設計段階での慎重な検討が必要です。
建築業界では高強度接合部に六角穴付ボルトが多用されます。JIS B 1176:2014に基づく寸法表は以下の通りです。
小径サイズ(M1.6~M8)
呼び径 | ピッチ | 頭部径(dk最大) | 六角穴径(s呼び) | 頭部高さ(k最大) |
---|---|---|---|---|
M1.6 | 0.35 | 3.00 | 1.5 | 1.60 |
M2 | 0.4 | 3.80 | 1.5 | 2.00 |
M2.5 | 0.45 | 4.50 | 2 | 2.50 |
M3 | 0.5 | 5.50 | 2.5 | 3.00 |
M4 | 0.7 | 7.00 | 3 | 4.00 |
M5 | 0.8 | 8.50 | 4 | 5.00 |
M6 | 1 | 10.00 | 5 | 6.00 |
M8 | 1.25 | 13.00 | 6 | 8.00 |
大径サイズ(M10~M30)
呼び径 | ピッチ | 頭部径(dk最大) | 六角穴径(s呼び) | 頭部高さ(k最大) |
---|---|---|---|---|
M10 | 1.5 | 16.00 | 8 | 10.00 |
M12 | 1.75 | 18.00 | 10 | 12.00 |
M16 | 2 | 24.00 | 14 | 16.00 |
M20 | 2.5 | 30.00 | 17 | 20.00 |
M24 | 3 | 36.00 | 19 | 24.00 |
M30 | 3.5 | 45.00 | 22 | 30.00 |
六角穴付ボルトは精密加工されているため、通常のボルトと比較して高い締付け力を発揮できます。建築用途では鉄骨接合部や重要な構造部材の接合に使用され、専用の六角レンチ(アーレンキー)での施工が必要です。
頭部座面の角部処理や六角穴の精度など、JIS規格で詳細に規定された寸法公差を守ることで、建築物の安全性確保に寄与しています。
建築現場では配管工事において管用ねじが使用されます。現在のJIS規格では「メートルねじ」「ユニファイねじ(インチねじ)」「管用ねじ」の3種類が規定されています。
インチねじの特徴
管用ねじの用途
インチねじは1/8インチ、1/4インチ、3/8インチ、1/2インチ、3/4インチ、1インチといった分数表記で呼び径が決められています。建築設備工事では、既存設備との接続や輸入機器との適合性確保のため、これらの規格知識が不可欠です。
管用ねじは気密性を重視した設計となっており、配管の接続部で液体やガスの漏れを防ぐ重要な役割を担っています。建築現場では配管工事専門業者が適切な寸法選定と施工を行います。
建築現場における適切なねじ寸法選定は、構造安全性と施工効率の両面で重要です。実際の現場では以下の独自視点での選定が必要になります。
材料別選定基準
環境条件による選定
建築現場特有の環境要因として、以下を考慮する必要があります。
施工性向上のための寸法統一
建築現場では作業効率向上のため、使用するねじ寸法の種類を意図的に制限することがあります。工具の持ち替え回数削減、在庫管理の簡素化、作業員の習熟度向上などの効果が期待できます。
特に大規模建築工事では、M8、M10、M12の3サイズに統一することで、大幅な作業効率改善が実現できます。ただし、構造計算で要求される強度を満たすことが前提条件となります。
品質管理での寸法確認方法
建築現場では、ねじ寸法の品質管理として以下の確認が重要です。
これらの確認作業により、設計意図通りの性能確保と長期耐久性の実現が可能になります。建築物の安全性確保のため、寸法管理は施工品質の根幹を成す重要な要素といえます。
メートルねじ規格の詳細な寸法基準について
JIS規格に基づくメートルねじの基準寸法
六角穴付ボルトの詳細寸法表について
JIS B 1176準拠の六角穴付ボルト寸法表