

日本工業標準調査会は、1949年に工業標準化法に基づいて経済産業省に設置された審議会です。この組織は、JIS(日本工業規格)の制定や改正に関する審議を行い、主務大臣に答申する重要な役割を担ってきました。建築業界においても、コンクリートや鋼材、留め具などの材料規格を定める上で中心的な役割を果たしてきた歴史があります。
参考)日本産業標準調査会 - Wikipedia
略称はJISC(Japanese Industrial Standards Committee)と呼ばれ、学識経験者30人以内の委員によって構成されていました。委員は関係各大臣の推薦により経済産業大臣が任命し、任期は2年と定められています。この組織体制により、産業界全体の標準化を推進する審議が行われてきました。
参考)日本産業標準調査会とは
組織構成としては、総会の下に「標準部会」と「適合性評価部会」が設置され、さらに各部会の下には個別分野の検討を行う「専門委員会」が配置されていました。この階層的な構造により、幅広い産業分野の標準化ニーズに対応する体制が整えられていたのです。
参考)日本産業標準調査会:JISCの紹介-JISCについて
2019年7月1日、「工業標準化法」が「産業標準化法」へと改正されたことに伴い、「日本工業標準調査会」は「日本産業標準調査会」へと名称が変更されました。この変更は単なる名称の変更ではなく、標準化の対象範囲を大きく拡大する重要な意味を持っています。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/keihatsu/pamphlet/pdf/doyouknowhyoujunka.pdf
改正の主なポイントは以下の4点です。第一に、JISの対象にデータ、サービス、経営管理などを追加し、「日本工業規格」を「日本産業規格」に変更したこと。第二に、JIS制定の迅速化を図るため、認定産業標準作成機関制度を導入したこと。第三に、JISマーク表示制度違反への罰則を強化したこと。第四に、国際標準化の促進に関する規定を追加したことです。
参考)JISC(日本産業標準調査会)とは?意味を分かりやすく解説 …
建築業界にとって特に重要なのは、BIM(Building Information Modeling)などのデジタル技術やデータ形式が標準化の対象に含まれるようになったことです。これにより、建築業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に必要な標準化の基盤が整備されました。
参考)JIS法改正(産業標準化法)——「日本工業規格」は、「日本産…
現在の日本産業標準調査会は、総会の下に「基本政策部会」「標準第一部会」「標準第二部会」の3つの部会を設置する組織構成となっています。この体制は2014年3月の第25回総会で見直されたもので、ISO分野・IEC分野それぞれの国内外の標準化・適合性評価に適切に対応し、政策の企画立案審議を強化するために再編されました。
各部会の下には、JISの審議などを行う技術専門委員会が設置されています。部会・専門委員会は、審議内容に応じて関係する部会・専門委員会と連携を図り、必要に応じて関係各部会の委員等で構成する合同部会を開催する仕組みになっています。
参考)https://www.jisc.go.jp/jisc/pdf/organizationchart.pdf
主な業務としては、産業標準化法により権限に属させられた事項を調査審議するほか、産業標準化および国際標準化の促進に関し、関係各大臣の諮問に応じて答申し、または建議することができます。また、国際標準化機構(ISO)および国際電気標準会議(IEC)に対する日本唯一の会員として、国際規格開発に参加する重要な役割を担っています。
建築業界では、JIS規格が製品の品質確保と工事の効率化に不可欠な役割を果たしています。建設生産物の品質確保のためには、その一部を構成する工場製品についても品質確保を図ることが重要であり、既製品についてはJISによる認証が活用されています。
具体的には、コンクリート、鋼材、留め具、金具などの建設資材がJIS規格によって管理されています。一方、木造建築物で使用される木材はJAS(日本農林規格)で認定されたものを使用します。JISとJASのどちらにも認定されていない材料でも、国土交通大臣認定品として認められていれば使用が可能です。
参考)【メモ】建築業界に関わる規格の違い(JIS,JAS)|長屋悠…
建築設計者は、設計を行う際にJIS規格に基づいて寸法・品質・形状・材料などを決定します。機械を構成する大半の機械要素は、日本産業規格(JIS)によって規格化されているため、設計の効率化と品質の標準化が実現されています。メーカー側も、JIS規格に準拠することで製品開発や生産が効率化し、時間やコストを削減しやすくなっています。
参考)JIS規格とは何かをわかりやすく解説!JIS規格の目的と分類…
JIS原案は、産業標準化法に基づいて日本産業標準調査会(JISC)で審議され、主務大臣によって制定されます。主務大臣は規格の分野によって異なり、ほとんどは経済産業大臣ですが、国土交通大臣や農林水産大臣など他の大臣の場合もあります。
参考)日本産業標準調査会:JISの制定等のプロセス
従来、審議する原案の作成は、当該分野の有力な業界団体や日本規格協会(JSA)などが設ける原案作成委員会に依頼されていました。しかし、2019年の法改正により、実績のある業界団体などの中から「認定産業標準作成機関」を選定する制度が始まり、JISCによる審議を経ずに主務大臣に原案を提出できるようになりました。
参考)https://www.tkc.jp/cc/senkei/201911_consult01
この制度改正により、JIS制定の迅速化が図られています。建築業界においても、技術革新のスピードに合わせて、より迅速に新しい規格を制定・改正できる体制が整備されたことになります。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun-kijun/jisho/pdf/fy01poster.pdf
日本産業標準調査会は、国際標準化機構(ISO)および国際電気標準会議(IEC)に対する日本唯一の会員として、国際規格開発に参加しています。ISOは電気・電子以外の分野に関する国際規格の作成を行い、IECは電気・電子に関する国際標準化を担当しています。
参考)日本産業標準調査会:国際標準化(ISO/IEC)-ISO/I…
建築業界にとって、ISO規格との整合性は国際市場での競争力を左右する重要な要素です。日本産業標準調査会を通じて、日本の建築技術や材料規格が国際標準として採用されるよう働きかけることができます。また、国際規格の動向を把握し、国内のJIS規格に反映させることで、グローバルな互換性を確保することができます。
参考)JIS規格・ISO規格・IEC規格の基礎知識
2019年の法改正では、国際標準化の促進に関する規定が追加されました。これにより、国内標準化と国際標準化の連携がより強化され、日本の建築技術の国際展開を支援する体制が整備されています。
日本産業標準調査会の公式サイト - JIS規格の検索や最新の標準化情報を確認できます
JISの制定等のプロセス - JIS規格がどのように作られるかの詳細な解説
JIS法改正内容(経済産業省) - 2019年の法改正の詳細な内容と建築業への影響