
六角ボルト M6の基本寸法は、JIS B 1180規格により厳密に定められています。ねじの呼び径は6mm、標準ピッチは1.0mmとなっており、これは並目ねじの規格です。
主要寸法の詳細。
許容差は部品等級Aの第1選択値として規定されており、高い精度が要求される用途に適用されます。対辺距離の許容差は±0.22mmと比較的厳しく設定されており、工具との適合性を確保しています。
六角ボルト M6の座面直径 dw は最小8.88mmとなっており、これは座面での応力分散を考慮した設計値です。また、面取り部の寸法 c は最大0.50mm、最小0.15mmの範囲で規定されており、安全性と作業性の両立が図られています。
特に注意すべき点として、現行のJIS B 1180(2014年版)では、旧規格と比較してM6の寸法公差がより厳密になっています。建築現場では、古い規格のボルトと新しい規格のボルトが混在する可能性があるため、調達時には規格年度の確認が重要です。
六角ボルト M6のねじピッチは、並目ねじで1.0mm、細目ねじで0.75mmの2種類が規定されています。建築分野では並目ねじが標準的に使用されており、細目ねじは特殊な用途や高い締付け力が要求される場合に選択されます。
長さ選択の基準となる半ねじ部の規格。
実際の長さバリエーション。
建築現場で最も使用頻度が高いのは20mm~50mmの範囲です。木造建築では25mm~35mmが多用され、鉄骨造では40mm~60mmが標準的です。
長さ選択時の計算方法は、被締結材の厚さに座金やナットの厚さを加算し、さらに3~5山分のねじ余長を確保することが基本です。M6の場合、ピッチが1.0mmなので、余長は3~5mm程度を見込みます。
特殊な用途として、全ねじボルトも製造されており、これは首下長さが短い場合や、ねじ部全体で荷重を分散させる必要がある構造で使用されます。全ねじタイプでは、有効断面積が減少するため、許容荷重の再計算が必要となります。
六角ボルト M6の材質は、使用環境と要求強度に応じて選択されます。主要な材質分類と強度区分は以下の通りです。
鋼・合金鋼の強度区分。
ステンレス鋼の強度区分。
建築分野での材質選択指針。
表面処理の選択も重要な要素です。一般的な処理方法には、電気亜鉛めっき(白色、黄色クロメート)、溶融亜鉛めっき(HDZ)、ダクロダイズド処理などがあります。建築基準法では、構造耐力上重要な部分に使用するボルトの防錆処理が義務付けられている場合があります。
強度区分8.8のM6ボルトの許容引張荷重は約14.7kN(軸力)となりますが、実際の設計では安全率を考慮し、長期許容応力度の1/3程度で設計することが一般的です。せん断荷重についても、材質と表面処理により大きく変動するため、構造計算書での確認が必須です。
六角ボルト M6の対辺寸法は10mmと規定されており、これに対応する工具選択が作業効率と品質に直結します。JIS規格では基準寸法10.00mm、許容差範囲9.78mm~10.00mmとなっています。
推奨工具とサイズ。
工具選択時の注意点として、対辺寸法の許容差を考慮する必要があります。特に海外製の安価なボルトでは、寸法精度が劣る場合があり、10mmの工具では緩すぎる、または9mmでは小さすぎるという問題が発生することがあります。
トルク管理における工具選択。
M6ボルトの推奨締付けトルクは、材質と用途により異なりますが、一般的には以下の範囲です。
工具の品質も重要な要素です。JIS規格適合品の工具を使用することで、ボルト頭部の損傷を防ぎ、適切な締付けトルクの伝達が可能になります。特に電動工具使用時は、トルク設定とソケットの摩耗状態の定期確認が必要です。
現場では、予備の工具として異なるタイプ(スパナ、ボックスレンチ等)を準備しておくことで、ボルト頭部の損傷や工具の破損に対応できます。
建築施工現場において六角ボルト M6を選定する際は、単純な寸法規格だけでなく、施工性、経済性、維持管理性を総合的に評価する必要があります。
現場特有の選定要因。
実務における選定プロセス。
施工上の注意点として、M6ボルトは比較的小径のため、過締付けによる破断リスクがあります。特に電動工具使用時は、トルク設定を適切に行い、段階的な締付けを実施することが重要です。
品質管理の観点では、同一ロットでの調達を心がけ、施工前の寸法検査とトルクチェックを実施します。また、ステンレス鋼ボルト使用時は、かじり現象を防ぐため、潤滑剤の使用や締付け速度の調整が必要になる場合があります。
維持管理を考慮した選定では、将来の点検・交換の容易性も重要です。隠蔽部分に使用する場合は、耐久性の高い材質を選択し、露出部分では点検・交換しやすい配置と工具アクセスを確保することが長期的なコスト削減につながります。
コスト最適化のためには、標準品の使用を基本とし、特殊仕様は必要最小限に留めることが効果的です。また、現場での在庫管理を効率化するため、長さバリエーションを絞り込み、汎用性の高いサイズを中心とした調達計画を立案することも重要な実務ポイントです。