
皿モミ加工の基準となるJIS B 1017:2008では、皿頭ねじ用皿穴の形状が詳細に規定されています。この規格は建築業界において最も重要な指針となっており、以下の基本仕様が定められています。
JIS規格の基本仕様:
建築現場でよく使用される皿頭ねじのサイズに対応した角度設定は、90度が標準となっています。この角度は皿頭ねじの頭部形状と完全に適合するよう設計されており、適切な締め付けトルクを確保するために重要です。
角度の微調整が必要な場合は、使用する皿頭ねじのメーカー仕様を確認してください。一部のメーカーでは89度や91度の製品も存在するため、現物合わせによる確認作業が推奨されます。
建築現場で頻繁に使用される皿モミ寸法の一覧表を以下に示します。この表はJIS B 1017に基づいており、各ねじサイズに対する最適な加工寸法を提供しています。
標準皿モミ寸法一覧表:
ねじ呼び | 皿径(mm) | 穴径(mm) | 最小板厚(mm) | 皿深さ(mm) |
---|---|---|---|---|
M2 | 4.4 | 2.4 | 1.2 | 1.2 |
M2.5 | 5.5 | 2.9 | 1.35 | 1.35 |
M3 | 6.3 | 3.4 | 1.75 | 1.55 |
M4 | 8.6 | 4.5 | 2.3 | 2.3 |
M5 | 10.6 | 5.5 | 2.8 | 2.8 |
M6 | 12.8 | 6.6 | 3.4 | 3.4 |
M8 | 17.3 | 9.0 | 4.28 | 4.28 |
メーカー誤差を考慮した実用寸法:
建築現場では、各メーカーの製造誤差を考慮した寸法での加工が推奨されています。実際の施工では以下の調整寸法を参考にしてください。
この調整により、皿頭の飛び出しを確実に防止でき、仕上がりの美観も向上します。
皿モミ加工の図面指示は、JIS B 0001:2019機械製図で規定されています。2019年の改訂により新JISと旧JISの表記方法が混在している現状があるため、加工業者との事前確認が重要です。
新JIS(JIS B 0001:2019)での表記方法:
旧JISでの表記方法:
図面指示のポイント:
建築現場では「M4皿」といった簡略表記も使用されますが、この場合はJIS B 1017の標準寸法が適用されることを前提としています。ただし、重要な部位では詳細寸法の明記が必要です。
皿モミ加工において見落とされがちな重要ポイントとして、成形加工時の下穴径変化があります。この現象は金型による成形加工で特に顕著に現れ、加工精度に大きく影響します。
下穴径変化の計算式:
成形前下穴径 = 成形後下穴径 × 2 + 皿径
この計算式により、目標とする下穴径を得るために必要な成形前の穴径を算出できます。例えば、M4皿モミ(皿径8.6mm、下穴径4.5mm)の場合。
成形前下穴径 = 4.5 × 2 + 8.6 = 17.6mm
材質による変化の違い:
この変化を考慮しない場合、皿頭ねじが適切に嵌合せず、締め付け不良や外観不良の原因となります。特に薄板での成形加工では、この効果がより顕著に現れるため注意が必要です。
板厚と材質による補正係数を事前に把握し、試作段階での現物確認を必ず実施してください。
建築現場での皿モミ加工品質を向上させるための実践的なテクニックを紹介します。これらの手法は長年の現場経験から蓄積されたノウハウです。
ドリル加工での精度向上テクニック:
加工順序の最適化:
品質確認のチェックポイント:
現物の皿頭ねじによる最終確認は必須作業です。皿頭が材料表面より0.1mm以内に収まることを確認し、見た目の美観も併せてチェックしてください。
工具選定のポイント:
これらのテクニックを実践することで、皿モミ加工の品質安定化と作業効率向上を実現できます。特に大量生産では、初期設定の精度が最終品質に大きく影響するため、十分な準備作業を行ってください。