静電塗装と粉体塗装の違いとは?コストや耐久性とメリットを比較

静電塗装と粉体塗装の違いとは?コストや耐久性とメリットを比較

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静電塗装と粉体塗装の違い

静電塗装と粉体塗装の違いまとめ
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塗料の形態が違う

静電塗装は主に「液体」の溶剤塗料を使用するのに対し、粉体塗装は「粉末(パウダー)」状の固形塗料を使用します。

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塗膜の性能が違う

粉体塗装は一度で厚い膜(60μm以上)を作り高耐久ですが、静電塗装は薄く均一な美しい仕上げが得意です。

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現場対応力が違う

静電塗装(液体)は現場での施工や調色が比較的容易ですが、粉体塗装は専用の焼付炉が必要なため現場施工は不可能です。

静電塗装と粉体塗装の仕組みと環境性能の違い

 

静電塗装と粉体塗装は、どちらも「電気の力」を利用して塗料を付着させるという点では共通していますが、使用する塗料の性質と硬化のプロセス、そして環境への負荷において決定的な違いがあります。建築部材のスペックを選定する際、この「環境性能」の違いはSDGsやグリーンビルディングの観点からも無視できない要素となっています。
まず、**静電塗装(液体)**の仕組みについて解説します。一般的に「静電塗装」と呼ばれる場合、溶剤(シンナーなど)に樹脂と顔料を溶かした液体塗料を使用する方法を指すことがほとんどです。塗装ガン(霧化装置)の先端で塗料を微粒化させると同時にマイナスの電荷を与え、プラスに帯電させた(あるいはアースをとった)被塗物に対して電気的な引力で塗料を吸着させます。
この方法の最大の特徴は「回り込み効果(ラップアラウンド効果)」です。通常のエアスプレー塗装では、塗料の多くが空気中に飛散してしまいますが、静電塗装では電気力線に沿って塗料が裏側まで回り込むため、パイプや複雑な形状の金属部材でも効率よく塗装できます。しかし、液体塗料には揮発性有機化合物(VOC)が含まれており、乾燥過程でこれらが大気中に放出されるため、環境負荷対策や作業者の健康管理(防毒マスクの着用や排気設備の設置)が厳重に求められます。
一方、**粉体塗装(パウダーコーティング)**は、有機溶剤や水といった「触媒」を一切使用しません。100%固形分の微細な合成樹脂パウダーそのものを静電気で付着させます。この粉末は、空気の力で流動化され、静電ガンから噴射される際に帯電し、被塗物に付着します。この時点では単に粉が乗っているだけの状態ですが、これを180℃~200℃前後の高温炉(焼付乾燥炉)に通すことで、粉末が溶融・結合し、平滑で強固な塗膜を形成します。
環境性能の面では、粉体塗装は圧倒的に優れています。


  • VOC排出ゼロ: 溶剤を含まないため、大気汚染のリスクが極めて低く、シックハウス症候群の原因物質も排出しません。

  • 塗料の再利用: 被塗物に付着しなかった余剰な粉末(オーバースプレー)は、回収して再利用することが可能です。液体塗装では飛散した塗料は産業廃棄物として処理するしかありませんが、粉体塗装では廃棄ロスを大幅に削減できます。

このように、仕組みとしては似ていても、プロセスの環境適合性には雲泥の差があります。近年、公共建築物や環境配慮型オフィスビルの内装・外装材において粉体塗装の指定が増えているのは、単なる耐久性だけでなく、こうした環境スペックの高さが評価されているためです。
参考リンク:静電塗装と他の塗装方法の違いとは?選ばれる理由とは - 幸南工業(静電塗装のVOC排出や環境配慮についての詳細な比較が解説されています)

静電塗装と粉体塗装の耐久性とコストの比較

建築資材のメンテナンスサイクルを考える上で、「コスト」と「耐久性」のバランスは最重要課題です。静電塗装と粉体塗装は、それぞれ得意とするコストゾーンと耐久年数が異なります。
耐久性に関しては、粉体塗装に軍配が上がります。
粉体塗装で形成される塗膜は、一般的な溶剤塗装(メラミン焼付塗装など)に比べて非常に厚く形成されます。溶剤塗装の膜厚が通常20~30ミクロン程度であるのに対し、粉体塗装は1回の塗装で60~100ミクロン、あるいはそれ以上の膜厚を確保できます。
この「厚み」と、高分子樹脂が熱で強固に結合した架橋構造により、以下の性能が飛躍的に向上します。


  • 耐衝撃性: 塗膜に柔軟性と弾力性があるため、工具をぶつけたり、施工中に接触したりしても塗膜が割れにくく、剥がれにくいです。ガードレールやフェンスなど、物理的な接触が多い部材に最適です。

  • 防錆力: 膜厚があるため酸素や水分の浸入を強力にブロックし、エッジ部分(角)の被覆力も高いため、金属の腐食を防ぎます。

  • 耐候性: 紫外線や酸性雨に対する抵抗力も高く、屋外製品での寿命が長くなります。

対して、**静電塗装(溶剤)**の耐久性は使用する塗料のグレード(アクリル、ウレタン、フッ素など)に依存しますが、物理的な膜厚が薄いため、防錆力や耐衝撃性といった「物理的な強さ」では粉体塗装に劣るケースが多いです。しかし、薄膜であることは、精密な寸法精度が求められる部材や、ネジ山を生かしたい場合などには有利に働きます。
コストの面では、初期導入コストとランニングコストで評価が分かれます。


  • 設備投資: 粉体塗装は、専用の静電粉体ガン、粉体回収ブース、そして高温で焼き付けるための大型オーブンが必要です。これらは非常に高額な設備投資となります。静電塗装(液体)は比較的シンプルな設備で導入可能です。

  • 塗料単価と効率: 塗料単価(kgあたり)は粉体の方が高い傾向にありますが、前述の通り「回収再利用」ができるため、塗着効率(実際に製品に付く塗料の割合)を含めたトータルコストでは、大量生産品において粉体塗装の方が安くなる逆転現象が起きます。

  • 小ロット対応: ここが建築現場にとって重要です。静電塗装(液体)は、少量の塗料を調色して1個だけ塗装することが容易で低コストです。一方、粉体塗装は色替えのためにブースの清掃や粉の入れ替えに膨大な手間がかかるため、小ロットや特注色の対応は割高になりがちです。
比較項目 静電塗装(溶剤) 粉体塗装
耐久性・防錆力 △ 普通(膜厚20-30μm) ◎ 非常に高い(膜厚60μm~)
耐衝撃性 △ 硬いが割れやすい場合あり ◎ 柔軟で割れにくい
初期導入コスト ◯ 比較的安価 ✕ 高額(専用設備必須)
大量生産コスト ◯ 普通 ◎ 安くなる可能性大(再利用可)
小ロット・特注色 ◎ 得意(安価に対応可) △ 苦手(割高・納期長い)


参考リンク:静電塗装と粉体塗装の違い - Proleantech(コスト効率と生産量に応じたコストパフォーマンスの違いについて詳細な分析があります)

静電塗装と粉体塗装のメリットとデメリット

これまでの比較を整理し、それぞれの工法がどのようなシチュエーションで「メリット」を発揮し、どのような「デメリット」を抱えているかを明確にします。
粉体塗装のメリット・デメリット


  • メリット:


    • 優れた塗膜性能: 「1コート(1回塗り)」で厚膜が得られ、錆びにくくキズに強い最強クラスの塗膜を実現できます。

    • エッジカバー性: 液だれ(タレ)が起きないため、部材の角(エッジ)にもしっかりと塗料が乗り、そこからの錆を防ぎます。

    • 安全性: 引火性のある溶剤を使わないため火災のリスクが低く、有機溶剤中毒予防規則(有機則)の対象外です。


  • デメリット:


    • 調色の難易度: 粉体塗料は現場で混ぜて色を作ることができません。塗料メーカーで製造された原色を使うか、特注で粉を作ってもらう必要があり、微妙な色合わせが困難です。

    • 薄膜が苦手: 30ミクロン以下の薄い膜厚にするのは技術的に難しく、厚ぼったい仕上がりになりがちです。

    • 色替えの手間: 色を変えるたびに掃除が必要なため、多品種少量生産では生産性が落ちます。

静電塗装(液体)のメリット・デメリット


  • メリット:


    • 美しい仕上がり: 塗膜のレベリング(平滑性)が良く、自動車のボディのような鏡面仕上げや、メタリック、パールといった意匠性の高い塗装が得意です。

    • 自由な調色: 液体なので、その場で色を混ぜて微調整が可能。日塗工(日本塗料工業会)の色見本に合わせた完全なカラーマッチングが容易です。

    • 薄膜対応: 精密部品など、寸法公差が厳しい箇所にも薄く均一に塗装できます。


  • デメリット:


    • 環境負荷と臭気: シンナー臭が発生するため、近隣への配慮や作業環境の対策が必須です。

    • 熟練技術が必要: 液だれ、ゆず肌(表面の凹凸)、色ムラなどが起きやすく、ガン操作や粘度調整に職人の技量が求められます。

    • 複雑形状への弱さ: 静電効果があるとはいえ、粉体塗装に比べると袋状の部分や奥まった部分への「つきまわり」は劣ります。

建築金物(手すり、笠木、サッシなど)においては、人が触れる場所や外部に面する場所には粉体塗装、意匠性が求められる内装パネルや特注色が必要な装飾金物には**静電塗装(液体)**といった使い分けが一般的です。
参考リンク:粉体塗装のメリット・デメリットとは?製品事例をご紹介! - 大森クローム工業(膜厚の特性や耐久性に関する具体的なメリット・デメリットが網羅されています)

[現場での補修]の難易度とメンテナンス性の違い

ここが本記事で最も強調したい、カタログスペックには載らない「現場のリアル」です。建築現場において、搬入時や施工中に部材にキズがついてしまうトラブルは避けられません。この時、「どうやって補修するか」が工法によって致命的に異なります。
粉体塗装の最大の弱点は、現場補修が不可能に近いことです。
粉体塗装は、粉を付着させてから200℃近くの炉で焼き付けることで性能を発揮します。当然、建設現場に巨大な焼付炉を持ち込むことはできませんし、設置済みの手すりを加熱することも不可能です。
では、粉体塗装された製品にキズがついたらどうするのか?
通常は、**「近似色の溶剤塗料(液体)」**を筆やスプレーで塗って誤魔化すことになります。しかし、ここで問題が発生します。


  • 質感の不一致: 粉体塗装特有の厚みや質感(ツヤ感)と、補修用の液体塗料の質感は全く異なります。補修箇所だけが浮いて見えたり、経年変化で補修部分だけが先に変色したりします。

  • 性能の低下: 補修部分は粉体塗装の強靭な性能を持っていません。そこから錆が発生するリスクがあります。
    つまり、粉体塗装を採用する場合、現場管理者は「絶対にキズを付けない」という強い覚悟と養生計画が必要です。もし大きなダメージがあれば、部材ごと工場に持ち帰って再塗装(塗り直し)という、工期的にもコスト的にも痛手となる事態を招きます。

一方、静電塗装(液体)は現場補修との親和性が高いです。
工場で行った塗装と同じ種類の塗料(例えばウレタン樹脂塗料など)を現場に持ち込めば、ハケ塗りやタッチアップスプレーでの補修が容易です。もちろん、焼き付け乾燥のような強度は出ませんが、色やツヤを合わせやすく、プロの補修屋(リペア業者)が入れば、どこを直したか分からないレベルまで復元することも可能です。
また、大規模な改修工事(塗り替え)の際も、液体塗装であれば、既存の塗膜の上からサンディング足付け)をして、ローラーや刷毛で新しい塗料を重ね塗りするメンテナンスが容易に行えます。
メンテナンス性の観点からの選定指針:


  • メンテナンスフリーを目指すなら粉体塗装: そもそもキズがつかない強さを求める、あるいは交換可能なパーツ(フェンスの網など)なら粉体がベスト。

  • 将来的な塗り直しを想定するなら静電塗装: 現場溶接が必要な箇所、頻繁にリニューアルする店舗内装、後から追加加工の可能性がある部材は、補修容易な液体塗装が安全です。

参考リンク:補修塗装仕様 - 大日本塗料(静電粉体塗装の補修において、液体塗料を使用する際の具体的なプロセスや注意点が記載されています)

静電塗装と粉体塗装の塗膜品質と用途の違い

最後に、それぞれの塗装が具体的にどのような建築部材や製品に使われているか、その「適材適所」について、塗膜の品質特性から掘り下げます。
導電性と被塗物の制約
両者とも「静電気」を使うため、基本的には**金属(鉄、アルミ、ステンレスなど)**が対象です。木材やプラスチックなどの絶縁体(電気を通さないもの)には、そのままでは塗装できません。
ただし、技術の進歩により、木材などにあらかじめ導電プライマーを塗布したり、水分を含ませて通電させたりすることで静電塗装を行うケースも増えていますが、基本は金属製品向けです。
特に粉体塗装は高温焼付(180℃以上)が必要なため、熱で変形・溶解してしまうプラスチックや、反ってしまう木材には適用できません。これに対し、液体の静電塗装には常温~低温(60℃~80℃)で乾燥させるタイプもあるため、耐熱性の低い素材と金属を組み合わせた複合部材などには液体の方が適しています。
具体的な用途の使い分け


  1. エクステリア・外構(フェンス、門扉、ガードレール)


    • 主流:粉体塗装

    • 理由:屋外の過酷な環境(雨風、紫外線)にさらされるため、圧倒的な耐候性と防錆力が必要です。また、金網のような複雑な形状でも、粉体塗装なら静電気の回り込み効果と厚膜形成により、隙間なくコーティングできます。


  2. オフィス家具・スチールパーテーション


    • 主流:粉体塗装

    • 理由:椅子や机の脚は靴で蹴られたり、掃除機が当たったりします。キズに強い粉体塗装が標準スペックとなっています。また、VOCを出さないため、オフィス内の空気質環境(IAQ)にも貢献します。


  3. 内装建材・装飾金物(店舗什器、手すり、サッシ)


    • ケースバイケース

    • 高級感や特注色(ブランドカラー)を出す必要がある場合は、**静電塗装(液体)**が選ばれます。特に「メタリック」や「クリア塗装」の深み、平滑性は液体の方がコントロールしやすいためです。

    • 一方、不特定多数が触れる公共施設の手すりなどは、塗装剥がれを防ぐために粉体塗装が指定されることが増えています。


  4. 構造部材(鉄骨、ブラケット)


    • 主流:静電塗装(液体・防錆プライマー)

    • 理由:巨大な構造物は焼付炉に入らないため、粉体塗装は不可能です。現場搬入後にタッチアップが必要になることも多いため、液体の錆止め塗装が一般的です。

品質管理のポイント
発注者として品質をチェックする際、**「膜厚管理」**がキーポイントになります。
粉体塗装の場合、膜厚が厚すぎると「ワキ(発泡)」と呼ばれる微細な穴が開くトラブルや、ボルト穴に入らなくなる嵌合(かんごう)不良が起きることがあります。逆に薄すぎると「透け」が発生します。
静電塗装(液体)の場合、膜厚不足による錆の発生が最大のリスクです。
どちらの工法を採用するにせよ、仕様書において「膜厚何ミクロン以上」という規定と、膜厚計による検査データの提出を求めることが、品質トラブルを防ぐための防衛策となります。
結論として、「とにかく丈夫で長持ちさせたい、形状が複雑」なら粉体塗装。「こだわりの色を出したい、現場での融通を利かせたい、薄く仕上げたい」なら静電塗装。この基準を持って選定することで、後悔のない建築塗装が可能になります。

 

 


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