
ネジ山とは、円筒や円錐の表面に螺旋状に刻まれた山と谷の連続した構造を指します。この構造において、隣り合うネジ山の中心間距離を「ピッチ」と呼び、この値がネジの性能を決定する重要な要素となります。ピッチは一般的にミリメートル単位で表記され、例えばM6のメートルねじの場合、並目では1.0mm、細目では0.75mmとなります。
参考)ねじ山の種類 【通販モノタロウ】
ネジを1回転させたときに軸方向へ移動する距離を「リード」といい、一般的な一条ねじではピッチとリードの値は等しくなります。しかし、二条ねじや三条ねじなどの多条ねじでは、リードはピッチの条数倍になります。多条ねじは容器のキャップなど、素早い開閉が求められる用途に適していますが、リード角が大きくなるため緩みやすいという特性があります。
参考)https://d-engineer.com/kikaiyouso/youto.html
ネジ山の角度も重要な要素で、メートルねじとユニファイねじは60度、管用ねじは55度と規定されています。この角度の違いにより、ねじの締結特性や気密性が変化するため、用途に応じた適切な選択が必要です。建築現場では特にウィットねじが多く使用されており、ねじ山の角度が55度であることを理解しておく必要があります。
参考)ねじの種類
ネジ山の断面形状により、用途に応じて様々な種類が存在します。最も一般的な三角ねじは、ねじ山が三角形の形状をしており、緩みにくい特性から締結用として広く使用されています。建築現場で使用されるボルトやナットの大部分がこの三角ねじに該当し、メートルねじ、ユニファイねじ、管用ねじなどが含まれます。
参考)ねじの製図|機械製図の基礎知識 (設計精度保証編)5
台形ねじは、ねじ山の断面が台形をしており、ねじ山の角度は30度です。三角ねじと比較して摩擦力が低く、締結には向きませんが、製作が容易で高精度な加工が可能という利点があります。バックラッシが小さく強度が高いため、工作機械の送りねじや測定器の測定軸など、高精度のピッチが求められる場所に用いられます。建築機械のメンテナンスにおいて、この台形ねじの特性を理解しておくことは重要です。
角ねじは、ねじ山の断面が正方形に近い形状で、角度が90度となっています。摩擦力が小さく、大きな伝達力を持つため、万力やジャッキ、プレスなどに利用されます。建築現場で使用する油圧ジャッキなどにこの角ねじが採用されているケースがあります。のこ歯ねじは角ねじと三角ねじを組み合わせた非対称断面形を持ち、締め付けた状態から速やかにねじを緩めることができる特性があります。
参考)ネジの向きの違いやネジ山、ネジ頭の種類などについて解説します…
同じ呼び径のネジでも、ピッチの違いにより「並目ねじ」と「細目ねじ」に分類されます。並目ねじは最も一般的で標準的なねじであり、JISやISOで標準化されています。通常「M○」と表記されるメートルねじの場合、特にピッチの指定がない場合は並目ねじを指します。ピッチが粗く、ねじ山とねじ山の間隔が広いため、ねじ込み作業が速く進み、素早い作業性が求められる場面に適しています。
参考)ねじの「並目」と「細目」とは? - 株式会社ヤマキン
細目ねじは、並目ねじに比べてねじ山が細かく、ピッチが狭いねじです。並目と同じ直径のねじでも、ねじ山が多いため、より精密な締結や調整に適しています。ピッチが小さい分、ネジの螺旋角度(リード角)も小さくなり、緩みに強くなるという利点があります。建築現場で金型の精密な位置調整を行う際や、薄肉部品の締結には細目ねじが推奨されます。
参考)ねじの並目・細目の違いについて解説!見分けるにはどうすればい…
細目ねじのデメリットとして、並目に比べて入手性が悪い点が挙げられます。ホームセンターでは並目ねじが一般的に販売されていますが、細目ねじはインターネット通販や商社経由での購入が必要となるケースが多いです。また、電動工具で高速締め付けを行うと焼き付きを起こす可能性が高く、ピッチが細かい分、山の強度が弱いため、斜めにはめ込むと山がつぶれてかじりが発生するリスクがあります。
一般的に使用されるネジのほとんどは「右ねじ」であり、時計回り(右回し)で締まり、反時計回り(左回し)で緩みます。これに対して「左ねじ」は反時計回り(左回し)で締まり、時計回り(右回し)で緩む特殊なねじです。左ねじは別名「逆ねじ」とも呼ばれ、回転により右ねじだと緩んでしまう場所や、左回りの力を受ける場所に使用されます。
参考)https://www.genbaichiba.com/shop/pages/about-screw.aspx
建築現場における左ねじの具体的な使用例として、右回転をする軸を固定する場合が挙げられます。右ねじを用いると緩む方向に力が働いてしまうため、このような部分には左ねじが必須となります。グラインダーやサンダーの砥石の取り付け、ガス溶接機のホースの取り付けにも左ねじが使用されています。これは工具の回転方向によってねじが緩まないようにするための安全対策です。
参考)機械設計における「右ねじ」と「左ねじ」【緩み勝手・締り勝手】…
自転車の左ペダルも左ねじの代表例です。右ペダルと異なり、踏み込むと緩みやすいという特性があるため、左ねじを使用することで緩みを防止しています。建築機械においても、高速回転でねじが緩みやすい構造の場合、回転体に使われるシャフトナットやフライホイール、モーター軸の端部などに左ねじが採用されるケースがあります。機構上、左右を対称にしたい場合、片側だけ左ねじにすることで回転方向も左右対称にできるという設計上のメリットもあります。
ネジ山は国際的な規格により分類されており、主要なものとして「メートルねじ」「ユニファイねじ」「管用ねじ」「ウィットねじ」があります。メートルねじはISO(国際標準化機構)が国際規格として採用した世界で最も使用されている規格で、ねじ山の角度は60度、呼び径とピッチをメートル法で表します。日本の建築現場では最も一般的に使用されており、「M6」「M8」などと表記されます。
参考)https://www.nbk1560.com/resources/specialscrew/article/nedzicom-topics-12-reference-dimensions/
ユニファイねじは、メートルねじがミリメートルで長さを表したのに対して、インチで長さを表したねじです。ねじ山の角度は60度で、ユニファイ並目ねじ(UNC)とユニファイ細目ねじ(UNF)の二種類があります。アメリカの機械や設備を扱う建築現場では、このユニファイねじの知識が必要となります。一方、ウィットねじは建築用のねじとして多く使われており、ねじ山の角度が55度という特徴があります。
参考)ねじ規格・サイズ選定表
管用ねじは水道配管や空気圧機器など、気密性が求められる場所で用いられており、ねじ山の角度は55度と定められています。より気密性を高めるために円筒部が傾斜したテーパ部を持つ管用テーパねじも存在します。建築現場での配管作業において、管用テーパねじ(R、Rc)と管用平行ねじ(G)の違いを理解し、適切に使い分けることが重要です。旧JIS規格でPTと表記されていたものは現在のR、Rcに該当し、PFと表記されていたものは現在のGに該当します。
参考)ねじ規格を調べる。日本で使われるネジ規格一覧表 - 株式会社…
日本で使われるネジ規格一覧表 - 大宮製作所
ネジ規格の詳細な寸法表と呼び径の関係について解説されています。規格選定時の参考情報として有用です。
ねじの基準寸法を解説 有効径やピッチとは - NBK
ネジの基準寸法や有効径、ピッチの計算方法について図解付きで詳しく説明されています。技術的な理解を深める際の参考資料です。
建築現場におけるネジの品質管理では、ねじ山の精度測定が不可欠です。特に重要な測定項目として、「有効径」「外径」「谷径」「ピッチ」があります。有効径とは、ねじの谷の幅がねじ山の幅に等しくなるような仮想的な円筒の直径を指し、ねじの嵌合性能を決定する最も重要な寸法です。原子力や自動車関連など高い品質保証が求められる建築プロジェクトでは、国家標準につながる校正方法による検査が必要となります。
参考)長年の課題「ねじリングゲージ」の認定校正を表面粗さ・輪郭形状…
ねじリングゲージは、メネジの形状をした測定器で、オネジを組み合わせてその形状が正しいかどうかを検査します。しかし、形状の複雑さから汎用的な測定機器による高精度な測定が難しく、専門的な校正技術が求められます。建築事業者は、使用するネジの規格に応じた適切な検査体制を整備し、不適合品の使用を防止する必要があります。特に建築資材の鉄骨等の締め付けに使用されるネジについては、厳格な品質管理が安全性確保の観点から重要です。
近年発生している建築関連の事故の多くは、ねじをはじめとした機械要素によるものです。遊園地で起きたジェットコースターの事故では、車輪の軸を固定するねじの疲労破壊により発生しています。建築事業者は、ねじを使用環境に応じて適切に選定し、定期的な点検と交換を実施する必要があります。ねじの選択を誤ると機能を果たせなかったり、最悪の場合は破損につながるため、ネジ山の種類と特性をよく理解した上で設計・施工することが求められます。