塑性加工種類と基本から鍛造圧延プレス引き抜き転造押し出し

塑性加工種類と基本から鍛造圧延プレス引き抜き転造押し出し

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塑性加工の種類と特徴

この記事のポイント
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代表的な塑性加工の種類

鍛造、圧延、プレス、引き抜き、転造、押し出しなど用途に応じた多彩な加工法を解説

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温度による加工分類

冷間・温間・熱間加工それぞれの特性と建築部材への応用例を紹介

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強度向上のメカニズム

加工硬化と結晶粒微細化による材料強化の原理を詳しく説明

塑性加工とは、金属材料が持つ塑性(力を加えると元に戻らず変形する性質)を利用して、目的の形状に成形する加工方法です。材料の降伏点を超える力を加えることで永久変形を生じさせ、製品形状を形成します。自動車部品、建築資材、精密機器など幅広い分野で活用されており、建築業においても鉄骨構造材やボルト、アンカーなど重要な部材の製造に欠かせない技術となっています。
参考)塑性加工の会社26社 注目ランキング【2025年】

塑性加工は大きく分けて、素材から加工材料をつくる「一次加工」と、材料から完成品をつくる「二次加工」に分類されます。
参考)塑性加工とは?金属加工の現場で行われる塑性加工の種類まとめ

塑性加工における鍛造の特徴と強度

鍛造加工は、金づちやプレス機を用いて金属を圧縮し、目的の形状に成形する加工方法です。素材を加熱または常温で叩いたり押し潰したりすることで、金属内部の組織が緻密になり、強度や靭性が大幅に向上するという特徴があります。鍛造には型を用いずに叩く「フリー鍛造」と、金型を使用する「型鍛造」があります。
参考)塑性加工とは?素形材の意味・加工法の種類・鋳造や金型との違い…

建築業においては、高力ボルトや構造用アンカーボルトの製造に鍛造技術が活用されています。特にトルシア型超高力ボルトは、通常の高力ボルトの約1.5倍の引張強さ(1400N/mm²級)を持ち、応力集中を緩和する新ねじ形状を採用しています。自動車のクランクシャフト、航空機部品、工具など高い強度と信頼性が求められる部品にも用いられます。
参考)http://jfma.com/jis/

塑性加工における圧延の役割

圧延加工は、回転するロールの間に材料を通し、圧縮しながら引き伸ばして板や棒状に成形する加工法です。大量生産が可能で、均一な厚みや形状の材料を効率的に生産できるため、金属板、鋼材、アルミニウム板、銅板などの基本的な素形材の製造に広く用いられています。
参考)鍛造とは?圧延とは?それぞれの利点と欠点は?TMCPとは?

建築業では、鉄骨構造に使用される鋼材や建設資材の製造に圧延加工が不可欠です。圧延は高い圧力を加えて延ばすことから均一な厚みの材料が得られ、建物を支える鉄骨や屋根材料など建築現場で使われる資材の多くが圧延加工の産物となっています。鍛造と比較すると、圧延は連続して金属を薄く延ばすことができるため、薄く幅の広い製品を大量に効率よく生産することに適しています。
参考)https://www.kanameta.jp/column/what-is-plastic-forming-manufacturing-features-reasons

塑性加工におけるプレス成形の多様性

プレス加工は、金型やパンチを用いて板材に力を加えて変形させる加工方法で、「切る(せん断加工)」「曲げる(曲げ加工)」「絞る(絞り加工)」など多様な加工が可能です。1つの被加工材を加工する時間は数秒程度で、低コストでの大量生産に向いています。
参考)プレス加工

せん断加工は板材を切断する加工、曲げ加工は板材を曲げて形状を作る加工、絞り加工は板材をカップ状に成形する加工です。その他にも張出し成形、スピニング加工、フォーミングなど様々な加工法があります。建築業では板金加工として活用され、外装材や内装材の製造に用いられています。プレス加工では、曲げ加工時に圧縮・引張応力の反発により曲げの角度が開く「スプリングバック」という現象が発生するため、設計段階で考慮する必要があります。
参考)あらゆる分野に欠かせない金属加工!金属加工ってどうやるの?|…

塑性加工における引き抜きと押し出しの違い

引き抜き加工と押し出し加工は、どちらも一定断面の長尺材料を製造する塑性加工ですが、力の加え方が異なります。押し出し加工は、コンテナ内に加熱したビレット(材料)を入れ、加圧してダイスの穴から流出させて一定断面の形状を成型する方法です。実際の工程では先頭部分を掴んで走行しますが、これは単なる案内であり実際には引っ張っていません。
参考)いまさら聞けない基礎用語!【オ】#013 押出し加工と引抜き…

押し出しには「直接押出し」と「間接押出し」があり、通常のアルミニウム押出し形材はほとんどが直接押出しで製作されています。間接押出しは高品質で寸法精度の高い製品ができますが、できる形状に制約があります。引き抜き加工は、ダイスに材料を通して引っ張ることで断面を小さくし、線材や管材を製造する加工法です。建築業では、配管材料やワイヤーなどの製造に活用されています。​

塑性加工における転造の精密加工技術

転造加工は、回転する工具(ダイス)で材料を挟み込み、圧力を加えながら回転させることで、ねじや歯車などの形状を塑性変形により成形する加工方法です。切削加工と異なり材料を削らずに変形させるため、材料の無駄が少なく、加工面が滑らかで強度も高いという特徴があります。
参考)塑性加工とはどんな加工? 代表的な種類とメリット・デメリット…

建築業においては、構造用アンカーボルトのねじ加工に転造技術が活用されています。転造ねじは塑性加工の影響でファイバーフローがねじ山の形に沿って流れ、圧縮された谷底部分が特に緻密になることで、ねじの谷の硬度が上昇しねじとしての強度が向上します。この複雑なネジ山を持つボルトは塑性加工である「転造」によって実現されており、鉄骨構造物、橋梁、鉄塔、建設機械など様々な分野で使用されています。
参考)製品案内

塑性加工の温度分類による特性の違い

塑性加工は加工温度によって「冷間塑性加工」「温間塑性加工」「熱間塑性加工」に分類され、それぞれ異なる特性を持ちます。冷間塑性加工は常温で行う加工方法で、寸法精度が高く表面仕上げが良好という特徴があります。一方で加工に必要な力が大きく、加工硬化が進むため大きな変形には適さない場合があります。
参考)塑性加工とは?メリット・デメリットと種類を解説

熱間塑性加工は金属を高温(鋼材の場合1000℃以上)で変形させる加工方法で、高温下では金属の結晶構造が柔軟になり変形が容易になります。大きな変形が可能で加工力が小さくて済みますが、冷間加工に比べて寸法精度が低くなります。温間塑性加工は冷間と熱間の中間(600~900℃程度)で行われ、両者のデメリットをカバーする加工方法として注目されています。
参考)TNKメディア

塑性加工による結晶粒微細化と強度向上メカニズム

塑性加工を施すと材料が硬くなる「加工硬化」という現象が発生し、これにより強度を向上できるのが塑性加工の特徴です。加工硬化は、塑性変形により転位(結晶内の欠陥)の密度が増加し、転位同士が絡み合って移動しにくくなることで生じます。金属の結晶構造により、すべる方向や面が異なるため、塑性変形によって結晶が回転し、機械加工方向に配向した集合組織を形成します。
参考)加工硬化とは?そのメカニズムや加工硬化曲線の見方について │…

大きな変形量の冷間圧延では結晶粒が伸び、臨界値以上の塑性変形を与えた材料を加熱すると、転位のない新しい等軸の結晶粒が核生成し成長する「再結晶」という現象が起こります。この再結晶により結晶粒の微細化や軟化が実現され、結晶粒の微細化は金属材料の強化方法の一つとして重要な役割を果たしています。塑性加工プロセスを適切に制御することで、ナノ結晶金属材料の創製も可能となり、本来の結晶粒微細化に伴う高強度が発現します。​

塑性加工における建築部材への独自の応用展開

建築業における塑性加工の応用は、従来の鉄骨や鋼材製造にとどまらず、先進的な構造システムへと展開しています。鋼・コンクリート合成梁では、溶接スタッドに代わる取り外し可能なボルト型シアコネクタの開発が進められており、損傷したコンクリートスラブの交換を容易にする技術として注目されています。これらの接合部材は塑性加工により高精度に製造され、建物の解体・再構築を容易にする持続可能な建設手法を実現します。
参考)https://www.mdpi.com/2076-3417/12/3/1508/pdf

また、超高力ボルトの開発により、柱-梁接合部の設計自由度が向上し、塑性ヒンジの位置制御やダンパーの積極的活用が可能になっています。構造用アンカーボルトでは、ねじ部降伏に先立って軸部が降伏することを保証した十分な塑性変形能力を確保したJIS規格製品が開発され、露出柱脚の安全性向上に貢献しています。塑性加工技術は建築物の耐震性能向上と施工効率化の両面で重要な役割を果たしており、今後も技術革新が期待される分野です。
参考)http://jfma.com/stan/

参考リンク:建築用アンカーボルトの規格と塑性変形能力について詳細が記載されています
建設用アンカーボルト規格 | JFMA
参考リンク:鍛造と圧延の違い、それぞれの利点と欠点について詳しく解説されています
鍛造とは?圧延とは?それぞれの利点と欠点は?TMCPとは? | 川上鉄工所
参考リンク:塑性加工の基本から各種加工法まで体系的に解説されています
塑性加工とは?素形材の意味・加工法の種類・鋳造や金型との違い | YAMAZEN