

基準値内でも、騒音苦情の約6割は建設作業から来ています。
騒音に関する規制は「騒音規制法」に基づいており、工場・事業場と建設作業の両方を対象にしています。昭和43年に制定されたこの法律は、工場や建設現場から出る音が周辺住民の生活環境や健康を損なわないよう、許容限度を定めたものです。
法律が規定する対象は大きく4つ、①工場・事業場騒音、②建設作業騒音、③自動車騒音、④深夜騒音等に分かれています。建築業に従事する方が特に意識すべきなのは①と②です。
2つの騒音規制の違いを整理すると次のようになります。
| 区分 | 対象 | 主な基準 | 根拠法令 |
|---|---|---|---|
| 工場・事業場騒音 | 特定施設を設置した工場など | 敷地境界 45〜70dB(区域・時間帯による) | 騒音規制法 第4条 |
| 建設作業騒音 | くい打機・バックホウなど特定建設作業 | 敷地境界 85dB以下 | 騒音規制法 第14条 |
騒音規制法が適用されるのは「指定地域内」のみです。都道府県知事や市区町村長が指定した地域が対象であり、すべての場所に一律に適用されるわけではありません。ただし、非指定地域であっても都道府県の条例で独自の規制がかかるケースも多く、事前確認が必要です。
注目すべき点が1つあります。騒音の苦情件数において、建設作業からの苦情は全体の約60%を占めるという実態があります(タカミヤ調べ)。基準値をクリアしているかどうかに関わらず、現場の運用姿勢そのものが問われる時代になっているということです。
参考:騒音規制法の罰則・基準・届出義務の詳細
騒音規制法とは?騒音に関する法律を知ろう! | タカミヤ
工場・事業場に適用される規制基準値は、工場が立地する「区域の種別」と「時間帯」によって細かく異なります。この組み合わせを正しく把握しないと、実際には違反状態になっているケースがあるため注意が必要です。
特定工場等における騒音規制基準値(dB)
| 区域 | 昼間 | 朝・夕 | 夜間 |
|---|---|---|---|
| 第1種区域(病院・学校などが集まる静かな住宅地) | 45〜50dB | 40〜45dB | |
| 第2種区域(一般的な住宅地) | 50〜60dB | 45〜50dB | 40〜50dB |
| 第3種区域(住宅+商業・工業が混在) | 60〜65dB | 55〜65dB | 50〜55dB |
| 第4種区域(工業用途が主な地域) | 65〜70dB | 60〜70dB | 55〜65dB |
デシベルの感覚をつかむために、日常の音と比べてみましょう。40dBは図書館の中の静けさ、50dBはエアコンの室外機、60dBは普通の会話レベル、70dBは高速道路を走行中の車内の音に相当します。つまり、第1種区域の夜間規制(40〜45dB)は「ほぼ無音に近いレベルで維持しなければならない」という非常に厳しい水準です。
「昼間なら大丈夫」は原則ですが、注意点があります。第2〜4種区域内であっても、敷地の周囲50m以内に学校・図書館・病院などが存在する場合、都道府県知事等がその地点の基準値を5dB低減できます。これは見落としがちなルールです。
また、規制基準の測定場所は敷地の境界線上(地上高さ1.2〜1.5m)と定められています。機械のすぐそばで計った数値で「大丈夫」と判断するのはダメです。境界線上での数値が規制値に適合していなければ、工場内部のどれだけ静かな設備を使っていても意味がありません。
施設の区域区分が不明な場合は、工場のある市区町村の環境担当窓口に問い合わせて確認するのが確実です。
参考:全国の騒音規制基準を区域ごとに確認できる資料
特定工場等において発生する騒音の規制に関する基準 | 環境省
建設作業の中でも、くい打機・バックホウ・ブルドーザーといった重機を使う作業は「特定建設作業」として分類され、独自の騒音規制が課されます。騒音の大きさは工場規制と異なり、基準は敷地の境界線で85dB以下に統一されています。
85dBというのはどのくらいの音か?地下鉄で窓を開けたときの轟音、至近距離の救急車のサイレン音と同程度です。体に感じるほどの迫力のある音と考えてよいでしょう。つまり「うるさいがギリギリ許容できる」最大値が85dBであり、それを超えると法律違反になります。
特定建設作業に該当する主な作業一覧
届出に関して重要なのが「中7日前」というルールです。作業開始日の7日前と聞くと「作業の前日から数えて7日戻せばいい」と思いがちですが、実際には開始日と届出日の両方を日数に含まないため、実質「中7日間」を空ける必要があります。
たとえば4月9日(月)から作業を開始する場合、届出締切は4月1日(月)です。4月2日では間に合いません。ここで間違えている建設業者が少なくないため、現場のスケジュールを組む段階で逆算して届出日を決めるのが基本です。
届出義務があるのは元請業者です。下請けが実際の作業を行う場合でも、届出の責任は元請けにあります。
また、特定建設作業には時間帯の制限もあります。第1号区域(住宅地など)では午後7時〜翌朝7時の夜間作業が禁止されており、日曜日・祝日の作業も原則禁止です。第2号区域(その他の地域)では午後10時〜翌朝6時が禁止時間帯となっています。
参考:特定建設作業の届出と規制基準について
特定建設作業に伴つて発生する騒音の規制に関する基準 | 環境省
工場外(敷地境界)での規制だけでなく、工場内で働く従業員の健康を守るための測定義務も存在します。これは労働安全衛生法第65条と「騒音障害防止のためのガイドライン」(厚生労働省)が根拠となっています。
対象となるのは「著しい騒音を発する作業場」で、労働安全衛生規則第588条に列挙されています。代表的なものとしてはプレス機やロール機械を使用する作業場、タガね作業を行う作業場、金属加工機械を使用する作業場などが含まれます。
これらの作業場は6ヶ月以内ごとに1回、定期的な騒音測定が義務づけられています。測定のタイミングは次の場合も発生します。
測定方法は、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示)に基づいてA測定(作業場内の複数地点での等価騒音レベル測定)またはB測定(騒音が最も高いと考えられる発生源近くでの測定)を実施します。
測定結果によって「管理区分」が決まり、対応が変わります。第1管理区分(85dB未満)なら現状維持、第2管理区分(85dB以上90dB未満)なら改善努力と聴覚保護具の使用、第3管理区分(90dB以上)では直ちに改善措置が義務となります。第3管理区分の状態を放置すると、行政指導の対象になります。
工場側がこれを怠ると、労災認定リスクが高まります。騒音性難聴は一度発症すると回復が難しい職業病であり、認定された場合は会社側に損害賠償責任が生じることもあります。定期測定のコスト(数万円程度)と、訴訟リスクを比べれば、測定義務を守る合理性は明白です。
参考:騒音障害防止のためのガイドラインと測定義務の詳細
「騒音障害防止のためのガイドライン」解説パンフレット | 厚生労働省(PDF)
騒音測定の基準を理解した次のステップは、実際にどう現場で基準に対応するかという具体的な行動です。対策の方向性は「発生源を抑える」「測定して現状を把握する」「記録を残す」の3段階です。
①発生源を抑える主な対策
現場や工場での騒音発生源対策は以下のように整理できます。
②現場での騒音測定方法と機器選び
測定には、計量法に基づく「騒音計」を使用します。JIS規格(Z8731)に準じた測定方法が推奨されており、測定点は敷地境界線上(地上高さ1.2〜1.5m)が基本です。
測定機器の選択肢は主に2つあります。
最近は建設現場向けに電源不要でコンパクトな騒音測定器も普及しています。リアルタイムで音量をモニタリングし、一定以上の騒音が発生した際にアラートメールを送信する機能を持つものもあります。現場に複数台設置することで「どこでいつ騒音が発生しているか」をデータで管理できるようになります。
③記録と提出書類の整備
特定建設作業の届出書を市区町村に提出する際、記載が必要な主な内容は以下です。
なお、同一箇所で1日で完了する特定建設作業(作業開始日と終了日が同一の場合)は届出が不要です。これは意外と知られていないルールです。ただし、断続的に数日にわたって同じ作業を繰り返す場合は届出が必要となるため注意しましょう。
参考:騒音対策の種類・測定方法・実施事例の詳細
うるさい工場の騒音に関する「騒音規制法」や「騒音基準値」を徹底解説 | ファクトリア

Mcbazel デジタル騒音計 小型 音量計測器 低周波音測定器 測定範囲30~130dB 周波数応答31.5Hz~8KHz 工場、作業場、学校、住宅地、オフィス 日本語取り扱い説明書付き-ブラック