

水性高分子-イソシアネート系接着剤(API接着剤)は、水性の主剤(高分子の水溶液や水性分散体など)と、イソシアネート系化合物を主成分とする架橋剤からなる接着剤として定義されています。
JIS K 6806では「主として木材の接着に使用する」ことを前提にしており、木工・建材での利用を強く意識した規格です。
種類は大きく「1種(常温接着用)」と「2種(加熱接着用)」に分かれ、さらに号(1号/2号)で主用途が整理されています。
現場での読み替えとしては、次のように把握すると工程判断が速くなります。
参考)https://www.mdpi.com/2073-4360/15/23/4588/pdf?version=1701350726
またホルムアルデヒド放散による区分として、F☆☆☆☆等級の要件(ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、ホルムアルデヒド系防腐剤、メチロール基含有モノマー、ロンガリット系触媒を使用しない等)が明記されています。
この点は「水性=低臭・低VOC」だけで安心せず、資材選定時に“表示”と“仕様書の根拠規格”をセットで押さえるべき理由になります。
JIS K 6806では、外観として「主剤は異物の混入がない」「架橋剤は均質な液状である」ことが品質項目に入っています。
現場で言うところの「開封したらダマがある」「沈降して戻らない」「架橋剤が白濁している」などは、この外観要件に抵触する“サイン”として扱うのが安全です。
粘度は23℃条件で規定があり、主剤0.1 Pa・s以上、架橋剤0.01〜3.5 Pa・sとされています。
粘度がズレると、塗布量の再現性だけでなく、ローラー/ヘラ/スプレッドの“塗り筋”が変わり、局所的な塗布不足→木部破断率の低下につながり得ます(接着層が連続しないため)。
pHは主剤で3.5〜8.5の範囲が示されており、水系であっても中性固定ではない点が重要です。
特に金属部材・工具・周辺材料との相性(腐食や変色、汚染)を避けるには、「水性だから大丈夫」ではなくpH帯を前提に清掃と養生を組み立てる必要があります。
さらに架橋剤側の指標としてNCO量が「10以上」と規定され、NCO基(イソシアネート基)の量を管理対象にしています。
NCO量の測定は規格上「ジ-n-ブチルアミントルエン溶液」などを用いた滴定で算出する手順が載っており、性能が“気分”ではなく化学量で管理される設計になっています。
意外に見落とされがちなのが保管条件で、主剤は製造後なるべく早期に使用し、保管中は10〜30℃で密封とされます。
架橋剤は空気中水分と反応しやすいので、10〜30℃で完全に気密な状態で保管、皮膚や目への暴露を避ける注意が記載されています。
つまり「冬の現場の仮置き」「開封後のキャップ管理」「使い切り前提の小分け」などが、耐久不良の予防策として直結します。
JIS K 6806の圧縮せん断接着強さの試験片では、材料(木材)の含水率や密度、仕上げ条件が細かく規定されています。
例えば材料は含水率6〜15%に乾燥した容積密度0.5g/cm3以上のかばまさ目、厚さ10mm、接着面は平滑仕上げとされています。
この規定が示すのは、「水分が多すぎる木」「表面が荒い木」を避ければよい、という単純な話ではなく、“再現性のある面品質と含水率帯”が接着品質の前提だということです。
塗付け量は、圧縮せん断接着強さの試験片作製で125±25g/m2が示されます。
合板引張りせん断接着強さの試験片作製では、心板単板の両面に200±25g/m2とされ、用途(試験体系)により塗布設計が変わることが分かります。
現場で“同じ接着剤だから同じ塗布量”と決め打ちすると、吸い込みの違い(樹種・密度・単板の割れ・表面処理)で接着層の実効厚が変わり、耐温水や煮沸繰返しで差が出ます。
圧締条件も具体的で、圧縮せん断接着強さの試験片では981〜1,471kPaで締め付けたまま20〜25℃で24時間静置後、除圧し、その後同温度で72時間静置とされています。
ここから読み取れる実務ポイントは、圧締は“くっつける操作”ではなく、“硬化が安定するまで形状と界面を固定する工程”だということです。
特に低温期に「圧締時間を短縮して次工程へ」や「除圧後すぐ加工」は、規格上の想定より硬化が進んでいない状態で界面に応力を入れる行為になり得ます。
JIS K 6806では接着強さの試験として、常態に加えて「耐温水」や「煮沸繰返し」の処理条件が規定されています。
耐温水は60±3℃の温水に3時間浸せきし、その後室温の水で冷まして“ぬれたまま”で試験する流れです。
煮沸繰返しは、沸騰水4時間→60±3℃空気中20時間乾燥→沸騰水4時間→冷却後ぬれたまま試験という、木材にとってかなり厳しい水熱サイクルを課しています。
この試験体系が現場に示唆するのは、耐久性の敵が「水そのもの」だけではなく、
といった“繰返し応力”であることです。
またJIS K 6806では、接着強さの値だけでなく木部破断率(木部で破断した面積割合)を読み取り、平均値として管理する手順が示されています。
木部破断率は「接着層が弱い」のか「木材が先に負けた」のかの判断材料になり、同じ数値の強度でも品質解釈が変わります。
規格中には、木部破断率50%以上で平均接着強さが規定以下のときは再試験する、といった扱いもあり、単純に“強度だけ合格”ではなく破壊様式を含めた評価思想が見えます。
JIS K 6806では「接着強さ保持時間」を、接着剤を配合してから圧締するまでの作業の限界時間として定義し、超過すると接着強さが漸次低下すると明記しています。
さらに測定方法として、混合を終わった時点を始点に、少なくとも10分刻みの経過時間ごとに試験片を作り、耐温水または煮沸繰返しで規定値を満足できる最大経過時間を求める手順が示されています。
つまり保持時間は「ベタつきが残っているか」ではなく、「規格値(耐水系の強度)を保証できるか」で線引きされる概念です。
ここから先は、検索上位の“用語説明”だけでは書かれにくい、現場の段取りに落とす視点です。
実務での対策案(意味のない文字数稼ぎではなく、工程に効く項目だけに絞ります)。
規格を読むと、保持時間は「接着剤の問題」だけでなく「工場・現場の工程設計の問題」に置き換えられることが分かります。
水性高分子-イソシアネート系接着剤は“便利だから採用する”のではなく、“保持時間に勝てる工程に整える”ことで初めて性能を出し切れるタイプの材料です。
水性高分子-イソシアネート系接着剤の規格(種類、品質、耐温水・煮沸繰返し、保持時間の定義と測定)がまとまっている参考リンク。
https://kikakurui.com/k6/K6806-2003-01.html
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