

スクリーンを交換しないまま使い続けると、差圧が上がって年間100万円超の損失になることがあります。
ストレーナ(Y型)は、配管内を流れる水・空気・蒸気・油・ガスなどの流体に混入した異物(鉄サビ、スケール、土砂など)を取り除くためのフィルター装置です。名前のとおりボディがアルファベットの「Y」字型をしており、配管の流れ方向に対して斜め下にフィルター部(スクリーン)が突き出た形になっています。この構造がコンパクトで、限られたスペースにも収めやすいため、建築設備の配管工事では最もポピュラーなストレーナとして広く採用されています。
本体の内部には「スクリーン」と呼ばれる金網またはパンチングプレートが収納されており、流体がここを通過する際に異物が捕捉される仕組みです。スクリーンはキャップ(プラグ)を外すだけで取り出せるため、配管本体を取り外さずにメンテナンスができる点が大きな利点です。これがY型ストレーナの最大の特徴と言えます。
スクリーンの外側には補強用の「外網(パンチングプレート)」が一体化されており、高流速や高差圧でもスクリーンが変形・破損しにくい二重構造になっています。ただし外網があくまで補強目的のため、ろ過精度を決定するのはあくまで内側のメッシュです。この点を混同しやすいので注意が必要です。
ストレーナが保護する対象は、ポンプ・電磁弁・制御弁・蒸気トラップなど、異物の侵入に弱い機器類です。これらの前段に設置することで、摩耗や目詰まりによる機器の故障リスクを大幅に下げることができます。つまりY型ストレーナは、配管システム全体の寿命を守る「番人」のような役割を担っています。
なお、Y型ストレーナは主に小口径から中口径(目安として2〜3インチ以下)の配管に適しており、大口径(8インチ以上)ではバケット型ストレーナが選定されることが一般的です。口径が大きくなるとY型のフランジ取り外しが難しくなるため、メンテナンス性の観点からも中小径専用の選択肢と理解しておきましょう。
ストレーナ構造の詳細(キッツ)|スクリーン種類・材質の仕様表あり
メッシュとは、スクリーンの目の細かさを表す単位です。具体的には「1インチ(25.4mm)の幅の中に格子が何個並んでいるか」を示す数値で、数値が大きいほど目が細かく、より小さな異物を捕捉できます。たとえば40メッシュなら1インチに40個の格子がある状態で、格子一辺の長さはおよそ0.42mm、小指の爪先のひっかき傷ほどの微細なすき間です。
建築設備工事においては、国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」に以下の基準が定められています。
この基準が選定の最低ラインです。これを下回るメッシュを採用すると、機器保護の目的を果たせなくなるため注意が必要です。
ただし、「細かければ良い」というものではありません。メッシュ数を上げすぎると、スクリーンがすぐに目詰まりして清掃頻度が増え、結果としてメンテナンスコストが跳ね上がります。大同工機の事例では、粒子径に対して過剰なろ過精度を設定した現場で、スクリーンが短期間で詰まり、流量不足による装置停止が頻発したというトラブルが報告されています。メッシュ選定は「基準を満たしつつ、現場の流体条件に見合った精度」に設定することが原則です。
また一般的にあまり知られていない事実として、メッシュ数を増やしてもストレーナの圧力損失はほとんど増加しないという特性があります。逆に言うと、メッシュを下げても圧損は大して減りません。ストレーナの圧力損失は、スクリーンの目の細かさよりも、Y型本体の形状(曲がりによる乱流)から生じる部分が主だからです。圧損を本当に下げたい場合は、型式の変更(バケット型への切り替え)や配管径を上げる方が効果的です。
流体の種類による主な選定目安は以下のとおりです。
| 流体の種類 | 推奨メッシュ | 備考 |
|---|---|---|
| 給水・冷温水 | 40メッシュ以上 | 国土交通省仕様書の基準値 |
| 電磁弁一次側 | 80メッシュ以上 | 弁座保護のため細かい目が必要 |
| 蒸気・スチーム | 80メッシュ以上 | スチームトラップ保護に有効 |
| 油・燃料 | 粘度に応じて選定 | 粘度が高いほど圧損に注意 |
メッシュが条件を満たしているかどうかは、設計段階で確認するのが基本です。
ストレーナFAQ(ヨシタケ)|メッシュ基準・差圧管理・流れ方向の疑問に答えるQ&A集
ストレーナ(Y型)を現場で設置する際、取付姿勢を間違えるとメンテナンスが極めて困難になるだけでなく、本来の異物捕捉性能が発揮されないリスクがあります。正しい姿勢を理解することは、後々のトラブルを防ぐ上で欠かせない知識です。
キッツ(KITZ)が公式FAQで明示しているY型ストレーナの配管姿勢のルールは以下のとおりです。
キャップを下向きにするのには理由があります。スクリーンで捕捉した異物は重力によってキャップ側(スクリーン下部)に沈降します。キャップを外すだけで異物ごとスクリーンを取り出せるので、清掃作業が格段にスムーズになるのです。もし上向きや横向きにしてしまうと、キャップを外した瞬間に異物が配管内に流れ出したり、スクリーンを取り出す際に汚れが散らばってしまいます。
また、流れ方向を本体の矢印と一致させることは絶対条件です。逆向きに取り付けてしまうと、スクリーンの「内側」から外側に向かって流体が押し当たることになります。通常は外側から内側に流れて異物を内部に捕捉する設計ですが、逆になると異物がスクリーンの外側に付着し、目詰まりの管理も清掃も著しく困難になります。現場での逆取付は意外に多く発生しているミスのひとつです。
もう一つ覚えておきたいのが、エルボや分岐の直後にY型ストレーナを設置しないという原則です。エルボ直後は乱流が発生しており、ストレーナの捕捉効率が低下するだけでなく、スクリーンに偏った負荷がかかって変形・破損のリスクが高まります。設計時点から直管部を確保したレイアウトを意識することが重要です。
設置スペースの確保も見落としがちなポイントです。スクリーンを取り外すには、キャップを外した方向に「スクリーンが抜ける長さ分のスペース」が必要です。後から配管レイアウトを変更できない現場では、スクリーンが抜けずにメンテナンスできないというトラブルが実際に起きています。配管施工の段階でメンテナンス空間を確保しておくことが、長期的な維持管理コストを左右します。
Y型ストレーナの性能を長期間維持するには、定期的な清掃が欠かせません。スクリーンが目詰まりすると流量が不足し、下流の機器に悪影響が及ぶだけでなく、差圧が上昇してスクリーン自体が変形・破損するリスクもあります。差圧が上がると損失は大きくなります。
清掃の目安として広く使われているのは「前後差圧が0.1MPaを超えたら清掃する」という基準です。これはヨシタケのFAQでも案内されている値で、差圧計をストレーナの前後に取り付けることで、目詰まりの状態を数値で把握することができます。差圧計がない現場では、1〜3ヶ月ごとの定期点検・清掃が推奨されています。
実際の清掃手順は以下の流れで行います。
清掃の際には必ずパッキンの状態を確認することが条件です。パッキンが劣化したままキャップを締め直すと、運転再開後に漏水トラブルが発生します。スクリーンの交換頻度は、破損・変形・激しい目詰まりが確認された時が目安です。
清掃コストの視点から見ると、手動清掃のY型ストレーナが多い現場では隠れたコストが積み上がります。ボールフィルターが公開している導入事例では、清掃頻度が多かったY型ストレーナを自動ストレーナに置き換えることで、年間1,080万円のコスト削減を実現したA社の事例が報告されています。これは人件費・設備停止損失・メンテナンス費を合算した試算値ですが、清掃が「当たり前のコスト」として計上されていないケースでは、想定外の損失になりえます。
清掃頻度が特に高い配管ライン(1ヶ月に1回以上の清掃が必要になるような箇所)では、自動洗浄機能付きのオートストレーナへの切り替えも検討する価値があります。導入費用は高くなりますが、ライン停止ゼロ・作業員の手動清掃不要という運用に切り替えることで、中長期では大幅なコスト削減につながることがあります。
年間1080万円コスト削減の実例(ボールフィルター)|Y型ストレーナからオートストレーナへの置き換え事例集
現場でよく「Y型でいいか」と流れで選定されがちですが、型式の選択が後々のメンテナンス負荷やコストに直結します。ここではY型と他の主要なストレーナ型式を比較し、Y型を選ぶべきケースとそうでないケースを整理します。
まずY型の強みは「コンパクトさ・コストの安さ・メンテナンスの手軽さ」の3点です。フランジを外すだけでスクリーンにアクセスできるため、小口径配管では扱いやすく、初期費用も他の型式より低く抑えられます。スペースが限られる建築設備の機械室では非常に扱いやすい選択肢です。
一方でT型ストレーナは、配管に対してT字に接続する構造で、中〜大口径(4インチ以上)に適しています。付き合わせ溶接で接続することが多く、メンテナンス性はY型と同等ですが、価格はやや高めです。
バケット型ストレーナは8インチ以上の大口径配管に採用されるケースが多く、圧力損失がY型やT型より小さいのが特長です。ただしスクリーンを上方向に取り出す必要があるため、作業スペースの確保が課題になります。
コニカルストレーナは試運転時など一時的(テンポラリー)に使用するもので、常設使用が前提のY型とは性格が異なります。新設配管の初期フラッシング時にコニカルを使い、試運転後にY型へ切り替えるのが基本的な流れです。
以下の判断フローで型式を選ぶとスムーズです。
また、清掃頻度が非常に高い(月1回以上が必要なほど異物が多い)ラインでは、型式を問わず「自動ストレーナ」への切り替えも視野に入れておくことを推奨します。人手不足が深刻な現場では、清掃の省力化そのものがリスクヘッジになります。
もう一点、Y型ストレーナを選んだとしても「スクリーンの材質」には注意が必要です。既設配管を交換する場合は、前後の配管材質を確認して異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)が起きないかを確認してから材質を選定することが大切です。たとえば炭素鋼配管に接続するY型ストレーナのスクリーンを誤ってSUS316にしたとしても問題はありませんが、本体材質と配管材質の相性確認は事前に行っておくべき確認項目です。
Y型の選定が基本です。しかし型式だけでなく材質・メッシュ・取付姿勢の3点セットで考えることが、現場トラブルを防ぐ正しい選定の進め方です。
ストレーナの種類と特徴(大同工機)|Y型・T型・バケット型・コニカル型の構造と使い分けを解説

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