塗膜厚計の種類と選び方・正しい使い方を解説

塗膜厚計の種類と選び方・正しい使い方を解説

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塗膜厚計の種類・選び方と使い方ガイド

膜厚20μm不足しただけで、塗膜の耐久性が約30%低下します。


この記事でわかること
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塗膜厚計の種類と原理

電磁式・渦電流式・超音波式など、各タイプの測定原理と対応素材をわかりやすく解説します。

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現場での正しい使い方と校正

ゼロ点調整を怠ると測定値が当てにならない理由と、JIS規格に基づく正確な測定手順を紹介します。

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選び方・レンタル活用術

素地・塗膜の組み合わせ別の選定ポイントと、コストを抑えるレンタル活用の考え方を紹介します。


塗膜厚計とは何か:建築現場での役割と重要性


塗膜厚計(膜厚計)とは、塗装や表面処理によって形成された「塗膜」の厚さを非破壊で計測する機器です。プローブ(測定針)を対象物の表面に押し当てるだけで、数マイクロメートル(μm)単位の厚みを瞬時に数値化してくれます。


建築現場において、外壁・屋根・鉄骨構造物の塗装は、防水性や耐候性を保つための重要な工程です。しかし、塗膜の厚みは目視では絶対に判断できません。見た目が均一に仕上がっていても、実際の膜厚が基準を下回っているケースは現場で頻繁に起こります。


JIS K 5600-1-7などの業界基準では、一般的な外壁塗装の1回塗りあたりの乾燥膜厚は20〜30μmが目安とされており、下塗り・中塗り・上塗りを合計した総膜厚は60〜100μm程度が標準です。この基準を守れているかどうかを客観的に証明できるのが、塗膜厚計だけです。


膜厚が不足すると深刻な結果を招きます。実験データでは、膜厚が20μm不足するだけで耐久性が約30%低下するという報告があります。塗装工事の耐用年数が10年のはずが、膜厚不足によって7年以下に縮んでしまうイメージです。これは、施主からのクレームや再施工のコスト増大、最悪の場合は損害賠償に直結するリスクです。


つまり大事なのは、「膜厚計で測定することで品質を証明する」という姿勢です。現場での測定記録を残すことが、トラブル予防と信頼獲得の両方に役立ちます。


参考:外壁塗装の膜厚基準と測定方法を解説した記事(JIS規格・失敗事例・管理方法が詳しく掲載されています)
外壁塗装の膜厚基準と測定方法を徹底解説!失敗事例と適切な管理 – 日神塗装工業


塗膜厚計の種類:電磁式・渦電流式・超音波式の違いと選び方

塗膜厚計には大きく分けて「電磁式」「渦電流式(渦流式)」「超音波式」「デュアル(ハイブリッド)型」の4種類があります。種類を間違えると、数値が表示されても正しく測定できていない、という致命的な状況が生まれます。これが建築業者にとって最も多い失敗パターンの一つです。


まず、電磁式膜厚計は鉄・鋼などの磁性体の素地に使います。プローブ内部のコイルが発生させる磁束密度の変化を利用して膜厚を算出します。鉄骨造の建物や鋼製設備の塗装管理に最も広く使われている方式です。ただし、磁性体の塗膜(一部のメッキなど)が施されている場合は正しく測定できません。


次に、渦電流式膜厚計はアルミ・銅・オーステナイトステンレスなどの非磁性金属が素地の場合に使います。プローブから発生した電流による渦電流の強弱を利用するため、磁石にくっつかない金属に対応できます。ただし、導電性の塗膜(一部のメッキ)が施されている場合は誤差が大きくなります。


そして、超音波式膜厚計は金属以外の素地にも対応できます。コンクリート・木材・プラスチックを素地とした塗膜の計測に使えるため、外壁・防水塗装の現場では特に重要な存在です。電磁式・渦電流式が測れない「コンクリート素地」の膜厚を計測できるのは、超音波式だけです。これは多くの建築業者が見落としているポイントです。


デュアル(ハイブリッド)型は電磁式と渦電流式の両方を1台に搭載したタイプで、素地の種類を自動判別して切り替えてくれます。現場で扱う素地が鉄と非鉄の両方にわたる場合、2台用意する必要がなくなります。現在の建築現場では最も汎用性が高く、主流になっているタイプです。









種類 対応素地 主な用途
電磁式 鉄・鋼など磁性体 鉄骨構造物・鉄製設備の塗装管理
渦電流式 アルミ・銅など非磁性金属 アルミサッシ・銅部材の塗装確認
超音波式 コンクリート・木・プラスチックなど 外壁・防水塗装・FRP素地
デュアル型 磁性体・非磁性金属 両対応 複合素地現場・汎用管理


素地の材質が不明な場合はデュアル型が基本です。


参考:各種膜厚計の測定原理と特長(電磁式・渦電流式の仕組みを詳しく説明しています)
各種膜厚計の原理と特長について|キーエンス


塗膜厚計の正しい使い方:測定手順と5点測定法

塗膜厚計の操作自体はシンプルです。ただし「プローブを当てれば終わり」という感覚で使っていると、現場で大きな測定誤差が出るリスクがあります。JIS K 5600-1-7では測定前後の校正と、複数箇所での測定が義務付けられています。


実際の測定手順は以下の流れになります。



  1. 測定対象と素地の材質を確認し、適切な測定方式を選択(デュアル型は自動判別)

  2. 電源を入れてゼロ点調整(校正)を実施する

  3. 測定面の汚れ・油分・水分・サビなどを取り除く

  4. プローブを測定面に対して垂直に、軽く押し当てて測定する

  5. 同一エリアで5点以上測定し、平均値を算出する

  6. 測定日・測定箇所・使用塗料・担当者名とともに記録する


中でも重要なのが5点測定法です。1箇所だけ測定して合否を判断するのではなく、対象範囲の上部・下部・左右・中央など5点以上を測定して平均値を出します。岡山県の「塗膜厚の評価基準(案)」では、1ロット(200〜500㎡)につき25点以上測定し、各点で5回ずつ計測した平均値を採用するよう定めています。


管理基準としては次の3点が目安です。



  • 各ロットの測定平均値が設計膜厚の90%以上であること

  • 測定値の最小値が設計膜厚の70%以上であること

  • 測定値の標準偏差が設計膜厚の20%を超えないこと


プローブを傾けて当てたり、凹凸の激しい面に押し当てると誤差が大きくなります。測定面は可能な限り平滑にしてから計測するのが基本です。


参考:JIS K5600-1-7「塗料一般試験方法 膜厚」の規格内容(測定手順・校正の義務が明記されています)
JIS K5600-1-7:2014 塗料一般試験方法-膜厚|kikakurui.com


塗膜厚計の校正(ゼロ点調整)を怠ると測定値が狂う理由

多くの建築業者が見落としがちなポイントが、測定前の校正(ゼロ点調整)です。JIS K 5600-1-7には明確に「使用前に製造業者の指示に基づき、適切な校正用標準(フォイルなど)を用いて校正しなければならない」と記載されています。


校正せずに測定した場合、「その値は当てにならないかもしれない」とJISが直接警告しているほどです。これは決して誇張ではありません。


なぜ校正が必要かというと、塗膜厚計は「比較測定法」という原理で動いているからです。あらかじめ既知の厚みに合わせてゼロ点を設定し、その差分で塗膜の厚みを求める仕組みです。ゼロ点がズレていると、全ての測定値がそのズレ分だけ狂います。例えば5μmズレていれば、80μmの塗膜が75μmまたは85μmと表示され続けます。


さらに深刻なのがプローブ先端の摩耗です。プローブは素地に繰り返し押し当てるため、先端が少しずつ削れていきます。ある造船所での調査では、月に10万回を超える測定が行われており、摩耗による精度劣化が確認されています。JISでは「少なくとも1時間に1回」校正を確認するよう推奨しているほど、短時間で精度が変化する可能性があります。


校正の正しいやり方は次のとおりです。



  • ゼロ点調整は、実際に測定する素地と同じ材質・特性の金属板を使う

  • 校正フォイル(標準厚シム)は傷や折り目があれば即交換する(最低でも年1回交換)

  • 校正フォイルは実際の測定膜厚より厚めのものを使用し、厚膜の場合は2点校正を行う


校正証明書付きのフォイルを使っていれば1年間は精度が保証されると思っている人もいますが、これは誤りです。1年は「最低交換目安」であり、キズや折り目が付いたものは1年を待たずに交換が必要です。


参考:コーテック株式会社「All About 膜厚計」校正の重要性に関するページ(JIS規格の記述と校正の具体的方法が掲載されています)
どうして頻繁に校正をしなければならないのか|コーテック株式会社


塗膜厚計の選び方:建築現場で失敗しない3つのポイント

塗膜厚計を選ぶ際は、価格だけを見て決めると現場で「使えない」という状況になりかねません。選定の核心は「測定対象の素地と塗膜の組み合わせに合っているか」です。以下の3つのポイントを順番に確認することで、選定ミスをほぼゼロにできます。


ポイント①:素地の材質を先に確認する


最初に確認するべきは素地(下地)の材質です。鉄や鋼などの磁性体なら電磁式またはデュアル型を、アルミやステンレスなどの非磁性金属なら渦電流式またはデュアル型を選びます。コンクリートや木などの非金属素地には超音波式が必要です。素地がはっきりわからない現場ではデュアル型が安心です。


ポイント②:塗膜の厚みのレンジを確認する


電磁式・渦電流式は比較的薄膜(μm単位)向けの機種が多く、外壁・鉄骨系の塗装管理に適しています。一方、防水塗膜や厚膜エポキシなどmm単位の厚膜を測定したい場合は超音波式の厚膜対応モデルを選ぶ必要があります。機種ごとの測定範囲(スペック)を必ず仕様書で確認してから発注しましょう。


ポイント③:価格帯と使用頻度から「購入 vs レンタル」を判断する


業務用の高精度モデルは5〜20万円程度が相場です。一方、モノタロウなどでは1回あたり約5,000〜7,000円前後でデュアル型のレンタルが可能で、校正証明書付きのモデルも選べます。月に1〜2回程度しか使わない現場なら、購入よりレンタルのほうがトータルコストを大幅に抑えられます。


逆に、毎現場で膜厚管理記録を残す方針の業者や、大規模な塗装工事を継続的に受注している場合は、精度の高い自社保有機器を持つほうが長期的に有利です。レンタルでも品質管理上の問題はありませんが、都度の校正証明書の有無と機器の状態確認は徹底してください。








用途・条件 おすすめ選択 目安費用
使用頻度が低い・単発案件 レンタル(デュアル型) 5,000〜7,000円/回
継続的な品質管理・大規模現場 業務用機器を購入 5〜20万円
DIYや簡易確認レベル 住宅用・廉価モデル購入 1〜3万円


レンタルを活用するなら、校正証明書付きかどうかの確認が条件です。


参考:膜厚計の種類・測定方式・選び方を詳しく解説(レンタル商品情報もあり)
膜厚測定の基本と膜厚計の種類や使い方・選び方|レックス レンタル


塗膜厚計の測定データを施工品質の「証拠」に変える活用術

塗膜厚計は「測るための道具」ですが、建築業者にとってその真の価値は「品質を証明する記録を作ること」にあります。これは多くの業者がまだ十分に活用できていない視点です。


外壁塗装の完工後にトラブルが発生したとき、「きちんと規定の厚みで塗りました」という口頭説明だけでは施主を納得させることは難しくなっています。一方、測定日・測定箇所・測定値・使用塗料・担当者名が記録された「膜厚測定表」を提出できれば、それ自体が品質の証拠書類になります。


記録管理は複雑である必要はありません。Excelで次の項目を管理するだけで十分機能します。



  • 📅 測定日

  • 📍 測定箇所(北面・南面・中央・端部など)

  • 📊 測定値(μm)と5点平均値

  • 🎨 使用塗料の種類・希釈率

  • 👷 施工担当者名


この記録を顧客に渡す習慣を持っている業者は、施主からの信頼度が明確に上がります。再塗装クレームが入ったときでも「管理基準内で施工した記録があります」と示せれば、業者側の責任を明確に示すことができます。これはクレーム対応コストを大幅に削減する実質的なリスク管理です。


また、膜厚記録は社内の施工品質の標準化にも役立ちます。担当職人が変わっても、過去の測定データを参照することで「この塗料なら何回塗りで何μm出せるか」という経験値がチームの資産として蓄積されます。


測定値に異常値(極端に薄い箇所)が出た場合は、乾燥前に補塗装で修正する判断ができます。完工後に膜厚不足が判明するより、工程内で発見できるほうが圧倒的にコストが低く、施工の精度も高まります。測定記録を残すことが条件です。


参考:塗膜厚の管理基準値・測定箇所数・評価方法の詳細(公共工事における管理基準が記載されています)
塗膜厚の評価基準(案)|岡山県(PDF)




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