
厚形ALCコーナーパネルは、厚さ75mm以上のパネルで、主に鉄骨造や鉄筋コンクリート造などの耐火建築物に使用されます。旭化成のヘーベルコーナーパネルを例に、詳細な寸法規格を見てみましょう。
平コーナーパネルの寸法規格
厚さ(mm) | 幅寸法(mm) | パネル長さ(mm) | 最大支点間距離(mm) |
---|---|---|---|
100 | 300×300, 325×325, 350×350, 375×375, 400×400, 400×300 | 600~4,100 | 3,500 |
125 | 300×300, 325×325, 350×350, 375×375, 400×400, 400×300 | 600~4,500 | 4,350 |
150 | 300×300, 325×325, 350×350, 375×375, 400×400, 400×300 | 600~4,500 | 4,350 |
平コーナーパネルは、建物コーナー部の意匠性と施工性を高めるために開発されたL型断面のパネルです。パネル表面がフラットで、最も基本的なコーナーパネルとして広く使用されています。
デザインコーナーパネルの寸法規格
デザインコーナーパネルは、表面に各種の溝・面加工を施したタイプで、寸法は300×300mmに統一されています。
厚さ(mm) | 幅寸法(mm) | パネル長さ(mm) | 最大支点間距離(mm) |
---|---|---|---|
100 | 300×300 | 600~3,750 | 3,200 |
125 | 300×300 | 600~4,100 | 3,500 |
150 | 300×300 | 600~4,500 | 4,370 |
デザインコーナーパネルには、ソフトタイプとハードタイプがあり、それぞれ複数のデザインパターンが用意されています。ソフトライン50V、ハードライン100H、Mライン山1~山6など、建物の意匠に合わせた選択が可能です。
薄形ALCコーナーパネルは、厚さ35mm以上75mm未満のパネルで、主に木造や軽量鉄骨造の建築物に使用されます。旭化成のヘーベルパワーボードコーナーパネルでは、断面寸法による分類が特徴的です。
ヘーベルパワーボードコーナーパネル断面寸法一覧
断面寸法 | 価格(フラットコーナー) | 価格(デザインコーナー) |
---|---|---|
85角 | 10,370円/本 | 11,980円/本 |
93角 | 10,920円/本 | 12,530円/本 |
97角 | 11,200円/本 | 12,800円/本 |
110角 | 12,150円/本 | 13,760円/本 |
119角 | 12,420円/本 | 14,060円/本 |
140角 | 13,010円/本 | 14,610円/本 |
147角 | 15,180円/本 | 16,780円/本 |
この断面寸法は、施工方法や構造体の柱寸法に応じて選定されます。例えば、85角と93角は直張り構法に、97角から119角は通気構法に、140角と147角は外張り断熱工法(プラス工法)に適用されます。
構法別断面寸法の選定基準
薄形パネルでは、構造体との取り合いを考慮した断面寸法の選定が重要になります。断熱性能の向上や施工効率の最適化を図るため、建物の構法に適した寸法を選択する必要があります。
ALCコーナーパネルは、用途や建物規模に応じて複数の種類が存在し、それぞれ異なる寸法規格を持っています。ここでは主要メーカーの製品を比較しながら、種類別の寸法特性を解説します。
旭化成ヘーベルのスマートコーナーパネル寸法
スマートコーナーパネルは、建物の出隅部をすっきりと演出する特殊なコーナーパネルです。
種類 | 厚さ(mm) | 幅寸法(mm) | 最大長さ(mm) | 最大支点間距離(mm) |
---|---|---|---|---|
平 | 100 | 200×200 | 4,100 | 3,500 |
タイルベース | 100 | 185×185, 235×185 | 3,750 | 3,200 |
デザイン | 100 | 200×200 | 3,690 | 3,150 |
ジーファス | 100, 125 | - | 4,100 | 3,500 |
スマートコーナーパネルの特徴は、従来のコーナーパネルよりもコンパクトな幅寸法にあります。200×200mmという寸法は、建物の出隅部をシャープに仕上げることができ、モダンな建築デザインに適しています。
クリオンDSコーナーパネルの特殊仕様
クリオン社のDSコーナーパネルは、L形断面を有する工場埋設アンカーパネルで、独自の寸法規格を持っています。
DSコーナーパネルの特徴は、高さ31m以下の中低層建物の外壁隅角部に特化した設計にあります。工場埋設アンカーにより、施工効率の向上と構造性能の確保を両立しています。
JIS規格に基づく標準寸法の重要性
ALCパネルはJIS規格(JIS A 5416)に適合した製品として製造されており、寸法精度や品質管理において厳格な基準が設けられています。この規格適合により、異なるメーカー間での互換性や施工の標準化が図られています。
ALCコーナーパネルの寸法選定は、単純にカタログから選ぶのではなく、構造体の特性、施工方法、建物の用途、気象条件など多岐にわたる要因を総合的に検討する必要があります。適切な選定により、施工効率の向上と長期的な建物性能の確保が可能になります。
構造体との取り合いに基づく寸法選定
コーナーパネルの寸法選定で最も重要な要素は、建物の構造体との取り合いです。鉄骨造の場合、柱寸法(H形鋼のフランジ幅)に応じてパネル厚さを決定します。
木造・軽量鉄骨造では、柱寸法に加えて断熱材の厚さも考慮する必要があります。105mm柱に断熱材を加えた場合、93角や97角の断面寸法が適用されることが多くなります。
風圧力と支点間距離の関係
コーナーパネルの寸法選定では、建物の高さと風圧力の関係も重要な要素です。クリオンのDSコーナーパネルの例では、対象風圧力が+2,400以下、-1,600以下N/m²と規定されており、これを超える場合は厚さの増加や支点間距離の短縮が必要になります。
高層建築物では、上層階ほど風圧力が増加するため、階層に応じたコーナーパネル寸法の見直しが求められます。特に31m(概ね10階建て)を超える建物では、より厚いパネルの採用や特殊な固定方法の検討が必要です。
施工効率を考慮した寸法最適化
効率的な施工を実現するためには、コーナーパネルの寸法を現場の作業性に合わせて最適化することも重要です。
長尺パネルほど施工効率は向上しますが、搬入の制約や施工時の取り扱い性を考慮した適切なバランスが求められます。
ALCコーナーパネルの寸法決定において、現在の要求仕様を満たすだけでなく、将来的なメンテナンスや改修工事への対応も考慮することが重要です。特に長期使用を前提とした建築物では、初期の寸法選定が将来の維持管理コストに大きく影響します。
熱橋対策と断熱性能の確保
コーナー部は構造上、熱橋(ヒートブリッジ)が発生しやすい箇所です。コーナーパネルの寸法選定では、断熱性能の確保と結露防止を重視する必要があります。
外張り断熱工法では、140角や147角といった厚い断面寸法のコーナーパネルを使用し、断熱材の厚さに応じた熱橋対策を実施します。
耐久性と維持管理性の考慮
ALCコーナーパネルは、建物の角部という特に風雨にさらされやすい部位に設置されるため、耐久性の確保が不可欠です。
特に高層建築物では、足場設置コストの関係から部分的なメンテナンスが困難になるため、初期の寸法選定と品質確保がより重要になります。
法規制と認定への適合性
建築基準法や関連する技術基準への適合性も、寸法選定において重要な要素です。
これらの法規制への適合を確保するため、設計段階での十分な検討と、施工段階での品質管理の徹底が求められます。
コスト最適化と性能バランス
最適なコーナーパネル寸法の選定は、初期コスト、維持管理コスト、性能要求のバランスを取ることで実現されます。
ヘーベルパワーボードの価格表に示されるように、断面寸法の増加に伴って単価も上昇するため、過剰な仕様を避けつつ必要十分な性能を確保する寸法選定が重要です。
現在の建築業界では、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やカーボンニュートラルへの対応が求められており、ALCコーナーパネルの寸法選定においても、これらの環境性能要求との整合性を図ることが今後ますます重要になると予想されます。