

防火区画は、建築基準法施行令の防火区画(令112条)により、区画を成立させるための要件が定められています。特に区画を貫く開口部側(防火設備)の構造方法は、国の告示で「こう作れば要件を満たす」という形で規定されています(防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める告示)。
ここで重要なのは、現場で扱う「防火区画用シーリング材」という言葉が、単に難燃・耐熱のシーリングを指すのではなく、「防火区画を構成する部位(壁・床)や、貫通部・取合いのディテールが、告示仕様または大臣認定の仕様として成立している」ことを前提に使われる点です。
参考)https://www.mirai.co.jp/product/taika/file/nintei_pdf-69.pdf
そのため、材料選定の最優先はカタログの耐熱表記ではなく、設計図書・納まり図・認定書(認定番号)で指定されている“構成材料一式”の確認になります。
実務上は次の順で確認すると事故が減ります。
参考)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001967213.pdf
防耐火構造の標準資料では、目地の防水や気密のために用いるシーリング材として、JIS A 5758(建築用シーリング材)適合品を用いる、という整理が明確に書かれています。
ただし、JIS A 5758適合=防火区画に“何でも”使える、ではありません(あくまで建築用シーリング材としての品質規格の話で、区画貫通の遮炎性能認定とは別軸)。
一方で、外壁や乾式外壁などの目地では「有機系シーリング材は可燃だが、加熱時に燃焼しても部位としての耐火性能に悪影響を与えないことが試験等で確認されている」という技術的な記述もあり、シーリングが燃える=即NG、という単純な理解は危険です。
この“意外なポイント”は、防耐火の成立条件が「目地の全部が不燃であること」ではなく、「火炎の貫通・遮熱・非損傷といった要求性能を、規定時間満たすこと」に置かれているためです。
施工側の観点では、JIS適合品を選んでも、目地の基本(寸法・下地処理・バックアップ)が崩れると性能が出ません。例えば、目地の追従性を確保するために三面接着を避け、バックアップ材やボンドブレーカーを正しく入れる、という要点は業界標準資料でも繰り返し注意されています。
参考)https://www.nyg.gr.jp/gizyutusiryou/pdf/hyojyun/hyojyun_cap3.pdf
防火区画の弱点は「取合い」「目地」「貫通」で、面材そのものより“線”や“点”の欠陥が事故を招きます。ALCなどの設計施工標準でも、取合い・目地などは炎の侵入を防止できる構造とすること、伸縮目地には耐火目地材を充填することが重要事項として整理されています。
実務的に押さえたいのは、「防火区画用シーリング材(一次)」「耐火目地材(中詰め)」「バックアップ材(形状保持)」が“役割分担”している現場が多い点です。例えばALCパネルの目地では、伸縮目地にロックウール等の耐火目地材を入れ、屋外側に防水のためシーリング材を施工する例が示されています。
この考え方を区画貫通部にも転用すると、シーリング材だけに遮炎を背負わせず、認定仕様どおりに「詰め材+表面シール」を組み合わせることが合理的になります。
参考)https://funen.co.jp/nh/assets/download/nintei/PS060FL-1297_m.pdf
施工の“見えない地雷”になりやすいポイントを、現場チェック用にまとめます。
「耐火試験に合格」と書かれた材料は魅力的ですが、耐火は“材料単体の勝ち負け”ではなく“ディテールの再現性”が本質です。実際、防火戸用の指定シーリング材の資料では、JIS A 1304の1時間耐火試験への言及や、部材を組み合わせることで2時間耐火試験に合格した、という説明があり、組み合わせ設計の考え方が読み取れます。
また、火災時に燃焼してもセラミック化して貫通を防ぐ、といった材料特性(挙動)も説明されており、単なる「耐熱温度」だけでは語れない領域があります。
もう一つ、あまり現場で共有されにくい論点が「試験体は、実施工のバラつきを吸収できるほど甘くない」ことです。試験では目地寸法や構成材料が規定され、判定基準も時間・温度・着炎などで定量化されます。
参考)https://www.silicone.jp/catalog/pdf/sealant40N_74_j.pdf
つまり、現場で材料を同等品に置き換えたり、目地寸法を“納まらないから”で変えたりすると、合格しているのは“別物の仕様”だった、ということが起こります。
防火区画で特にトラブルになりやすいのが、次の3パターンです。
検索上位では「選び方」「施工方法」に寄りがちですが、実務で差が出るのは維持管理(点検と更新)です。防火区画は“完成時に一度成立すれば終わり”ではなく、設備更新・レイアウト変更・改修で貫通が増え、シールが切られ、別業者が埋め戻す、という運用で壊れていきます。
そこで、現場・施設管理側でできる対策として、最初から「防火区画の貫通部台帳」を作るのが効果的です。
この運用は、材料の優劣よりも“仕様再現”を継続できるため、結果として防火区画の信頼性を上げます。
意外と見落とされるのが、伸縮や振動がある建物(工場・機械室周り・鉄骨の長スパン)ほど、硬くて動かない充填は危険、という点です。目地は動く前提で設計されているため、追従性を確保するためのバックアップ材・三面接着防止といった基本を軽視すると、後で“隙間ができる火止め”になります。
防火区画(防火設備の告示:要件の根拠)
https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/pdf/201703/00006615.pdf
防耐火構造(ALC等)の目地・シーリング材の位置づけ、JIS A 5758適合の記述
https://www.alc-a.or.jp/pdf/boutaika_PDF/all.pdf
防火戸用指定シーリング材の試験・材料挙動の説明(耐火試験、セラミック化など)
https://www.silicone.jp/catalog/pdf/sealant40N_74_j.pdf
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