本質安全防爆構造とは何か種類と選定基準を解説

本質安全防爆構造とは何か種類と選定基準を解説

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本質安全防爆構造とは何か種類と選定基準を解説

本質安全防爆構造の機器でも、配線の引き直し1本でその防爆性能がゼロになることがあります。


この記事でわかること
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本質安全防爆構造の基本

電気回路のエネルギーを根本から制限し、故障時でも点火源にならない防爆構造の仕組みをわかりやすく解説します。

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ia・ibの違いと危険場所への対応

Zone0〜Zone2それぞれの危険場所に対して、どのグレードの本質安全防爆構造が使えるかを整理します。

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点検・施工の厳守事項

配線分離・接地・ツェナバリアの取り扱いなど、現場で絶対に守るべき施工・メンテナンスのポイントを紹介します。


本質安全防爆構造とは何か基本的な仕組みと定義

可燃性ガスや引火性の蒸気が漂う現場では、電気機器のわずかな火花や発熱が大爆発の引き金になります。そこで生まれた考え方が「防爆構造」であり、本質安全防爆構造はその中でも最高レベルの安全性を誇ります。


本質安全防爆構造とは、電気回路で発生する火花・アーク・熱が爆発性ガスに点火しないことを、公的試験機関の試験によって確認された構造のことです。労働安全衛生法に基づく「電気機械器具防爆構造規格」第7条では「電気機械器具を構成する部分の発生する火花、アーク又は熱が、ガス又は蒸気に点火するおそれがないことが点火試験等により確認された構造」と定義されています。防爆記号は「i」(または「ia」「ib」「ic」)で表されます。


他の防爆構造との最大の違いは、「爆発が起きないように容器で封じ込める」のではなく、「そもそも点火源になりえないエネルギーしか流さない」という発想にあります。耐圧防爆構造(記号d)が「容器内で爆発しても外に漏らさない」構造であるのに対し、本質安全防爆構造は回路に流れるエネルギー自体を着火に至らないレベルに抑えます。つまり根本から安全です。


防爆構造の種類 記号 防爆の考え方 主な用途
耐圧防爆構造 d 爆発圧力に容器が耐える モーター・照明
安全増防爆構造 e 点火源が生じにくい構造に強化 端子箱・制御機器
内圧防爆構造 f 保護ガスで容器内圧を維持 大型制御盤・分析装置
本質安全防爆構造 ia・ib 回路エネルギー自体を着火不能レベルに制限 センサ・計装機器・信号回路


この構造が適用されるのは、基本的にエネルギーが小さい計測機器・センサ・信号回路に限られます。大電力のモーターや主回路には使えません。これが条件です。


参考:本質安全防爆構造の定義と危険場所の分類について詳しく解説されています。


防爆構造規格における「本質安全防爆構造」とは? – 防爆工事.com


本質安全防爆構造のiaとibの違いと危険場所の対応区分

本質安全防爆構造には、「ia」「ib」「ic」という3つのグレードがあります。どれを選ぶかで使える危険場所がまったく変わるため、現場での機器選定に直結する重要な知識です。


グレードの違いは「いくつの故障を同時に仮定して安全性を担保するか」にあります。「ia」は2つまでの故障を同時に想定しても着火しないことが求められる最高グレードです。「ib」は1つの故障、「ic」は故障を考慮しない通常運転状態での安全性が確認されたものです。iaのほうが厳しい基準をクリアしています。


グレード 仮定する故障数 使用可能な危険場所
ia 2つまでの故障を考慮 Zone0(特別危険)・Zone1・Zone2
ib 1つの故障を考慮 Zone1・Zone2
ic 故障を考慮しない Zone2のみ


危険場所の分類については以下のように整理できます。Zone0はガスタンク内部のように爆発性雰囲気が常時存在する場所、Zone1はタンク周辺など通常運転でもガスが発生しうる場所、Zone2は異常時のみ一時的にガスが生じる場所です。東京ドームのグラウンド全体に可燃性ガスが充満しているようなイメージがZone0です。


重要なのは、Zone0(特別危険箇所)では本質安全防爆構造(ia)しか使えないという点です。耐圧防爆や安全増防爆はこのゾーンには原則として使用できません。iaが条件です。


現場での判断は、機器に刻印されたExマークと記号を確認することから始まります。「Ex ia ⅡB T4」のような表示があれば、iaグレードの本質安全防爆構造であることがわかります。機器選定時はこの刻印を必ず照合してください。


参考:危険場所の区分と防爆構造の使い分けについて詳しくまとめられています。


10種類の防爆構造について詳しく解説 – カナデン株式会社


本質安全防爆構造の安全保持器(ツェナバリア)の役割と設置方法

本質安全防爆構造が機能するためには、機器単体だけでなく「本安回路全体」として成立していることが必須です。その核となるのが「安全保持器(バリア)」、代表的には「ツェナバリア」です。


ツェナバリアとは、危険場所に設置する本安機器(センサなど)と、非危険場所の制御装置との間に挟まれる安全装置です。危険場所に向かう回路の電圧・電流・電力を、着火に至らないレベルに確実に制限します。たとえ制御盤側で異常が起きて大電圧が発生しても、ツェナバリアがその電気エネルギーを吸収し、危険場所に流れ込まないようにする仕組みです。


  • ツェナバリア(非絶縁型):構造がシンプルで安価だが、A種接地(10Ω以下の単独接地)が必要。接地が不十分な場合、本安性が失われる可能性がある。
  • 🔒 絶縁型バリア(アイソレータ):A種接地が不要または軽い接地でよい。A種接地工事が困難な既存設備に向いている。


絶縁型バリアが使えない場合はどうなるんでしょう?そのケースではツェナバリアを選びますが、接地確保が本安性能に直結することを必ず念頭に置いてください。ツェナバリアのA種接地が取れていない状態で使うことは、防爆構造として成立しません。これは必須です。


また、本質安全防爆回路(本安回路)の配線は、非本安回路と物理的に分離して敷設しなければなりません。同じケーブルトレイに混在させると、誘導によって本安回路に想定外の電圧・電流が誘起され、着火源になる可能性があります。現場では本安回路の配線に明青色の被覆または青色テープを使い、視覚的にも非本安回路と区別します。


参考:ツェナバリアと絶縁型バリアの違い、本安回路の接地要件についての実務的解説があります。


本質安全防爆バリア – 新川電機株式会社


本質安全防爆構造の型式検定と法的義務——知らないと50万円の罰金

防爆電気機器は「見た目が防爆っぽい」だけでは使えません。法的義務をクリアした認定品でなければ、現場への設置自体が違法となります。これは見落としがちな重要ポイントです。


日本では、労働安全衛生法第44条の2に基づき、防爆電気機器の製造者・輸入者は、TIIS(産業安全技術協会)などの国に認可された登録検定機関による「型式検定」に合格する必要があります。この型式検定合格証の有効期限は3年であり、更新しなければ効力を失います。


  • 🏛️ 型式検定なし・未合格品を使用した場合:労働安全衛生法違反となり、事業者は民事上の「安全配慮義務違反」、刑事上の「労働安全衛生法違反」の対象になります。
  • 💴 合格標章を表示しない場合・未合格品に標章を表示した場合:同法第44条の2第5項により50万円以下の罰金が科されます。
  • 🌍 海外認証(ATEX・IECExなど)の注意点ヨーロッパのATEXや国際規格IECExの認証を取得している機器であっても、国内で使用する場合は別途TIISなどの国内型式検定が必要です。海外認証だけでは国内の法的要件を満たしません。


痛いですね。特に輸入機器を使う場合は要注意です。


防爆規格は国ごとに異なります。ATEX(ヨーロッパ)・IECEx(先進主要31か国)・TIIS(日本)・中国・韓国・台湾など、それぞれ独立した基準が存在します。これらは互いに完全互換ではないため、使用する国に合った検定を取得した機器を選ぶことが大原則です。


機器に「型式検定合格証」が発行されているかどうかは、メーカー・販売元に仕様書と合格証のコピーを請求することで確認できます。現場の機器選定段階でこの1枚を確保することを習慣にしてください。


参考:防爆電気機器の国内検定義務と罰則について詳しく説明されています。


防爆とはなんですか?「防爆」の基礎知識 – 日本電熱株式会社


本質安全防爆構造の施工・メンテナンスで見落としがちな点検ポイント

本質安全防爆構造は「最も安全な防爆構造」として知られていますが、施工・保守の不手際によってその安全性が一瞬で崩れることがあります。現場で見落とされがちなポイントを具体的に確認しておきましょう。


まず施工時の最重要事項は「本安回路と非本安回路の完全分離」です。本安回路は専用のケーブルトレイ・配管・端子台を使い、非本安回路とは別々に敷設します。同一のダクトや配管に混在させると、電磁誘導や静電誘導によって本安回路に想定外の電流が流れ込み、着火源になりかねません。結論は完全分離です。


メンテナンス時の点検項目は、日本電気制御機器工業会の防爆安全ガイドブックに基づくと以下の5点が基本です。


  • ①接続条件の確認:機器グループ・防爆グレードが仕様書の条件を満たしているか確認する。
  • ②電気パラメータの確認:電圧・電流・電力が仕様書の許容値内にあるかチェックする。
  • ③本安回路の電気定数確認:配線のキャパシタンスとインダクタンスが接続条件の許容値以内であること。配線ルートを変更した際は必ず再計算が必要。
  • ④接地の確保:ツェナバリアのA種接地(10Ω以下の単独接地)が確実に保たれているか確認する。
  • ⑤外観の確認:汚損・腐食・振動による損傷がないか目視確認する。


特に③のポイントは意外ですね。配線を引き直したり、ルートを変更したりすると、ケーブル長が変わってキャパシタンス・インダクタンスが変化します。その結果、型式検定で確認された接続条件の許容値を超えてしまい、本安性能が保たれなくなる可能性があります。長さ1mの変更でも再確認が必要です。


また、本安関連機器(バリア類)の点検は、原則として危険場所へ通じる本安回路の配線を切り離した状態で行います。配線を接続したまま計測機器を当てると、その計測機器自体が本安回路に想定外のエネルギーを流し込む可能性があるためです。保守用機器自体も本質安全防爆構造であることが条件です。


本質安全防爆機器は通電中でも一部の点検が可能という点で他の防爆構造より有利ですが、その分だけ「うっかりミス」のリスクも生じます。在庫管理ステムや設備台帳アプリなどで型式検定合格証の有効期限(3年)を管理しておくと、更新漏れを防ぐことができます。


参考:本質安全防爆構造の点検手順と本安回路配線の注意事項について詳しく解説されています。


防爆電気機器の構造と点検(2)– 危険物保安技術協会


建設・電気工事現場で本質安全防爆構造の機器選定に失敗しないための独自視点

現場では「防爆品を買えばOK」と思っている担当者が少なくありません。しかし本質安全防爆構造は、機器単体ではなく「本安システム全体」として成立する防爆方式です。この視点の欠如が、施工後に問題が発覚する原因になっています。


具体的には次のような落とし穴があります。


まず「センサだけ本安機器を買ったが、バリアを入れ忘れた」というケースです。本質安全防爆構造は、危険場所の本安機器と非危険場所のバリア(安全保持器)をセットで導入して初めて成立します。センサ単体がia認証されていても、バリアなしでは本安回路として機能しません。機器とバリアはセットが原則です。


次に「バリアは入れたが、接続する機器との組み合わせが確認されていない」という問題もあります。本安機器とバリアは、接続時の電気定数(最大開回路電圧Uo、最大短絡電流Io、最大電力Po)が相互に適合している必要があります。どちらかの許容値が超えていると、組み合わせとして本安性が保証されません。メーカーのシステム適合確認書や計算書を入手するのが確実です。


さらに、海外製の機器を使う際に見落とされやすいのが「国内型式検定の有無」です。前述のとおり、ATEX取得品であっても国内での使用にはTIIS検定が別途必要です。これは見た目からではわかりません。購入前に型式検定合格証の番号を確認することが先決です。


  • 🛒 機器選定のチェックリスト
  • □ 本安機器の防爆グレード(ia/ib/ic)が設置場所のZoneに対応しているか
  • □ 組み合わせるバリアとの電気定数が適合しているか
  • □ 国内型式検定合格証(TIIS)を取得しているか、有効期限内か
  • □ 本安回路の配線が非本安回路と完全に分離されているか
  • □ ツェナバリアの場合、A種接地(10Ω以下)が確保できる環境か


これは使えそうです。


本質安全防爆構造の施工・選定で困ったとき、TIIS(一般財団法人産業安全技術協会)の公式サイトでは型式検定合格品の一覧を検索することができます。機器名・メーカー名・合格証番号などで絞り込めるため、購入前の確認に役立ちます。現場でスマートフォンから調べる際にも使いやすいツールです。


参考:防爆電気機器の型式検定に関する手続きと申請内容について公式情報が掲載されています。


防爆構造電気機械器具 型式検定の手引き – TIIS(産業安全技術協会)