安全増防爆構造接続箱の選定と施工の正しい知識

安全増防爆構造接続箱の選定と施工の正しい知識

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安全増防爆構造接続箱の選定・施工・点検を正しく理解する

安全増防爆構造の接続箱は「2種危険場所専用」だと思っていませんか?実は国際整合指針に基づく機器であれば、1種危険場所(ゾーン1)でも使用できます。


🔎 この記事の3つのポイント
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法的リスクを知る

型式検定未取得の防爆機器を使用すると、労働安全衛生法違反・業務上過失致死罪に問われる可能性があります。

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構造と選定基準を理解する

安全増防爆構造(記号e)は2種場所が基本ですが、国際整合指針準拠品なら1種場所(ゾーン1)での使用も可能です。

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施工と点検で防爆性能を維持する

ゴムパッキンのひび割れやケーブルグランドの緩みが見落とされると、防爆性能が失われ爆発事故につながります。


安全増防爆構造接続箱とは何か:基本構造と記号の読み方

安全増防爆構造(記号:e)は、正常な運転中にアークや火花を発生させない電気機器に適用される防爆構造です。「爆発を抑え込む」のではなく、「そもそも着火源を生じさせない」という考え方で設計されています。端子台・接続箱・照明器具など、正常運転中に火花を発しない機器を対象としており、建築・電気工事の現場では最もよく目にする防爆構造のひとつです。


接続箱そのものは電気機器ではなく、ケーブルの分岐・中継接続に使用する電気配線材料として扱われます。しかし、接続箱内部には安全増防爆構造の端子台が内蔵されており、危険場所でのケーブル接続に欠かせない存在です。


防爆記号は2つの体系で表示されます。まず従来型の「電気機械器具防爆構造規格(構造規格)」では「e2G4」のように表示されます。「e」が安全増防爆構造、次の数字が爆発等級(1〜3)、「G4」が発火度(ガソリンやアセトアルデヒドに対応)を示します。一方、国際規格に準じた「国際整合防爆指針(整合指針)」では「Ex e ⅡB T4」のように表示されます。冒頭の「Ex」が整合指針準拠の証明、「e」が安全増防爆構造、「ⅡB」が爆発等級(エチレン等に対応)、「T4」が温度等級(最高表面温度135℃以下)を意味します。


つまり「e」という記号が見えたら安全増防爆構造と判断できます。


現場では「e2G4」の構造規格品と「Ex e ⅡB T4」の整合指針品が混在していることがあります。島田電機株式会社などの主要メーカーでは両規格対応の製品ラインを展開しており、接続箱の銘板を確認することで規格の種別を識別できます。重要なのは、接続箱とケーブルグランドは同系の防爆記号のものを組み合わせることです。例えば接続箱が「ExdⅡBT6」であれば「ExdⅡB」表記のケーブルグランドを選ぶ必要があり、規格が異なる組み合わせは防爆性能を担保できません。


岩崎電気:安全増防爆構造とは何か(公式FAQ)


安全増防爆構造接続箱の危険場所別選定基準:1種・2種場所の違い

危険場所は可燃性ガスの発生頻度と持続時間によって3種類に分類されます。最も危険度が高い「特別危険箇所(ゾーン0)」、通常運転中に爆発性雰囲気が生成するおそれがある「第一類危険箇所(1種場所、ゾーン1)」、異常時にのみ爆発性雰囲気が生成するおそれがある「第二類危険箇所(2種場所、ゾーン2)」の3段階です。


2種場所が基本です。


安全増防爆構造の接続箱は、原則として2種場所(ゾーン2)での使用を目的として設計されています。たとえば石油タンクの通気口から一定距離離れたエリアや、通常は可燃性ガスが漏れないが異常時のみ危険になるエリアがこれに該当します。こうした場所では、安全増防爆構造接続箱(型式:SPJB等)が推奨されます。


注意すべき重要な点があります。国際整合防爆指針(IEC規格79関係)に準拠した安全増防爆構造の機器であれば、1種危険場所(ゾーン1)での使用も認められています。これは建築・電気工事従事者が見落としがちな点で、IDEC株式会社のEJ5A形接続箱のように「改正技術的基準に適合、ゾーン1・ゾーン2で使用可能」と明記された製品が市販されています。


一方、1種場所に対応していない旧来の構造規格品(e2G4等)を1種場所で使用するのは規格違反となります。使用場所の危険箇所区分を事前に確認し、対応する規格の接続箱を選定することが前提条件です。


また、使用するガスの爆発等級にも注意が必要です。水素・アセチレンを扱う場所では爆発等級3(グループⅡC)対応の機器が求められますが、安全増防爆構造は軽量性を保ちながらⅡCに対応できる利点があります。石油精製や化学プラント、塗装工場など、使用ガスの種類によって必要な等級が変わります。


危険場所の種別 推奨される接続箱の防爆構造 安全増防爆構造の使用可否
特別危険箇所(ゾーン0) 本質安全防爆構造(ia)のみ ❌ 使用不可
第一類危険箇所(ゾーン1) 耐圧・内圧・本質安全防爆構造が原則 ⚠️ 整合指針準拠品のみ可
第二類危険箇所(ゾーン2) 安全増・耐圧・内圧・本質安全・油入防爆構造 ✅ 使用可


日本電熱:危険場所の種類と防爆構造の選定基準(防爆の基礎知識)


安全増防爆構造接続箱の施工における重要ポイントとケーブルグランドの選び方

防爆接続箱の施工では、ケーブルグランドの種類選定が最初の関門です。安全増防爆構造の接続箱に適用できるケーブルグランドは「耐圧パッキン式」「安全増パッキン式」「安全増固着式」の3種類があります。いずれもゴム・プラスチックケーブル、金属製がい装ケーブル、鉛被ケーブルに対応しています。


ケーブルグランドは防爆機器の容器の一部として機能します。この点を理解していない施工者が意外に多く、「ケーブルが接続できれば何でもよい」という誤解が現場でのトラブルにつながっています。型式検定の範囲はケーブルグランドを含む配線機器にまで及んでいるため、検定で防爆性能が確認された配線機器を使用することが法的に求められます。


金属管配線で施工する場合は、電線管ねじ結合に関する規定にも注意が必要です。電線管と附属品の接続は、JIS B 0202に定める管用平行ねじで完全ねじ部5山以上(爆発等級3・グループⅡCの場合は6山以上)の結合が必要です。また、異なる種別の危険場所の間や、危険場所と非危険場所の境界部分にはシーリングフィッチングを設置し、シーリングコンパウンドを充填する必要があります。安全増防爆構造では、このシーリングが水や粉塵の侵入防止として機能しています。


可とう性接続が必要な部分には、耐圧防爆構造または安全増防爆構造のフレキシブルフィッチングを使用します。このとき曲げる内側半径は、フレキシブルフィッチングの管外径の5倍以上を確保しなければなりません。


実際によく見落とされる施工ミスとして、「一度使用したパッキンの再利用」があります。施工説明書には「一度使用したパッキンは必ず交換する」と明記されていますが、現場では再使用されるケースも少なくありません。パッキンを再利用すると締付け力が均等にならず、防爆性能が保持できなくなります。これはコスト削減のつもりが安全性の欠如につながる典型例です。


岩崎電気:防爆電気工事の配線方法・ケーブルグランド選定表(技術資料)


安全増防爆構造接続箱の点検・メンテナンスで防爆性能を維持する方法

安全増防爆構造の接続箱は、設置後の定期点検が不可欠です。結論は「点検なし=防爆性能なし」と考えることです。


点検で最も重要な項目は以下の6つです。


  • 🔲 ゴムパッキンのひび割れ・劣化の有無
  • 🔲 ケーブルグランドと蓋締付ネジの緩み
  • 🔲 容器外面の亀裂・損傷・腐食
  • 🔲 絶縁抵抗値の低下
  • 🔲 裸充電端子部への水分・塵埃の付着
  • 🔲 端子台締付ネジの緩み


①〜③は、容器内への塵埃・水分の侵入を防ぐための点検です。安全増防爆構造では容器に裸充電部分がある場合はIP54(防塵・防水保護等級)以上、裸充電部がない場合でもIP44以上が要求されます。このIP等級を経年的に維持するには、蓋締付ネジの増し締めとゴムパッキンの定期交換が必須です。


④⑤は、トラッキング現象による絶縁劣化を防ぐための点検です。容器内に水分や塵埃が侵入し絶縁物に付着すると、トラッキングが起きて絶縁抵抗が低下します。これが放置されると異常発熱を招き、点火源となります。厳しいところですね。


⑥は端子台の電線接続部の緩みによる異常発熱を防ぐための点検です。接続部が緩んだだけで熱が発生し、爆発の直接原因になりかねません。


防爆照明器具メーカーの資料によると、安全増防爆構造機器の適正交換時期は10年、使用限度は15年とされています。耐圧防爆構造の「適正交換15年・使用限度20年」よりも短い点に注意が必要です。設備台帳に設置年を記録し、年限管理を徹底することが、コスト面・安全面の両方で重要です。


また、防爆機器のメンテナンスには制約があります。容器を開放する場合は、爆発性雰囲気中では事前に電源を遮断しなければなりません。開放作業そのものが点火源となるリスクがあるためです。


危険物保安技術協会「Safety&Tomorrow」:防爆電気機器の構造と点検(専門誌資料)


安全増防爆構造接続箱にかかわる法的リスクと型式検定の重要性

防爆接続箱の選定・施工において、法的リスクを軽視するのは非常に危険です。これは知らないでは済まされない領域です。


日本国内で防爆機器を使用するには、3つの法律が関係します。まず「労働安全衛生法(厚生労働省所管)」は、防爆エリアでは国内防爆検定品の使用を義務付けており、違反した場合は「安全配慮義務違反(民事責任)」や「労働安全衛生法違反(刑事責任)」として懲役・罰金の対象になります。さらに死傷事故が発生した場合は「業務上過失致死罪」に問われる可能性があります。次に「電気事業法経済産業省所管)」は防爆エリアでの電気工事方法を定めており、違反すると「電気事業法違反」として罰金の対象となります。最後に「消防法(総務省所管)」に基づき、危険物を取り扱う工場の建設・設備改造には事前に設置許可申請が必要であり、消防署の使用前検査に合格しないと操業開始できません。


ここで特に注意が必要なのが、「海外認証品は日本国内でも使えると思っている」という誤解です。ATEX認証やIECEx認証を取得していても、日本の型式検定(TIIS等の登録検定機関による)を別途受けなければ、国内で使用することは認められません。海外の防爆認証品をそのまま使用すると法令違反になります。


型式検定合格証の有効期間は3年です。更新を怠ると、合格証が失効した機器を使用することになり、同様に法令違反となります。設備の定期点検と合わせて、型式検定合格証の期限管理も必ず実施してください。


工事業者として防爆エリアの施工を受注する場合、発注者から「この機器を使ってください」と指定されても、型式検定の有無を確認する義務があります。型式検定未取得品を施工してしまうと、施工業者側にも法的責任が及ぶ場合があります。施工前のチェックリストに「型式検定合格証の確認」を必ず加えることを強くお勧めします。


システムギア:防爆に関係する法的責任(労働安全衛生法・電気事業法・消防法の解説)


安全増防爆構造と耐圧防爆構造の接続箱:現場での使い分けと独自視点からの比較

現場でよく聞かれる疑問として「安全増防爆構造と耐圧防爆構造のどちらを選べばよいか」があります。この2つは目的も特性も異なります。


耐圧防爆構造(記号d)の接続箱は、内部で爆発が発生しても容器がその圧力に耐え、外部への引火を防ぐ設計です。1種危険場所(ゾーン1)が標準的な使用領域であり、爆発が起きることを前提とした「隔離型」の安全対策です。容器に高い強度が必要なため重量が増す傾向があり、鋳鉄製の製品では安全増防爆構造品の約3倍の重量になるケースもあります。


安全増防爆構造(記号e)の接続箱は、「そもそも着火源を生じさせない」という予防型の発想で設計されています。アルミニウム合金鋳物を使用した製品では鋳鉄・鋼板製と比べて重量が約3分の1となるため、作業現場への持ち運びや取り付け作業が容易です。さらに、安全増防爆構造は水素やアセチレンなどの爆発等級3(グループⅡC)に対応する機器の製作が耐圧防爆構造と比べて容易な点も見逃せません。


実際の現場での使い分けという視点から見ると、建築・電気工事で多くの施工者が見落としているポイントがあります。それは「耐圧防爆構造の接続箱(型式:STH等)の内部には、安全増防爆構造(e)の端子台が内蔵されている」という構造的な実態です。つまり耐圧防爆構造の接続箱であっても、内部構成要素として安全増防爆構造が組み合わされています。この複合構造を理解していないと、銘板の防爆記号が「ed2G4」のように複数の記号で表示されている理由が分からず、施工時の接続機器選定で混乱が生じます。


コストの観点からも比較が必要です。安全増防爆構造の接続箱は一般的に耐圧防爆構造品よりも低コストであり、2種場所が対象であればランニングコストも含めた総合コストを抑えやすい選択肢です。ただし、適正交換時期が10年と耐圧防爆構造の15年よりも短い点を考慮した上でライフサイクルコストを計算する必要があります。


  • 🏗️ 2種危険場所で軽量・低コスト重視→ 安全増防爆構造接続箱(SPJB系)を選択
  • 🏭 1種危険場所または高危険度ガス環境→ 耐圧防爆構造接続箱(EXTB・STH系)を選択
  • 🔬 水素・アセチレン等ⅡCガス対応が必要→ 安全増防爆構造(整合指針準拠)が対応容易


防爆部品の株式会社イー・クォーサン:接続箱の防爆構造選定に際する手引き(実務向け解説)